Monday, July 16, 2012

思う、考える


前々回で<見る>、前回で<取る>を主に他の動詞との組み合わせでで検討してきた。大昔の人のやることを分析すると、世界(あるいは周り)を知覚する(多くは見る)、分析、評価する、決定する、行動に移す(実行)のサイクルだ。知覚の代表は<見る>より抽象的な<知る><分かる>が適当のようだが、他の動詞との組み合わせが多いということでは<見る>が知覚動詞の代表、そして<取る>は決定、実行動詞の代表だ。

<分析、評価する>はつきつめれば<考える>だろうが、<考える>はあまり使われず、大和言葉の代表は<思う>で、これまた代表にふさわしく他の動詞との組み合わせが多い。
Cogito, Sum (I think therefore I am)。<我思う、故に我あり>で<我考える、故に我あり>ではない。おそらくこれは、<考える(kangaeru)>が言葉として長すぎ、語呂が悪いの で<思う>になったのだろう。 また<考える>は純大和言葉でない可能性もある(注)。だが、これはかなり重要な違いで、<思う>が一般的な人の心理表現以外に<男女間の心理>を自然と表わしていまうことがある。<我思う、故に君あり>はラブ レターの中の文句になりうる。したがって、<思う>は思考、特に理論だてた思考には向かないのだ。<考える>がこの役を果たすのだが、日本語では<思う> ほどには発達していない。少なくとも、く他の動詞との組み合わせ>では、<考える>は<思う>に比べはるかに少ない。

(注)spttやまとことばじてん<考える>の語源参照


ここでは、敢えて辞書をあまり使わず<見る>と<取る>を主に他の動詞との組み合わせで検討してきたので、これを利用することにする。つまり、<思う>と他の動詞の組み合わせだが、ことば遊びの要領で、 <思う>の連用形<思い>と<見る>と<取る>で使った<他の動詞>をうしろに加えて、機械的に組み合わせるのだ。また、<思う>は<XXを思う>で他動詞で使えるが、元来意味は自発的なので、使役形は少ないが、今回の組み合わせでは使役形がけっこうでてきた。(やはり<思う>は元来自発的なのだ)。また注意しなければならないのは、

<見る>の連用形、連用形の名詞(体言)化用法は<見(み)>、
<取る>連用形、連用形の名詞(体言)化用法は<取り>
<思う>は連用形、連用形の名詞(体言)化用法は<思い>

 となるが、<見(み)>や<取り>の名詞(体言)化用法は限られているのに対して、<思い>は名詞として独立しており、<思い>がXXする、<思い>をXXすると、普通によくつかわれる、ことだ。


やってみると面白い結果がでた。ただし結構複雑だ。

1)日常よく使われる表現がけっこうある。当然ながらか、恋愛表現と解釈できるものが少なくない。

2)思いがけない<表現>が可能。なかには詩的な表現がある。

3)2)の中には、日常よく使われる<気>を使った表現にほぼ等しいものがいくつかある。これらの表現は、<気>を使った”擬似”大和言葉を<思い>を使った”純正”大和言葉で置き換えることができる可能性があることを示している。

4)出てきた結果を<考える>を使った表現で代える、あるいは利用することができる。日本語での理論的思考の助けになるのではないか。

ここでは、2)と3)と4)に重点を移して、1)については結果を示すだけで、原則として解説を省くことにしたが例外はけっこうある。


<思う>の連用形<思い>と他の動詞の組み合わせ


思い合う - お互いに思う。使役形は<思い合わせる>。<思い合わせる>でもいいが<考え合わせる>とすると、いくつかの違った<考え>を<合わせる>で、創造的思考方法の一つになる。

思い上がる - 慣用語-説明省略。 使役形は<思い上げる>で、<思い>を<上に上げる>とは<思い>を昇華させることだ。<思い>を<棚に上げる>のであれば、一時<思い>を忘れておく。発音上は同じになってしまうが、<思い挙げる>はできるだけ多くの違った<思い>をするということになる。

思い当たる -  慣用語-説明省略。使役形は<思い当てる>で、<思って><当てる>、<推測>が<当たる>の意にもなる。<考え当てる>でもよい。

思い誤(あやま)る - 勘違いする。

思い急ぐ - 思いせく。あせって思う。結果は通常あまりよくない。

思い扱う - <思い>を制御するではない。 <思いながら><扱う>。<気づかう>にならないか?

思い入(い)る - <気がめいる>の代わりとしてはどうか?

思い入(いれ)る - 名詞化した<思い入れ>の方がよく使われる。<気を入れる>の代わりとしてはどうか? <思い入れ>は恋愛用語になりやすい。

思い受ける - 恋愛用語になりやすい。恋愛成就か。

思い失う -  恋愛用語になりやすい。失恋か。ところが、ことはそう簡単ではない。<相手>のそれまでの愛を失えばかなり深刻な失恋だが、<自分>のそれまでの<相手に対する>愛を失うケ-スもある。

思える - <思う>の自発、可能となるが、検討要。

思い置く - <置く>そのままにしておくの意があるので、<思い収めて置く >のような意味で使う。一方、<考え置く>はいい言葉だ。<考え続けていれば>いい考えが浮かぶとは限らない。

思い送る - <思い>を荷物のように送ることはできない。<思い遣(や)る> が慣用化している。

思い行う - <思って><行う>。 <無言実行>の意にならないか?

思い押さえる -  冷静にする(なる)。 <気を静める>の代わり。

思いおさめる - <思い>を外に出さない。 冷静にする(なる)とはやや違う。長くなるが<思いおさめ置く>とも言える。

思い落とす - <気を落とす>に代える。<思い落ちる>の使役形。いずれにしても同じような意味になる。<思い落ちる>はやや詩的だ。

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思い返す - 思い出す、思い起こすに近い。反省の意はないようだ。<思い返る>の使役形。

思い替(換)える  - 発想の転換。
 
思いかねる - <兼ねる>で原義は<二つのもの(こと)を同時にやること>だ。<思いかねる>は<思う><思わない>を両立できるとい うことだ。<二つの ことを同時にできない>は本来否定の<兼ねない><思い兼ねえない>だ。ところが、実際には<思いかねる>は<思う><思わない>を両立できない という否定の意味で使われている。本来は<思いかねない>と否定で言うべきものだ。ところが、<思いかねない>は<思いそうだ>の意になる。

思い交わす - 男女間では特別の意味で実際使われるが、もっと一般化すると、人と人の間で<思いが>空間を飛び交う ような表現だ。

思い変わる - <こころ変わり>の代わりに<思い変わり>。<気が変わる>とはやや違う。

思い代わる - 思い変わるがあるので、<思い代わる>に特別の意味を加えるのはこのましくないだろう。

思い切る - 説明省略。

思い極める -<思い極まる>の使役形。<思い極まる>は慣用語法(説明省略)。<考え極める>は悪くない。<考え尽くす>ともやや違う。

思いくずす - <思いくずれる>の使役形。 <思いくずれる>は失望する。<気を落とす>より深刻だ。

思い下(くだ)す -? うまい説明が浮かばない。

思い決める - 決心する。<思いを固める>が使われているようだ。

思い組む - 理論的に考える。<考え組む>はしっくりしない。

思い消す - <忘れよう>とする。<忘れる>は他動詞だが自発の感じだ。<思い消す>とすれば自発の感じは無くなる。

思い越す - <見越す>と同じような意味で使える。すなわち、障害(物)を越えて<思う>。 ただし、<思い過ごす>があるので、混乱するか?

思いこなす - <思い>を制御する。いい言葉ではないか? <思い扱う>もある。

思いこぼす(思いこぼれる) - 1)あることを忘れる。 2)<思い>あふれてこぼれ出る。
3)結果として、<思い>が足りなくなる。 面白いことばだ。

思い込む - 説明省略。 使役形は<思い込める>だが可能にもなってしまう。<思いを込める>は主に恋愛用語。 <思い込む>と<考え込む>は違う。

 思いこわす - <思いくずす>と同じように使える。<思いこわれる>の使役形。

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思い下げる - <思い下がる>の使役形。<思い下げる>は<希望、要求>を下げる。あるいは<取り下げる>の連想から<思い>を捨てる。

思い定める - 決心する。<思いを固める>が使われているようだ。<思い定まる>の使役形。

思い仕切る - <思い>を統制、制御するの意。<思いこなす>に似る。

思いしまる - <気が引き締まる>に代える。使役形は<思いしめる>。

思い調べる - 特に意味がない。

思い知り置く - おぼえておく。

思い知る -  説明省略(慣用)。使役形<思い知らせる> 。 

思いすえる - 決心する。決心は人生上の需要項目。<気をすえる>には代えられない。<思いすわる>の使役形。<思いがすわっている>は<肝っ玉がすわっている>上品版、女性版だ。

思いすがる - あまり聞かないが、悪くない表現だ。

思いすく - <見すく><見すける>からの連想でいけば、<思いすく>は<思いが透けて>見えるとなるか?

思い過ごす - 慣用で<思い過ごし>と体言化して使う。<思い違い>の意に近い。<思い過ぎる>、体言<思いすぎ>は<思い>過剰の意。

思い捨てる -   あきらめる。

思いすます - <考え>の焦点をしぼる。<思いすませる>は<思いすます>の強調。

思いそこなう - <思い>が失敗することはない。<思いそこない>は不十分な<考え>といえよう。とすれば、<思いそこなう>は<考えが足りない>ことになる。

思いそびれる - <思おう>として実際は<思わなかった>。ありうることだが、<思い忘れた>は<見忘れた><取り忘れた>に比べればほとんど使わない。

思いそれる - あてが外れる。

思いそろえる - いろいろなおこりそうなことの対して<こころ>の準備をする。

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思いだす - 説明省略。<考え出す>はいい言葉だ。

思い立つ - XXが<思い立つ>ではなく、XXを<思い立つ>と言う。<思い付く>に似る。<考え付く>はあるが<考え立つ>はない。中国語に<想起来>という言い方がある。<考えが出てくる>ではなく<思い出す>だ。

思い立てる - <思い立つ>の使役だが、<思い立たせる>もある。

思い違う - 説明省略。

思い違える - <思い違う>の強調。

思い散らす - <まとまらない考えをする>ではどうか?<考え散らす>よりはいい。<思い散る>の使役形だが、<思い散る>は恋愛用語だ。<考え散る>は<考えに集中できない>。

思い散らかす - <思い散らす>の強調。<まとまらない考えをする>の強調。

思いつかる - <見付かる>の<見>を<思い>に換えたもの。したがって<思いつかる>は<思い付ける>自発、可能。<思い付く>の使役形は<思いつかす>だが、<思い付ける>ともいえるが、<思い付ける>は可能にもなる。<思い付く>の自発、可能、使役はわけが分からなくなる。いづれにしても、実際によく使われるのは<思い付く>だ。

思い付く - <思い>が<付く>はいい表現だ。 創造の一過程を示している。<考え付く>もいい表現。

思いつくろう - 本心を見せないようにする。 <気持ち>をごまかす。 かなりな心理描写だ。

思い付ける -  <思い付く>の使役形。<思い>の使役も紛らわしい。<気をつける>には換えられないようだ。

思いつぶす - <思いつぶれる>の使役形。<思いくずす>、<思いこわす>の同類。<思いつぶれて>は失望、失恋だ。

思いつめる - <思いつまる>の使役形。<思い込む>、<思い通す>。<考えつめる>は悪くない。<考えつめすぎる>のはよくない。

思い積もる -恋愛用語だ。使役形は<思い積もらせる>

思いとどめる - <思いとめる>の強調。自発形<思いとどまる>は慣用。説明省略。

思いとめる - 記憶する。<とめる>は<止める>、<留める>、<泊める>がある。

思い取る - うまい説明が浮かばない。<取る>は重要語なので、敢えて考えれば、1)思いながら取る、2)思って(考えて)から取る、3)XXの思いを取る。

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思い直す - 説明省略。

思いなす - <思いなし>は<思い無し>ではない。<思いなしか>は慣用句。<思いなす>はほとんどきかないが、いい言葉だ。<思い>を<なす>とは言い換えれば<考える>ことだ。<思う>は自発的だが(思われてくる)、<思い>と名詞化して独立させ、これに<なす>という能動的な動詞を加えれば、<思う>が能動化する。

思い逃す - <見逃す><取り逃がす>から恋連想すれば、<思うつもり>が実際は<思わなかった>となる。

思いのける - 思わないようにする。考えない。

思い残す - 説明省略。

思い除く - <思いのける>に同じ。 <思い覗(のぞ)く>は隠そうとしても<思い>が覗いて見えるという心理描写になる。

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思いはからう - <思いやる>に似るが、やや社会性がある。

思いはかる - 計画する。 いい言葉だ。 <考えはかる>は硬すぎる。

思いはぐれる - 恋愛用語では、これまた失恋に近い。<考えがまとまらない>とも取れる。いずれにしてもやや詩的だ。

思い運ぶ  - 1)<考え>を伝える。 2)<考え>を進める。<思い通りに運ぶ>という慣用句がある。

思いはずす - <思い付ける>の反対だが、<思い付ける>の意味が不明。恋愛用語としては、愛を受け入れない。これまた失恋に近い。

思い果てる - 恋愛用語では、これまた失恋。<考え果てる>は<考え>が行きづまる。

思いはなす - 1)<離す>とすれば <思いはずす>とほぼ同じ。 2)束縛から<放す>とすれば、とらわれずに(自由に)思う。

思いはなつ - 恋愛用語。 <思い(愛)>を発表する。

思いはらう -  くだらない<考え>を取りはらう。

思い晴らす - <思い晴れる>の使役形。

思い張る - 1)<見張る>からの連想からすれば、思いを張りめぐらす。 2)思いのテンションが高まれば、思いが張る。

思い引く - <思い>が引く。未練が残る。

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思い巻く - 1)いろいろな思いをつなげながらまとめる。2)思いが竜巻のようにぐるぐる巻く。1)2)ともわるくない表現だ。

思い紛(まぎ)らす - <気を紛らす>換えるえられる。
<まぎれる>はあるものが他のものに混じって区別がつかなくなるの意だ。<まぎらす>は他動詞で意図的に、区別がつ かなくなるように混ぜるだ。

思い紛(まぎ)らわす -<思い紛(まぎ)らす>の強調。

思い紛(まぎ)れる - <取りまぎらす>の自動詞(自発形)。

思いまくる - <まくる>は接尾語的用法。むやみやたらに思うことだ。

思い混ぜる - 創造的思考方法の一つ。 <考え>を混ぜ合わせる。

思いまとめる -頭の中で<思い>をまとめる ---> <考える>。いい言葉だ。<思う>に比べると<考える>は思考過程、進行、進展が感じらる。、

思い回す - いろいろ考える。 <思いまとめる>には至らない。<考え回す>はよい意味でも悪い意味でも使える。

思い回る - <思い>がぐるぐる回って、進展しない。

思い乱す - <思い乱れる>の使役形ともいえようが、<思い乱れさす>とも言える。

思い向く - XXの方向に<思い>が向く。やや詩的な表現。恋愛用語とは限らない。

思い結ぶ - 1)<思い>がかなう。2)いくつかの<思い(考え)>を結び合わせる。

思い持つ - <考え持つ>も含めて、いい説明が考え浮かばない。<持つ>も重要語なので、敢えて考えれば、XXという<思い>を<持つ>か? 日本語の<持つ>は具体的で普通<もの>を<持つ>だ。 <思い>や<考え>を持つは西洋的だ。 I have a good idea.

思いもどす - 1)思い(愛)を取り戻す。2)思い(愛)を元に戻す。<考え戻す>は思考過程の一つ。

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思いやめる - あきらめる。非使役形は<思いやむ> - 1)思い(愛)がなくなる。2)思考停止。

思いやる - 日本人は<思いやり>が好きで、<思いやりの心が大切>などという。

思いよせる - 好きになる。恋愛用語とは限らない。<思い>が目に見え、動いているような表現だ。

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思われる - 受身、被害、迷惑。あまり使わない方がいい。

思い分ける - <思い(考え)>を分けることだから、分析だ。<思い分かる>の使役ということになるが、<思い分かる>は<思い知る>とは違う。<思い 分かる>はあまり聞かないが、いい言葉だ。<思って><理解する>のは単に知識を吸収するのとは違う。<学ぶ>は<まねる>からきている。<勉強する>は 中国語からすれば変な言葉だ。 <思い分かる>の方がよっぽどいい。

思い渡す - <思い>を伝える。



sptt




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