Monday, June 15, 2015
<コスト>動詞について、日本語、英語(to cost)ドイツ語(kosten)
日本語のコストは名詞(体言)で
1)コストがかかる
2)コストが高い。コスト高(だか)だ。
のように使われ
1)費用がかかる
2)費用が高い。費用高(だか)だ。
と費用で置き換えられる。2)のほうは経営とか会計では場合によっては
2)原価が高い。原価高(だか)だ。
ともなろう。<コスト>については経営とか会計では費用と原価に違いがある。個人差がかなりあるが、経営者とサラリーマンでは<コスト>の意味が違ってくる。個人差があるといったのは、経営者のような考え方をする立派なサラリーマンも少なくなく、サラリーマンのような<雇われ経営者>も多いからだ。企業にとって長期的なコストと短期的なコストがある。長期的なコストは資本(金)だ。 経営者は資本(金)を利用して長期的にいかに増やしていくかを考え、決断し、実行する。これにはリスクがともなう。給料に代表される短期的なコストは経営者から見れば費用で、使ってなくなる金だ。普通のサラリーマンは給料に目が行くが、給料が会社にとってはコストになるという意識は比較的薄い。コストは利益とともに共同体の生存にかかわる重要なことだ。コストの概念は名詞(体言よりも)動詞にあらわされているのではないか?というのがこのポストを書こうとした理由だ。意外とシリアスなのだ。
言葉の問題では、<企業>というと何か経営者から見たコスト重視の共同体、<会社>というとサラリーマンから見た給料重視の共同体ような気がする。
さてこのポストは文法についてなので、日本語の<コスト(費用、資本)がかかる>、 英語の to cost、ドイツ語の kosten について調べてみる。
1.日本語の<コストがかかる>
<コストがかかる>は大和言葉で言うと<金がかかる>、<金が要(い)る>。いずれにしても<主語+格助詞+動詞>または<主題+主語+格助詞+動詞>の構成で一語の<コスト動詞>ではなく、<コスト、費用、資本、金>といった名詞(体言)が別個に必要だが、<かかる>、<いる(要る)>は<コスト動詞>といえそう。一方英語、ドイツ語は、後で見るように、文構成は違うが、 to cost、 kosten ととも動詞自体に<金の使用の意>があり<コスト動詞>といえる。しかし金(money、Geld)という語がよく加わって出てくる。
日本語では<かかる>も<いる>もよく使う自動詞で調べてみるとおもしろい。<金がかかる>、<金がい)る>では人が出てこないので、人を加えてみる。
花子は金がかかる。
<私は金がかかる>は、自嘲気味だが、同じような意味がある。
文構造は<主語+格助詞+動詞>ではなく
主題(花子)>+<主語+格助詞+動詞>となり、よく使う日本語構造で<象は鼻が長い>に似ている。
象は鼻が長い - 主題(象)+主語(鼻)+格助詞(が)+形容詞(長い)
花子は金がかかる - 主題(花子)+主語(金)+格助詞(が)+動詞(かかる)
意味としては<金がかかる>で一つの意味(熟語)になっているようでもあり、そうするとこれが日本語の<コスト動詞>になるが、日本語ではこのような熟語が英語では形容詞になる場合がある。というよりはむしろ英語の形容詞に相当する日本語の適当な形容詞がないのだ。
おなかがすいている - hungry
のどが渇いている - thirsty
準備ができている - ready
が参考になり、
金がかかっている - costly(形容詞)
となる。
花子は金がいる。
これはまぎらわしい。
1)<花子は金を必要としている>という意味。
2)<花子は金がかかる>、<花子は金がいる>の意味にもなる。
<花子は金を必要としている>は日本語らしくない。<いる>は簡潔で(2音節)日本語らしいが曖昧(あいまい)、まぎらわしいところがる。<花子には金がいる>とすると<花子は金がかかる>の意味に近くなり、<花子は金を必要としている>の意味からは遠くなるようだ。
<私は金がいる>
これは<私は金が必要だ>、<私は金を必要としている>と言い換えられるが、特に後者は日本語らしくない。上にとりあげた<私は金がかかる>とちがって<私には金が必要だ>は<私は金がかかる>の意味になりにくい。
やや<重箱の隅つつき>気味になってきたが、<金がいる>=<金がかかる>ではない。さてここでは<いる>は別の機会に検討するとして<かかる>について考えて見る。<かかる>は自動詞で、他動詞は<かける>。<かける>は日本語の大動詞の一つだ。だいぶ前に<かける、掛ける、懸ける、 駆ける、賭ける、掻く、書く>というかなり長いポストを書いた。出だしはこうだ。
”
<かける>は相当にいろいろ違った意味があり、調べるとまるでワンダーランドにはいり込んでしまったような感覚になる。
”
したがって、これから<かける>のワンダーランドに入っていくことになる。
さて、
花子は金がかかる。
これは 英語の to cost、.ドイツ語の kosten にかなりちかい。だが<かかる>は自動詞。to cost、 kosten は基本的に他動詞だが、よく考えると
金を使う主語 + to cost、 kosten + 金(命、時間、etc)
という構造ではなく、
金を使わせる(使役)モノ、コト + to cost、 kosten + 金を使わせられるヒト + 金(よくその量表現が伴う)
という構造で、かなり複雑だ。<主題(花子)+主語(金)+格助詞(が)+動詞(かかる)>構造の複雑さが参考になる。
花子は金がかかる。
に他動詞<かける>を使ってみる。
花子は金をかける。 英語流に並べると
花子は かける 金を。
いずれにしても<花子は金がかかる>とは意味がちがってくる。
花子は金をかける。(純粋に<賭ける、賭博する>の意味ではない)
は花子が自主的に金を使うのだ。そして金は使うと減る、またはなくなる。
花子は金がかかる。
は<何か>が花子に金を使わせるのだ。上記の英語、ドイツ語の構造
金を使わせるモノ、コト + to cost、 kosten + 金を使わせられるヒト + 金(よくその量表現が伴う)
が参考になる。 <花子は金がかかる>の花子が主語でないのは明らかだ。また主題でもいいが、主題というよりは<何か>の目的語といえる。主題が<話題の主対象>の意なら主題でもいい。この場合<金>は<話題の副対象>になる。
<何か>は具体的に出てこない場合が多いが
落第ばかりしているので(遊んでばかりいるので、必要以上の買い物が好きなので)花子は金がかかる。
のように考えられ、またはこのように言うこともできる。
ワンダーランドに入ってわけがわからなくりかけているので、英語(to cost)ドイツ語(kosten)を調べてみる。
2. 英語の to cost
なお、 to cost は cost (過去形)cost (過去分詞)と変化する(実際は変化しない)ので注意。 to cut - cut (過去形)- cut (過去分詞)の類だ。Oxford 英漢辞書(上級版)によると<見積もる>の意味のときは costed が使われ、主に受身形で使われるという。興味のある人は自分でチェックしてください。
例文(Oxford 英中辞書から。一部変更)
How much does it cost ? (How much is it ? の上級版)
It costs too much. 現在形 (It is too expensive ? の上級版)
It cost too much. 過去形
It costs a lot of money. 現在形
That will cost you a fortune. 私はこの誇張表現が好きで、時々使う。 <you>に注目。
<to lose (失う)>の意味
The closure of the factory cost 1,000 jobs. 過去形
That one mistake almost cost him his life. 過去形 <him>と<his life>に注目。
<effort>や<unpleasant thing>を要求する
The accident cost me a visit to the doctor. 過去形 <me>に注目。
Financial worries cost her many sleepless nights. 現在とも過去形とも <her>に注目。
上記の注目の箇所は主に人称代名詞で意味は<誰々に>、<誰々には> 、<誰々にとって>が相当し間接目的語だ。直接目的語はそれぞれ<a fortune>、<his life>、<many sleepless nights >が相当する。したがっては他動詞ということになる。日本語の方は構造が異なり<かかる>は自動詞、<かける>が他動詞で
金がかかる - 金をかける <金をかける>は<賭ける>で場合によっては賭博(とばく)にもなるが、おおもとは同じ<かける>で、これが日本語(大和言葉)の<かける>だ。
命がかかる - 命をかける
となる。
It costs too much. 現在形
は目的語がないので自動詞ということになるが、少し変な感じだ。<金がかかりすぎる>とでもなるか。この例の場合、英語では金(money)が表に(explicitly)出てこないので、to cost に金(money)が内に(implicitly)含まれていると考える。日本語では<金>がないと意味をなさない。日本語の方は自動詞<かかる>を使うが、そのため<金>が主語になり、表に出てくる。
That one mistake almost cost him his life. 過去形
これは自動詞<かかる>を使うと、
1)彼はあのミスで命があやうくかかるところだった。
とでもなるか。他動詞<かける>を使うと、
2)彼はあのミスで命をあやうくかかけるところだった。
とでもなるか。いずれにしてもこんな日本語な使わないが、2)のほうがましか。英語辞書の説明にあるように、この場合は to cast = to lose (失う、他動詞)なのだ。
2’)彼はあのミスであやうく命を失うところだった。
となる。 to lose は<失う>で他動詞なので上のうようになるが、実際英語では to cost が使われているのだ。
him は間接目的語。his life は直接目的語。him his と続くので、これは the life でもいいだろう。his や the のない life だけではダメだ。どの、だれの life だかわからなくなるのだ。
ここがポイントだが、日本語的感覚では him のない
That one mistake almost cost his life.
でもよさそうだが、英語では何か足りない感じだ。それは主語が彼(He)ではなくThat one mistake であることによるだろうが、動詞 to cost 自体が him を要求するためではないか?
3.ドイツ語の kosten
例文(相良独和大辞典から。一部変更)
Was kostet diese Ware ?
Es kostet viel. = It costs too much. 現在形
Es kostet mich (od mir) viel Gelt. 現在形 mich (od mir)(od =oder で<または>の意)に注目。mich は4かく、mir は3格。
sich (3) et viel Mühe 大いに骨を折る(*) <sich (3)>((3)は3格の意)に注目。
Das buch hat mich (od mir) gekostet viel Schweiß. Schweiß = sweat、 mich (od mir)に注目。
Das kostet Zeit (時間がかかる)
ドイツ語での問題は mich oder mir のところだ。これは動詞 koten がとる(人称)目的語の3格と4格の間の<ゆらぎ>と言えそう。
Es kostet mir viel Gelt.
Das buch hat mir gekostet viel Schweiß.
と mir とした場合は、英語と同じく viel Gelt、viel Gelt は直接目的語になる。
Es kostet mich viel Gelt.
Das buch hat mich gekostet viel Schweiß.
と mich とした場合が問題で、mich(4格)は直接目的語なので、viel Gelt、viel Gelt は間接目的語になるのか? これは否だろう。では kosten 4格 4格になるのか?(ドイツ語では、<4格 4格 kosten >と並べる。)これも否だろう。答えは viel Gelt、viel Schweiß を副詞とみるのだ。これは理由のない突飛な見方ではない。viel Gelt、viel Schweiß の Gelt、Schweiß を取り去ることができるかどうか、機会があればドイツ人に聞いてみることにする。取り去ることができるとすると、Gelt、Schweiß はおまけに過ぎなくなる。
ところで、とは言うがこれが結論なのだが、to cost や kosten の対象(目的語)となるのは主に金(money、Geld)だが、上記の英語、ドイツ語の例に見られるように、金以外では命、時間、苦労、汗(労力)がある。これはto cost や kosten にまつわる何か特徴的なことのようだ。金、命、時間、苦労、汗(労力)に共通することは何か?
1)使うと減る、なくなる - 金、命、時間
2)苦労、汗(労力)は<使うと減る、なくなる>ではないが<報われない(金がからむ場合とまない場合がある)>場合があり、<報われない>場合にto cost や kosten の対象(目的語)が使われる。
<かかる><かける>と相性のいいモノはなにか?
金がかかる - 金をかける
命がかかる - 命をかける
時間がかかる - 時間をかける
苦労(労力)がかかる - 苦労(労力)をかける
以上いずれも<かかる><かける>と相性はいい。
ワンダーランドのポストを参考にすると、以上以外に
手がかかる - 手をかける
声がかかる - 声をかける
息がかかる - 息をかける
気合がかかる - 気合をかける
号令がかかる - 号令をかける
気合がかかる - 号令をかける
魔法がかかる - 魔法をかける
ワナがかかる - ワナをかける
賞金がかかる - 賞金をかける
望みがかかる - 望みをかける
磨きがかかる - 磨きをかける
税金がかかる - 税金をかける
負担がかかる - 負担をかける
圧力がかかる - 圧力をかける
脅(おど)しがかかる - 脅しをかける
水をがかかる - 水ををかける
迷惑がかかる - 迷惑をかける
疑いがかかる - をかける
などがある。以上のうち、to cost や kosten の対象(目的語)ともなれるのは
賞金 (prize) - これは使う、費やす、失うではなく<得る>方だが、<得られない>、>得られそうもない>。<得られなかった>場合使えるか?
税金 (tax)
負担 (duty)
迷惑 (trouble)
ぐらいか?
したがって、to cost や kosten の対象(目的語)となるが金、命、時間、苦労、汗(労力)関連ぐらいであるのに対して、<かかる>、<かける>は対象が多く、対象を明確に出す必要がある。
(*)は名詞で<骨折り>、<めんどう>の意。英語では、effort, trouble, bother が使われている。日本語、英語感覚では effort は trouble, bother とあきあらに違うが Mühe はすべて含んでいる。<めんどう>はおもしろいことばで、手元の辞書によると
<そうすることがむだの意>の古語に<だうな>といのがあり、 <めんどう>は<目だうな>がなまったもので<見るのもむだなコト>の意ということだ。何だかよくわからないが、<めんどう>は<めんどうをかける>で体言(名詞)としても使い、この場合<めんどう>は<見るのもむだなコト>になるが、<無駄な努力>とか<骨折り損>の意に近い。<めんどう>には<むだとしりつつするコト>の意がありそう。<むだとしりつつするコト>はかなり複雑な行動心理が裏にあり、<むくい>、<むくわれ>を期待しないでする献身的、非利己的な行為ともいえそう。したがって<ごめんどうさま>という<ご>つき、<さま>つきの礼を、<めんどうをする前または後に、受けることになる。<ご苦労さま>、<お疲れさま>もよく使われるが、こちらは直接的だ。一昔前は<はばかりさま>(*)というややこしいのがあった。
(*)別のポスト<sptt やまとことばじてん”<はばかる>の意味、語源”>参照
sptt
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