Sunday, November 2, 2014

<払う>は<支払う>だけではない


ドイツ語の接頭辞<ab->相当の日本語動詞-5

<しはらう>が<支払う>と書くが、<支>は変な当て字でもとは大和言葉の<する>の連用形<し>で<する>+<はらう>だ。この<はらう(払う)>は<売り払う>の<払う>で<し>+<果たす>、<尽くす>、<切る>、<終える>のような意味だ。<する>は古語に近いが<なす>という言い方があり、<なしはらう>ともいえる。関東方言では<なす>だけで<借金を返す>の意がある。<はらう>は多義語で、手もとの辞書によると四つの少しずつ違った意味がある。相当こなれた大和言葉と言える。

1)<火の粉をはらう>ような動作の<はらう>

払い落とす - 飛んで来る火の粉(蜂)を払い落とす。
払いのける
振り払う

(衣服の) ホコリを払う
(相撲の決まり手)すそ払い、露(つゆ)払い
(剣道で)相手の竹刀(しない)を払う(打ち払う)

2) 分離する、取り除く (ドイツ語の接頭辞<ab->の第一、第二義だ。)

厄(やく)払い - 関連語に<お払い箱>がある。

追い払う - 追っぱらう (関東方言か)
掻(か)き払う --> かっぱらう (関東方言か)。<掻く>ような動作で無理やり< 分離する、取り除く>だ。
取り払う  - 取っぱらう (関東方言か)

この<分離する、取り除く>の意の<はらう>はドイツ語の接頭辞<ab->に似てさらに多義語化しており、すっかりする、終える、(ドイツ語の接頭辞<ab->の何番目かの意味だ)。場合によってはすっかりなく / なるなくす、の意味もある(これも<ab->の何番目かの意味だ)。

(部屋を)明(あ)け払う
売り払う - 売っぱらう (関東方言か)
出払う - 出っぱらう (関東方言か)
引き払う
焼き払う

3)支払う

払い込む
払いすぎる
払い離す - 払いっぱなし(関東方言か)にする。
払い戻(もど)す

4)対処すべきものに対して積極的な心構えをする


細心の注意をはらう
考慮をはらう
万全の努力をはらう

このやや長い説明の意味は蛇足だろう。<はらう>自体にこのような意味はなく、<細心の注意>、<万全の努力>の方にこの意味が関係しているのだ。しいて言えば2)との関連で、すっかり(まんべんなく)する + 1)の<はらう>の基本的な動作の意味だ。


さて、<はらう>の複合動詞を調べてみる(すでに紹介したものを含む)。

(部屋を)あけ払う
打ち払う
売り払う
追い払う
切(斬)り払う
し(支)し払う
出はらう
取りはらう
掃(は)きはらう
吹きはらう
拭(ふ)きはらう
振りはらう
焼きはらう
----
払い合う (割りカン)
払い切る
払い込む
払い過ぎる
払い足りない
払いのける
払い戻す
払いよける


推測の域をでないが<払う>は<掃(は)く>、<拭(ふ)く>、<吹(ふ)く>、<振(ふ)る>、さらには<剥(は)ぐ>、<はずす>、<はじく>、<はねる>、<はずむ>、<離す>(は+なす)などの<は行>動詞で関連がありそう。


<払う>関連<は行>動詞の他動詞 / 自動詞ペア

剥ぐ - 剥げる、頭(の毛)禿(は)げる、剥がれる
はじく - はじける  <爆破する>(自動詞、他動詞両用)に相当する適当な大和言葉がないが<はじけとぶ、とばす>
はずす - はずれる
離す - 離れる
---
振る - 振れる、触れる(他動詞のようだが、XX に触れる、で自動詞あつかい>



sptt









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