Saturday, November 15, 2014

ドイツ語の接頭辞(prefix)- 13<ein->


ドイツ語の接頭辞(prefix)の第13弾で<ein->について調べてみる。このポストは前回のポスト ” <こむ>、<こめる>、<こまる>、<こもる> ” と大いに関係がある。相良独和大辞典の解説は、

"
動詞の分離前綴としてアクセントを有し、” 内への方向、状態の変化、破壊、減少、内在 ” などの意を表わす。

"

と簡単だ。破壊、減少を<内への方向>への<状態の変化>とみれば、内在も含めて矛盾なく統一されている(<創造、増加> は<外への方向>への<状態の変化>になるか)。<状態の変化>は動詞に関してはきわめて一般的な表現で、

1)物理的な<状態の変化>: 動く、移る
2)化学的な<状態の変化>: 溶ける、固まる
3) 生物学的な<状態の変化>: 生まれる、成長する、死ぬ
4)認識的な<状態の変化>: 知る、わかる、忘れる
5)感覚的な<状態の変化>: 見える、聞こえる、匂う
5)感情的な<状態の変化>: 笑う、怒(おこ)る、泣く

など、際限がなく、<変化がない>ことを示す動詞(存在を表わす動詞-ある、いる、無変化を表わす動詞-とどまる、残る、形容詞的、形容動詞的な動詞)以外はほとんどの動詞に当てはまりそうで、そうなると<ein->の役割はなにか? いわゆる<強調>か? 調べてみればわかるが、<ein->に<強調>の役割はほとんどない。<状態の変化>はモトの動詞の<強調>ではなく、名詞、形容詞を動詞に変える働きだ。

名詞の場合は複雑で簡単に<XX(名詞)になる>ではない。



小さな町が都会になる。

<都会>はあくまで体言(名詞)だ。都会の属性を示そうとすれば<小さな町が都会のようになる>となる。

問題が複雑になる。

複雑になる - 1)<体言(名詞)+になる>とも、2)形容動詞<簡単な>の連用形<複雑に>+<なる>とも考えられる。複雑は<複雑なこと>と見れば抽象体言(名詞)になるが<複雑>には属性がともなうので形容詞的でもある。

形容詞の場合は<XX く(形容詞の連用形)になる>でいい。

以上の他に、<ein->動詞を調べているうちに予想外に発見をした。

1) <ein->は<xx 込む>,<xx 込める>

相良独和大辞典には<ein->がつく動詞はなんと500以上あるが、日本語動詞による解説のなかで<込む>がつく複合動詞の引用が100語ほどある。明らかに<ein->と<込む>は意味上関連が深いといえる。<ein->、<込む>とも主要な意味は<内への方向>だ。ただし<ein->は字面(じづら)から(英語の in または into に相当)<内への方向>というのがわかるが、<込む>は字面から<内への方向>の意味わかりにくい。

これについては前回のポスト ” <こむ>、<こめる>、<こまる>、<こもる> ”  にかなり詳しく書いたので、ヒマと興味のある人はこのポストを読んでください。もっとも<xx 込む>,<xx 込める>の<xx>の動詞を探すのに相良独和大辞典の<ein->動詞項目は大いに役立った、というのが本当のところだ。英語の辞書では<in->(m、p の前では<im->になる)が頭にくる動詞はドイツ語の <ein->動詞に比べさほど多くない。また、英語では形容詞が多いが否定の<in-(im-)>もある。

2)einleuchten

英語訳:to be clear, to be evident (Collins German-English Dictionary)

英語訳は動詞ではなく形容詞。 何か変だ。動詞は形容詞ではないのだ。動詞を使えば to become (get) clear, to become (get) evident だが、当然意味は違ってくる。形容詞の場合は<状態>を示すが、動詞を使った場合は<状態の変化>を示すことになる。leuchten は自動詞で to shine、to glow、 to flash (かがやく、照る、光る)の意味があるが<明るい>(形容詞)の意味はない。<かがやく>、<照る>、<光る>は光がないモノ、場所が<かがやくようになる>、<照るようになる>、<光る用ようになる>とすれば動詞的だが、<かがやいている>、<照っている>、<光っている>はとすれば形容詞的、形容動詞的な動詞になる。特に be + xx ing で現在進行形になる英語と違って現在形が現在進行形を兼ねるドイツ語(leuchten)や日本語では<かがやく>、<照る>、<光る>は動詞的な動詞にもなり、形容詞的、形容動詞的な動詞にもなる。(文末参照)

日本語訳: xx がわかる (相良独和大辞典)

<わかる>は動詞のようだが<わたしはこの問題がわかる>は<象は鼻が長い>の<長い>と同じ形容詞とも、対格の<が>をとる他動詞と考えられる。活用は動詞型だ。

中国語訳: 使明白(某インターネット独中辞典) <明白にする>の意だろう。

<明白>は元来形容詞だろうが、中国語の融通無碍(ゆうずうむげ)さから、名詞にも動詞にもなるようで、

我明白。 

はよく耳にする。普通目的語はない、省かれる。意味は<(私は)わかる、わかった)>で<明白>は動詞のように見える。相良独和大辞典には einleuchten の次の例文がる。

Das mir nicht einleuchten.

私にはそれがどうしてもわからない。

日本語訳の方はもっと簡単にいえば、<私はそれがわからない>だ。中国語でいえば<我不明白>だ。

 das mir nicht einleuchten

これは原形の einleuchten が使われているのでは完全な文ではない。das は主語ではなく目的語。主語が複数で、時制が現在ならこれ(einleuchten)でいいが、そうでなければ einleuchten を主語の単複(この場合性別は関係ない)、時制で適当に(正しく)変化させないといけない。こも例文のようなような使い方は、日本人はもちろん、英語を母国語とする人、中国人にはなじみが薄く、使いこなすには相当<なれ>が必要だ。さて、日本語の方だが、このドイツ語に少し近づけると

<私にはそれがわからない>

となる。この場合<私>はあきらかに主語ではなく、いわゆる主題のようだが(私についていえば)、それでは<わかる>はなにか? 自動詞か、他動詞か?はたまた形容詞か? 中国語の<明白>に自動詞の働きがあるかどうかわからないが、次のように考えることも出来る。某インターネット独中辞典の einleuchten の中国語訳は<明白>でなく、<使明白>だ。


XXが我を明白にする。(XX使我明白)

ここでは主語が明示されていないが、明白は<明らかな状態を示す>形容詞でおかしくない。

日本語にもどって

私はそれがわからない --> 私にはそれがわからない

さらに

にはそれがわからない --> 私それがわからない

とかえてみる。 意味は通じる。<私それがわからない>の<私>はいったい何だ?<わからない>はいったい何だ? ここでドイツ語の

 das mir nicht einleuchten

にもどってみる。 <私>は mir に似ている。<わからない>は nicht einleuchten に似ている。だがeinleuchten は不定形動詞(英語でいう動詞の原形)に注意。 das mir nicht einleuchten は文ではない。日本語の方は短いが、れっきとした文だ。

<わからない>は、einleuchten の英語訳のように形容詞と見ることもできる。この場合は否定なので
not clear, not evident。

あるいは

xx が<私>それをわからなくする(している)

となる。なんとも変な日本語だが、 理論的ではある。


結論としては<ein->にはこのような働き、使役というよりは因果関係の<因>の働きだ。言い換えればば<xx の状態にする>、さらに言い換えればば<状態の変化>をおこす、もたらす、の意があることになる。<おこす>、<もたらす>は<果(結果>を示す。

einleuchten のような使われ方の<ein->動詞は数は多くないが他にもある。


<ein->自体が破壊、減少を示すれいはなく、破壊、減少関連の動詞について破壊、減少の<状態の変化>をしめしているが、例はさほど多くない。



日本語(大和言葉)を見ると

破壊 - 物理的には、こわす(こわれる)、やぶる(やぶれる)、つぶす(つぶれる)、が代表でさらに、きずつける、切る、くずす、裂(さ)く、割る、などがある。化学的には、溶(と)ける、朽(く)ちる、腐(くさ)る、などがある。以前に<破壊のやまとことば>で検討したことがある。(spttやまとことばじてん<破壊のやまとことば>参照)

減少 - へる

<へらす>、<へる>は複合動詞が多そうだが、意外と少ない。

するへらす、すりへる
使いへらす、<使いへる>はほとんど聞かない。
(くつを)履(は)きへらす、<履きへる>もあまり聞かない。
鉛筆を(鉛筆の芯を)書きへらす、は言いそうだが、これもあまり聞かない。

少し考えると

(衣服を)着へらす   
(水、酒を)飲みへらす
(クッキーを)食べへらす
(xx を)取りへらす

などがあってもよさそうだが、このようには言わない。

<(衣服を)着古(ふる)す>と言うのがあるが<着へらす>とはニュアンスが違う。もっとも衣服は<着古す>とは生地(きじ)が<すりへる>ほど着ることだ。


sptt
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文末参照

(Collins German-English Reverso)

leuchten

   leuch•ten      vi  
a    [+Licht]   to shine  
[Flammen, Feuer, Lava, Zifferblatt]  
to glow  
(=aufleuchten)  
to flash
b    [Mensch]  
mit einer Lampe in/auf etw ($) leuchten      acc   to shine a lamp into/onto sth  
musst du mir direkt in die Augen leuchten?      do you have to shine that thing straight into my eyes?  
kannst du (mir) nicht mal leuchten?      can you point or shine the lamp or   (mit Taschenlampe)   the torch   (Brit)  or flashlight (for me)?  
leuchte mal hierher!      shine some light over here 






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