Tuesday, October 28, 2014

日本語の自動詞、他動詞-16、自動詞->他動詞位相変換公式 -1


このポストは<sptt やまとことばじてん>のポスト ” カンニング、<のぞく>、<うかがう>について ” の末尾参照を、内容が文法的要素が多いので発展させたもの。

ドイツ語の非人称(不特定)代名詞の es について少し考ええみる。英語でも非人称(不特定)代名詞 it がある。ドイツ語の es ほどは活躍しないが、

It rains. It is raining.

と いう言い方があり、これは雨がふれば必ず使う、it の代表的なの使われ方だ。なぜ it が使われるかというと、雨はふるものだが、何か、誰かが<雨をふらしている>と考えるのは決してとっぴな考え方ではない。何か、誰かは不特定だが存在して いるのだ。to rain という動詞はこれで<雨がふる>の意がある。Rain でいいのだが、これでは複数の何か、誰かが主語になる。単数であれば、Rains となる。だが英語では叙述文は主語が必要なのだ。なぜ必要かというと、動詞は人称変化するのだ。<雨がふる>という意味だけをつたえるなら it はなくてもいいのだが必要なのだ。


英文法で受身形と言うのを必ず学ばされる。

1)This window was broken by Taro yesterday.

この窓はきのう太郎に(よって)こわされた。

2)This window was broken by the typhoon yesterday.

この窓はきのう台風でこわされた。

以上の二例はほぼ同じ構造。ただし

<この窓はきのう台風によってこわされた>とはいえるが<この窓はきのう太郎こわされた> とはいえないので、少し違う。

例1)の主語は<この窓>で、< 太郎に(よって)>の<太郎>は主語ではなく、(窓をこわした)動作主といわれる。
例 2)も主語は<この窓>で、これも<台風で>の<台風>は主語ではなく、(窓をこわした)動作主といえそうだが、少しちがう。どこが違うかというと、太郎 の場合は意識的(意図的)にしろ無意識的(意図なし)にしろ、人の意識や意図がからんでくるのに対して、台風の場合は基本的に意識や意図がからんでこな い。ここに<台風こわされた>と軽く言える理由がありそうだ。

それでは次の他動詞<こわす>の受身形を自動詞<こわれる>で置き換え場合はどうか?

1)この窓はきのう太郎に(よって)こわされた。 --> この窓はきのう太郎に(よって)こわれた

2) この窓はきのう台風でこわされた。 --> この窓はきのう台風でこわれた

1)は翻訳調を出す以外はまったくダメだ。2)は<こわされた>よりもむしろ自然な言い方だろう。
<この窓はきのう台風でこわれた>の解釈だが、自動詞<こわれる>が使われているが<自然に>こわれたのではなく、因果関係が示されている。因果関係の示し方はほかにもいろいろある。

この窓はきのう台風によってこわれた。
この窓はきのう台風があってこわれた。
この窓はきのう台風のため(に)こわれた。

などが普通に考えられるが、英語流に

The typhoon broke his window yesterday.

台風がきのうこの窓をこわした。

といえないこともない。しかし普通の日本人であれば実際にはまずこうは言わない。<この窓はきのう台風でこわれた>が一番普通だろう。英語の to break は自動詞形もあり、

The window broke by (due to, because of) the wind yesterday.

と言えるが、まずこうは言わないだろう。

話がまたそれてきそうなので結論(今回の新たな発見)に戻る。

<この窓はきのう台風でこわれた。>を細かく詮索してみる。

<りんごが木から落ちる> の<落ちる>は自動詞で、ニュートン並みの観察力、洞察力(見抜き力)がない凡人は<なぜ、りんごが木から落ちる>とは問わないし、<なにが / だれが、りんご木から落とす>と発想の転換もしない。凡人から少し飛翔して次のように考えてみよう。

この窓はきのう台風でこわれた

<この窓>は<こわれる>と言う自動詞の主語だが動作(能動)主ではない。<この窓>は<台風でこわされた>のでいわば受動(作)主だ。この文は、自動詞文なので、動作(能動)主がないのだ。この表現、見方はニュートンのまね、発想の転換をして、あるいは見方を変えて、次のように言い換えられる。

何(なに)かが / 誰(だれ)かが、きのうこの窓を台風でこわした

この文は動作(能動)主が不明(不定)だがある(いる)ことになる。実際このような発想は、ニュートンではなくとも、古代人はしていただろう。一神教、多神教にかかわらず、神または神のようなもの、悪いことの場合は悪魔とか物の怪(もののけ)が<なにか / だれか>に相当する。

これは私にとっては新発見。さらに説明を加えれば、そして大げさにいえば<自動詞-他動詞位相変換公式>なのだ。

1)受身形の場合、主語は受動作(受動)主で、動作(能動)主が(by xx で)示されないことがある。
2)自動詞文の場合、主語はあるが、 動作(能動)主は示されない。
3) 自動詞文を他動詞文にするには、隠れた(不明、不定だ)動作(能動)主の<何か / 誰(だれ)か>を主語にする。自動詞文での主語は直接目的語になり<を>をとる。
4)上記の例文では原因、理由を示す<台風で>は自動詞文から他動詞文への変換後も変わらない。

もう少し例を調べてみる(予定)。


sptt

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