Monday, June 22, 2015
<取り消し>と<キャンセル>について
少し前にのポスト "ドイツ語の接頭辞(prefix)- 10 <ab->" で次のように書いた。
”
5.取消、否定(既述のものの)、例:absagen, abbefehlen
<取消、否定>は away、 off (to cut off)、特に off から説明できよう。
absagen
abbefehlen 命令を取り消す
以外では
abbestellen - 注文を取り消す
abmelden
おもしろいのは
sagen - 言う
mendeln - 通知する
で、absagen、abmelden のもともとの意味は<取り消す>そのものではなく、<取り消しを伝える>の意であることだ。<取り消しを伝える>という日本語らしくない解説はよく考えた末のものだろう。
日本語では<やむ>は<終わる>だが、<やめる>は<終える>のほかに<取り消す>の意がある。
1)雨がやむ。
2)もう(夕方の)五時だ。そろそろ仕事をやめよう。
3)会社をやめる。
4)今回の慰安旅行はやめよう。
以上の4例の<やめる>の違いと共通事項をかんがえると、おもしろい結論がでてきそうだが、横道にそれるので<取り消す>にもどる。
<取り消す>の体言(名詞)形は<取り消し>だが<取消>の漢字二語でもいい。中国語でもよく<取消>が使われるが、比較的新しい語で、和製漢語の輸入だろう。ということは、新しい概念の可能性がある。相良辞典の absagen の解説では<約束、注文、命令など>を取り消す、となっているが、<など>は何を含むか?
約束 - 約束の履行、実行というが<履行、実行>の取り消しはできるか?
注文 - 購入の取り消しはできるか?
命令 - 命令の実行というが<実行>の取り消しはできるか? <命令に服従する>というが<服従>の取り消しはできるか?
以上のうち服従以外は<取り消し>可能だ。<服従>は<拒絶>するだ。 相良辞典によれば absagen には<(招待などえを)拒絶する>という意味もある。
<約束、注文、命令など><など>は何を含むか?
予約 - <予約>の実行、履行とはあまり言わない。
予定 - <決定>の取り消しはできるか?
計画 - 実行計画というが、<実行>の取り消しはできるか?
これまた<決定>、<実行>は取り消しできるのだ。ではいったい<取り消す>とはどういうことか? これはおもしろい問題だが、接頭辞<ab->、<ab-動詞>と直接関係はなさそうだが、上で述べた
sagen - 言う
mendeln - 通知する
でもともとの意味は<取り消す>そのものではなく、<取り消しを伝える>の意であることだ。
が関連ありそう。 <取り消す>については別途検討。
”
別途検討してみる。 ドイツ語の方は大体<将来(後日)あることをすることをいったん決めたが、その決めたことを取り消す>の意だ。日本語の<取り消す>にはこの限定がない。この限定付き意味で、日本語では<取り消す>とともに英語の<キャンセルする>が使われ、当然これは比較的新しい ”日本語” だ。<キャンセルする>するの方は<履行、実行をキャンセルする>とはほとんど言わないので<取り消す>と<キャンセルする>では今のところ差がある。この辺は現代中国での<取消>も同じようなのではないか。あまり聞いたり、見たりしたくないが<取消订单(注文)>(注文を取り消す)はよく聞いたり見たりする。
<取り消す>に似た言い方では<取りやめる>があるが、<取り消す>と同じではない。
約束を取りやめる (ダメ)
注文を取りやめる (ダメ)
命令を取りやめる (ダメ)
予約を取りやめる (ダメ)
予定を取りやめる (OK)
計画を取りやめる (OK)
<取り消す>の反義語に<取り決める>があるが、
約束を取り決める (OK)
注文を取り決める (OK)
命令を取り決める (ほぼまったくダメ)
予約を取り決める (ほぼダメ)
予定を取り決める (ダメ)
計画を取り決める (ダメ)
となることから、まったくの反義語というわけではない。 <取り決める>には当事者間で合意あるようだ。
一方漢語になるが否定、否認、破棄(はき)というのがある。中国では<否定、否認、破棄>と<取消>では差があるだろう。ドイツ語や英語でも to cancel 以外に<否定する、否認する、破棄する>の動詞があり、 to cancel の意味とは違う。違いは明らかだ。
日本(語)では<言ったこと>や<書いたこと>が<取り消せる>が、中国やドイツや英国、米国ではだめなのだ。<言ったこと>、<書いたこと>は<否定され、否認され、破棄され>なければならない。日本(語)では契約も<取り消し>できる。一方<やったこと>は日本語でも<取り消せない>し<否定、否認、破棄>もできないようだ。このあたりは言葉に対する見方の違いがある。
sptt
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