日本語の<連用形>は用言だけにつながるとは限らない。<連用形の体言化>というのがある。これはいくらでもある。
そのもの言いはなんだ。
行きはよいよい帰りはこわい。
黙(だま)りの戦術を使う 。
押しの一手。
<連用形の体言化>+体言という組み合わせをチェックしてみよう。さらに英語との比較でもおもしろい。よく5W1Hという、すなわちWhat, Who, When, Where, Why, How だ。日本語に対応させれば、
What - なに。 thing (something, anything) - こと、もの - さらには くさ(草、対象)
(Which - どれ。 thing (something, anything) - こと、もの)
Who - だれ。 one (someone, anyone) - ひと、もの(者) - さらには て(手、人手)、方(さる方、あの方)
When - いつ。 time (sometime, anytime) - とき、ころ
Where - どこ。 place (somewhere, anywhere; some place, any place) - ば(場)、ところ
Why - なぜ。 reason わけ、ゆえ
How - どのように。 way (some how, any how; some way, any way) かた(方法)、さま(様、様子) -さらには 具合(<具>は漢語だ(現代中国語 ju, 広東語 koi))
(How much (many) - どのくらい、どれほど。 degree - ほど)
これまで見てきた代表動詞<見る><取る><思う><する><やる>の <連用形の体言化>で試してみよう。これまた組み合わせ遊びだが今度は<連用形の体言化>+体言(原則として大和言葉)と、これに<連体形>+体言も加えてもみる。<連体形>+体言は基準、一般形で、原則としてどんな組み合わせはでも可能なので、<連用形の体言化>+体言の組み合わせで意味が明確のものだけとりあげる。
<見る>の連用形<見>、連体形は<見る>
<取る>の連用形<取り>、連体形は<取る>
<思う>の連用形<思い>、連体形は<思う>
<する>の連用形<し>、連体形は<する>
<やる> の連用形<やり>、連体形は<やる>
1) <見る>の連用形<見>、連体形は<見る>
見事(ごと) - 見る事(こと): <見事(ごと)>は慣用語で<すばらしい>といった意味。<見ること>は<見ること、聞くこと>のように使うし、また<見ること>という行為自体も指す。
見物(みもの) - 見る物: <見もの>は<見るべきもの>。<見るもの>は文字通り。
見時(どき) - 見る時: 見時(どき)は<見るべき時>。<見るとき>は文字通り。
見頃(ごろ) - 見る頃: 見頃(ごろ)は<見るべき頃>。<見る頃>は文字通り。
見場 - 見る場: <見場>は<見るべき場面>。<見る場>はほとんど聞かず<見る場所>となろう。
見所(どころ) - 見るところ: <見所(ところ)>は<見るべきところ(箇所)>。<見所がある>などと使う。<見るところ>は文字通りの意(あまり使わない)のほかに、<見れば>や<見ると>など条件句となる。<見たところ>ともいうので、英語の条件法に似ている。<ところ>はこれまたやまた大和言葉の名詞代表で、いろいろな意味がある。別途検討。
見分(わ)け - 見るわけ: <見分け>は慣用語で<区別>といった意味。<見るわけ>は<見る理由>
見方(かた)(方法) - 見る方: <見方(かた)>は<見る方法>だが<見るべき方法><見るための方法>とも言える。<見る方>は<見る方法>にはならず、<見る人><見る方角>になる。
2) <取る>の連用形<取り>、連体形は<取る>
取り物 - 取るもの: <取り物>は<捕り物帳>がある。 <取るもの>は<取るものも取りあえず>というのがある。
取り時(どき) - 取るとき: <取り時(どき)>は<取るべき時>。<取るとき>は文字通り。
取り頃(ごろ) - 取る頃: 取り頃(ごろ)は<取るべき頃>。<取る頃>は文字通り。
取り所(どころ) - 取るところ: <取り所(どころ)>は<取るべき所>だろうが、あまり聞かない 。つかみ所(どころ)はよく使う。一方<取るところ>は<取るべきところ>の意があり、使われる。また<取るところを見られる>という言い方がある。
取り分(わ)け - 取るわけ: <取り分け>は慣用語で<特に>といった意味。<取るわけ>は取る理由>。
取り方 - 取る方: <取り方>は<取る方法>だが<取るべき方法><取るための方法>とも言える。
取り様(ざま) - 取るさま: <取り様(ざま)>も<取るさま>も<取る様子>だが、<取りざま>は良いいみでは使われない。<その取りざまは何だ>。これは<取る>にかぎらず、<言いざま>、<やりざま>も同じ。
3)<思う>の連用形<思い>、連体形は<思う>
思い事(ごと) - 思うこと: <思い事(ごと)>は<思っていること>の<こと>。<思うこと>は<思う>という行為そのものを指す。
思い時(どき) - 思うとき: <思い時(どき)>は<思うべき時>だがあまり使わない。<思案のし時(どき)>は使う。<思うとき>はは文字通り。
思い所(どころ) - 思うところ: <思い所(どころ)>は<思うべき所(どころ)だがあまり使わない。これも<思案のし所(どころ)>がよく使われる。
思い方 - 思う方: <思い方>は<思う方法>だが、これも<思うべき方法><思うための方法>とも言える。<思う方>は<思う人>あるいは<思う方向>になる。
4)<する>の連用形<し>、連体形は<する>
仕事 - すること: <仕事>は<するべき事>。<すること>は<するという行為>そのものを指す。
し時 - するとき: <し時(どき)>は<するべきとき>。<するとき>はは文字通り。
し頃(ごろ) - 見る頃: し頃(ごろ)は<するべき頃>。<する頃>は文字通り。
し所 - するところ: <し所(どころ)> は<するべきところ(場所というよりは箇所、あるいは時)。<するところは>は<する場所>の意味にもとれるが<するところを見られる>などと使う。
仕方 - する方: <仕方ない>と<する方ない>は違う。<する方>はまた<する人>
し様(ざま) - する様: <取りざま>に同じ。
5)<やる> の連用形<やり>、連体形は<やる>
やり時 - やるとき: <やり時(どき)は<やるべき時>。<やる時>は文字通り。
やり場(遣り場) - やる場: <やり場(遣り場)>は普通<もって行き場>の意で<やる(する)>の意はない。<やる場>ほとんど聞かない。
やり方 - やる方: <やり方>は<やる方法>だが、これも<やるべき方法><やるための方法>とも言える。<やる方>は<やる人>あるいは<遣る方向>になる(遣る方ない)。
やり様(ざま) - やる様: <取りざま>に同じ。
一般的に言えることは、<連用形の体言化>+体言が<べき>としてつながることだ。英語でいえば、
a thing to see (take, think, do)に対応する。<ため>の場合、英語では a thing for seeing (taking, thinking, doing)となる。
sptt
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