Friday, July 26, 2013

自動詞、他動詞-6 日本語の他動詞、自動詞の作られ方


<xx 未然形+す>の自動詞の他動詞化はかなり前のポスト ”使役の助動詞<せる><させる>” 、前回のポスト ”日本語の自動詞、他動詞-5 英語との比較” で少し触れた。もう少し検討してみる。今回はさらに範囲を広げて他の自動詞の他動詞化の方法も検討してみる。

英語には自動詞ー他動詞がペアになっている動詞がいくつかある。けっして多くはない。

to lie (横たわる) -  to lay(横たえる、置く)
to rise(上がる)  -  to raise(上げる) 
to sit (すわる) -  to set (すわらせる、置く)
(追加予定)

一方日本語では自動詞、他動詞が組みになっている動詞ペアがやたらたくさんあり分析が必要。分析作業は相当骨が折れる。とにかくやってみる。なぜこうも多いのか自体おもしろい調査対象だが、これは今後の課題とする。

自動詞 - 他動詞

上がる - 上げる
開(あ)く - 開ける。 開(あ)かす、、明(あ)かす(to disclose)、空(あ)かす(to empty)の<あかす>もある。<開(あ)かす>は<開く>の未然形<開か>+す。
当たる - 当てる。
現(あら)われる - 現わす。 <現(あら)われる>の古語形は<現わる>。ただし<現わる>の未然形は<現われ>。
表(あら)われる - 表わす。
生きる - 生かす。 <生きる>の未然形は<生きれ>。<生きる>の古語形は<生く>だが未然形は<生き>。<生かす>に比喩的な意味もある。
浮く - 浮かす。 <浮かす>は<浮く>の未然形<浮か>+す。
埋まる - 埋める
動く - 動かす。<動かす>は<動く>の未然形<動か>+す。
売れる - 売る。  <売れる>は<売る>の可能、自発。受身は<売られる>。
起きる - 起こす。<起きる>の未然形は<起きれ>。
興(起)こる - 興(起)こす。<興(起)こる>の未然形は<興(起)こら>。
落ちる - 落とす。<落ちる>の古語形は<落つ>。<落つ>の未然形は<落ち>。
折れる - 折る。<折れる>は<折る>の可能、自発。
終わる - 終える。<終わらす>という他動詞もある。 <終わらす>は<終わる>の未然形<終わら>+す。
かぶる(自/他) - かぶす。<帽子をかぶる>の<かぶる>は他動詞。<水がかぶる>の<かぶる>は自動詞。
枯れる - 枯らす。 古語は多分<枯る>。
乾く - 乾かす。 <乾かす>は<乾く>の未然形<乾か>+す。
変わる、代わる、替わる (自/他)- 変える、 代える、替える。<かわる>、<かえる>はやっかいな動詞だ。
消える - 消す。<消える>の古語形は<消ゆ>。<消ゆ>の未然形は<消え(kie)>。<消え>+<す>(kie-su) --> <消す(ke-su)>は十分考えられる。
決まる - 決める
切れる - 切る。切らす。 <時間(資金)がきれる>の<切れる>は自動詞。<このナイフはよく切れる>の<切れる>は自動詞と言い切れない。なぜなら自動詞<切れる>は<時間(資金)がきれる>、<この紐(ひも) はよく切れる>のように使うからだ。では<このナイフはよく切れる>の<切れる>は何かというと他動詞<切る>の可能形の<切れる>だろう。<時間(資金)を切らす>というので<切らす>は他動詞。<太郎はxxをこのナイフで切る>の<切る>は他動詞。主語は太郎でナイフではない。<切れる>の未然形は<切れ>。<切る>の未然形は<切ら>。
崩(くず)れる - 崩す。 <崩れる>の使役形は<崩れさす>。<崩す>の受身形は<崩される>。
焦げる - 焦がす
壊(こわ)れる - 壊す。 <壊れる>の使役形は<壊れさす>。<壊す>の受身形は<壊される>。
下がる - 下げる
咲く - 咲かす
絞まる - 絞める
閉まる - 閉める
過ぎる - 過ごす。 <一時間が過ぎる>の<過ぎる>は明らかに自動詞だが、 <一時を過ぎる>の<過ぎる>も<を>をとるが自動詞。<一時間を過ごす>の<過ごす>は他動詞。これはややこしい。別途検討予定。
住む -住まわす、住まわせる
済む - 済ます。 <済ます>は<済む>の未然形<済ま>+す。
澄む - 澄ます。 <澄ます>は<澄む>の未然形<澄ま>+す。
染まる - 染める
それる(そる) - そらす。 <そらす>は<そる>の未然形<そら>+す。
倒(たお)れる - 倒す。 <倒れる>の使役形は<倒れさす>。<倒す>の受身形は<倒される>。
立つ - 立てる (立たす)。<立たす>は<立つ>の未然形<立た>+す。
貯まる - 貯める
溜まる - 溜める
縮(ちぢ)む - 縮める。<縮まる>という自動詞もある。
掴(つか)まる-、掴む。 <つかまる>は<xx につかまる>と使うので自動詞が、動作としては<つかむ>とほぼ同じで他動詞的だ。また<掴む>も<捕まえる>も動作は似ている。
捕まる(*)-捕まえる。<捕まる>は意味としては<捕まえられる>で受身だ。
付く - 付ける。 (巻きつく-巻きつける、取り付く-取り付ける、etc)
つまる - つめる
通る - 通す。 <川を通る>は<を>ととるが自動詞(いわゆる移動動詞)。他動詞の<通す><針(の穴)に糸を通す>のような使い方以外に、<人(車)を通す>のような使い方があり、この場合許可とか譲りの意がある。英語のto letは<Let me(the car) go through.>とも<Let me(the car) through.>とも言う。
とどまる - とどめる
閉じる(自/他) - 閉ざす。 <閉じる> は<xxが閉じる>、<xxを閉じる>で自/他動動詞。<開(ひら)く>も<xxが開く>、<xxを開く>で自/他動動詞。
飛ぶ - 飛ばす。<飛ぶ>は<空を飛ぶ>のように<を>をとるが自動詞。<飛ばす>は<飛ぶ>の未然形<飛ば>+す。ただしやや使役気味だ。
富む - 富ます。 <富ます>は<富む>(やや古語形)の未然形<富ま>+す。
止まる - 止める
泊まる - 泊める
留まる - 留める
流れる - 流す
鳴る - 鳴らす。<鳴らす>は<鳴る>の未然形<鳴ら>+す。
にごる - にごす。 <にごす>は比喩的ないいかたが主で、物理的な意味の他動詞は<にごらす>、<にごらせる>。
ぬれる - ぬらす。 古語は多分<ぬる>。<ぬらす>は<ぬる>の未然形<ぬら>+す。<xx は yy で(に)ぬれる>、<xx を yy で(に)ぬらす>という使い方だ。 <塗る>は関連語と思われるが他動詞で<塗れる>は可能、<塗られる>は受身、<塗らす>は使役。
残る - 残す
伸びる - 伸ばす
始まる - 始める
働く (自/他)  - 働かす。 <働かす>は<働く>の未然形<働か>+す。
離(はな)れる - 離(はな)す。古語は<離(はな)る>(<かる>と言う古語もあったか)
はまる - はめる
冷える - 冷やす。<冷える>の古語形は<冷ゆ>。<冷ゆ>の未然形は<冷え>。<冷え>+<す>(hie-su) --> <冷やす(hiya-su)>は十分考えられる。
(ひっくり)返る - (ひっくり)返す。<(ひっくり)返らす>とも言う。
響く - 響かす。<響かす>は<響かす>の未然形<響か>+す。 
ふえる - ふやす。 <ふえる>の古語形は<ふゆ>。<ふゆ>の未然形は<ふえ>。<ふえ>+<す>(hue-su) --> <ふやす(huya-su)>は十分考えられる。
震える - 震わす。 関連語: 振る、 触れる、揮(ふる)う、篩(ふる)う)、ふる舞う(語源?)
ふくらむ - ふくらます。 <ふくらます>は<ふくらむ>の未然形<ふくらま>+す。
ぼける - ぼかす
またがる - またぐ  <またぐ>は自動詞と他動詞があるが区別はややこしい。<敷居をまたぐ>は<を>を取るが自動詞で、<敷居を越す、越える>の<越す>、<越える>が<過ぎる>と同じく<を>をとる自動詞と同じ理屈。だがこれはそう簡単ではない。ややこしいのでこれまた別途検討予定。
向く - 向ける、向かす。 <向く>、<西を向く>とも<西に向く>ともいえるので、自動詞かつ他動詞のように見えるが、<西を向く>は<を>をとるが対象が方向であり、<くを>をとる自動詞だろう。<向かす>は使役形といえる。<向く>の未然形<向か>+す。
燃える - 燃やす。<燃える>の古語形は<燃ゆ>。<燃ゆ>の未然形は<燃え>。<燃>+<す>(moe-su) --> <もやす(moya-su)>は十分考えられる。
休まる - 休める。 <休む>
よごれる - よごす
渡る - 渡す。<川を渡る>は<を>ととるが自動詞(いわゆる移動動詞)。<渡す>は<橋を渡す(かける)>よりも<xx に yy を渡す>でよく使う。

いくらでもありそうなのでとりあえず、これまでにしておく(随時追加、削除、訂正予定)。
これだけ多ければ、これは日本語(大和言葉)の大きな特徴と言える。

-----
(注)やっかいなのは上記で自動詞とした動詞のうち<を>をとるものが多いことだ。

上がる - 坂道を上がる
当たる - 心当たりを当たる
生きる - 混乱の時代を生きた
動く - そこを動くと危ない (そこから動くと危ない、といいそうだが、あまり言わない)
折れる - 右を折れると
下がる - 坂道を下がる
過ぎる - 一時を過ぎる。目標の地点を過ぎる。ペアの 他動詞は<過ごす>。
通る - 近道を通って行く
離れる - 席を離れる
向く - 左を向く
渡る - 川を渡る、踏み切りを渡る

<当たる>、<生きる>を除けば移動、運動(動き)、方向に絡む動詞だ。

おもしろいのは<越(超)える>、<越(超)す> で手もとの辞書では両方とも自動詞扱い。<を>をとる移動動詞。一方<またぐ>も同じような意味があるが(場所-空間、時間とも)、同じ辞書でこれは他動詞扱いだ。<越(超)える>、<越(超)す>、<またぐ>は移動と言うよりは一瞬の動作だ。


1.<xx 未然形+す>の自動詞の他動詞化

上記の例から取り出すと、

浮く - 浮かす。 <浮かす>は<浮く>の未然形<浮か>+す。
反対語の<沈む>の他動詞は<沈ます>で <沈む>の<沈ま>+す。
終わる - 終わらす。 <終わらす>は<終わる>の未然形<終わら>+す。
動く - 動かす。<動かす>は<動く>の未然形<動か>+す。
乾く - 乾かす。 <乾かす>は<乾く>の未然形<乾か>+す。
咲く - 咲かす。 <咲かす>は<咲く>未然形<咲か>+す。
済む - 済ます。 <済ます>は<済む>の未然形<済ま>+す。
澄む - 澄ます。 <澄ます>は<澄む>の未然形<澄ま>+す。
鳴る - 鳴らす。<鳴らす>は<鳴る>の未然形<鳴ら>+す。
働く (自/他)  - 働かす。 <働かす>は<働く>の未然形<働か>+す。
響く - 響かす。<響かす>は<響かす>の未然形<響か>+す。 
向く - <向かす>。 <xx を向く>だが<向く>は自動詞扱い。<向かす>は<向く>の未然形<向か>+す。
----
以上は自動詞が五段活用

”使役の助動詞<せる><させる>” も可能で、

浮く - 浮かす - 浮かせる、浮かさせる。<浮かせる>は可能にもなる。<浮かさせる>は使役にもなり、<xxにyyを浮かさせる>となる。<浮かさす>も使役。<浮かべる>という他動詞もあるが、これは沈んでいるモノを<浮かす>とは意味が違う。
沈む - 沈ます- 沈ませる、沈まさせる。<沈ませる>は可能にもなる。<沈ませる>は使役にもなり<xxにyyを沈まさせる>となる。<沈まさす>も使役。
終わる - 終わらす - 終わらせる、終わらさせる。<終わらせる>は可能にもなる。<終わらせる>は使役にもなり<xxにyyを終わらさせる>となる。<終わらさす>も使役。
動く - 動かす - 動かせる、動かさせる。<動かせる>は可能の意になる。<動かさせる>は使役になり<xxにyyを動かさせる>となる。<動かさす>も使役。
乾く - 乾かす - 乾かせる、乾かさせる。<乾かせる>は可能の意になる。<乾かさせる>は使役になり<xxにyyを乾かさせる>となる。<乾かさす>も使役。
咲く - 咲かす - 咲かせる、咲かさせる。 <咲かせる>は可能の意になる。<咲かさせる>は使役になり<xxにyyを乾かさせる>となる。<咲かさす>も使役。
済む - 済ます - 済ませる、済まさせる。 <済ませる>は可能の意になる。<済まさせる>は使役になり<xxにyyを済まさせる>となる。<済まさす>も使役。
澄む - 澄ます- 澄ませる、澄まさせる。 <澄ませる>は可能の意にもなる。<澄まさせる>は使役になり<xxにyyを澄まさせる>となる。<澄まさす>も使役。
鳴る - 鳴らす- 鳴らせる、鳴らさせる。 <鳴らせる>は可能の意にもなる。<鳴らさせる>は使役になり<xxにyyを鳴らさせる>となる。<鳴らさす>も使役。
働く (自/他)
働く (自)- 働かす - 働かせる、働かさせる。<働かせる>は可能の意にもなる。<働かさせる>は使役になり<xxにyyを働かさせる>となる。<働かさす>も使役。
働く (他)。<悪事(あくじ)を働かせる>、<働かさせる>は使役になる。
 響く - 響かす - 響かせる、響かさせる。<響かせる>は可能の意にもなる。<響かさせる>は使役になり<xxにyyを響かさせる>となる。<響かさす>も使役。
向く - 向かす - 向かせる、向かせる。 <xx を向く>と<を>をとるが<向く>は自動詞扱い。<向かせる>は可能の意にならず<向かせられる>で可能となる。<向かさせる>は使役になり<xxにyyを向かさせる>となる。<向かさす>も使役。


自動詞が下一段活用では

枯れる - 枯らす。 古語は多分<枯る>。
ぬれる - ぬらす。 古語は多分<ぬる>。
焦げる - 焦がす 
溶ける - 溶かす。 <溶く>という他動詞があり、<溶ける>は<溶く>の可能、自発形。to-ka +  e-ru -->  to-ke-ru の変化か?
剥(は)げる - 剥がす。これも <剥ぐ>という他動詞があり、<剥(は)げる>は<剥ぐ>の可能、自発形。haga +  e-ru -->  ha-ge-ru の変化か?
化(ば)ける - 化かす
離れる - 離す 古語は多分<離る>。
ぼける - ぼかす
さめる(冷める、醒める) - さます
それる - そらす

おもしろいのは

欠ける - 欠かす。 

<xx を欠かす>口語ではほとんど使わないが<xx を欠かさない>さらには文語調の<欠かさず>も口語で活躍するが<欠かす>が他動詞としては意識されていないだろう。一方自動詞の<欠ける>や<欠けている>は瀬戸物やガラスの一部が物理的にないことを表すことがあるが<欠ける>や<欠けている>はほぼ一部が<こわれる>、<こわれている>と意識されているようだ。

自動詞が上一段活用では

伸びる - 伸ばす。
延びる - 延ばす


<xx (動詞)未然形+す>の形ではなく、<す>がつく二音節の純動詞を調べてみる。

おす、押す (他)
かす、化す、課す、嫁す - 漢語+す (他)
かす、貸す (他)
きす、帰す、期す、記す - 漢語+す (他)
けす、消す (他)
こす、越す、濾す (他)
さす、指す 刺す、差す、挿す (他)
しす、死す - 漢語+す (自)
たす、足す (他)
なす、成す (他)
のす、伸す、熨す (他)
ひす、比す、秘す - 漢語+す (他)
ふす、伏す  (/他)   <身を臥す>の<身を>がない<ここに臥す>を自動詞と見なす。(*)
ほす、干す、乾す (他)
ます、増す (/他)
むす、蒸す (他)
めす、召す (他)
もす、模す - 漢語+す (他)
もす、燃す (他)
よす、寄す (他)
よす (やめる、やめておく) (他)

(他)は他動詞、(自) は自動詞。

以上二音節<す>動詞に特徴的なのは大半が他動詞ということだ。

<死す>は特別で自動詞。<死す>とすると<漢語+す>にみえるが<しぬ>、<死ぬ>とすると純日本語(やまとことば)のようにみえる。死の中国語で発音(現代音 si 、四声無視)、意味からして<死ぬ>も漢語由来だろう。

<貸す> は<借りる>の古語<借る>と関係がある。<借りる>は<貸す>の有る意味で反対語の他動詞。
<成す>は自動詞<成る>と関係がある。
<消す>に対応する自動詞は<消える>。古語は<消ゆ>で<消える>はの<消ゆ>可能、自発形だ。
<越す>、<濾す>は基本的に同じような意味があるが、<越す>は<xx が yy をすぎる、とおる>で、<を>を取る自動詞とも解釈できる。<濾す>は<xx を yy を通させる>。<越す>にくわえて<超える>があるが、同じような意味だ。<AはBを越す>とはあまり言わず<AはBを超える>で、これは<を>を取る移動関連の自動詞ではなく他動詞と解釈できる。
<足す>に関連する動詞で<足る>(古語)、<足りる>があるが、<足す>の自動詞ではない。
<成す>に対応する自動詞は<成る>。
<伸(の)す>、<熨(の)す>は限定的につかわれ、一般的な動詞は<伸ばす>。<伸ばす>に対応する自動詞は<伸びる>。<伸ばす>は<伸ぶ(?)>の未然形<伸ば>+<す>と考えられる。
<伏す>は古語的で一般的な動詞は<伏せる>。<かがむ>という和語があるが<かがむ>は自動詞で他動詞は<かがめる>。

(*) <身を伏す>、<身をかがめる>は日本語にはめずらしい再帰動詞だ。ドイツ語やフランス語などのロマンス語では普通に使われる。

ドイツ語   sich +他動詞 --> 自動詞
フランス語  je m'appelle Jean-Paul. (I call myself Jean-Paul).

疲れたので体を休める --> 疲れたので休む

上記の表現がどこまで自動詞化しているかは別途調べる予定だが、 <他動詞の自動詞化>とみなせる。


<増す>は自動詞にも他動詞にもなる。<増さす>という使役形もある。<まさる>は関連語だろう。
<燃す>に対応する自動詞は<燃える>だが、古語<燃ゆ>の可能、自発形だ。<燃やす>もある。
<寄す>に対応する自動詞は<寄る>。<寄す>は古語的で今は<寄せる>が普通。<寄る>の未然形<寄ら>に<す>、<せる>をつけて<寄らす>、<寄らせる>とも言える。

他動詞に代表<成す><す>がつく二音節の純動詞だけでは片手落ちなので、自動詞の代表<成る>の<る>がつく二音節の純動詞を調べてみる。これはたくさんある。

ある、在る、有る (自)
る、射る、鋳る、煎る (他)
、居る、入る、要る
る、得る (他)
、売る (他)
える、得る、選る(他)
おる、折る、織る、(他) 居る (自)
かる、刈る、狩る、駆る、借る (他)
る、切る (他)
、着る (他)
る、来る (自)    xx を来る>は<を>をとる<移動の自動詞>とみなす。
、繰る、刳る (他)
ける、蹴る (他)
こる、凝る  (自)
さる、去る (/他)
しる、知る (他)
る、刷る、摺る、擦る、掏る  (他)
  (他)
せる、競る  (他)
そる、反る (自) 、剃る (他)
たる、足る (自)
ちる、散る (自)
つる、釣る、 吊る  (他)
てる、照る (自)
とる、取る、盗る、採る、撮る、執る (他)
る、成る (自)
、鳴る (自)
にる、似る (自)、煮る (他)
る、練る、煉る (他)
、寝る (自)
のる、乗る、載る (自)  < xx に乗る>は日本語では自動詞とみなす。
はる、張る、貼る (他)
ひる、簸る (他)
る、経る (他)
、減る (自)
ほる、掘る、彫る (他)
みる、見る (他)
る、漏る (自)
、盛る (他)
やる、遣る (他)
る、選る (他)
、寄る、拠る、因る (自)
わる、割る (他)

アクセントによって意味が異なる場合は下線でアクセントの位置を示した(東京アクセント)。<す>がつく二音節の純動詞に比べると明らかに自動詞の割合が多い。


<xx 未然形+す>の形ではないが下記のような例がある。

にごる - にごす。<xx 未然形+す>は<にごらす>で、<にごる>の純使役形。<にごす>との使い分けがある。<池の水をにごす>、<お茶をにごらす>とは言わない。
残る - 残す。<xx 未然形+す>は<残らす>で、<残る>の純使役形。これも<残す>との使い分けがあるようだ。<歴史に名を残らす>とは言わない。 

以上から結論としては<す>自体に他動詞、他動詞化の働きがあると言える。

----

2.形容詞の動詞化

 日本語の形容詞の動詞化はかなり規則的。

ほとんどの 形容詞に使えるのは

1)<なる>、<する>を形容詞の連用形に付ける
形容詞の連用形 + なる (自動詞)
形容詞の連用形 + する (他動詞)

 2)<まる><める>を形容詞の語幹に付ける

早い - 早まる - 早める
速い   - 速まる - 速める
遅い - 遅まる - 遅める (遅くなる、遅くする、が普通)
のろい  - のろくなる - のろくする
丸い - 丸まる - 丸める (丸くなる、丸くする、は意味がやや違う)
高い - 高まる - 高める (比喩的、士気が高まる)、高くなる、高くする、は主に物理的
低い  - 低まる - 低める
広い  - 広まる - 広める(比喩的、うわさが広まる),  広がる - 広げる、は主に空間的
広くなる - 広くする、は一般的
狭(せま)い  - 狭(せば)まる - 狭(せば)める
深い  - 深まる - 深める (比喩的、知識を深める)、深くなる - 深くする、は物理的
強い  - 強まる - 強める 
弱い  - 弱まる - 弱める
固い  - 固まる - 固める、硬い - 硬くなる - 硬くする
太い  - 太くなる - 太くする
細い   - 細まる - 細める  (細くなる、細くする、もよく使う)
大きい  - 大くなる - 大くする
小さい  - 小さくなる - 小さくする
鋭い  - 鋭くなる - 鋭くする
鈍(にぶ)い  - 鈍くなる - 鈍くする
寒い  - 寒くなる - (寒くする)、自然現象なので<寒くする>の使用は限られる。
寒い  - 冷(さ)める - 冷ます
冷たい - 冷たくなる - 冷たくする
暑い  - 暑くなる - (暑くする)、自然現象なので<寒くする>、<暑くする>の使用は限らる。
暖(温)かい - 暖(温)まる - 暖(温)める
熱い  - 熱くなる - 熱くする
厚い - 厚くなる - 厚くする
薄い  - 薄くなる - 薄くする
濃い - 濃くなる - 濃くする
薄い  - 薄まる - 薄める
明るい - 明るくなる - 明るくする
暗い - 暗くなる - 暗くする
黒い  - 黒くなる - 黒くする
白い  - 白くなる - 白くする
赤い  - 赤くなる - 赤くする、 赤まる - 赤める、も場合により使われる

----

3.<まる-める>とその対応関連の自動詞-他動詞ペア

純動詞の<まる-める>は動詞にも同じような法則性がある。また<まる-める>対応(xx a-ru -xx e-ru)の動詞には次のような動詞がある。

 <まる-める>
埋まる - 埋める
からまる(からむ) - からめる
決まる - 決める
きわまる - きわめる
絞まる-絞める、閉まる- 閉める、
染まる - 染める
貯める - 貯まる、溜まる-溜める
ちぢまる(ちぢむ) - ちぢめる
つまる - つめる
とどまる - とどめる
止まる - 止める
泊まる - 泊める
始まる - 始める
はまる - はめる
まとまる - まとめる

<かる-ける>
見つかる - 見つける
かかる - かける (虹がかかる - 橋をかける)

<がる-げる>
上がる - 上げる
下がる - 下げる
曲がる - 曲げる

<たる-てる>
当たる - 当てる

 <わる-える>
変わる - 変える、 (代わる - 代える、替わる - 替える)
終わる - 終える

----
(付録)

4.<わかる>

自動詞 - 他動詞

わかる - 分ける

<わかる>は極めて重要な動詞だが<xx がわかる>で自動詞。他動詞<分ける>の古語形<分く>の未然形<分か>+<る>が語源だろう。<分く>の自動詞としては<分かれる>があるが、こちらの方は物理的な意味が主。また<分かれる>の古語形は<分かる>だろう。
英語では to understand が <わかる>に相当するがこれは他動詞。 to understand は under + to stand なので自動詞の要素がある。
徐々にわかったり、突然わかったりするが、<わかる>の頭の中の過程を考えてみれば、<わかる>は自動詞的な頭の中の出来事、自然現象で、意識的な努力がいる場合もあるが、それでも<ふってわいて来る>感じがある。


5. 五感動詞

<わかる> は知覚動詞と言えるが、感覚動詞、五感動詞はどうか? けっこう複雑だ。

自動詞 - 他動詞

1)見える - 見る。 <見える>の使役は<見えさせる>、<見えさす>だがほとんど使われず<見せる>となる。<見る>の使役は<見らせる>、<見さす>で<見るようにさせる>だがこれらもほとんど使われず<見せる>となる。
また<見える><見る>の未然形<見>+<得る>で可能の意がある。<見る>は他動詞なので自発の意はない。だが古語形<見ゆ>は自動詞(<見える>の意)で<見ゆ>の未然形は<見え>で、<見える>に自発の意が出てくる。被害、迷惑の場合は<見られる>となる。


2)聞こえる - 聞く。 <聞こえる>の古語形は<聞こゆ>。<聞こゆ>の未然形は<聞こえ>で、<聞こえる>に可能、自発の意がある。

3)におう(匂う、臭う) - 嗅ぐ

 <におう(匂う、臭う)>の他動詞はない。英語では自/他ともに to smell というが、使い慣れるまで変な感じだ。

4)(xxの)味がする - 味わう

5)触(ふ)れる - 自動詞、他動詞同形

xx が手に触れる - xx を手で触れる

? - 感じる

<感じる>は<xx を感じる>で他動詞。対応する自動詞はないようだ。受身形の<感じられる>があり、<感じられる>には受身以外に可能、自発の意がある。


sptt


No comments:

Post a Comment