前回のかなり気合を入れて書いたポスト”<in spite of>の spite について” で次のように書いた。
”
悪天候でも(の場合でも)運動会は行われる。ここでも<も>が出て来る。これは even though
という言い方があり、<譲歩>が強まる。この英語の even
は曲者(くせもの)で、よく、くわしく理解して使っている人は少ないだろう。だが大体は間違いなく使っている。このクセモノ even
については別途検討予定。
”
忘れないうちに別途検討した。辞書で調べてみると"even" は副詞と形容詞として使われる。ややこしいのは副詞のほうで、日本語の<でも>、<ても>、<とも>に相当し、"even" も相当する日本語も逆説とか譲歩、場合によってははっきりしない<逆説とも譲歩ともとれる使い方>がある。
簡単な方の形容詞としては
平均化された、でこぼこが少ない、均等な
と言った意味で、この意味の副詞は"evenly" で、"even" ではない。
The cake should be evenly given to every one. 均等に与えられる。
ここでは形容詞の "even" はこれ以上深入りしない。
副詞の even はかなり込み入っており、以前に書いた ”any は英語の大発明 - 日本語、イタリア語、中国語の any は?” の any と似たようなところがあり、<ひとすじなわでは行かない>。日本語、イタリア語、中国語との比較の効用はこの "even" にもあてはまり、この方法で検討してみる。英語の "even" には独自性がある。
手もとの辞書で even に相当する<ても>、<でも>をしらべてみると、理解しにくい説明がある。
<でも>
1)許容される最低の場合を示す
子供の足でもでも十分あれば行ける。 (even a child)
いそがしくて日曜日でも遊んででいられない。
いまからでも遅くない。
これだけでも持って行きなさい。
以上の4例が<許容される最低の場合を示す>で説明できるだろうか。
日曜日が<許容される最低の場合>とはどういうことか?
子供の足でもでも十分あれば行ける。
の<でも>は<許容される最低の場合を示す>ようだが、
おとなの足でも十分では行けない。
の<でも>は<許容される最低の場合を示す>というよりは<考えられる最高の場合を示す>ではないか。同じように
今からでも遅くない。
一時間前からでも遅くない。
はナンセンス。
一時間前からでも遅くなかった。
もナンセンスのようだが、
<xxするのは今からでも遅くない>とすると<xxするのは一時間前からでも遅くなかった>は当たり前で、いうまでもない。だからこうは言わないだろう。
一時間後からでも遅くない。
はナンセンスではない。わけがわからなくなっているが、 <今から>は<許容される最低の場合>だろうか。わけがわからなくなっているのは<でも . . . .ない>と否定になっているからで。
今からではもう遅い。
一時間前からではもう遅い。
はナンセンスだが
一時間後からではもう遅い。
は意味がある。<今からではもう遅い>の<今から>も<一時間後からではもう遅い>の<一時間後から>はいずれも<許容される最低の場合>の意があるが、より一般的には<許容される範囲内での限度、限界の場合>だ。だがこの2文は<でも>ではなく<では>だ。これまたややこしい。<でも . . . .ない>は <even xx yy not (not yy)>に相当する。さらに英語では
今からではもう遅い - even from now it is already late
で意味をなす。 一方日本語の<今からでももう遅い>はナンセンス。
一時間後からではもう遅い - even from one hour later it is already late
はナンセンス。even if from one hour later it is already late
とすれば<一時間後からとしても(となっても)、(それでは)もう遅い>の意で成り立つ。これまたややこしいが、<許容される範囲内での限度、限界の場合>は<許容される最低の場合>よりわかりやすく、しかもより一般的(汎用的)だ。
2)考えられる消極的な条件がともかく成立することを表わす。
- お茶でも飲んでいこう (これは英語が見つからない。We have several choices to do but how about going to have some tea. とでもなるか )
- 木村君でもいてくれたら (even if は違い意味。only if があるが、これもイマイチ、<木村君さえいてくれたら>ならなんとかよさそうだが、まだイマイチ)
- あすにでも来てもらおう (as soon as tomorrow か as late as tomorrow か、あるいはほかの意味か)
- けがでもされたら、大変だ。(これは英語が見つからない。)
<お茶でも飲んでいこう>というのが一番目にあるが、これは1)許容される最低を示す、の方だろう。
また<でも>に<条件がともかく成立することを示す>意味はないだろう。たとえば
<木村君でもいてくれたら>は<いてくれたら>が<条件が成立することを示して>いる。
<消極的な条件>とはどういう条件か。<もしけがをしたら>は仮定だが条件として、<消極的な条件>とはどういう条件か。縁起が悪いが<死にでもされたら>に比べれば<けがでもされたら>は消極的な条件(仮定)と言えそう。<死にでもされたら、なをさら大変だが>と言った比較が言外にあるか。
(死にでもされたら、なをさら大変だが)、けがをされても、大変だ。
に近が、 <けがでもされたら、大変だ>はまだ少し違うようだ。
2)は複文の文が前提になっている。 <木村君でもいてくれたら>のあとには別の文がくるが、省略できる。
<考えられる消極的な条件>はこれまた<許容される範囲内での限度、限界の場合>に通ずるところがある。問題は<消極的な>だ。
<消極的な>はおそらく<少なくとも>、<小さくとも>が連想されるが、実際には<多くとも>、<大きとも>にも適用される変な<消極性>だ、これは最低、最高、最小、最大、xx以上、xx以下Minimum、Maximum を少しよく考えればいい。
<最低=xx以上>、<最高=xx以下>の定義のもとにある考え方、コンセプトは基本的に同じ。低い、高いに関係ない。
上の<でも>の1)<許容される最低の場合を示す>を<許容される最低=xx以上、または最高=xx以下の場合を示す>とすると汎用性がでてくる。
3)(不特定の指示語について)消極的な意味で無限定に成立することを表わす。
いつでもいい (Any time will do. が英語の慣用表現。 Even any time will do. No matter what time でも通じる)
どこへでもついて行こう (To) Any place I will will follow you. で通じるか。(To) Even any place,
No matter where (you go) I will follow you. でも通じる。
これまた<消極的>が出て来るが<消極的な意味で>とはどういう意味か?
日本語ん<ても>、<でも>も <ひとすじなわでは行かない>。繰り返しになるが、手元の辞書の<でも>の解説
1)許容される最低を表わす。
2)考えられる消極的な条件がともかく成立することを表わす。
3)消極的な意味で無限定に成立することを表わす。
はいずれも意味がよく分からないが、苦心の末の説明か。あるいは編集時間切れで、中途ハンパなままなのか。前回のポストで使った中国語が参考になると思うが、後回しにして、今再勉強中の西洋語のイタリア語との比較を勉強を兼ねてやってみた。これはなかなか参考になる。
even
even on Sundays perfino di domenica
and she even sings e sa anche or addirittura cantare
not even ... nemmeno or neppure or neanche...
he didn't even say hello non ha neanche salutato
even though, even if anche se
even as proprio nel momento in cui
even now he can't do it non lo sa fare nemmeno ora
without even reading it senza neppure leggerlo
he can't even read non sa nemmeno leggere
even so ciò nonostante
not even if/when nemmeno or neppure se/quando
even faster ancora più veloce
even more ancora di più
you'll have even more fun tomorrow domani vi divertirete ancora di più
a perfino, anche
perfino は象徴的だ。fino は<終わり>、<限度>、<fino a xx>で<xxまで>の意味だ。関連英語では final がある。
anche も象徴的だ。anche は使用頻度が高い too, also に等しい副詞だ。関連英語では encore (アンコール)がある。
even on Sundays perfino di domenica
は幾つかの意味で解釈できる、
<日曜でも>が一般的だが、状況としては
日曜でも働いていいる(働く)
背景を言い足すと
月曜から土曜はもちろん、日曜も働いていいる。 も = too, also = anche
月曜から土曜はもちろん、日曜まで(も)働いていいる。 まで = fino a
意味が隠れているが、日曜は最終目標ではなく<限度>だ。つまり<限度を含んで>の意だ。<限度を含んで>は<限度を含んではいるが、それまで>だ。
and she even sings e sa anche or addirittura cantare
この even は少しむずかしい。
彼女は歌も歌う。彼女は歌を歌うこともする。
彼女は歌さえ歌う。彼女は歌を歌うことさえする。
彼女は歌でも歌う。彼女は歌を歌うことでもする。- これはダメ。
背景を言い足すと
通常は歌を歌うこと以外のことをする、利き手が知っているのは歌を歌うこと以外のことをすること。
歌を歌うことは予想外の付け足しなのだ。付け足しなので<さえも>の<も>問題なくつく。予想外の付け足しの意が even にはある。
not even ... nemmeno or neppure or neanche...
he didn't even say hello non ha neanche salutato
not even は even の否定でややこしい。
he didn't even say hello は
彼はハローさえも言わなかった。彼はハローとさえ(も)言わなかった。
彼はハローでも言わなかった。
はダメ。
言外には<だから、なにも言わなかった>とか<だから、質問に答えるようなことはなかった>などが隠れている。 <許容される範囲内での限度、限界の場合>を考えると、これは最高、最良(ベスト)で、それ以上は<想定、予測、期待、許容され><ない>となる。日本語では<でも.....ない>ではなく<さえ(も).....ない>に変わってしまう。
彼はハローさえ(も)言った。彼はハローとさえ(も)言った。
当たり前のように使っているが、この even は特殊なのだ。
even though, even if anche se
”
イタリア語の譲歩文
なぜイタリア語なのかと言うと、すでに上で述べたが
1)イタリア語では動詞変化に接続法というのがあり、接続法は仮定文とともに譲歩文(仮定文、譲歩文とも従属節)で使われる。
という文法法則。さらにもう一つ
2)even if をイタリア語では anche se ということを発見したからだ。
even if xxxは日本語で
xxx でも、ても、とも、
と<も>がでてくる。イタリア語のanche は元来<も>の意なのだ。ancore (アンコール)は関連語。 se は if。if に even
ではなく anche すばわち too, also, again, as well がついているのだ。しかも if の前にだ。だがこの
anche は too, also, again, as well の意ではなく、譲歩の意だろう。日本語の<も>が too, also,
again, as well の意以外に譲歩内容をあらわすように。
Collins Reverso Dictionary
anche
cong
e va anche a Roma and he's going to Rome too, and he's also going to Rome
parla inglese e anche italiano he speaks English and Italian too o as well
vengo anch'io! I'm coming too!
sono stanchissimo! - anch'io! I'm really tired! - me too!
gli ho parlato ieri -- anch'io I spoke to him yesterday -- so did I
anche oggi non potrò venire I won't be able to come today either
potrebbe anche cambiare idea, ma... he may change his mind, but ...
avresti anche potuto avvertirmi you could have let me know
lo saprebbe fare anche un bambino even a child could do it
anche se (ipotesi) even if, (nonostante) although
anche se dovesse piovere even if it rained
me lo ricordo anche se avevo solo sei anni I remember it, although I was only six
anche volendo, non finiremmo in tempo however much we wanted to, we wouldn't finish in time
イタリア語の方もそうだが、対訳の英語の方も
even a child could do it
even if it rained
however much we wanted to, we wouldn't finish in time
と従属節、主節とも仮定法、条件法が使用されている。内容は仮定というよりは譲歩だ。さて日本語の<も>、イタリア語の anche がなぜ譲歩の意味を持つようになったかだが、これは文法用語の<譲歩>の意味は<とりあえず肯定するが、(疑問を残す、反対のことをいう、示唆する)>で、これをいいかえると<とりあえず仲間に入れておいて、含めておいて>つまりは<も>、anche で修飾し、(疑問を残す、反対のことをいう、示唆する)>言い方、と言える。
”
ここでの anche の訳としてeven がある。並列、添加の<も>、anche がともに譲歩がらみの表現に流用されていることは注目に値する。一方 even には too, also, again, as well ほどの並列、添加の意味はない。
even as proprio nel momento in cui
even now he can't do it non lo sa fare nemmeno ora
without even reading it senza neppure leggerlo
he can't even read non sa nemmeno leggere
even so ciò nonostante
not even if/when nemmeno or neppure se/quando
以上はイタリア語中級、上級と言えるので、私のイタリア語の勉強になってしまうが、読むのが面倒な人は読みとばしてもいい。
<even as>は聞いたことも見たこともない。したがって使ったことはない。
Collins ネット辞典
even as
in British English
これでproprio nel momento in cu の意味が確認できる。だが、使うことはないだろう。もと英国領の香港に長らくすんでいるが、わたしの英語は基本的に若いころに聞き、習ったアメリカ英語だ。
nemmeno、neppure の<ne>は否定の意だろう。したがってnemmeno、neppure 自体に否定の意があることになるが、上記の文例では否定の non が別にあり、こちらがが本物の文の否定だ。したがってnemmeno、neppure の<ne>は飾り見たいなものだが否定の non と組みになって(係り結びみたいなものだ)強調された否定、あるいはある種の特別なニュアンスがある否定になるのだろう。
nemmeno の meno は英語の less 相当で、これまた<にもかかわらず>と訳される接続詞 nevertheless が思いうかぶ。nevertheless は意味ありげな the を無視すれば直訳では<よりすくなくない>-><より多い>となるが、何のことだかよくわからない。この nevertheless は<にもかかわらず>シリーズの3番目か4番目で検討予定。
neppure はneppure=neanche となっている neppure の pure はこの機会を利用して勉強してみる。
viene suo fratello e pure sua sorella his brother is coming as is his sister, his brother is coming and his sister is too o as well
siamo stati a Zurigo e pure a Lucerna we went to Zurich and to Lucerne as well
è venuto pure lui he came too
pure lei non lo sa fare she can't do it either
te l'avevo pur detto di non andarci I did tell you not to go
non è facile, pure bisogna riuscirci it's not easy and yet we have to succeed
è giovane, pure ha buon senso he's young but he's sensible
pur non volendolo, ho dovuto farlo I had to do it even though I didn't want to
pur essendo fuori mano even though it is out of the way
とややこしい。
末尾
to make even livellare
an even surface una superficie liscia
the scores are even sono a pari punteggio
to have an even chance (of doing sth) avere una buona probabilità (di fare qc)
to get even with sb vendicarsi di qn
to break even (Fin) chiudere in pareggio
that makes us even (in game) (fig) siamo pari
they are an even match sono allo stesso livello
1)滑(なめ)らかな、でこぼこが少ない (表面)
2)平均化された、均一な、
3)等しい
参考
別のポスト<譲歩文 - 英語、日本語、イタリア語>
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