イタリア語の再帰動詞の第二弾。
La mancanz è la più forte presenza che si possa sentire.
ごく短いがなかなか含蓄(味わい)のある言葉だ。英語の I miss you. に通じるところがあるというか、 I miss you. の隠れた意味の解説ともいえる。味わい方は読者にまかせるとして、イタリア語の再帰動詞を考えてみる。
順序がさかさまになるが che si possa sentire の che は関係代名詞で、英語で言えば which、that に相当。何を修飾しているかというと、すぐ前の la più forte presenza だ。 la più は the most で英語に似ている。forte は strong <力強い>、presenza は presence で<存在(していること)>。頭の mancanza は<欠乏、欠けていること>が原義だが、ここでは<存在(していること)>の対比で<不在、いないこと>。最後になったが、再帰表現の si possa sentire は、人称変化がない原形は potere sentirsi で直訳は<自身を感じさせることができる>。potter は can 相当の助動詞で動詞の原形がこれに続く。つまりは
possa sentire = can feel
なのだが possa は potere の三人称単数現在形。なぜ 三人称単数かというと、先行する la più forte presenza に支配されているのだ。問題は si で、この si は sentirsi の最後につている si が前に出てきたもの。そこで、これがイタリア語の再帰動詞表現なのだが sentirsi を考えてみる。
sentire は他動詞で<(xxを)感じさせる>と、意外だが<(xxを)聞く>の意がある。(末尾参照)sentirsi は<自身を感じさせることができる>またはやや日本語らしい<自身に感じさせることができる>でもいい。
以上をつなげると、日本語では
<不在、いないこと>は最も強く<存在(していること)>を<自身に感じさせることができる>のだ。
とんでもない日本語で、言い換えれば
<いないということは>一番強く<いること)>を感じさせるものだ。
さらに言い換えれば、かなりの意訳になるが
<いない>と<いた時のこと>が何にもまして思い起こされる。
注意したいのは、イタリア語と同じく、人が登場してこない。いわば不在と存在の客観的な表現なのだ。もう一つ、肝心の再帰表現のところが受身形になっている(思い起こされる)ことに注意。
一方英語の方はどうなるかというと、ほぼ直訳では
Absence is the strongest presence which can be felt.
で受身表現になる。イタリア語の再帰動詞の直訳英語は往々にして受身表現になる。この場合人は表面にでてこない。人を加えると
Absence is the strongest presence which can be felt by a man, men and women, you, etc.
となるが、英語らしいのは
Absence is the strongest presence which you feel.
だろう。イタリア語の possa の主語はla più forte presenza なので、主語が you になっている二番目の英文は can がない方がよさそう。英語らしいのはイタリア語や日本語ではではまったく出てこない you が出てくることだ。これは何を意味するかというと、
1)英語ではこのような再帰表現がほとんどないこと(なくなってしまったのか)。
2)再帰表現の動詞はほとんど他動詞で能動性がある(自動詞の再帰用法もある)。これを受動態にするとこの能動性が失われる。再帰表現を使わずに能動性保つ一つの方法が、この例のように、人を主語にすることなのだ。
<自動詞の再帰用法もある>と書いたが、これはすこしまぎらわしい。だが<xxに(は)>と考えると、少し納得がいく。例をあげると、mancanza は動詞 mancare (to lack, to be missing) は自動詞で、mancarsi というのは頻繁に使われる。出だしで書いたように I miss you. という言い方だ。私はこの言い方に昔から興味があり<Du fehlst mir. or I LOVE YOU - 2 (May 2010)>というポストを書いている。
”
英語 I love you. 構造 xxはxxを+他動詞
日本語 私はあなたが好き。 構造 xxはxxが+形容詞
最近(2010夏)ドイツ語を学習していたら次のような表現を辞書で見つけた。
英語 I miss you.
1) Ich vermisse dich.
2) Du fehlst mir.
1) は英語の直訳。
2)fehlen (fehlst)は to miss、to be missing <あってほしい(あるべき)ものがない>で、<あなたがいないとさびしい>というような意味になり、<私はあなたが好き>に近くなる。
"
英語 I miss you. をイタリア語で言うと
(Tu) Mi manchi.
Tu (you) はmancare の語尾変化で示されるので、特別に強調するとき以外は要らない。Tu を加えれば、これはドイツ語の 2) Du fehlst mir. と同じ構造。ドイツ語の方は調べていないが mancare は自動詞。自動詞としての日本語は
(本来あるべき)xxがない
xxが抜けている
xxが欠けている
<love>を考慮すると
xxが恋しい
xxがいないのがさびしい
英語の自動詞 to lack の用例として
He lacks in courage. 彼は勇気がかけている。<in>を活かすと<彼は勇気に欠けている。>となり、こちらの方はが日本語らしいが、文法的にどう解釈したらいいのか?
イタリア語では
Si manca corragio.
で、corragio は目的語ではなく主語。順序が逆になる。再帰動詞ではこの語順逆転が多い。イタリア人の意識では主語ではないかも知れない。直訳に近いのは
勇気が彼に欠けている。
勇気が彼には欠けている。
日本語も語順は比較的自由で<彼には欠けている、勇気が>でもいい。<わたしには勇気が欠けている>は Mi manca corragio. となる。
<かける>は<xxが欠ける、欠けている>で自動詞。日本語には対応する他動詞があり、<欠く>だ。
太郎は勇気を欠いている。
英語の to lack は自動詞、他動詞の両刀使いでややこしい。イタリア語の mancare はあくまで自動詞。
Taro lacks courage.
でいいのだが、
Taro manca corragio.
とはいわず、Taro manca di corragio. となる。
<mancare>がたくさん出てくる例文(Internet から)を見てみる。
"Nonna, ti manca tanto nonno ?”
-Che domanda sciocca tesoro, certo che mi manca.
“Cosa ti manca di piú di lui ?”
- I baci, la sua risata, le litigate…
“Le litigate?”
- Si, sopratutto le litigate.
“E perchè ?”
- Perchè vedi tesoro, quando ti manca una persona, ti mancano i suoi pregi e i suoi difetti. Tuo nonno mi manca, nel vero senso della parola. (Mancare. Non si poteva utilizzare un termine più adatto).
“Spiegati meglio.”
- Hai presente la sensazione che provi quando perdi un autobus ? Quando arrivi troppo tardi ad un appuntamento ? Quando devi buttare il tuo vestito preferito ? Quando litighi con una persona speciale ?
“Si.”
- Ecco, unisci questi sentimenti.
“Tu provi questo ?”
- Ogni giorno.
“E come fai a sopravvivere, con questo vuoto dentro ?”
- E’ facile, basta pensare che lui sia qui con me.
“In che senso ?"
- Ad esempio, quando la casa è troppo silenziosa, mi immagino la risata di tuo nonno che rimbomba per le stanze. Mi siedo sul divano, osservo la poltrona dove si siedeva, e cerco di immaginarlo mentre guarda la televisione, o mentre ascolta la sua canzone preferita: ‘Volare’. Dovevi vederlo. Appena metteva su il disco, si alzava di scatto e si inginocchiava di fronte a me. ‘Vieni a volare con me ?’ e i suoi occhi si illuminavano di gioia. Mi posava delicatamente la mano sui fianchi, avvicinava la sua bocca al mio orecchio e mi sussurrava: ‘sei la mia canzone preferita.’
Lo amavo, sempre. Anche quando mi urlava che voleva andare via da questa casa, anche quando mi faceva piangere. Il suo profumo di fumo mischiato al gelsomino; il suo carattere dolce e scorbutico; i suoi occhi marroncino che ti ricordavano l’autunno; non c’e’ una cosa che non mi manchi.
“Anche a me manca molto.”
Fai come me.
“Non ne sono capace.”
- Ma tesoro, è così semplice ! Basta chiudere gli occhi e lasciarsi trasportare; chiudi gli occhi.
“Fatto.”
- Ora pensa a qualche suo ricordo bello.
“Sì.”
- Apri gli occhi.
…
Lo vedi ?
“Lo vedo, ti sta tenendo la mano.”
mancare の解釈 (Mancare. Non si poteva utilizzare un termine più adatto) もあるので、精読しておく。
nonna おばあさん、nonno おじいさん(日本にはなぜか NONNO という若い女性向けの雑誌がある)
Nonna, ti manca tanto nonno ? は<恋しい>を使うと。<おばあさん、おじいさんがそんなに恋しいの?>となる。 tanto は語呂遊びになり<たんと>、<たくさん>(very, very much)の意。だが<たくさん>、<とても>、<大変(に)>は翻訳調だ。
Che domanda sciocca tesoro, certo che mi manca.
una domanda sciocca = a silly question Che がついて<なんとばかな質問>となる。
tesoro = treasure だが、これは孫(男)への呼びかけ。
certo che mi manca. 主語がでていないが、 certo che mi manca (mio) nonno.
Cosa ti manca di piú di lui ?
並び変えると
Cosa di piú di lui ti manca ?
di piú = more なのだが、日本語に直しにくい。<おじいさんの特に何が(どこが)恋しいの?>
le litigate は口げんか(複数)
- Perchè vedi tesoro, quando ti manca una persona, ti mancano i suoi pregi e i suoi difetti. Tuo nonno mi manca, nel vero senso della parola. (Mancare. Non si poteva utilizzare un termine più adatto).
pregi <- presgio (a good point) の複数形
difetti <- defetto ( a bad point) の複数形
もう慣れたであろうが、 il perosna、i suoi oregi e i suoi difetti がそれぞれ mi manca、mi mancano (複数形)の主語。Tuo nonno mi manca, では主語が先に置かれている。一種の強調だろう。
( )内は mancare の vero senso della parola(言葉の本当の意味での)解説だ。
Mancare = Non si poteva utilizzare un termine più adatto
termine が難しい。ここでは限度と言った意味だろう。poteva は potere の不完了過去(半過去)で一般的に<過去の習慣>を表わす。ここは一般論ではなく具体的に nonna が過去を振り返っているのか?直訳では<よりよくうまく限度まで利用できなかった>となるが、これでは何のことだかよくわからない。そこで mancare の意味を考えてみる。上の方で
<あってほしい(あるべき)ものがない>で、<あなたがいないとさびしい>というような意味になり、<私はあなたが好き>に近くなる。
と引用した。
あってほしい(あるべき)ものがない。
これを参考にすると
よりよくうまく限度まで利用できなかった。
-> 十二分に(精一杯に)うまく使うことができなかった。
-> 十二分に楽しまなかった(享受しなかった)。
-> 十分に楽しまなかった。
-> 十分に楽しまなかった、のが惜しまれる。
とでもなるか。
- Hai presente la sensazione che provi quando perdi un autobus ? Quando arrivi troppo tardi ad un appuntamento ? Quando devi buttare il tuo vestito preferito ? Quando litighi con una persona speciale ?
これは<惜しい>、<惜しまれる>という感情( sensazione)を抱かせる例を挙げている。
E come fai a sopravvivere, con questo vuoto dentro ?
sopravvivere = survive 生き残る
vuoto dentro (心の)内にある空隙(くうげき) manacanza の原因、状態でもある。
si alzava di scatto
scattare は基本的になぜか自動詞。<勢いよく放たれる>が基本的な意味のようだが派生的な意味が少なくない。日本語の<スカッと>、<スキッ>のような擬態語の要素があるようだ。
(molla:spring) to be released
(grilletto: trigger, interruttore: switch) to spring back
(serratura: lock, aprirsi to open 自動詞) to click open
(chiudersi: to close 自動詞) to click shut
(iniziare; to begin, to start, legge: law, provvedimento: mesure) to come into effect
(Sport) to put on a spurt
vt 他動詞 (Foto)
scattare una foto to take a photograph o a photo o a picture
ここは di scatto で
suddenly、si alzò di scatto
he sprang
sussurrare: to whisper これも擬音語、擬態語の類だ。
ulrare 自動詞、他動詞: to shout, to yell
gelsomino: jasmin
scorbutico おこりっぽい、おこりやすい
non c’e’ una cosa che non mi manchi.
<mi manchi>の主語は tu のはずだが、che の前に una cosa がある。
この manchi は接続法で、che (io) manchi、che (tu) manchi、che lui/che lei, che esso/che essa manchi と活用する(実際 みな manchi)。
Anche a me manca molto. Anche mi manca moto. と同じだろう。したがって mi = a me なのだ。
a me = to me (英語)なので、mi manca の mi は間接目的とみなせる。だが、manacre は自動詞なので直接/間接の目的語は取らない。したがってa me = for me (英語)となるか?
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もう一つ短いがなかなか含蓄(味わい)のある言葉。
La vita è una qustione di equilibrio.
Sii gentile, ma non lasciarti sfruttare.
Fidati, ma non farti ingannare.
Acconttentati, ma non smettere mai di migliorarti.
Buddha
Buddha いわくとなっているので、英語からの訳かも知れない。世界的に見ると Buddha については西洋語では英語の文献のほうがかなり多いだろう。読み方によっては簡単に<中庸の徳>で片づけられない内容だ。
さてイタリア語の方だが、再帰表現(xxxx+ti)の多さが見つく。イタリア語ではこのように再帰表現が頻繁に使われる。
Sii = Be (命令形)
gentile = gentle 親切な(形容詞)
lasciarti sfruttare lasciare = let, laciarti = let you sfruttare はやや難しく、to exploit (搾取する、しぼる取る、残りなく使い切る、十分(十二分)に利用する)で、状況により否定的な意味から肯定的な意味まである。
Sii gentile, ma non lasciarti sfruttare.
(人には)親切にせよ。だが親切過ぎて自分をすり減らしてならない。
Fidati <- fidarsi <- fidare (to trsust)
ingannare = to deceive だます、いつわる
Fidati, ma non farti ingannare.
自分を信じよ。だが信じすぎて自分をごまかすな。
自信を持て。だが持ちすぎて自分をごまかすな。
(ほかにも解釈がありそう)
farti ingannare は to make you (ouself) deceive でfarti は使役形。
acconttentarsi <- accontenare <- contento (形容詞 sarisfied)
accotentare
vt 他動詞 to satisfy
è molto difficile da accontentare she's very difficult to please
accontentarsi (di) to content o.s.(of something) (with)
(essere soddisfatto) to be content (with), be satisfied (with)
accontentarsi di poco to be easily pleased
vip (vi + pronoun) 自動詞+代名詞は amnacare の最後の説明
a me = to me (英語)なので、mi manca の mi は間接目的とみなせる。だが、manacre は自動詞なので直接/間接の目的語は取らない。したがってa me = for me (英語)となるか?
が参考になるが、難題だ。
smettere di - to stop xx-ing (xxするのをやめる)
sptt