前回のポスト><give up と give away>で
to give away
to give way
to give in
to give up
をとりあげ、<ゆずる>、<あきらめる>について調べた。<あきらめる>については以前にその語源に関連していくつかポストを書いている。過去のポストはあまり参考にせず(探すのがたいへんだ)、このポストでは<あきらめる>の文法分析をしてみる。
<あきらめる>はいわゆる形容動詞<あきらかな、だ>の語幹<あきらか>の一部<あきら>に<める>がついたもの。<める>は普通形容詞の語幹につき
強い - 強める、 弱い - 弱める
深い - 深める、 浅い - 浅める(ほとんど聞かないが、<川(底)を砂利で浅める>と言うか?)
高い - 高める、 低い - 低める (これもほとんど聞かないが、<遊んでばかりいては、体力は高まるかもしれないが、学力を低めることになる。>と言うか?)
広い - 広める、 せまい - せばめる
固い - 固める、 やわらかい -やわらかめる (これもほとんど聞かないが、状況次第では使うだろう。)
薄い - 薄める、 濃(こ)い - (こめる) <モノによっては<込(こ)める>、<詰め込む>と<濃くなる>が無理がある。
早い - 早める,遅(おそ)い - 遅める
速い - 速める、遅(おそ)い - 遅める 、 のろい - のろめる( (これはほとんど聞かない)
近い - 近める、 遠い - 遠める (普通は<近づける>、<遠ざける>だ。)
軽(かる)い - 軽める、 重(おも)い - 重める (普通は<軽くする>、<重くする>だ。)
細い - 細める、 太い - 太める(ほとんど聞かない)
あたたかい - あたためる、<あたたかめる>は間違いとは言えないだろうが長すぎる。地方によっては<ぬくい - ぬくめる>というのがある。つめたい - (つめためる) (普通は<冷やす>)
色に関しては
白い - 白める
赤い - 赤める、赤らめる <赤める>は純粋に色に関するもの。<赤らめる>は意味がズレ、<赤>の字を使わず<あからめる>とすると(もっとも耳できけばこうなる)、<赤める>と同じ意味にはならない。よく聞くのは<頬(ほお)を赤らめる>。大体実際に<頬(ほお)が赤くなる>のだが、<赤くしよう>とするのではない。これまた大体自分の意思に反して<頬(ほお)をが赤くなる>なるのだ。これは文法的におもしろい表現だが、深入りは別のところでする。また<あかい>は<あかるい>の関連語。または<あかい>と<あかるい>は同根と言われる。
黄色い - 黄色める (普通は<黄色くする>、<黄色みをもたす>)
青(あお)い - 青める (普通は<青くする>、<青みをもたす>)
暗(くら)い - (暗める)、 あかるい - (あかるめる)
<暗(くら)める>も<あかるめる>もきかない。<あかるめる>と<あきらめる>は似ているようだが二字も違う。<あきらめる>が<あかるめる(あかるくする)>の可能性は小さい。
ここでは詳しく書かないが、<める>は他動詞に、<まる>は自動詞になる。
広める - うわさを広める、 広まる - うわさが広まる高める - 士気を高める、 高まる - 士気が高まる
さて<あきらめる>だが、、上で
<あきらめる>はいわゆる形容動詞<あきらかな、だ>の語幹<あきらか>の一部<あきら>に<める>がついたもの。
と書いた。<形容動詞+める>はどうか?
静かな、だ - (しずかめる)、しずめる。ただし<静める>は<沈(しず)める>に関連する。
しとやかな、しとやかだ - (しとやかめる)、(しとやめる)
おおらかな、だ - (おおらかめる)、(おおらめる)
しとやかな、だ - (しとやかめる)、(しとやめる)
きれいな、だ - (きれいめる) - <きれい>は<綺麗>で漢語由来だ。
基本的にダメのようだ。
さて、繰り返しになるが
<あきらめる>はいわゆる形容動詞<あきらかな、だ>の語幹<あきらか>の一部<あきら>に<める>がついたもの。
の下線部は問題で、原意を<あきらかにする>とすると<あきらかめる>なら何とか意味が伝わるが<あきらめる>は<あきらかにする>の意にならない。
<あきらかにする>に相当する英語に to clarify (形容詞 clear 由来)がある。
clarify は(暗い状態、暗くてよく見えない状態を)<明るくする>、<(暗くてよく見えない状態にあるモノ、コトを)明るみにだす>とも言い換えらる。
<あかるくする>は本来<あかるめる> だが、これが<あからめる>に変化したとしては<あきらめる>に通じるのか?これは上で書いたように、可能性は小さい。
さて日本語では
家を明(あ)け渡す - ゆずる。借家であれば、大家さんに返す、次の借家人にゆずる。to give back陣地を明(あ)け渡す - これは<陣地をあきらめる>に近い。to give in
という言い方がある。
上の2例は
<あける>で発音は同じだが<家を空(あ)け渡す>、<陣地を空(あ)け渡す>の方が適切だ。この<空(あ)ける> も英語の to clarify に通じる。英語では empty 由来の to emptify という動詞があるようだがほとんど聞かない。
さてここで次の関係を見てもらいた。
to give -> to lose
to take -> to gain
<与える(to give)>は<失う(to lose)>、減る(to decrease)。 <失う>は<手放(はばな)す、手離(ばな)す>。
<取る(to take)>は<得る(to gain)>、増える(to increase)。<得る>は<手に入れる>。
<与える(to give)>は<失う(to lose)、減る(to decrease)>なのだ。<失う(to lose)>と持ちモノがなくなったり(空になる)、減ったりする。
<あきらめる>の意味を少し具体的に考えてみると、本来失いたくはないが、
1)得ているモノ(カネ、家、仕事、地位など)を<失う>
2)得ようとしているモノ、コト(持ち家、マイホーム、大学入学、勝利)を<失う>。だがまだ得ていなので<失う>はおかしい。<得ようとするのをやめる>か?
話がややこしくなりかけているので、この辺で繰り上げる。
結論
<あきらめる>は<あきらかにする>(<あきらかめる>という語があればいいのだが、<あからめる>はあるが<あきらかめる>はみつからない)。<あきらかにする>はある意味では<かくれているモノ、コトを明るみに出す>。そうすると<それまで得ていた、手にあったかくれているモノ、コト>を<失(うしな)う>ことになる。
to give は典型的とも言える他動詞。一方 to lose は他動詞用法もあるが to lose to the enemy で自動詞にもなる。だがこれは to lose (oneself) to the enemy とすれば to lose 自体は他動詞と<みなせる>。
一方日本語の方は<与える(やる、くれる、くれてやる)>は他動詞。<失う>も他動詞だ。<あきらめる>は<xx をあきらめる>でこれも他動詞。
上で書いたように
<与える(to give)>は<失う(to lose)、減る(to decrease)>
そうすると、前回ポストで言及したが
to give (oneself) in (to something, someone) - xx に屈する
to give (oneself) up - xx をあきらめる
でつじつまが合うことになる。そうすると to give oneself は to lose oneself になるので、<屈する>、<あきらめる>は<自分を失う>ということだ。ゆゆしいことだが、これも意味上はつじつまが合いそうだ。
無条件降伏ではまったく自分を失う(自分がなくなる、自分がない)ことになる。たいへん大きな<あきらめ>だ。
sptt
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