Friday, November 14, 2014

<こむ>、<こめる>、<こまる>、<こもる>


<こむ>(自動詞)、<こめる>(他動詞)は、単独では<電車が込む>、<誠意(まごころ)を込める>が思い浮かぶぐらいで、さほど使用 頻度が高いようには思えないが、下記に見るように<xx こむ>、<xx こめる>の形の複合動詞はたいへん多い。特に<xx こむ>は意味が通じればほとんどの動詞につくようで、汎用性がきわめて高く、いわば前にある連用形の主動詞の様態を示す副詞のように使われる。<こまる>、<こもる>も関連動詞だ。

<電車が込む>は英語では The train gets crowded.
<誠意(まごころ)を込める> は to put sincerity (into xx)
<こまる>は to be in trouble
<こもる>は to seclude oneself

とでもなるか? これだけでも<こむ>、<こめる>、<こまる>、<こもる>がいかに特殊な日本語動詞であるかが推測される。おそらく日本語学習の外国人泣かせの動詞の一つだろう。

<xx こむ>

上がりこむ、当てこむ、編みこむ、合わせこむ
意気ごむ、入(い)りこむ
植えこむ(植えこみ)、歌いこむ、打ちこむ、埋めこむ、売りこむ
描(えが)きこむ
追いこむ、負いこむ、送りこむ、押さえこむ、教えこむ、押しこむ、落ちこむ、覚えこむ、思いこむ、織(お)りこむ、折りこむ

買いこむ、掻きこむ(めしを掻きこむ)、かがみこむ、書きこむ、駆けこむ、囲いこむ、担(かつ)ぎこむ、刈りこむ、考えこむ
聞き込む、着こむ、決めこむ、切りこむ
食いこむ、組みこむ、繰(く)りこむ、くるみこむ
消しこむ、蹴りこむ
こすりこむ、困(こま)りこむ、ころがりこむ

差しこむ、さすりこむ、誘(さそ)いこむ
仕こむ、沈みこむ、絞(しぼ)りこむ、しまいこむ、しみこむ、しゃがみこむ(関東方言か)、しゃれこむ、しょげこむ、忍びこむ、信じこむ(<信じる>は<感じる>と同じで、漢語由来)
吸いこむ、滑(すべ)りこむ、すましこむ、住みこむ、すりこむ、ずれこむ、座(すわ)りこむ
背負(せお)いこむ、咳(せ)きこむ、攻めこむ
染めこむ

倒れこむ、たたきこむ、たたみこむ、立(建)てこむ、頼みこむ、黙りこむ、ためこむ、たらしこむ、たれこむ
縮(ちぢ)みこむ
使いこむ、つぎこむ 、作りこむ、つけこむ、漬(つ)けこむ、包みこむ、積みこむ、詰めこむ、連れこむ
て - <て>で始まる動詞はすくなく、<照る>、<照らす>、<出る>、<出来る>があるが<込む>と結びつかない。
溶かしこむ、溶けこむ、どなりこむ、泊りこむ、取りこむ

流しこむ、流れこむ、投げこむ、なぐりこむ、なだれこむ
逃げこむ、煮こむ
縫いこむ、塗りこむ
寝こむ、ねじりこむ、ねりこむ
のめりこむ、飲みこむ、乗り込む

入(はい)りこむ、運びこむ、挟みこむ、走りこむ、話しこむ、はまりこむ、はめこむ、張りこむ
冷えこむ、引きこむ、引きずりこむ、ひっこむ、
吹きこむ、ふけこむ、ふさぎこむ、ぶちこむ、踏みこむ、ふり(振り、降り)こむ、ふれこむ
へこむ(もとは<へりこむ>か?)、へたりこむ
ほうりこむ、彫、掘(ほ)りこむ、惚(ほ)れこむ

舞いこむ、巻きこむ、まぎれこむ、負けこむ、混(ま)じりこむ、迷い込む、丸めこむ、回(まわ)りこむ
磨(みが)きこむ、見こむ
むせこむ
めかしこむ、めりこむ  (<める>と言う動詞はあるのか?)
持ちこむ、盛(も)りこむ

焼きこむ
ゆでこむ
読みこむ、弱りこむ

割りこむ


 <xx こめる>

言いこめる  他動詞。 
押しこめる  他動詞。  <押しこむ>も他動詞。<押しこめる>は<閉じこめる>の意が少しある。たちこめる (霧、煙がたちこめる)  自動詞 <こめる>は元来他動詞だが、<立つ(発生するの意)>は典型的な自動詞で<こめる>は副詞的になっている。昔は<たちこむ>だったろう。
閉じこめる  他動詞。 
ひっこめる  他動詞。 
やりこめる  他動詞。 

 多くの<xx こむ>動詞は<xx こめる>で可能形になる。

上がりこむ  --> 上がりこめる
当てこむ  --> 当てこめる
編みこむ  --> 編みこめる
合わせこむ  --> 合わせめる


<xx こむ>は分類が必要だ。

1.文法上の分類 自動詞 / 他動詞

1)自動詞

上がりこむ
意気ごむ、入(い)りこむ
打ちこむ(<xx にうちこむ>の場合)
落ちこむ、思いこむ(<xx と思いこむ>と言う場合)

かがみこむ、駆けこむ
決めこむ(<xx ときめこむ>と言う場合)、切りこむ(<xx に切りこむ>と言う場合)
食いこむ、繰(く)りこむ(<xx に繰(りこむ>と言う場合)
困(こま)りこむ、ころがりこむ

沈みこむ、忍びこむ、しみこむ、しゃがみこむ(関東方言か)、しゃれこむ、しょげこむ、信じこむ(<xx と信じこむ>と言う場合)
滑(すべ)りこむ、すましこむ、住みこむ、ずれこむ、座(すわ)りこむ
咳(せ)きこむ、攻めこむ(他動詞のようだが、<xx に攻めこむ >と言う)

倒れこむ、立(建)てこむ、頼みこむ(<xx に頼みこむ>と言う場合)、黙りこむ、たれこむ(<xx がたれこむ>と言う場合)
縮(ちぢ)みこむ
つけこむ  主に慣用用法 (<漬けこむ>は他動詞)
溶けこむ、どなりこむ、泊りこむ

流れこむ、なぐりこむ、なだれこむ
逃げこむ
寝こむ
のめりこむ、乗り込む

走りこむ、入(はい)りこむ、はまりこむ、張りこむ(<xx に張りこむ>と言う場合)
冷えこむ、ひっこむ、
ふけこむ、ふさぎこむ、踏みこむ、ふりこむ(マージャン用語)、ふり(降り)こむ(雨、雪)
へこむ、へたりこむ
惚(ほ)れこむ

舞いこむ、まぎれこむ、負けこむ、混(ま)じりこむ、迷い込む、回(まわ)りこむ
見こむ(<xx と見こむ >と言う場合)
むせこむ
めかしこむ、めりこむ

呼びこむ、弱りこむ

割りこむ

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2)他動詞

当てこむ、編みこむ、合わせこむ
植えこむ、歌いこむ、打ちこむ(<xx に yy を打ちこむ>の場合)、埋めこむ、売りこむ
描(えが)きこむ
追いこむ、負いこむ、送りこむ、押さえこむ、教えこむ、押しこむ、覚えこむ、思いこむ(<xx を思いこむ>と言う場合)、織(お)りこむ、折りこむ

買いこむ、掻きこむ(めしを掻きこむ)、書きこむ、囲いこむ、担(かつ)ぎこむ、刈りこむ、考えこむ
聞き込む、着こむ、決めこむ(<xx をきめこむ>と言う場合)、切りこむ(<xx を切りこむ>と言う場合)
組みこむ、繰(く)りこむ(<xx を繰(りこむ>と言う場合)、くるみこむ
消しこむ、蹴りこむ
こすりこむ

差しこむ、さすりこむ、誘(さそ)いこむ
仕こむ、絞(しぼ)りこむ、しまいこむ、信じこむ(<xx を信じこむ>と言う場合)
吸いこむ、すりこむ、ずれこむ、座(すわ)りこむ
背負(せお)いこむ
染めこむ

たたきこむ、たたみこむ、頼みこむ(<xx を頼みこむ>と言う場合)、ためこむ、たらしこむ、たれこむ(<xx をたれこむ>と言う場合)
使いこむ、つぎこむ 、作りこむ、漬(つ)けこむ、包みこむ、積みこむ、詰めこむ、連れこむ
溶かしこむ、取りこむ

流しこむ、投げこむ
煮こむ
飲みこむ、

運びこむ、はめこむ、張りこむ(<xx を張りこむ>と言う場合)
引きこむ (<ひっこむ>は自動詞。 他動詞は<ひっこめる>で<引きこむ>とは意味が違う)
吹きこむ、ぶちこむ、振りこむ (電気代を振りこむ)、ふれこむ
ほうりこむ、彫、掘(ほ)りこむ

巻きこむ、丸めこむ
磨(みが)きこむ、見こむ(<xx を見こむ >と言う場合)
持ちこむ、盛(も)りこむ

焼きこむ
呼びこむ
ゆでこむ
読みこむ

割りこむ  <xx に割りこむ>は自動詞。<xx を割りこむ>は<を>をとるので他動詞に見えるが意味内容は他動詞らしくない。<xx を割りこむ>は<xx を過ぎる>の意に近い。


元来<こむ>は<電車が込む>、<負けが込む>のように自動詞だが、他の動詞との組み合わせで他動詞になる。この場合他の動詞は基本的には他動詞。この場合<こむ>は副詞的とみなせる。これが今回のポストの一つのポイント。


一方他の動詞が他動詞でも複合動詞としては自動詞になる場合がある。

打ちこむ(<xx に打ちこむ>の場合)は自動詞。例)勉強に打ち込む。物理的な<xx を yy に打ちこむ>の場合は他動詞。<打つ>は他動詞。

思いこむ(<xx と思いこむ>と言う場合) <思う>は他動詞のようだが<xxを思う>(他動詞)と<xxと思う>(自動詞だろう)の使い方がある。

決めこむ(<xx ときめこむ>と言う場合)。<決める>は他動詞のようだが<xx を決める>と<xx と決める>の使い方がある。

切りこむ(<xx に切りこむ>と言う場合)。<切りこみ>を入れるの<切りこむ>だ。

食いこむ <食(く)う>は他動詞。<xx に食いこむ>と言う

繰(く)りこむ(<xx に繰(りこむ>と言う場合)。<繰る>は他動詞。

攻めこむ <xx を攻める>とは言うが、<攻めこむ>は<xx を攻めこむ>ではなく<xx に攻めこむ>。

立 (建)てこむ <立てる>は他動詞だが<立つ>は自動詞。<立てる>下二段活用<たてます>。<立(建)つ>は五段活用。<立(建)ちます>。した がって<立(建)てこむ>の<立(建)て>は他動詞の<立(建)てる>。しかしながら、<立(建)てこむ>は<この辺は家が立(建)て込んでいる>と使 う。

つけこむ - この場合の<つける>は<付ける>と言うよりは<突く>のようだが、<突く>は五段活用だ。<突ける>は(付く)の可能形。<付ける>は他動詞。

なぐりこむ - <なぐる>は他動詞。

張りこむ - <張る>は<氷が張る>で自動詞<紙を張る>で他動詞。<張りこむ>の<張る>は<氷が張る>の<張る>で自動詞。

ひっこむ - <ひっこむ>は<引き込む>がなまった(音便化した)もの。<ひく>は<潮が引く>で自動詞、<綱を引く>で他動詞。<ひっこむ>、<引き込む>の<引く>は自動詞のようだが他動詞とも考えられる。<ひっこめる>は他動詞。

ふさぎこむ - <ふさぐ>は他動詞で五段活用。自動詞は<ふさがる>でこれも五段活用。したがって<ふさぎこむ>の<ふさぐ>は他動詞。

踏みこむ  - <踏む>は他動詞。

回(まわ)りこむ - <xx を回る>という言い方があり、<xx を回(まわ)りこむ>と言えそうだが<xx に回(まわ)りこむ>が普通だ。

見こむ(<xx と見こむ >と言う場合)

割りこむ  - <割る>は他動詞。対応する自動詞は<割れる>。

自動詞の<くむ>複合動詞は文法的にはかなり複雑。 基本的には前の動詞が主要な意味で、、こむ>は副次的、言い換えるとこれも副詞的な使い方だ。他動詞の<くむ>複合動詞と違うのは
主動詞が他動詞にもかかわらず<くむ>複合動詞が自動詞になうものがけっこうあることだ。


2.意味による分類

1)<すっかり xx する> 、<相当十分に xx する>

この意味での<こむ>が一番汎用性が高いようだ。ほとんどどんな動詞にでもつく。上記の例では

上がりこむ  <上がりこむ>は<家の中へ入り込む>の意もあるが、場合によっては<すっかり家の中へ入る、はっている>の意がある。 
歌いこむ
刈りこむ
仕こむ
しゃれこむ
作りこむ
漬(つ)けこむ
煮こむ
寝こむ
走りこむ
話しこむ、
冷えこむ
ふけこむ
磨(みが)きこむ
めかしこむ
ゆでこむ
読みこむ
焼きこむ
弱りこむ

他にもやたらある。たとえば調理場(台所)、工場でしていることの動詞だ。大代表は<つくる>で、<つくりこむ>ことになる。<しこみ>も大切だ。重複があるが次のようになる。

調理場、台所(一種の食物加工工場)、工場で

(穴を)あける
(油で)揚げる
あたためる
あぶる
洗う
選ぶ
圧(お)す
かき混ぜる
かわかす
きざむ
切る
こねる
しぼる
すすぐ
(大根、しょうがを)する
そろえる
炊(た)く
たたく
ちぎる
漬ける
詰める
並べる
煮る
伸ばす
引き伸ばす
浸(ひた)す
冷やす
広げる
まぶす
丸める
ぬらす
蒸(む)す
盛る
焼く
ゆでる
(きりがないようなので、とりあえずこれまで)

以上動詞にはほとんど<こむ>をつけられる。

(油で)揚げる - 揚げこむ
あぶる - あぶりこむ
洗う - 洗いこむ
選ぶ - 選びこむ
圧(お)す - 圧(お)しこむ
きざむ  - きざみこむ
切る  - 切りこむ
こねる  - こねこむ
しぼる  - しぼりこむ
すすぐ  - すすぎこむ
(大根、しょうがを)する  - すりこむ
炊(た)く  - 炊(た)きこむ
たたく - たたきこむ
漬ける  - 漬けこむ
煮る  - 煮こむ
浸(ひた)す - 浸しこむ
冷やす - 冷やしこむ
混ぜる - 混ぜこむ
まぶす  - まぶしこむ
ぬらす  - ぬらしこむ
蒸(む)す  - 蒸しこむ
焼く  - 焼きこむ
ゆでる  - ゆでこむ


以上は<すっかり xx しない> 、<相当十分に xx しない>とうまいもの、出来のいい製品が出来ないので、次のような言い方が可能だ。

揚げこみが足りない
あぶるこみが足りない
洗いこみが足りない
選びこみが足りない
圧(お)しこみが足りない
きざみこみが足りない
切りこみが足りない
こねこみが足りない
しぼりこみが足りない
すすぎこみが足りない
すりこみが足りない
炊(た)きこみが足りない
たたきこみが足りない
漬けこみが足りない
煮こみが足りない
浸しこみが足りない
冷やしこみが足りない
混ぜこみが足りない
まぶしこみが足りない
ぬらしこみが足りない
蒸しこみが足りない
焼きこみが足りない
ゆでこみが足りない

 スポーツ関係では(これも一部重複するが)

打ちこみがたりない(野球、テニス、ゴルフ、その他)
泳ぎこみがたりない(水泳)
投げ込みがたりない(野球の投手)
走りこみがたりない(野球、マラソン、その他)
踏みこみがたりない(相撲、剣道)

学習関係では(これも一部重複するが)

歌いこみがたりない
描きこみがたりない(絵画)
書きこみがたりない
きたえこみがたりない
調べこみがたりない
弾きこみがたりない(ピアノ、ギター、その他)
踏みこみがたりない(比喩的)
読みこみがたりない

 他の分野でも他にまだまだありそう。

しかしながら、 <すっかり xx する> 、<相当十分に xx する>にはほかの言い方がかなりあり、言い換え可能もあれば(意味が、ニュアンスが微妙にちがう)、ダメなのもあり、これは背後には<こむ>、<こめる>の本来の意味が残っているためだ。

xx あげる、あがる
xx きる
 xx つくす、つきる
 xx 果たす、果てる

これらと<こむ>の意味の比較はこれまた<きりがない>ようなので、次の意味に移る。


2)<xx の中に入(はい)る、入(い)れる>の意味

冒頭で取り上げた<こむ>の複合動詞でこの意味があるのは

上がりこむ、編みこむ、入(い)りこむ、植えこむ
打ちこむ <xx を yy に打ちこむ>の場合
埋めこむ 、追いこむ、送りこむ、押しこむ、落ちこむ
覚えこむ  <頭(記憶)に入れる>の意がある。
織(お)りこむ
折りこむ   <xx を yy に折りこむ>の場合。チラシを新聞に折りこむ。

掻きこむ(めしを掻きこむ)
書きこむ <xx を yy に書きこむ>の場合。 クエスチョンマーク(疑問符)を余白に書きこむ。
駆けこむ、囲いこむ、担(かつ)ぎこむ、切りこむ、食いこむ、組みこむ、くるみこむ、蹴りこむ、
こすりこむ、ころがりこむ

差しこむ、さすりこむ、誘(さそ)いこむ、忍びこむ、しまいこむ、しみこむ、吸いこむ、滑(すべ)りこむ、住みこむ
すりこむ、攻めこむ、染めこむ

たたきこむ、たたみこむ、ためこむ、たらしこむ、たれこむ、つぎこむ、つけこむ、漬(つ)けこむ、
包みこむ、積みこむ、詰めこむ、連れこむ、溶かしこむ、溶けこむ、どなりこむ、泊りこむ、取りこむ

流しこむ、流れこむ
投げこむ <xx を yy に<xx を yy に書きこむ>の場合。 小石を小川に投げこむ。
なぐりこむ、なだれこむ、逃げこむ、縫いこむ、塗りこむ、ねじりこむ、ねりこむ、のめりこむ、飲みこむ
乗り込む
運びこむ、挟みこむ

走りこむ  <xx が yy に走りこむ>の場合。
入(はい)りこむ、はまりこむ、はめこむ、ひっこむ、吹きこむ、ぶちこむ、踏みこむ、ほうりこむ、彫、掘(ほ)りこむ

舞いこむ、巻きこむ、まぎれこむ、混(ま)じりこむ、迷い込む
丸めこむ <xx が yy に丸めこむ>の場合。 焼き芋(やきいも)を新聞紙にまるめこむ。
持ちこむ

割りこむ

以上は自動詞、他動詞を分けていない。 自動詞、他動詞いずれにしても<xx の中に入(はい)る、入(い)れる>の意味があるモノ。判断基準は文法的に<xx が yy に zz こむ>(自動詞)、<xx を yy に zz こむ>(他動詞)が成り立ち意味があるモノ。日本語ではいずれの動詞も<こむ>がつているが、英語ではこうは行かない。すべて<動詞 + in>、<動詞 + into>ですむほど間単ではない。また、逆の見方をすると、<動詞 + in>、<動詞 + into>の英語を日本語に訳すときに<こむ>を生かした方がいい場合でも簡単に、中立的な<xx に入(はい)る、入(い)れる>と訳しがちだ。次の<xx 入(はい)る>、<xx 入(い)れる>となりがちなのだ。
 

以上を<入(はい)る>、<入(い)れる>で置き換えてみる。

上がり入(はい)る   あまり聞かないがよさそう。
編み入れる
入(い)り入(はい)る   ダメ
植え入れる
打ち入れる
埋め入れる
追い入れる
送り入れる
押し入れる
落ち入(はい)る    ダメ   落ち入(い)る -->陥(おちい)る
覚え入れる
織(お)り入れる
折り入れる

掻(か)き入れる(めしを掻き入れる)
書き入れる
駆け入(はい)る    ダメ
囲い入れる 
担(かつ)ぎ入れる
切り入(はい)る ダメ、  <切り入れる>もダメ。  <切りこむ>は自 / 他動詞。
食い入(はい)る  ダメ   <食い入(い)る>慣用用法がある。<食い入るように見る>
組み入れる
くるみ入れる
蹴り入れる
こすり入れる    ほぼダメ
ころがり入(はい)る  ほぼダメ  

差し入(はい)る  ほぼダメ   <差し入れる>はOK。 <差しこむ>は自 / 他動詞
さすり入れる    ほぼダメ
誘(さそ)い入れる
しまい入れる
しみ入(はい)る  ダメ  --> しみ入(い)る
吸い入れる
滑(すべ)り入(はい)る  ほぼダメ
住み入(はい)る   ほぼダメ
すり入れる    ほぼダメ
攻め入(はい)る  <攻め入(い)る>が普通。
染め入れる

たたき入れる  
たたみ入れる  ほぼダメ
ため入れる    ダメ
たらし入れる
たれ入(はい)る  ダメ  たれ入れる ダメ (-->たらしいれる) <たれこむ>は自 / 他動詞
つぎ入れる
つけ入(はい)る  ダメ --> つけ入(い)る
漬(つ)け入れる  ダメ
包み入れる    ほぼダメ
積み入れる
詰め入れる   ダメではないがややおかしい。<詰め入(い)る>は聞くが、これは自動詞。
連れ入れる   ダメ
溶かし入れる
溶け入(はい)る   ダメ  --> 溶け入(い)る
どなり入(はい)る  ダメ
泊り入(はい)る   ダメ
取り入れる

流し入れる
流れ入(はい)る   ダメ
投げ入れる
なぐり入(はい)る   ダメ
なだれ入(はい)る   ダメ
逃げ入(はい)る    ダメ 
縫い入れる
塗り入れる   ダメ
ねじり入れる
ねり入れる
のめり入(はい)る   ほぼダメ
飲み入れる       ダメ
乗り入(はい)る   ダメ

運び入れる
挟み入れる      ほぼダメ
走り入(はい)る     場合によってはOK
入(はい)り入(はい)る   ダメ
はまり入(はい)る   ダメではないがややおかしい。 
はめ入れる
ひっ入(はい)る、引き入(はい)る    ダメ
吹き入れる
ぶち入れる    ダメ
踏み入(はい)る    ほぼダメ。 <踏み入れる>となる。これは<xx 入れる>だが自動詞。
ほうり入れる
彫、掘(ほ)り入れる

舞い入(はい)る    ダメ
巻き入れる       場合によってはOK
まぎれ入(はい)る  ほぼダメ 
混(ま)じり入(はい)る  ほぼダメ 
迷い入(はい)る   ダメ
丸め入れる     ほぼダメ  <まるめこめる>慣用が主。

割り入(はい)る

以上のOK,ダメ判断は個人的な意見だ。 

a)<入(い)り入(はい)る>、<入(はい)り入(はい)る>はナンセンスのようだ。

b) 概して自動詞は<入(はい)る>での置き換えはダメなものが多いが、<入(い)る>ならいい場合が多い。かなり複雑。

落ち入(はい)る   ダメ   落ち入(い)る -->陥(おちい)る。 ただし<落ちこむ>には慣用用法がある。

駆け入(はい)る    ダメ  <駆け入(い)る>もダメ
 
食い入(はい)る  ダメ   <食い入(い)る>慣用用法がある。<食い入るように見る>。ただし<食いこむ>とは意味が違う。

ころがり入(はい)る  ダメ   <ころがり入入(い)る>もダメ。

差し入(はい)る  ほぼダメ。 <差し入(い)る>もダメ。 

しみ入(はい)る  ダメ  --> <しみ入(い)る>はOK。岩にしみ入るせみの声。<岩にしみこむせみの声>も即物的だが悪くはない 

滑(すべ)り入(はい)る  あまり聞かないがよさそう。 <滑り入(い)る>もダメ。<滑りこむ>はやや慣用的な言い方だ。

住み入(はい)る   ほぼダメ。  <住み入(い)る>もダメ。

つけ入(はい)る  ダメ --> つけ入(い)る

溶け入(はい)る  ダメ --> 溶け入(い)る

泊り入(はい)る   ダメ  <泊まり入(い)る>もダメ

なぐり入(はい)る   ダメ  <なぐり入(い)る>もダメ

なだれ入(はい)る   ダメ  <なでれ入(い)る>はよさそう。

逃げ入(はい)る    ダメ   <逃げ入(い)る>はよさそう。

 のめり入(はい)る   ダメ   <のめり入(い)る>もダメ。<のめりこむ>は慣用的な言い方だ。<のめる>という動詞もほとんどきかない。<のめる>は<のる(伸る)>関連の語で、意味も<のる(伸る)>(体を伸ばす、そらす)と関連ありそう。<つんのめる>という動詞がある(関東方言か)。

乗り入(はい)る   ダメ   <乗り入(い)る>もだめ。<乗り入れる>はいいが、これは他動詞で<乗りこむ>とは意味が違う。<乗りこめる>は<乗りこむ>の可能形だ。

はまり入(はい)る   ダメではないがややおかしい。 <はまり入(い)る>も聞かない。<はまりこむ>は慣用的な言い方が主。

踏み入(はい)る   ほぼダメ。<踏み入(い)る>ならよさそう。<踏みこむ>は慣用的な言い方が主。

舞い入(はい)る    ダメ  <舞い入(い)る>はよさそう。<舞いこむ>の意に近い。

まぎれ入(はい)る   これはよさそう。<まぎれ入(い)る>もダメではないだろう。ただし<まぎれこむ>にはかなわない。

迷い入(はい)る   ダメ   <迷い入(い)る>もほぼダメ。

---
どなり入(はい)る  ダメ
なぐり入(はい)る  ダメ

この二つは<どなりこむ>、<なぐりこむ>に物理的な<入(はい)る>の意味がうすく、慣用的な言い方だ。

c)一方他動詞は<入(い)れる>での置き換えがOKのものが多い。

編みこむ - 編み入れる   OK
植えこむ - 植え入れる   あまり聞かないがOKのようだ。
打ちこむ - 打ち入れる   OK  慣用用法の<xx に打ちこむ>は自動詞
埋めこむ - 埋め入れる   OK
追いこむ - 追い入れる   OK
送りこむ - 送り入れる    あまり聞かないがOK
押しこむ - 押し入れる    OK <押入れ>に布団を押し込む
覚えこむ - 覚え入れる    あまり聞かないがOKとする。
織(お)りこむ - 織り入れる  OK
折りこむ - 折り入れる     OK

掻(か)きこむ(めしを掻きこむ) - 掻き入れる(めしを掻き入れる)  あまり聞かないがOK
書きこむ - 書き入れる    OK
囲いこむ - 囲い入れる    OK
担(かつ)ぎこむ - 担ぎ入れる   OK
組みこむ - 組み入れる   OK
くるみこむ - くるみ入れる   OK
蹴りこむ - 蹴り入れる   OK
こすりこむ - こすり入れる    ほぼダメ

差しこむ - 差し入れる   OK  <xx がyy に差しこむ>は自動詞
さすりこむ - さすり入れる    ほぼダメ
誘(さそ)いこむ - 誘い入れる   OK
しまいこむ - しまい入れる    OK
吸いこむ - 吸い入れる     OK
すりこむ - すり入れる   ほぼダメ
染めこむ - 染め入れる   OK

たたきこむ - たたき入れる   OK
たたみこむ - たたみ入れる  ほぼダメ
ためこむ - ため入れる    ダメ
たらしこむ - たらし入れる   OK
つぎこむ - つぎ入れる   OK
漬(つ)けこむ - 漬け入れる  ダメ
包みこむ - 包み入れる  OK
積みこむ - 積み入れる  OK
詰めこむ - 詰め入れる   ダメではないがややおかしい
連れこむ - 連れ入れる   ダメ
溶かしこむ - 溶かし入れる  OK
取りこむ - 取り入れる   OK

流しこむ - 流し入れる   OK
投げこむ - 投げ入れる   OK
縫いこむ - 縫い入れる   OK
塗りこむ - 塗り入れる   ダメ
ねじりこむ - ねじり入れる  OK
ねりこむ - ねり入れる    ダメではないがややおかしい
飲みこむ - 飲み入れる    ダメ

運びこむ - 運び入れる     OK
挟みこむ - 挟み入れる     ほぼダメ
はめこむ - はめ入れる    OK
吹きこむ - 吹き入れる     OK   <吹きこむ>は<xx が yy に吹きこむ>で自動詞。
ほうりこむ - ほうり入れる  OK
彫、掘りこむ - 彫、掘(ほ)り入れる  ダメではないがややおかしい

巻きこむ - 巻き入れる   場合によってはOK
丸めこむ - 丸め入れる  ほぼダメ  


以上もOK,ダメ判断は個人的な意見だ。 ただしOKのものでもニュアンスの違いはある。では、<ニュアンスの違い>とはなにか? 


3)無理やり、力ずくで、抵抗を押し切って<xx の中に入(はい)る、入(い)れる>、さらにはもっと一般的に無理やり、力ずくで、抵抗を押し切って<する>の意。

<入(はい)る>、<入れる><ある囲まれた空間の中に移動する、させる>という基本的に物理的な動作を表わす動詞で。<副詞的な意味>はない。 <副詞的な意味>を出すには副詞を加えることになる。

ゆっくり(と) 入(はい)る、入れる
のんびり(と) 入(はい)る、入れる
速く 入(はい)る、入れる
あわてて 入(はい)る、入れる

遅れて 入(はい)る、入れる
早く 入(はい)る、入れる

すんなり(と) 入(はい)る、入れる


<こむ>、<こめる>は無理やり、力ずくで、抵抗を押し切って<ある囲まれた空間の中に移動する、させる>の意がある。

泥棒と強盗は違う。

泥棒は<家に入(はい)る>でもいいが、<家に忍びこむ>という言い方たある。強盗は<家に入る>、、<家に忍びこむ>というよりは<家に入りこむ>の方が感じがでる。もっとも日本語では<押し入(い)る>という言い方が普通だ - 強盗が家に押し入(い)る。おもしろいには英語で<強盗が家に押し入る>をどういうかだ。おそらく

A burglar breaks into a house.

だろう。日本語と同じで A burglar inter a house. は可能だが、凄み(すごみ)がない。A burglar breaks into a house. の to break はこの場合<やぶって入(はい)る>で<入る>の意があるのだ。あるいは前置詞の into が<入る>の意をに担(にな)っているとも言える。<こむ>が<入る>の意をに担(にな)っているのと同じだ。英語の話が続いてしまうが。<車が壁に突っ込む>(車が壁に衝突する)は何というか?おそらく

A car run (smash) into a wall.

だろう。これも to run (smash) に<壁の中へ走る、当たる>の<壁の中へ>の意が在るわけではなくinto が<入る>の意をに担(にな)っているといえる。したがって英語ではinto が<入る>、さらには<こむ>の意があると言えよう。このような見方をすると、into は前置詞だが副詞的な役割もしているといえる。何度か述べたように、<xx こむ>はいわば前にある連用形の主動詞の様態を示す副詞のように使われる、のと同じだ。これまた、ここがこのポストのポイント。


少しそれたが話を続ける。


打ちこむ、埋めこむ、押しこむ、こすりこむ、差しこむ、さすりこむ、すりこむ、たたきこむ、詰めこむ、塗りこむ、ねじりこむ、ねりこむ、挟みこむ、はめこむ、彫、掘りこむ

以上の動作、作業をするには力を加える必要がある。 <すんなり>とはいかないのだ。また必ずしも<xx の中(空間)に入る、入れる>の意がなくてもいいのがある。

打ちこむ、こすりこむ、さすりこむ、すりこむ、たたきこむ、塗りこむ、ねじりこむ、ねりこむ、挟みこむ、彫、掘りこむ

以上の動詞の対象は空間と言うより物質だ。


<こめる>は<囲まれた空間に入れる>と関連して <囲まれた空間をつくる>動詞につき、<囲む>、<囲う>、<包む>、<くるむ>、<巻く>関連の動詞との相性がいい。この場合の<こむ>は<入れる>で置き換えられない。

囲いこむ    <囲い入れる>は変だ。
包みこむ    <包み入れる>とはまず言わない。
くるみこむ   <くるみ入れる>ともまず言わない。
巻きこむ    <巻き入れる>とはまず言わない。
たたみこむ   <たたみ入れる>とはまず言わない。
折りこむ     <折り入れる>とはまず言わない。


また受身形、被害形は

囲いこまれる
巻きこまれる

さらに意味は発展(派生)して

こまる‐ 囲いこまれれた状態にいる、置かれる
こもる‐ 自らを囲いこまれれた状態に置く - 閉じこもる


4)<詰(つ)める>の意

<こめる>は<詰める>に似た意がある。<誠意(まごころ)を込める>は<誠意(まごころ)を詰める>で言い換えられるが、これまたニュアンスがちがう。

卵焼きを弁当箱に詰める   <卵焼きを弁当箱にこめる>はダメ
衣服をスーツケースに詰める  <衣服をスーツケースにこめる>はダメ
出来た酒を樽(たる)、瓶(びん)に詰める <出来た酒を樽、瓶にこめる>はダメ

特定の決められた器(うつわ)に何かを入れる場合は<詰める>になるようだ。上記のように無理やり入れる場合は<詰めこむ>になる。誠意(まごころ)は特定の器に<詰める>わけではない。

5)<少なくなる(げんしょう)、なくなる(消滅)>の意味

使い込む
消しこむ



sptt

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