Monday, May 31, 2021

逆接と譲歩のあいまいさ-7 まだまだある タリア語の逆接と譲歩表現 sebbene、pure,eppure、neanche

 
sebbene は文字通りでは if good、if well で日本語の<よしんば xx でも、としても>という譲歩表現に似たところがる。

sebbene 

cong   (even) though, although  
sebbene non sia colpa sua...      although o (even) though it is not his fault ...  
lo farò, sebbene mi pesi molto      I'll do it, even though I'm not very happy about it


oppure <または、あるいは、or>の意の接続詞だが pure は接続詞として逆接、譲歩表現に使われる。

pure

cong  
a      (tuttavia, nondimeno)    but, and yet, nevertheless  
non è facile, pure bisogna riuscirci      it's not easy and yet we have to succeed  
è giovane, pure ha buon senso      he's young but he's sensible  
b      (anche se, sebbene)    even though  
pur non volendolo, ho dovuto farlo      I had to do it even though I didn't want to  
pur essendo fuori mano      even though it is out of the way  
c      (con valore finale)    pur di vederlo contento farebbe di tutto      she would do anything to make him happy   
 
 
eppure は pure の強調というか、口調がはっきりする。
 
eppure

cong   and yet, nevertheless  
sembra impossibile, eppure è vero!      it seems impossible, and yet it's true!  
non è venuto all'appuntamento, eppure aveva promesso      he didn't come to the meeting, though he'd promised he would 

 一番目は逆説。二番目は譲歩と言えよう。

かなりややこしいが、ne + anche の nenache も接続詞として譲歩表現に使われる

cong   not even  
neanche a pagarlo lo farebbe      he wouldn't do it even if you paid him  
non... neanche      not even...  
non mi ha neanche pagato      she didn't even pay me  
neanche se      even if  
non potrebbe venire neanche se volesse      he couldn't come even if he wanted to  
non lo sposerei neanche se fosse un re      I wouldn't marry him even if he were a king  
neanche se volesse potrebbe venire      he couldn't come even if he wanted to 


一方日本語の方も<
xx に(も)かかわらず>以外に

xx におかまいなく <- かまう  <かまう>はおもしろい言葉だ。
xx にかまわず <- かまう
xx のくせに   <くせ>もおもしろい言葉だ。
(女)だてらに

と言った(逆接)譲歩表現がある。


sptt

 

Friday, May 28, 2021

よじのぼる (隠れた再帰動詞)

 

<よじのぼる>はあまり使わないが、<自分自身のからだをよじって、よじりながら、のぼる>という意味だ。つまりは<よじる>と<のぼる>の複合動詞。また言葉には現れないが<自分自身のからだを>が文法上のポイント。いわば隠れた再帰動詞なのだ。具体的には

太郎は木をよじのぼる。 

これは

太郎は木によじのぼる。 

でもよさそうだ。これは

木をのぼる
木にのぼる

の違いで、<よじる>は関係ないだろう。ところで<よじる>とはどういうことか?<よじる>は<ねじる>に似ている。<身をよじる>と<身をねじる>は大差ないようだ。だが少し詳しくみると、<ねじり飴>はあるが<よじり飴>は聞かない。<ひねり飴>はありそうだが、これも聞かない。<身をよじる>は大体半回転で反対方向に<よじる>のを繰り返すことを含むようだ。したがって<木を(に)よじのぼる>はこのような動作をしながらのぼる(上に進む)だ。水泳のクロールは、水面で横になっているが、このような動作に腕、手の動きを加えて前に進む。一方<ねじり飴>は大体同じ方向に<ねじって>つくるようだ。似たような言葉は日本語に多く

くじく、くじき
くじる、くじり - しくじる
こじる、こじり - こじらす
ひねる、ひねり - ひとひねり
ひねくる、ひねくりまわす
ひねくれる

洗濯もの、ぬれた衣服、布を手で水をくきるのを<しぼる>というが、これも普通は<ねじる>動作だ。

大体両端を反対方向に回す(力をくわえる)ことよってモノを変形する(to deform)ことのようだ。

少しずれるが、<ほじる>といういうのがあり、これから<ほじくる>、<ほじくりまわす>というのがある。<くる>自体<まわす>動作だ。上の<ひねる>、<ひねくる>、<ひねくりまわす>もこの類だ。

これも少しずれるが、<よじる>に似た動作に<くねる>というのもある。ヘビは自分の体をくねらしながら前に進む。川も大きくくねりながら流れていくようだ。<ヘビはくねりながら進む>は隠れた再帰動詞と言える。<自分の体をくねらす(他動詞)> - くねる(自動詞)。<体をくねらす>は他動詞だが<体をくねる>は正しい言い方か。一方<川がくねる>、<ヘビがくねる>は自動詞。<よじる>は<体をよじる>、<体をよじらす>でともに他動詞だ。

よくみると<じる>系と<ねる>系がある。

 

太郎は高い壁のそばにある木をよじのぼって壁を越えて中に入った。

これは、壁をのぼるが難しいからだ。だが高い壁をのぼっていければ、木をよじのぼる必要はない。だが壁をのぼれるのは虫や、ヤモリ、スパイダーマンの類だ。植物ではツタが壁を<這(は)いあがって>いく。<這(は)いあがっていく>ツタをよく見ると吸盤があり、壁の表面に吸い付いてずり落ちないない仕組みになっている。ヤモリ、スパイダーマンも吸盤を使っているようで、これだと表面がつるつるしたガラスのような壁ものぼれる。虫は、よく観察したことはないが、吸盤方式でないとガラスの壁はのぼれないのがいるだろう。普通壁は<よじのぼる>ではなく<這いのぼる>だろうが、あまり聞かない。これは人が壁を<這いのぼれない>からだろう。<這いあがる>は比喩的、慣用的に使われる。実際人が<壁をはいあがっていく>のは難しい。<這う>は<床を這う>、<床の上を這う>で他動詞のようだが、<床の上で這う>ともいえ、基本的には<歩く>と同じで自動詞。使役のようだが他動詞は<這わせる>。上のいわば隠れた再帰動詞の見方をすれば<這いあがる>は<自分自身を這わせて、這わせながらあがっていく>となる。それほど高くない壁で、また身軽であれば、人は壁を<駆(か)けのぼって><駆(か)けあがって>越えることができるかもしれない。一方これは隠れた再帰動詞の見方ができず、<自分自身を駆けさせて、駆けさせながらあがっていく>とは考えずらい。

<よじのぼる>はなんでもない動詞のようだが、これは<よじる>と<のぼる>を簡単に並べて複合動詞ができる日本語の大きな特徴による。英語ではそう簡単にいかない。<身をよじりながらのぼる>といった言い方になるか、to crawl up とでもう言うか? <よじのぼる>の前半の<よじ>は<よじる>の連用形で、これは<這いあがる>、<駆けのぼる>も同じく前半の動詞は連用形で、文法法則だ。

 

sptt

Wednesday, May 12, 2021

逆接と譲歩のあいまいさ-6、イタリア語 ancora、また、まだ


逆接と譲歩のあいまいさ>の第六弾。イタリア語の ancora は<それでも>、<それでもなお>と言った意味の逆接と譲歩の副詞として使われるが、アンコールの意の<再び><また>がもともとの意だろう。その同じ ancora が<それでも>、<それでもなお>の意になるのはどうしたわけか? ancora の姉妹語とも言える anche についてはこの<逆接と譲歩のあいまいさ>シリーズで以前にとりあげた。ancora を同じく Reverso Italian - English で調べてみると

 ancora

 
1       avv  
a      (tuttora)    still  
è ancora innamorato di lei      he's still in love with her  
ancora oggi      still today  
stava ancora dormendo      he was still asleep  
b      (di nuovo)    again  
ancora tu!      (not) you again!  
sei andato ancora a Parigi da allora?      have you been back to Paris since then?  
c    non ancora      not yet  
è pronto? - no, non ancora      is it ready? - no, not yet  
il direttore non è ancora qui      the manager isn't here yet  
d      (più)    (some) more  
ancora un po'      a little more  
vuoi ancora zucchero?      would you like some more sugar?  
mi dai ancora un po' di gelato?      could I have a bit more ice-cream?  
vorrei ancora latte      I'd like more milk  
ne vorrei ancora      I'd like some more  
prendi ancora un biscotto      have another biscuit  
ci sono ancora caramelle?      are there any sweets left?  
cosa vuoi ancora?      what else do you want?  
ancora per una settimana      for another week, for one week more  
ancora una volta      once more, once again  
ancora un po' e finivamo in acqua      we almost ended up in the water  
2       cong     (nei comparativi)    even, still  
ancora di più/meno      even more/less  
ancora meglio/peggio      even o still better/worse  
ancora altrettanto      as much again  
oggi fa ancora più freddo      it's even colder today 

のように、アンコールの意の<再び><また>だけでなく、譲歩表現を含めて活躍する。おもしろいのは still と again、日本語でいえば<まだ>と<また>に相当する意味があることだ。さらには、ややこしくなるが ancora には some (more)、even <さらに>の意味まである。some (more) <さらに>は、even more、still more のような比較に輪をかけた言い方で使い、言い換えると<さらにもっと><もっともっと>だ。<もっと>はとりあえず別として、ancora としては<まだ>と<また>の両義があり、日本語で言えば<まだ>と<また>は関連語ということになる。このことは意味深長で、<まだ>はいうまでもなく<また>の<た>が濁音になったに過ぎない。

<まだ>はおそらく<また>の派生だろう。

<また>は基本的に同じこと、同じようなことが繰り返す繰り返される)ことをあらわす副詞で、無意識のうちにきわめてよく使っている。

では近いうちにまた会いましょう。
またお前か。
また間違えた。 また失敗した。また成功した。

またも、またもや、またしても、またぞろ、またまた、 というのもある。

ここで<またまた>をチェクしてみる。

またまた失敗した。
またまたまた失敗した。
またまたまたまた失敗した。 

言葉遊びのようになるが、これを続けて行くと

またまたまたまた. . . . . 失敗した。

また失敗を続けている。 

で失敗が繰り返され、 失敗するのが常態(あたりまえ、普通)になる。このような状態は

まだ失敗を続けている。 

になる。これが ancora のコンセプトだろう。

<まだ>は、基本的には同じ状態を続けていることを示す副詞だ。

一方<また>は上で述べたように

基本的に同じこと、同じようなことを繰り返す(が繰り返される)ことをあらわす副詞だ。


sptt