Saturday, July 21, 2012
する、やる
これまで知覚の代表の<見る>、決定、実行動詞代表の<取る>、分析、評価代表の<思う>を主に他の動詞との組み合わせでで検討してきた。<取る>は実行も表すが、純粋の実行動詞は<する>と<やる>だ。ほかに、<行う>、<なす>があるが、これまで使ってきた方法-く他の動詞との組み合わせ>の基準では<行う>、<なす>は実行動詞の代表にはなれない。く他の動詞との組み合わせ>が多いのは<する>と<やる>だ。<する>のほうが<やる>よりく他の動詞との組み合わせ>が多く、また<やる>はかなり口語化しているので、<する>を中心に<やる>を参考として取り上げて話を進める。ただし、<やる>には元の意味と思われる<遣る>(持って行く、何かを別のところに移す)、あるいは<遣る方なし>の<遣る>がある。<やり方>ではない。
<する>は少しやっかいだが、言語探索という面では面白い。やっかいなのは
1) <する>の連用形は発音が大きく変化して<し>となるのだ、あるいは<なってしまった>のだ。<しない>、<します>、<する>、<するとき>、<すれば>、<しよう>変化する。したがって、発音上(より正確には、耳で聞いた場合)、<する>との関係が薄らぐのだ。一方、<やる>の連用形は<やり>で<し>の問題はない。
例1) 仕来り(しきたり) - <し来たりし>(してきた)こと。
例2) 仕舞う(しまう) -もとは<閉まる><閉める>関連の語だろう。また<XXして仕舞う>と完了の意味でよく使うことからも<仕舞う>は重要だ。
例3) したたか - これは動詞ではなく形容動詞<したたかだ>。<したたかに>で副詞。 もとは<したたく(叩く)>ではないか? これは説明が要る。<したたか>の<たたか>は<戦う>の<たたか>。したがって、<したたか>は<し><戦う>。<XXして><戦う>とは反抗だ。<反抗>する者は<したたか>だ。<たたかう>は<たたく(叩く)>からきている。
例4)老舗(しにせ)
老舗(しにせ)が<し><似せる>、すなわち<まねする>からきていることは辞書をひかないとわからない。そういえば、<見習い>は<見て><習う>だ。
その他、お仕置き、しがらみ(し+からむ)、しくじる(し+くじくける)、しごく(し+こく)、しこる(し+こる)、忍ぶ-偲ぶ(しのぶ)(し+延ぶ)、 etc といわば、いくらでもある。
2) 漢字の<仕>が、<仕上げる>、<仕入れる>、<仕掛ける>、<仕組む>、<仕分ける>など、また体言化したものとしては仕合(ふつう試合と書く)、仕方、仕草、仕事、仕組、仕度、仕度(支度とも書く)、仕手、仕業(わざ)などと書かれることが多い。<仕>は<当て字>あるいは<万葉がな>で中国語の意味はまったく関係がない。
<仕上げる>、<仕入れる>、<仕掛ける>、<仕組む>、<仕分ける>、仕方、仕草、仕事、仕組、支度、仕手、仕業は
し上げ、仕入れ、し掛け、仕組み、し分けと書くのはいいが、
し上、し入、し掛、し組、し分、し方、し草、し事、し度、し手、し業とは原則として書かない。書面上は<語呂>ではなく<見た目><バランス>が悪いのだ。
3)同じ1)の動詞変化から、<し>は100%大和言葉だ。にもかかわらず、中国語の<し>と発音する(した)語は少なくなく、誤用が生じた。
誤用の例
<仕送り>はおそらく<支送り>が正しい。なぜなら、<仕>は<公>の意でもともと中国では<仕女><仕官>などと使われる。一方<支(現代中国語発音はzhi)>はこの一字で<金を送る>とか<支払い>の意味があるのだ。
<始末>意味からしていかにも漢語のようだ。発音も現代中国語で<shi-mo>、 広東語で<zhi-mat>。ただし、中国語圏で使われているのを聞いたことがはない。たぶん、日本語では他の漢語<顛末>の意に近い。かなりの推測だが、<始末>おそらく<仕まう>と関連がありそう。<始末する>は<処理する>、<終わらす>だ。<始末が悪い>は<処理に困る>といった意味だ。<仕まう>の関連語に<収める>がある。<仕舞う>の<舞う>は不適当。
4)<思う>の<思い>ほど明確、独立的ではないが、<する>の連用形<し>は体言化して使われている。これは<連用形の体言化>とも言う。<明確、独立的ではない>分注意しないといけない。
体言+体言(大和言葉)で言えば
し甲斐(やり甲斐)、し方(やり方)、仕草、し応え(やり応え)、仕事、仕手(やり手)、し時、し所、し振(ぶ)り、仕業(わざ)
<やり口)>とは言うが<し口>はほとんど聞かない。
<やり様(ざま)>とは言うが<し様(ざま)>はあまり聞かない。<仕様(よう)>はある。仕様がない(しょうがない)。
<やり場>とは言うが<し場)>はほとんど聞かない。きわめて大胆な憶測だが、<し>も<場>も大和言葉の大代表といってもいい。この組み合わせ<しば>は、<しばしば><しばし><しばらく>とは関係ないだろうか?
<し甲斐(がい)>の<甲斐>は意味のない当て字で、甲斐(がい、かい)の成り立ちはやや複雑。<し替える>のところで、説明する。
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<する>の連用形<し>+ <他の動詞>の組み合わせ
今回は主に辞書を使って調べてみた。ただし、<思う>で使った<他の動詞>も利用した。
し合う - お互いにする。XX<し合う>として使う。体現は<しあい>(仕合、試合)。使役形は<し合わす>、<し合わせる>。幸(しあわ)せはこの<し合わす>から来ていると言う。相手と<し合わす>ことによって得られるものなのだろう。したがって、努力しないと得られないのだ。相手と<し合わせ>ば<しあわせ>になる道理だ。 <やりあう>は別の意味になる。
し上がる - <し上げる>の自発、可能。<し上がる>は<完成する>ということだ。<し上げる>は<完成させる>。体言<し上げ>は完成の最終段階のしごと。
し誤(あやま)る - 間違う。<し間違う>とも言う。<やり間違う>はやや口語的。
し急ぐ - 急いで<する>というより、あせって<する>の意。結果は通常あまりよくない。<やい急ぐ>とも言う。
し入(い)る - <強(し)いる>と何か関係はないか? <して><いる>とはどういうことか?
<XXしに><いる>であれば、<XXするために><入る>で <強(し)いる>との関係がありそう。
し入(いれ)る - 体現化した<仕入れ>もよく使われる。 <して><入れる>とはどういうことか? <XXしに><いる>であれば、<XXするために><入れる>で <仕入れる>との関係がありそう。ただし、こじつけ気味。
し置く - <して><おく>。<置く>そのままにしておくの意がある。体現化は<仕置き>で、元来の意味もたもてるが、<仕置き>は<お仕置き>だ。
し送る - <仕送る>。体言<仕送り>。上にも書いたように、これは誤用だろう。
しおさめる - し終える。 <やりおさめる>はないが、<やり終える>は口語でよく使う。
し落とす - <すべき>ことを<し忘れる>。
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し返す - 或る相手から被害を受けたとき、同じような被害を相手に与える。大げさには復讐(ふくしゅう)。<し返す><し返し>は十分口語的。<やり返す>も口語的。<やり返し>とはほとんどいわず、もっぱら<し返し>だ。 <やり返す>はもっぱら口(言葉)を用いた場合に使い、これは<し返す>ではだめ。
し替(換)える - <し替(換)える>とはほとんどいわない。<やり替(換)える>は<仕方(やり方)を換えてやる>の意で使う。
この <し替(換)える>は一見関係なさそうだが、<し甲斐>と関連がある。 <し替(換)える><し変える>は<する>ことを変える、あるいは<し方を変える>(しかえ)の意だ。<し方を変える>のはリスクが伴う。リスクが伴うことすることは、成功した場合には、リスクを伴わないことすることをした場合よりも達成感(sense of achievement)、満足感がある。この達成感、満足感が<甲斐>だ。
しかねる - <兼ねる>で原義は<二つのもの(こと)を同時にやること>だ。<しかねる>は<する><しない>を両立できるということだ。<二つの ことを同時にできない>は本来否定の<し兼ねない><し兼ねえない>だ。ところが、実際には<しかねる>は<する><しない>を両立できない という否定の意味で使われている。本来は<しかねない>と否定で言うべきものだ。ところが、この<しかねない>は<しそうだ>の意になる。
し交わす - <やり交わす>も含め、あまり使わない。
し切る - <し切る>は<完全にし終える>だろう。<やりきる>とも言える。慣用用法では体言化している<し切り>を<する>こと。慣用用法の<し切り>は<間仕切り>の<し切り>、<し切る>は<区切りをつける>だ。相撲用語でも<し切る><し切り>というのがある。さて、問題は<し切る(完全にし終える)>から慣用用法の<し切る>がどうして出てきたかだ?<取りきる>は<完全に取り終える>だが、<見切る>は<完全に見終える>ではない。<途中で見るのを切ってやめる>だ。<見切る>にならえば、<っし切る>は<途中でするのを切ってやめる>だ。<する>の途中放棄だ。だが、完全には放棄しない場合、別のことをし始める可能性は高い。これ(途中で切ってやめて、別のことをする)を繰り返して行くと、<間仕切り>のような行為をすることになる。<切りながら>いろいろ違ったこと<する>のだ。相撲用語の<し切る><し切り>は同じようなことを繰り返しやっているが、一回一回<し切る>のだ。
し極(きわ)める -<し極まる>の使役形。<し極まる>は<する>ことが限度にたっする。
< し極(きわ)める>は最良の仕方で<する>になる。
し組む - 慣用用法で<たくらむ>、悪いことを<計画する>でいい意味ではない。元来の<し組む>は<し方(やり方)>を<組み立てる>だろう。この体言化が<し組み>だ。
し込む - <見込む>は<将来に何かを期待する>の意があるが、<し込む>は<将来に何かを期待して今何かをする>の意にならないか?<し込む>には<弟子を訓練する>の意があるが、基本的には同じことだ(将来に期待して今訓練する)。
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し過ごす - <見過ごす><取りすごす><思い過ごす>からの連想では<し間違う>だが、<し過ごす>はあまり聞かない。かたち上自発の<し過ぎる>は<する>ことの過剰。
しすます - <し終える>。<見すます><取りすます>からの連想は難しい。
しそこなう - <する>ことに失敗する。<できない>。<やりそこなう>もほぼ同じ。
しそびれる - <しよう>として実際は<しなかった>。<し忘れる>とは少し違う。
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し出す - <し出す>。<やり出す>で<し始める><やり始める>。<仕出し>は料理屋用に特化してしまっているが、もともとは<作り出す>のようだ。
し立てる - <し立つ>の使役だが、<し立つ>はない。<し立てる>は<見立てた>ことの実行だ。衣服関連の<し立てる><し立て>がよく使われる。
し違う - <し違える>が一般的。
し違える - <し違う>の強調。<やり違える>とも言える。
し付ける - <し付く>の使役形だが、<し付く>はない。<し付ける>は<訓練する>に近い。<する>ことを身に<付けさせる>か。
しつめる - とことん<する>。 <する>を<煮つめる>感じだ。<しつまる>の使役形だが、<しつまる>はない。<思い込む>、<思い通す>。
し止める - 獲物を捕らえる、殺す。さらに一般化して<獲得する>。
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し直す - <やり直す>もほぼ同じ。
し残す - <し終える>べきことを<し終え>ない。<遣り残す>もほぼ同じ。
しのぐ(凌ぐ) - 少々解説が必要。<のぐ>は<のがす><のがれる>だ。XX(いやなこと、苦しいこと)から<し><のがれ>れば、<しのぐ>ことになる。
しのぶ(忍ぶ、偲ぶ) - これも少々解説が必要。 忍ぶ、偲ぶの二つの異なるいもがある。全く異なるわけでもない。
1)忍ぶ - もとは<し延べる>だ。<し延べる>は<すること>を先へ<延ばす>ことだ。<しのぐ(凌ぐ)>と逆で、XX(いいこと、楽なこと)を先送りすること、すなわち<忍ぶ>だ。
2)偲ぶ - これはややこしいが、 XX(いいこと、楽なこと)を後(うしろ)送りすること、振り返ること、すなわち<偲ぶ>だ。
し抜く - <し通す>。<やりぬく><やり通す>もほぼ同じ。
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し果てる - <XXして><果てる(終わる>のようだが、<し終える>のようでもある。具体的には?
しばる(縛る) - 大胆推測。<する>+<張る>。
しびれる(痺れる) - 大胆推測。<する>+<張る>の変形、あるいは<する>+<簸(ひ)る>。
しぼむ(萎む) - 大胆推測。下記<しぼる(絞る)>の変形
しぼる(絞る) - 大胆推測。<する>+<張る>の変形。
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しまう (仕舞う) - 最初にも書いたが<しまう(仕舞う)>は重要語だ。<舞う>は意味が合わないので、おそらく当て字。<見舞う>の<舞う>と関連がありそう。 仕舞う(しまう) -もとは<閉まる><閉める>関連の語だろう。また<XXして仕舞う>とある意味での完了の意味でよく使うことからも<仕舞う>は重要だ。また、意味は関連するが<収める>の意の<しまう>も口語ではよく使う。
しまくる - <まくる>が接尾語的用法。
しまる(閉まる) - <しまう (仕舞う)>の項参照。
し向く - <し向く>はほとんど聞かない。使役形<仕向ける>は時に使われるが、XXするように<誘導する>といった意味だ。、体言の<仕向け>は限定的に<仕向け地>で使われる。
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し分ける - 品物(商品)をなんらかの基準に従って<分ける>の意だ。体言<仕分け>もよく使われる。
し忘れる - <す(る)べき>ことを<し>ない。
sptt
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