このポストは前回のポスト ”ドイツ語 の接頭辞(prefix) - 22 <hin, her>” と前々回のポスト<ドイツ語の副詞 hin と her - 2>の続編というか、補足編だが、接頭辞(複合接頭辞)の数が多いので番外編とした。とかく<hin, her>はむずかしいが、さらにこれに他の場所、位置、方向副詞がついた複合接頭辞がかなりある。<ドイツ語の副詞 hin と her - 2>で出てきた hinaus, heraus, hinein, herein だけでなく、hin と her に他の ab、an、auf、uber、unter などがついた複合接頭辞が分離前綴りとして動詞につく場合を調べてみた。 かなり長くなりそうだが、<hin, her>の理解に役立つと同時に、gehen、kommenなどの基本動詞の意味と日本語との違いの理解に役立つと思う。
A) hinaus, heraus, hinein, herein
hinaus, heraus, hinein, herein の四つは文字通りに訳すと次のようになる。
1) hinaus そちらの方に向かって外へ(に)
2) heraus こちらの方に向かって外へ(に)
3) hinein そちらの方に向かって内へ(に)、中へ(に)
4) herein こちらの方に向かって内へ(に)、中へ(に)
以上はそれこそ文字通りの訳で、独和辞典でこのように訳したら、独語はさておき日本語の能力を疑われる。意味は別としても、日本語としては長すぎるし、おそらくそのため決してこうは言わないのだ。それでは、これらが動詞と結びついた場合日本語ではどういう風になるかを調べてみた。相良大辞典に出てくる hinaus, heraus, hinein, herein が分離前綴りの動詞はそれほど多くはない。と前々回のポストで次のように書いた。
”
実際調べ てみると、解説の混乱の原因のひとつは自動詞と他動詞の区別を明確にしていないためではないか? という疑問が出てくる。また movement は運動というよりは移動ではないか。運動は必ずしも方向はいらないが移動は方向が、意識、無意識を問わず、からんでくる。 (今後の検討課題)
”
これは副詞(複合副詞か)の hinaus, heraus, hinein, herein についてだが、分離した場合には元の動詞を修飾する副詞のようになるので、基本的な<検討課題>は変わりないので、これらをふまえながら、調べた結果をまとめてみる。接頭辞の aus- と ein- はすでに調べてある。
1)ドイツ語の接頭辞(prefix) - 6 <aus->
相良大独和辞典の<aus->の解説の概要は次の通り。
”
分離動詞の前綴り。アクセントあり。
”外へ、外方”の意から転じてまた”活動あるいは状態の終了、完成、中止、除外、延長、発展、呈示、選択”などを意味する。
”
<aus->に相当する日本語は副詞では<外へ(に、で)>で、複合動詞を作る動詞では<出る>、<出す>だ。”外へ、外方”の意があるが、実際あったて見ると<転じた>意味が多い。ドイツ語の接頭辞(prefix) - 6 <aus->参照。
2) ドイツ語の接頭辞(prefix)- 13<ein->
相良独和大辞典(<ein-動詞>は約500もある)の解説は
"
動詞の分離前綴としてアクセントを有し、” 内への方向、状態の変化、破壊、減少、内在 ” などの意を表わす。
"
”内への方向”があるが、<状態の変化、破壊、減少、内在>はこれだけではよくわからない。日本語訳では<xx 込む、xx 込める>の複合動詞になる場合が少なくない。ドイツ語の接頭辞(prefix)- 13<ein->参照。
ドイツ語で副詞(接頭辞)が動詞と結びつく場合、日本語訳の特徴として<こなれた>日本語は複合動詞になりやすい。
1) hinaus そちらの方に向かって外へ(に)
2) heraus こちらの方に向かって外へ(に)
3) hinein そちらの方に向かって内へ(に)、中へ(に)
4) herein こちらの方に向かって内へ(に)、中へ(に)
以上は、例外はもちろんあるが、概して
1) hinaus 出て行く
2) heraus 出て来る
3) hinein 入って行く
4) herein 入って来る
の意味が基本的にある、あるいはこのような意味が内包されて(being implied)使われる。また、接頭辞 aus- と ein- とちがって、これら四つは、これまた例外はもちろんあるが、派生的な意味になるのは少なく、基本的に場所、位置、方向を示す。そして、くりかえしになるが、aus- と ein- と同じように日本語では複合動詞にした方が自然な日本語になる。
前回のポスト ”ドイツ語 の接頭辞(prefix) - 22 <hin, her>” でhin-、her- が分離前綴りの接頭辞として動詞につく場合をしらべてみたが、aus- と ein- ほど多くはなく、また hinaus, heraus, hinein, herein ほど場所、位置、方向性は強くないようだ。それだけに、かえって理解や使用方法の学習が難しい。意味的には微妙で、派生の意味は別として、 基本的には hin- = (to) there、そちらの方に、her = (to) here、こちらの方に、だが、日本語に訳した場合には<そちらの方に>、<こちらの方に>をそのまま言葉に出して言うと<うるさくなり>
hin- xx = xx (動詞の連用形)て行く、去る(去って行く)
her- xx = xx (動詞の連用形)て来る、寄る(寄って来る)
となる場合が少なくない。
前置きが長くなったが(実際には総論、結論でもある)、具体例を見てみよう。
1) hinaus- (内から外へ)出て行く - そちらの方に向かって外へ(に)
相良辞典にある hinaus- 動詞は約35個。主なものは次のとおり。
hinausbringen - 持ち出す 持ち出して行く(*1)
hinaiusdrängen - 押し出す
hinausfahren - 乗り物で出る
hinausführen - 連れ出す
hinausgehen - 外に出る (外に出て行く)
hinausjargen - 追い出す
hinauskommen - 出て来る (辞書どおり) (*2)
hinauslaufen - 走り出る (走り出て行く)
hinauslegen - 外に置く? <外へ出す>か?(外に出て置く、外に出して置く ?)
hinaussehen - 外を見る
hinaussetzen - 外に置く? <外へ出す>か?
hinausstreiben - 追い出す
hinausweisen - 出て行かせる、追い出す
hinauswerfen - 投げ出す(物理的に); 派生として、追い出す
hiausziehen - (外へ)引き出す; 派生として、伸ばす、延期する
辞書訳では hinaus-<出て行く>の<行く>がないが、<行く>を加えることはできるだろう。ただし<行く>を加えると元来他動詞のものが自動詞のようになってしまうようなので具合が悪い。
(*1)持ち出して行く
辞書訳では大体 hinaus-<出て行く>の<行く>がないので hin の意味が出てこない。<行く>を加えると<ちらの方に向かって(離れて)行く>の意が加わる。ただし<行く>を加えると元来他動詞のものが自動詞になってしまうようなので具合が悪い。
持ち出す (他動詞) --> 持ち出して行く (複合動詞としては他動詞、または自動詞か?)
押し出す (他動詞) --> 押し出して行く (複合動詞としては他動詞、または自動詞か?)
以下他動詞に関してはほぼ同じ。
(*2)
hinauskommen - 出て来る(辞書どおり)
hinaus の意味は<出て行く>なので hinauskommen =<出てくる(来る)>は変だ。解説が必要だろう。<末尾>参照
2) heraus- (外から内/中へ)出て来る - こちらの方に向かって外へ(に)
heraus- 動詞は4つの接頭辞のなかでは一番多い(約75個、多分)。主なものは次の通り。
herausarbeiten - 苦労して引き出す、作り出す to work out
herausbeissen - 噛(か)みついて引き出す
herausbekkomen - 取り出す to get (take) out, to find out, to figure out
herausbringen - 持ち出す、取り出す、抜き出す (典型的な他動詞)
herausfahren - 運び出す
herausfinden - 見つけ出す
herausgeben - 取り出して与える、引き渡す
herausgehen - ?
herauskommen - 出て来る(*2、末尾)
herauslegen - 外へ出す
herauslocken - おびき出す、誘(さそ)い出す locken = 誘う
herausmachen - 引き出す、取り出す、持ち出す (典型的な他動詞)
herausnehmen - 取り出す、えり(より)出す=選び出す
herausputzen - 飾り立てる putzen=きれいにする、磨(みが)く
herausreden - 言い出す
herausrücken - 押し出す rücken=動く(自動詞)、動かす(他動詞)
herausstellen - 外へ出す、外に示す
herausstoßen - 押し出す、つつき出す
herausstreichen - 外に伸ばす、差し出す
herausträgen - 運び出す
herausstreiben - 追い出す
heraustreten - 歩み出る
herauswaschen - 洗い出す
herausziehen - 引き出す
他動詞が多いが、<xx(動詞連用形) 出す>となる他動詞の場合、結果として<xx 出されて来る>ことになる。
hinaus-、heraus- とも日本語訳では<xx 出る>、<xx 出す>が圧倒的に多い。 以上の簡単な訳語で、微妙な意味、使い方(特に前置詞つき)は大き目の辞書で例文をあたって確かめてください。
3) hinein 外から内/中へ入って行く - そちらの方に向かって内へ(に)、中へ(に)
相良辞典にある hinein- 動詞は約30個。主なものは次の通り。
hineinarbeiten - 手をかけて入れる、はめ込む
hineinbringen - 持ち込む
hineindringen - 入り込む、押し入る
hineinfallen - 落ち込む(物理的な)
hineinfinden - sich hineinfinden xx の中に入る、甘んずる、順応する
hineinfressen - (食べ物を)飲み込む (のどの奥(の方)に入れる)
hineingehen - 入る、入って行く
hineinlegen - 中に入れる
hineinmischen - (中に)混ぜ入れる
hineinscahffen - 運び入れる
hineintun - 引き入れる
hineinzuiehen - 引き入れる
<入る>、<入れる>と並んで<込む>、<込める>が目立つ。<運び入れる>、<引き入れる>はそれぞれ<運び込む>、<引き込む>でもいい。<押し入れる>と他動詞があれば<押し込む>でいい。最後の herein はどうか。
4) herein 外から内/中へ入ってくる - こちらの方に向かって内へ(に)、中へ(に)
相良辞典にある hinein- 動詞は約35個。主なものは次の通り。
hereinbekommen - 手に入れる(与えられて入ってくる)、受け取る
bekommen は to be given で、<与えられる>。
こなれた日本語では<もらう>だ。
hereinbitten - 招(しょう)じ入れる
hereinbrechen - 入り込んでくる(来る)、襲(おそ)いかかる (to break in)、
突然起(お)こる(to break out)
hereindringen - 浸入して(入り込んで)来る
hereinfallen - 落ち込む(物理的な)、比喩的な意味もある。
hereingehen - 入って来る (*3、末尾)
hereinholen - 持って入って来る
hereinkommen - 入って来る (*3、末尾)
hereinregnen - 雨が入り込んで来る
hereinschauen - こちらの中を見る
hereinscheinen- 光が差し込む
hereinschlagen - 打ち込んで来る
hereinschnieen - 雪が入り込む
hereinziehen - 引き込む
日本語訳の複合動詞としては<入(はい)り込む>が目立つ。
<末尾>
(*2)
Collins German-Englishi Reverso
hinausgehen
hi•naus+ge•hen, sep irreg aux sein
1 vi
a
(=nach draußen gehen) to go out(side)
aus dem Zimmer/auf die Straße hinausgehen to go or walk out of the room/out onto the street
aus dem Zimmer/auf die Straße hinausgehen to go or walk out of the room/out onto the street
hinauskommen
hi•naus+kom•men vi sep irreg aux sein
a (=nach außen kommen) to come out(side)
ich bin den ganzen Tag noch nicht hinausgekommen I haven't been out(side) yet today
zu jdm aufs Land hinauskommen to come out to see sb in the country
この hinauskommen の例はインターネット辞書からコピーしたもので、実際こう言うのだろう。この hinausgehen と hinauskommen の違いはドイツ語の gehen、kommen を日本語の<行く><来る>への対応の観念から縁を切らないと説明できない。
hinausgehen の英語の説明で<to go or walk>の<to walk>に注目したい。<行く>ではなく<歩く>なのだ。<歩く>は<行く>に比べると方向性が薄い、あるいはない。<xx へ(に)歩く>はほぼダメ。<xx の方へ(に)歩く>なら方向性がでるが、これは<方>があるからだ。あるいは<歩いて行く>とすれば方向性がでる。<歩く>と<行く>の違いだ。ごまかしのよう説明だが、<gehen>は<行く>と違って方向性が薄いといえる。したがって、少し具体的に述べようとすると<aus dem Zimmer/auf die Straße>のような語が必要なのだ。
さて、問題の hinauskommen、kommen の問題。上の二つの例をもう一度見てみる。
i) ich bin den ganzen Tag noch nicht hinausgekommen
I haven't been out(side) yet today
ii) zu jdm aufs Land hinauskommen
to come out to see sb in the country
i)は場所が出てこないが<hinaus->という接頭辞があり、<そちらの方に向かって外へ(に)>という意味がある。したがって、<ich(私)>は家の中にいる(ずっといていた)ことになる。だが、なぜ<kommen>なのか? これまた、ごまかしのようになるが、英語訳を見ていただきたい。<I haven't been out(side) >で<to come>が使われていない。だが、今度は簡単にごまかしがきかないようだ。なぜなら、<kommen>に<to be>の意味は基本的にない、からだ。だが、<kommen も gehen ほどではないが、方向性が薄いのではないか?>ぐらいの予想はゆるされるだろう。
ii)は<zu jdm aufs Land>と場所、方向が示されている。 hinauskommen の英語訳は<to come out>で<to go out>ではない。この英語訳は間違いか? hinauskommen につられた<間違い>の可能性はある。<to come out>には<(結果として)現れる>という、よく使う言い方がある。日本語でも<xx が(結果として)出てくる>という。しかし、ここでは<to come out>は場所的に<出てくる(来る)> だ。おそらく、英語でも<間違い>だとしても<to come out>でさほど変ではないのだろう。さらに推測が続く。注意したいのは、<zu jdm aufs Land>(to see sb in the country)-田舎の誰かを見るために(田舎の誰かに会うために)、という目的を示す句があることだ。目的があるのとないのとでは大違いなのだ。ある目的のために移動するときは、さほど方向が重要でなく(ことさら向かう方向、場所に関心がなく)、目的の方が重要な場合に<kommen>が使われるのではないか?次の日本語-英語比較が参考になる。
日本語: 行き着く
英語: to come to an end (to go to the end ではない)
(*3)
hereingehen は一般的な動詞ではないようだ。
Collins German-Englishi Reverso
'hereingehen' found in translations in English-German dictionary
on the way in beim Hereingehen ; beim Hineinfahren
hereinkommen
he•rein+kom•men vi sep irreg aux sein to come in (in +acc -to) wie ist er hereingekommen? how did he get in?
ins Haus hereinkommen to come in or inside
sptt
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