Monday, April 13, 2015
<ほど>とはいったい何か?
<ほど>は漢字で<程>と書くが、大和言葉のようなので<ほど>の方がいいだろう。意識はしていないが<ほど>ほど良く使う語はそう多くないだろう。
<ほど>ほど良く使う語はそう多くない。
はかなり込み入っている。 <ほど>が重なってしまうが
<ほど>ほど良く使う語はそれほど多くない。
とも言える。英語で言うと
We do not have so many words we frequently use other than "hodo." または
We do not have so many other words we frequently use than "hodo."
とでもなるか?
否定と比較が使われているが、二番目の下線付きほどに直接相当する英語の語はない。否定と比較に吸収されているようだ。さらには so も使われてている。あるいは
We do not have so many words like "hodo" which we frequently use.
でもよそう。like "hodo" は ”ほど” のように、となる。 ”ほど” は名詞みたいだが、like に相当する<ように>は副詞だ。<ほど>は副詞の働きもあるようだが like にそのままは相当しない。<ほど>とはいったい何か?すこし考えてみたが、これは極めておもしろい日本語の問題だ。<ほど>はこなれた日本語だけに慣用例も多い。
<ほど>の慣用例
なるほど <--- <なる>+<ほど>がなぜ<なるほど>の意味になるのか? この<ほど>はどういう意味か? こどもの遊び言葉に<なるへそ>というのがある。これは、なるほど-->なるほぞ-->なるへそ、の変化だろう。<ほぞ>>は<へそ>の古語だ。<ほぞをかむ>という表現がある。<なるへそ>はそれなりにおもしろいが、おとなになったら使わない方がいい。
ほどなく <--- <ほど+(が)+ない>がなぜ<ほどなく>の意味になるのか? この<ほど>はどういう意味か?
ほどよい、ほどよく <--- <ほど+(が)+よい>で、漢語での言い換えになってしまうが、具合がいいと、程度がいい、加減がいい、といった意味だ。
よほど <--- <よ+ほど>で、この<よ>は<よい>の<よ>も考えられるが、漢語の余(よ)だろう。漢語の余(よ)とすると<余程>は重箱読みになる。もっとも、<ほど>は、あとで検討するように、純大和言葉でない可能性もある。
ほどほど <--- <ほど>+<ほど>だが、前の<ほど>と後ろの<ほど>は意味が違うようだ。前の<ほど>は漢語を使ううことになるが<ある種の程度>を表わしているのに対し、後の<ほど>は何らかの限定を表わしているようだ。これからすると<ほどほどに>は<ある種の程度に何らかの限定を加えて>という長たらしい説明になるが、<ほどほど(に)>は<その程度が行き過ぎない(ように)>といった意味だ。副詞として使う場合は<ほどほどに>と<に>がつくようなので<ほどほど>は名詞(体言)か。<ほどほど>はこれ以外に
わたしの英語(の能力)はほどほどです。
という言い方がある。 <良くも悪くもない>といった意味のようだが、状況によってかなり能力の範囲に差がある。範囲は限定されているがかなり広範囲だ。言い換えると<範囲は広い>のだ。重宝で就職の面接向きと言えるが、いい加減とも言える。
<ほど>は漢字を使う場合<程>になるが、むしろ<度(ど)>の方が<ほど>に近い。過程、工程、旅程からは<ほど>が出てこない。一方、温度、高度、強度、速度、度量からは<ほど>が出てきそうだ。これらは物理学では大切な概念だ。<ほど>の<ど>はこの<度(ど)>の可能性がある。<ほ>がよくわからないが、接頭語、 接頭辞で処理はできる。大和言葉の形容詞を使えば
暖(温)かさ(暑さ、寒さ、熱さ)のほど
高さのほど
強さのほど
速さのほど
大きさのほど
になる。
ところで大和言葉では暖(温)かさ、高さ、強さ、速さ、大きさはもとの形容詞の暖(温)かい、高い、強い、速い、大きい、に<さ>がついて程度(ほど)をあらわす。したがって
気温のほど --> あたたかさ(暑さ、寒さ)
高さのほど --> 高さ
強さのほど --> 強さ
速さのほど --> 速さ
大きさのほど --> 大きさ
に簡素化できる。しかし<(の)ほど>は単なる飾りにみえるが、<高さ>と<高さのほど>は<ほど>がある分、意味がやや違う。漢語による言い換えになってしまうが<高さのほど>は<高さの程度、具合、加減>で、<程度>で代表すれば<高さのほど>は程度に注目(程度を強調)した言い方だ。形容全体をあらわす場合はいいとして、両極端(Max - Min)の間のいろいろな程度(ほど)がある。
テーブルの上にりんごが20ほどある。(20前後)
これは
テーブルの上にりんごが20くらいある。(20前後)
テーブルの上にりんごが20ばかりある。(20前後)
テーブルの上にりんごが20あたりある。(20前後)
テーブルの上にりんごが20あまりある。(20以上)
テーブルの上にりんごが20たらずある、とはまず言わないが可能だろう(20以下)
で言い換えられる。 これは形容詞ではなく特定の数(量)につく<ほど>だが、ある範囲を示している。<あたり>は<当たる>からすると<ちょうど20>になりそうだが、この<あたり>は<火、陽光(ひ)、ストーブにあたるの<あたる>だ。
数(量)の形容詞は<多い-少ない>だ。
<xx は多いほどよい>という表現はよく使う。英語は変な表現になる。
XX、the more the better.
the がよくわからないが、きわめて万能の as を使うと
as more as better
になるが、これは聞いたことがない。しかし、たとえば
Money, as we have more, it will be better (for us). (金は多いほどいい)
とはいえそう。比較は残る。<ほど>からすぐには、あるいはそのままでは比較が出てこない。<ほど>には隠された<比較>があるようだ。だが内容を少し詳しくみると、形式上は比較級がでてくるが、more と better の二つがあり、単純にAとBを比較するというよりは一方(A)と他方(B)の関係、相関関係をあらわしていると見ることができる。一方が増える(形容詞を使えば、多くなる)と、それに関連して他方も増える(多くなる)関係(この場合は比例関係)だ。the はもともどうして使われるようになったか調べていないが、相関関係を示す語/詞(副詞、接続詞)の意味を担(にな)っており、見た目と違って冠詞用法ではない。<ほど>はこの相関関係を一語であらわすのだ。
金は多いほどいい。
は念をいれて
金は多ければ多いほどいい。
と言う。これは<ほど>を使った慣用的な言い方だ。<多ければ>は口語では仮定形だ。動詞でも変わらない。
行けば行くほど、道がわからなくなった。
形容動詞の場合は
静かならば静かなほどいい。
<ほど>は体言(名詞)で連体形がつくので、形式化すれば
xx(形容詞、動詞 、形容動詞)仮定形 +<ば>、 xx (連体形)+<ほど>
となる。
金は山ほどある。
と
金は山のようにある。
はどこがちうがう。 <金は山ほどある>の方がこなれた日本語だろう。<金は山のようにある>は比喩表現でやや翻訳っぽい。<ように>を使うのでいわゆる直喩だ。一方<金は山ほどある>は単純に比喩表現とはいえないが比喩表現のようでもある。<ほど>のなかに比喩が隠されていると言えそう。この<山ほど>は<山のように大きな量>を暗示している。しかもこの<ほど>にはある種の<広がり>が感じなれないだろうか。そしてその<広がり>は<ほど>がある範囲の限定をあらわすとはいえ、それほどきつい限定ではないことによる。山より大きくても言いわけなのだ。この<ほど>の<広がり>に注目したい。
金はたまったが目標にはほど遠い。
これは
金はたまったが目標にはかなり遠い。
の意味に近いようだ。あるいは<広さのある遠さにある>とでもなるが、これは<かなり遠い>可能性が高い。<近い>といえば
その店は駅にほど近い。
という言い方がある。 <かなり近い>でも<すぐ近くにある>でもなく、<広さのある近さにある>の意のようだ。
今度の試験(の結果)のほどはどうですか?
という言い方がある。
今度の試験(の結果)はどうですか?
よりも直接的でなくなる。これは<ほど>の<限定範囲の広さ>によるようだ。
<ほど>は範囲を限定する言葉だが範囲は相当<広い>。
真偽(生死)のほどはわからない。
この<ほど>は範囲の限定というよりは二者択一がらみだが、真(生)に近いほうの範囲と偽(死)に近いほうの範囲と幅(広さ)を持たせると範囲の限定にならないこともない。
誠意(熱意、感謝)のほどを示す。
これも範囲でいいだろう。
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<こそあど>に付けてみる。
これほど
それほど、さほど
あれほど
どれほど
<このほど>は慣用語で<このたび>に近く時間に関した表現。さほどの<さ>は<さう>で<そう>の古語。例:されば=そうであれば)。 その他の<ほど>は大体<程度>をあらわすようだ。
これほど - こんなに
それほど - そんなに
あれほど - あんなに
どれほど - どんなに
と言い換えられそうなので<ほど=なに(何)> となるが、そうすると<ほど>は不定を示すことになる。この不定は細かく言えば<不定の程度>、<不定の量>だ。<どれほど>は<どれ>自体が不定(疑問は不定だ)。
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さて、<ほど>について大分ヒントがえられたので、始めの方の疑問に挑戦してみる。
疑問-1
なるほど <--- <なる>+<ほど>がなぜ<なるほど>の意味になるのか? この<ほど>はどういう意味か?
答え
<なる>は<xx が yy になる>で生成、変化をあらわす。生成、変化、特に変化は予想、予測に反する場合が少なくない。<予想、予測>と<現実>の差の範囲が<広い>ことを表現しているのではないか?
疑問-2
ほどなく <--- <ほど+(が)+ない>がなぜ<ほどなく>の意味になるのか? この<ほど>はどういう意味か?
答え
これは<時間の広さ>に及んだ表現だ。<時間の広さ、広がり>が<ない>で<ほどなく>になる。
別途検討-1
<ほど>ほど良く使う語はそう多くない。
日本語の<さ>は見事な対応に加えて、heat、weight、quantity ほどではないが抽象化がすすんでいるといえる。 ほどではないは別途検討。
検討結果
これはかなりややこしい、あるいはややこしく説明できる。
太郎は花子ほどかしこく(は)ない。
Taro is not so bright (clever*) as Hanako. (clever は往々にして<ずるがしこい>の意がある)
日本人ではなかなか口に出てこないが
Taro is as bright as Hanako.
という言い方がある。 <太郎は花子と同じようにかしこい>、<太郎は花子と同じくらいかしこい>、<太郎は花子と同じほどかしこい>と変な日本語で訳される。
文法用語では、覚える必要はないが、<同等比較>とういのがある。これが<同等比較>だ。<のように>、<くらい>、<ほど>は似ているが違いもある。(これも別途検討)
Taro is not so bright as Hanako.
はこの<同等比較>の否定なのだ。否定はややこしい。so があるが<太郎は花子ほどそうかしこく(は)ない>でもいい。肯定の同等比較は比較対象を入れ替えることができる。
太郎は花子と同じようにかしこい。 --> 花子は太郎と同じようにかしこい。
太郎は花子と同じくらいかしこい。 --> 花子は太郎と同くらいかしこい。
太郎は花子と同じほどかしこい。 --> 花子は太郎と同ほどかしこい。
入れ替えることはできるが、間違いでないということで、言っている内容は違ってくる。当たり前のことだが、<同等比較>の否定ではこうはいかない。
太郎は花子ほどかしこく(は)ない。 --> 花子は太郎ほどかしこく(は)ない。
さて、この<同等比較の否定>の<ほど>の意味はないか?言い換えてみる。
太郎のかしこさはは花子のかしこさほどではない。
これは<太郎のかしこさ>と<花子のかしこさ>と比較している。さらにはこれは<太郎のかしこさの程度>と<花子のかしこさの程度>を比較している、といえる。数、量的な比較は数えたり、計ったりしてできる。<かしこさ>の比較もテストの成績でできそう。こんどは<ほど>を使わずに言い換えてみる。
太郎のかしこさはは花子(のかしこさ)には及ばない。
<及ぶ>、<及ばない>は重要な観念でバカにできない。<及ぶ>、<及ばない>は対象がないといけない。この場合の対象は花子だが、正確には<花子のかしこさ>、さらには<花子のかしこさの程度>、またこの場合、さらに正確にいおうとすれば<花子のかしこさの程度の高い方の限度、Max>を対象とした比較ということになる。これだけの意味が<ほど>にあることになる。
別途検討-2
<のように>、<くらい>、<ほど>は似ているが違いもある。(これも別途検討)
検討結果
<のように>の<よう(古語はやう>は漢語の<様>由来だ。大和言葉では<さま>というのがある。<同じように>は<同じさまに>となる。<さま>は範囲を示すというよりは<目に見える様子>をあらわす。<山のようにある金>と<山ほどある金>の違いは上でのべた。
<くらい>は<おおよそ>の意では、<20くらい>と<20ほど>はほぼ同じような意味になる。程度の比較の意では
太郎くらいバカなやつはいない。
太郎ほどバカなやつはいない。
も大体同じような意味になる。<太郎のバカさの程度>基準にした発話だ。<ほど>も<広い範囲>というよりは<程度>だ。<ない>と否定になっているのがクセモノで、否定対象が<広い範囲>だと否定効果が薄くなるようだ。 少し言い換えてみる。
太郎くらいのバカはいない。 ほぼダメ。
太郎ほどのバカはいない。 OK。
太郎くらいのバカはいくらでもいる。 OK。
太郎ほどのバカはいくらでもいる。 ほぼダメ。
この違いはどこからくるのか?
<こそあど>に付けてみる。
これほど - こんなに OK
これくらい - こんなに ダメ
それほど - そんなに OK
それくらい - そんなに ダメ
あれほど - あんなに OK
あれくらい - あんなに ダメ
どれほど - どんなに OK
どれくらい - どんなに ダメ
kの<こそあど>では<ほど>は範囲とともに限度を示しているのに対して<くらい>は範囲は示せるが限度は示せないことをしめしている。<ほど>は英語で言えば no matter how xx に対応するのだが、<くらい>にはこの対応がない。
sptt
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