Sunday, November 12, 2017

感覚動詞<見る>、<見える>の日本語、英語、イタリア語比較


前回のポスト ”<感じる>は自動詞、はたまた他動詞?” は途中で投げ出してしまったようなので、<見る、聞くなど>を加えて再度挑戦。感覚動詞という用語は特に定義されているわけではないが、グループとして特殊なところがあり、その他の動詞と違うところがある。日本語では<を>とる移動関連の自動詞が特殊で、なぜ<を>とるのかの説明がいる。道を歩く(to walk on the road)。トンネルを抜ける(to go through a tunnel)。

感覚動詞の代表は日本語<感じる>、英語 to feel、to sense(ラテン語系の輸入語)。今回は今再勉強中のイタリア語では sentire だ。<感じる>は英語の to sense に似て漢語<感>に大和言葉の<する>をつけた動詞で漢語由来の造語動詞。

日本語(基本的に大和言葉を対象とする)の感覚動詞、感覚関連動詞には

見る
聞く
嗅(か)ぐ
味わう
触(ふ)れる、触(さわ)る

(の五感)がある。第六感というのがあるがこれはテレパシーか?以上は<触(ふ)れる、触(さわ)る>を除き<を>をとる他動詞。他動詞の定義はよく定まっていないが、意味的には<対象に働きかける>積極的なところがあるようだが、意味にとらわれすぎると文法規則を見うしなうことがあるので注意が必要。
<触(ふ)れる、触(さわ)る>は<手をxxに触れる>という言い方があるが、どうも例外か英語の翻訳のようで、基本的には<に>をとるだけでまにあう自動詞。基本的には<xxがyyに触れる>。<さわる>はまた少し違うようで、<xxにyyをさわられた>という言い方はセクハラがらみでよく使われるようだが、これは受身なので、能動にすると、<xxが(は)yyにさわった>が普通で<<xxが(は)yyをさわった>は純日本語らしくない。この<さわられた>は受身というよりは<被害>で他動詞でなくてもいいようだ。<被害>、後から少し触れる<自発>は日本語文法特有の用語のようで、調べ、考えてみる必要がある。他動詞の代表<取る>は<xxにyyを取られた>の能動への変換は<xxが(は)yyを取った>となる。さて、上記の感覚関連の他動詞には日本語ではそれぞれ対応する(ペアになる)自動詞がある。

1)見る - 見える
2)聞く - 聞こえる
3)嗅(か)ぐ - におう、かおる
4)味わう、なめる - 味がする (これは一語の動詞ではない)
5)触(ふ)れる、触(さわ)る (これは日本語では基本的に自動詞)

これに加えて総合的な<感じる>がある。

6)感じる - 感じられる

<感じる>は漢語<感>由来でどうも他動詞のようだ。ペアになる自動詞はなく<感じられる>は<感じる>の自発、受身、可能の意になると考えられるが自発の意の<感じられる>が<xxが感じられる>で自動詞に近い。前回のポスト ”<感じる>は自動詞、はたまた他動詞?”参照。

1)見る - 見える

<見る>、<見える>は目が寝ている時以外はほぼ休みなく使われる如くによく使われる動詞だ。まず活用を見てみる。

見(み)ない (見ず)
見(み)て、見(み)ます 
見(み)る
見(み)れば
見(み)よう (見やう、見ん、見む) 

<み>が語幹で、この語幹<み>はまったく変化がない。 <み>は<ま行>の上の方にあるので上一段活用と呼ばれる。次に検討する<聞く>が日本語の動詞の基本活用である五段活用なのと大きな違いだ。<する>、<来(くる)>(変格活用)は別として<る>がつく基本動詞<取る>、<やる>、<なる>、<知る>、<売る>など多くは五段活用。だがまったくの例外というわけではなく<着(き)る>、<煮(に)る>、<似(に)る>、<居(い)る>は一音節語幹(それぞれ<き、に、い>)に<る>がついた上一段活用。

古くは<見ゆ>というのがあった。<富士の山見ゆ>でこれは<富士の山が見える>で<富士の山を見る>ではなさそうだが、まったくダメというわけではにようにみえる。<見ゆ>はどのように活用していたのか。

見(み)え(ye)ず
見(み)え(ye)て、
見(み)ゆ(yu)
見(み)ゆ(yu)る時、ところ
見(み)ゆ(yu)れば  (これは仮定形ではなく已然形) 仮定形は<見えなば>か?
見(み)え(ye)ん、えむ

<富士の山>を頭につけて、意味を見ると、かなりの確率で自動詞のようだ。<見ゆ>は<や>行なので、<え>はヤ行の<ye>だったろう。<y>は <i grec>(フランス語か、ギリシャ語の i の意>とも言われるようにほぼ<i>と同じ。 フランスやギリシャに限らず日本語でも<ye>は<ie>に限りなく近いか同じ。日本語の<i>、<e>はいわゆる曖昧母音ではないが、イタリアの<i>、<e>が口や舌の筋肉を大いに使ってかなりはっきり発音されるのとは違って、特別強調するとき以外は相当なまけた<i>、<e>と言える。<み(mi)>の<i>と<ie>の<i>を吸収すると<mi><e>で<み><え>となる。これは上の<見(み)え(ye)ず>の<見(み)え>とは少し違う。なぜこんな詮索(せんさく)をしているかというと、<見る>がどこからきた(生まれた、発生した)かを考えるためだ。上でも書いたが<日本語の動詞の基本活用である五段活用>を前提とすると、<見る>、<見える>は<見ゆ>由来ではないか?という推測をしたいためだ。だが、<見ゆ>は上記のように五段(昔は四段)活用ではない。<ye>があるので下一段活用だ。<見る>ははじめに見たように<み(mi)>が変化しない少し変な下一段活用。<見える>は<見ゆ>の活用にかなり似ていて、しかも<見ゆ>と同じ自動詞。<見(み)>の一音節ではなく<見(み)え>の二音節が語幹の下一段活用。

見(み)えない
見(み)えて、見(み)えます 
見(み)える
見(み)えれば
見(み)えよう (見えん) 

一方<見る>は繰り返しになるが、<み(mi)>が変化しない少し変な下一段活用。同じ活用は

居(い)る  居ない
着(き)る  着ない
煮(に)る  煮ない
似(に)る  似ない

くらいなもので多くはない。何か共通しているものはないか?

居(い)る  居ない 自動詞   
<居られる>は可能、被害(居られて迷惑だ、こまる)。最近は可能は<居れる>でもいい。

着(き)る  着ない 他動詞
<着られる>は可能、受身、場合によっては被害。。最近は可能は<着れる>でもいい。

煮(に)る  煮ない 他動詞
<煮える>は自動詞、<煮れる>は可能。<煮られる>は可能、受身、被害(釜でゆでられた五右衛門がいる)。

似(に)る  似ない 自動詞
<似せる>は他動詞。<似られる> 被害の受身か?<似る>はやや特殊で<似ていない>、<似ている>というのが普通。だが、基本的には他と同じだ。<親に似る>。

<見る>を含めて何か共通しているものはないか? <煮る>が<見る>に一番近い。

見(み)る  見ない 他動詞
<見える>は自動詞、<見れる>は可能。<見られる>は可能、受身、被害の受身。

被害の受身は人がからんでいるようだ。 被害では自動詞も受身のような 被害になることに注目。
他動詞<見る>は自動詞と思われる古語<見ゆ>から出てきたのか?の問題に戻る。

仮説1) <見る>は<見ゆ>に由来する。
仮説2) <見る>は<見える>に由来する。
仮説3) その他

一方<見す>という動詞もあり<富士の山、姿見す>で<富士の山が、その姿を見せる、見せている>の意になろう。、したがって、古語では<を>がないが、他動詞。

<見す>は現代語では<見せる>で

見せない
見せて
見せる
見せる時
見せれば

のように活用して<みせ>が語幹の下一段活用のようだ。英語では全く違う to show をつかうが、イタリア語では farsi vedere で、使役形(xxに見させる)だ。<見す>の活用はどうだったのか?

見せず
見せて  見せしとき
見す(る)
見する時  見するところ
見すれば (已然形、仮定形は<見せなば>か?)

終止形<見す>がもとで<見する>は後発だろう。これも下一段活用。だが語幹は<みせ>ではなく<見せ>と<見す>が混じっている(古語では下二段というようだ)。連体形の<見する>の影響があったのかも知れない。これから上記の現代語の活用への移行はどのようにしておこったのか?いろいろ疑問が出てきた。

見す (他動詞) -> 見せる(他動詞)  この変換は間違いなさそう
見ゆ (自動詞) -> 見える(自動詞)  この変換もかなり高い確率である。

横道にそれたので、再度 "他動詞<見る>は自動詞と思われる古語<見ゆ>から出てきたのか?の問題" に戻る。

仮説1) <見る>は<見ゆ>に由来する。

 上で少し触れたが、

<富士の山見ゆ>でこれは<富士の山が見える>で<富士の山を見る>ではなさそうだが、まったくダメというわけではにようにみえる。

<Manapedia>というサイトの<見ゆ>の項目に、古語<見ゆ>の比較的丁寧な説明と例文がある。だが基本的に自動詞。最後におまけみたいに他動詞とみなして<見せる>の意があるが、<見ゆ>の自動詞は動かしがたい。(末尾参照)

<xゆ>または<xxゆ>という終止形は現代語にはない。<見ゆ>と同じように多くは<xxえる>の下一段に取って代わられてしまったのだ。 そして現代語の<xxえる>動詞は基本的に自動詞。

癒える - 癒ゆ   自動詞  他動詞  癒やす
消える - 消ゆ   自動詞  他動詞  消す
絶える - 絶ゆ   自動詞  他動詞  絶やす
煮える - 煮ゆ   自動詞  他動詞  煮る
生(は)える - 生ゆ   自動詞  他動詞  生やす
冷(ひ)える - 冷ゆ   自動詞  他動詞  冷やす
増(ふ)える - 増(ふ)ゆ   自動詞  他動詞  増やす

上一段(見る)、下一段(見える)の他の動詞を調べたりしていろいろ考えたが、仮説1)も仮説2)納得のいく説明が見つからない。再度辞書(日本語、英英-漢、伊英)をしらべたところ、ある発見をした。

意味が先になるが、<見る>は<目で見る>で、<目を使ってモノを見る>のように解釈する、あるいは一般的に解釈されているのではないかと思っていたが、これは大きな間違い。<見る>は<目で見る>ではないのだ。それでは何か?

まず英語。英語には<見る>関連で to see、to look at、to watch、<見える>関連で to look がありそうだが、日本語の意味を考えると to be seen が適当のようだ。<(xxのように見える>関連で to look (young)。to look like、to seem、to appear などがある。<見る>は他動詞で、相当するのは to see だが。どうもかなり違う。一方 to look は自動詞で<xxを見る>は to look at と前置詞 at が必用。<テレビを見る>は to see TV ではなく to watch TV となる。実際の使われ方をみると、<目で見る>には大体 to look at が使われるようだ。

I am looking at you. は I am seeing you. は間違い。to see は現在進行形(be xxing)にならないという文法法則がある。これは to know (知る)と同じ。to know の現在形には<知る(ようになる)>と<知っている>の意味があるのだ。

I know it. は<私はそれを知っている>の意が普通。これを応用すると to see は

I see Mount Fuji. で<私は富士山を見ている>となるが、おそらくこうは言わず、I am looking at Mount Fuji. となるだろう。実際のところ<目で見る>の意で to see はほとんど使われない。手もと英英-漢辞書(Oxford English-Chinese Advanced Dictionary)でも<目で見る>の意が初めに少しあるだけで、しかも英文はない。つぎにでくるのが

to see  =  to understand      I see.
以下
to see  = to check, to make sure   確かめる   Let's see if it will be OK or not.
to see  = to accompany       to see someone off    xxを見送る、 I will see you home. 家まで送りましょう。

以上は辞書のそのままのコピーではなく、私がアレンジしたもの。興味とひまのある人は少し詳しい英英辞書にあたってみるといい。かなり詳しい例文付きの解説があるはずだ。

さて ”<見る>はどこから来たのか?” に関する今回の発見はこれが、ヒントになった。一方<英伊辞典>(Collins Reveso)の方は

to see
 [1]     ( saw    pt)   ( seen    pp)    vt, vi  
a      (gen)    vedere  
I can't see him      non lo vedo  (私は彼が見えない、彼がみあたらない)
I saw him writing the letter      l'ho visto scrivere or mentre scriveva la lettera  (xxがyyする、しているのを見た)
I saw him write the letter      l'ho visto scrivere la lettera (xxがyyする、しているのを見た) 
have you seen that film?      hai visto quel film?   (あの映画をもましたか?)
there was nobody to be seen      non c'era anima viva  (誰もいない、見えない)
I can't see anything      non vedo niente   (何も見えない)
I can't see to read      non ci vedo abbastanza per leggere  (読むものが見当たらない、見つからない) 
let me see        (show me)    fammi vedere,   (let me think)    vediamo (un po')   (少し考えさてくれ、ちょっと待て)
can you see your way to helping us?        (fig)   puoi trovare il modo di aiutarci?  (我々を助けるすべがみつかりますか、ありますか?)
to go and see sb      andare a trovare qn   (行って見てみよう)
see you soon/later/tomorrow!      a presto/più tardi/domani!   (また会いましょう)
see you!      ci vediamo!  (また会いましぃう)
see for yourself!      guarda qua!   (自分で(よく)みろ!)
as you can see      come vedi   (このように、ご存じのように)
I see in the paper that ...      vedo che sul giornale è scritto che...   (xxxxが(と)新聞に見える)
I see nothing wrong in it      non ci trovo niente di male  (私には何も、どこも、悪いことはない)
I don't know what she sees in him      non so che cosa ci trova in lui  (彼女は彼に何を見たか、彼をどう見たか
(go and) see who it is      vai a vedere chi è, vedi chi è  <誰だか見てみよう、チェックしてみよう
b      (understand, perceive)    vedere, capire 
to see the funny side of sth      vedere il lato comico di qc   (xxの滑稽な面を見る)
I see!      capisco!   (わかった)
I don't or can't see how/why etc ...      non vedo come/perché etc...   (どのように、どうしていいかわからない)
as far as I can see      da quanto posso vedere   (私の見る限り、知る限り、考える限り)
the way I see it      a parer mio, a mio giudizio   (私の見るところ、知るところ、考えるところ)
c      (accompany)    accompagnare  
to see sb to the door/home      accompagnare qn alla porta/a casa   ドア / 家まで送りましょう
I'll see you to your car      ti accompagno alla macchina    あなたの車のところまで送りましょう
d      (ensure, check)    vedere, assicurarsi  
to see if      vedere se    + indic       (xxかどうか見る、確かめる)
to see that      vedere or badare che    + sub    badare     (occuparsi di, negozio, casa)    to look after, mind  ,   (bambino, malato)    to take care of, look after,   (cliente)    to attend to (注意して見る))
(一部略)

で、参考になる。総じて<xxを見る(目で見る)>という例文は少ない。 

1)I can't see you. は日本語では他動詞の<あなたを見ない>ではなく自動詞の<あなたが見えない>となる。
2) <見た>は大体<目で見た>だが、背後に確認(確かに見た)の意があるようだ。
3) 見つける  日本語では<xxが見つかる>の意が多い。
4)<会う>、<お目にかかる>の意。 <また会いましぃう> の常套句は A riverderci.
5) <試(ため)す>の意。日本語では常套句。<xxてみる>、<して見る>、<やって見る>、<見て見る>
6)what she saw in him. (彼女は彼に何をみたか、彼をどうみたか)は重要。特に to see in xx。

7)to see には<見る>以外に<知る、知っている、考える、考えている>の意がある。
8)送る(ついて行く)の意がある。場合によっては日本語の<見送る>の意になる。
9)チェックする、確かめる、の意でよく使われる。したがって<チェックしてみる>、<確かめてみる>はやや冗長。
10)<めんどうをみる>、<注意してみる>の意。 これはすでに<みる>が入ってしまっているが、<年老いた親を見ないといけない>、<ちょっと留守にするから、赤ん坊(店)を見といてくれ>などが<見る>だけの例。
11)英語特有の慣用表現に to see a doctor (医者に見てもらう)というのがある。イタリア語では farsi vedre dal medico で<医者に見られる、見てもらう>だ。(末尾参照)

<見る>の論議とは直接関係ないが、私は長らく<xxを見送る>がなぜ<to see someone off>となるかよくわからず、見送るときに必要なので丸暗記していた。。<to see>=<見る(目で見る)>にとらえらていたからだ。I will see you home. (あなたをあなたの家で見ます)はこれではわからない。

少し回り道になるが、to see のイタリア語の第一義の vedere を伊英辞典(Reveso) を見ておいた。末尾参照。重なるところが多いが<見送る、to accompany>、<面倒をみる、to look after, to take care of>の意味はないようだ。まは再帰表現の vedersi がよく使われる。


前置きがかなり長くなったが、およそ二週間の検討、奮闘の末の今回の発見、<見る>は<目で見る>ではないのだ。それでは何か?

仮説3)<見る>は<見入(い)る>由来。

これでなぜ<見る>の<る>が活用の中にあるかが説明できるのだ。

見入る - 見いる - mi + i  + ru -> mi + i + ru  -> mi + ru (見る)

最後の変化は容易だ。

いくつか問題があるが、まず<見入(い)る>は<xxに見(い)入る>で自動詞。<見る>は<xxを見る>で他動詞。<入(い)る>はやや古語で、現代語は<入(はい)る>だ。漱石は<入(はい)る>の場合は<這いる>とか<這入る>とか書いていたようだ。それなりの理由があったのだろう。<すきま風が這入る>は<這入る>の意味と自動詞であることをよく示している。

部屋に入る。
21世紀に入る。

まれに<xxを入る>という言い方がる。

部屋を入ると、花子が座っているのが見えた。 これは<部屋に入ると>でもいい。

だが

門を入ると、玄関が見えた。 これは<門に入(はい)ると>では具合が悪い。門には入れないのだ。

上の花子の例も

部屋のドアを入ると、花子が座っているのが見えた。 で、<部屋のドアに入ると>では具合が悪い。<xxを入る>はどうも<xxを抜ける>、<xxを通る>、<xxを過ぎる>の意のようで、さらに<抜ける、通る、過ぎる>はあまり長くない入口、障害物のようだ。<トンネルを入る>ではおかしい。さらには<xxを<抜けて、通って、過ぎて>何かをするような感じがある。<門を入る>、<ドアを入る>では終わらないのだ。他の<xx入(い)る>複合動詞を検討してみる。<xx入(い)れる>複合動詞よりもはるかに少ないがそこそこある。

痛(いた)み入る  - もとの意味からずれて慣用的な意味になっている。今はほぼ死語か?
押し入る -  無理やり入り込む。
恐(おそ)れ入る  - もとの意味からずれて慣用的な意味になっている。
かけ入る - <駆けて入る>。<駆けこむ>に近い。<かけあう(交渉する)>ではない。
聞き入る - 美声に聞き入る。<聞き入れる>とは違う。
食(く)い入る - テレビを食い入るように見る。to watch TV で to see TV ではない。
悔(く)いる - 同じような意味で<悔やむ>という語がある。<悔いやむ>由来か。<やむ>は<病む>だろう。<悔いる>は古語<悔ゆ>の連用形<悔い>+入る。
込(こ)み入る  - <たいそう込んでいる>の意か? 
強(し)いる  - <強いる>と書くと見えなくなるが、これは多分<する>の連体形<し>+入る。
立ち入る - もとの意は<立って、立ちながら><入(はい)る>だったろうが、意味がずれている。<立ち入り禁止>とは言ったどういう意味か? 落語ではないが<這って入(はい)る>のはいいのか?
つけ入る  - <つけ込む>の意に近い。この<つけ>はなにか?<つけ>となっているので<着く、付く、突く>ではなく<つける>で<着ける、付ける>(密着させる、付帯させる)だろう。
飛、跳(と)び入る  - ほとんど<飛、跳び入り>として使う。<飛んで火に入(い)る、夏の虫>というのがある。
取り入る - <取り入れる>とは違う。
寝入る   - <寝込む>の意に近い。
入(はい)る - <入る>と書くとみえなくなるが、漱石のように<這(は)入る>と書くと、<這って><入(い)る> となる。これは<立ち入(い)る>と対比できるか?
恥(は)じ入る - <恥じる>の古語は<恥ずる>、<恥ず>。<恥ず>の連体形<恥じ>+入る。恥(はじ)は連用形の体言(名詞)用法。
率(ひき)いる  - <率いる>とくと見えなくなるが、これはおそらく<引く>の連用形<引き>+入る。だが<引いて入(い)る>とはどういう意味か?<引き入れる>とは違う。
報(むく)いる  - <報(むく)ゆ>が古語。<見る>と同じく<むくゆ>の連用形<むくい>+<入る>。

上記のうちもともとの意味で、動作表現は

押し入る -  無理やり入り込む。<押すように、無理やり入る>。
駆け入る - <駆けて入る>。古語か?<駆けこむ>に近い。<駆けて、入る>。
立ち入る - もとの意は<立って、立ちながら><入(はい)る>。
飛、跳(と)び入る  - ほとんど<飛、跳び入り>として使う。<飛、跳んで、入る>
入(はい)る - <這って><入(い)る> となる。

で<xxの中に入(はい)る>の意が残っている。ただし単に<中に入る>のではなく、むしろ<中に入って何かする>ような感じ、それに<押し入る>、<立ち入る>は<無理やりxxする>のニュアンスがある。また<駆け入る>、<飛、跳び入る>、<入(はい)る>は積極的なニュアンスがある。

一方

痛(いた)み入る
恐(おそ)れ入る
聞き入る
食(く)い入る
悔(く)いる
込(こ)み入る
寝入る
恥(は)じ入る

は<すっかりxxする>の意が共通している。 また別のところで検討したが<xx込む>にも似たような意がある。()。<xx込む>の方が広範囲にわたっている。<テレビに見入(い)る>はこの意になる。だがこの<見入(い)る>は現代語だ。<悔いる>が他動詞、それ以外は自動詞。

残るは

強(し)いる
つけ入る
取り入る
率(ひき)いる
報(むく)いる

だが<強いる>、<率いる>は他動詞。他は自動詞。<強(し)いる>、<つけ入る >、<取り入る>は何か抵抗を受けながら<xxする>のニュアンスがある。 否定的(negative)な意味あいだが積極的なニュアンスがある。

 <率(ひき)いる>を調べたところ古語は<引き率(い)る>で<率る>は<ひきいる>ではなく<ゐる>で他動詞ワ行上一段活用。{*語幹・活用語尾が同一}ワ行上一段活用の動詞は、「率る」のほかには「居る」「率(ひき)ゐる」「用ゐる」があるだけである。このうち「率ゐる」は「引き」+「率る」、「用ゐる」は「持ち」+「率る」によって成立した語である。(末尾参照)

他動詞ワ行上一段活用。{*語幹・活用語尾が同一}は<見る>と同じだ。したがって<見率(ゐ)る>という語があったとすると、

見ゐず
見ゐて、見ゐし時
見ゐる
見ゐる時
見ゐれば(已然形、仮定形は<見ゐ>なば)

これから<ゐ>を除けば他動詞<見る>の活用になる。だがこれは<見る>という語がすでに存在していで、その連用形が<見(み)>という前提に立っている。一方自動詞の<見ゆ>(見える)は存在していた。<見ゆ>の」連用形は<見え>。したがって<見え>+<ゐる>で<見えゐる>となる。

<率(ゐ)る>の意味は
① 伴う。引き連れる。連れる。
② 身につけて持つ。携帯する。携える。

<見えゐる>は①<見えて>伴う。引き連れる。連れる。<見えて>② 身につけて持つ。携帯する。携える。となる。発音上<見えゐる>が<見ゐる>になり、さらに<見る>になる可能性はある。だが、意味上<見えゐる>が<見る>には変わりそうにない。

<報(むく)いる>の古語は<報ゆ>で、これまたやや特殊な活用。

自動詞ヤ行上二段活用
活用{い/い/ゆ/ゆる/ゆれ/いよ}
ヤ行上二段動詞は、「老(お)ゆ」「悔(く)ゆ」「報ゆ」の三語だけ。

だが、<報いる>は<見る>とまったく関係ない。

さて他動詞<見る>と由来と見られる自動詞<見入る>の関係だが、<見入る>は<xxに見入る>で自動詞だが、<xxが見入る>という言い方はないので、純自動詞ではない。<見入る>の由来は、すでに何度も書いたようだが

古語の自動詞<見ゆ>の連用形<見え(miye)>+<入る(iru)>の<見え入る>。だが<見え入る>とはどういう意味か?<見える>は<xxが見える>で純自動詞。<入る>には今上で見たように、<すっかりxxする>を含め、総じて<無理やりxxする>のニュアンス、積極的なニュアンスがある。<無理やりxxする>、積極的なニュアンスは<他動詞>的だ。自然と<xxになる>、<見える>ではないのだ。このような心理的なニュアンスから、<見え入る>が他動詞<見る>のニュアンスをのある<見え入る>になった可能性がある。初めの方で書いたが、昔は<xxがyyする>、<xxをyyする>といった<が>や<を>はそれほど使われなかった。<富士の山見ゆ>、<柿食(は)む>。
<見え(miye)>+入る(iru)>は発音上は<見え(miye)>+る(ru)、見える>になりやすいが、<見える>はすでに自動詞の<見える>があった、あるいは出来つつあった。一方<見え(miye)>+<入る(iru)>の ye がぬけると<見(mi)>+入る(iru)、見入る>となる。自動詞的、自発的、受身的な<ye え>がない<xx見入る>で他動詞用法が出来てきたのではないか? 意味は単なる<目で見る>ではなく、<無理やり見る>、<すっかり見る>、<しっかり見る>と言ったニュアンス、あるいは<xx見入りて(見て)、yyす>といった言い方。<目で見る>という観念(モノの見方)は抽象度、一般化度が高い。一方<無理やり見る>、<すっかり見る>、<しっかり見る>は具体的だ。言語は具体から抽象、一般化へ進む傾向がある。<見入る、mi-i-ru>が発音上<見る、mi-ru>になるのは比較的容易だ。だが、問題はまだ残る。<見る>という終止形はほとんど使われなかっただろう。<富士を見る>は相当新しい言い方だ。<<富士見ゆ>(富士が見える)はいいが<富士見る>は少しおかしいように思える。

富士見ず、富士見なば(仮定形)
富士見て、富士見し時
富士見(る)
富士見る時
富士見れば(已然形)

<富士見る>以外はよさそう。<る>のない<富士見>はもっとおかしい。昔は助動詞<らしい>の原形の<らし>があった。<xxのようだ>の意。<xxのようだ>は<xxの様だ>で日本語、漢語の折衷だ。したがって<の>が必要になる。接続は昔も今も連体形につく、

見ゆ 見えるらしい(見えるようだ) - 見ゆるらし
来る 来るらしい(来るようだ) - 来るらし
する するらしい(するようだ)- するらし (<すらし>ではない)
行く 行くらしい(行くようだ) - 行くらし

見る 見るらしい(見るようだ) - 見るらし (見らし)ではない

漢文の翻訳によく出てくる<べし>という助詞がある。多義語だ。終止形につくようだ。

見ゆ 見えるべきだ (見える必要がある) - 見ゆるべし
来る 来るべきだ (来る必要がある) - 来るべし
する するべきだ (する必要がある)- すべし<するべし>でもいいか)
行く 行くべきだ (行く必要がある) - 行くべし

見る 見るべきだ (見る必要がある) - 見るべし <見べし>ではない



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末尾



vedere
1. vt  (他動詞)
a    to see  
senza occhiali, non ci vedo      I can't see without my glasses  
non si vede niente, non (ci) si vede        (è buio)    you can't see a thing  
non si vede        (non è visibile)    it doesn't show, you can't see it  (それは(が)見えない)
vedere qn fare qc      to see sb do sth  
è una partita da vedere      it'll be a match worth seeing  
l'ho visto nascere        (fig)   I've known him since he was born  
ho visto costruire questa casa      I saw this house being built  
b      (raffigurarsi 姿を見せる、現れる, (raffiguare : to show, to present)    to see 
vedere tutto nero      to take a bleak view of things  
non vedo una via d'uscita      I can see no way out  
modo di vedere      outlook, view of things  
vorrei vedere te al posto suo!      I would like to see you in his place!  
lo vedo male questo progetto      I can't see this project working  
c      (esaminare, libro, prodotto)    to see, look at  ,   (conti)    to go over, check (調べる、チェックする)
vedi pagina 8      see page 8  
mi fai vedere il vestito nuovo?      let me see o have a look at the new dress  
fammi vedere il tuo tema      let me see your essay  
d      (scoprire)    to see, find out  (見つける)
vai a vedere cos'è successo      go and see o find out what has happened  
voglio vedere come vanno le cose/che possibilità ci sono      I want to see o find out how things are going/what opportunities there are  
vediamo se funziona      let's see if it works  
è da vedere se...      it remains to be seen whether ...  
e      (incontrare)    to see, meet  (会う)
non lo vedo da molto tempo      I haven't seen him for a long time  
guarda chi si vede!      look who it is!  
farsi vedere      to show one's face  
da quella volta non si è fatto più vedere      he hasn't shown his face since  
fatti vedere ogni tanto      come and see us (o me ecc) from time to time  
non farsi più vedere in giro      to disappear from the scene  
non la posso proprio vedere        (fig)   I can't stand her  
f      (visitare, museo, mostra)    to visit  ,   (consultare, medico, avvocato)    to see, consult
farsi vedere da un medico      to go and see a doctor  (英語のto see a doctor は理屈に合わない言い方だ。(医者を見てないをするのだろうか?) イタリア語の方は日本語と同じく<医者に見えもらう>となっている。
g      (capire)    to see, grasp  (把握する、理解する、わかる)
ho visto subito che...      I immediately realized that ...  
si vede!      that's obvious!  
si vede che sono stanchi      you can tell they are tired  
non vedo la ragione di farlo      I can't see any reason to do it o for doing it  
è triste ma non lo dà a vedere      he is sad but he isn't letting it show o he is hiding it  
ci vedo poco chiaro in questa faccenda      I can't quite understand this business  
h      (fare in modo)    vedere di fare qc      to see (to it) that sth is done, make sure that sth is done  
vedi di non arrivare in ritardo      see o make sure you don't arrive late  
vedi tu se ci riesci      see if you can do it  
vedi tu        (decidi tu)    it's up to you  
i      (fraseologia)    vedetevela voi      you see to it  
se l'è vista brutta      he thought his last hour had come  
essere ben/mal visto da qn      to be/not to be well thought of by sb  
visto che...      seeing that ...  
non vedere qn di buon occhio      to disapprove of sb  
non avere niente a che vedere con qn/qc      to have nothing to do with sb/sth  
vedere la luce        (nascere)    to come into being, see the light of the day  
vedere le stelle        (dal dolore)    to see stars  
vederci doppio      to see double  
vedere lontano        (fig)    to be farsighted  
non vedere più lontano del proprio naso      to be unable to see beyond the end of one's nose  
chi s'è visto s'è visto!      and that's that!  
non vederci più dalla rabbia      to be beside o.s. with rage  
non vederci più dalla fame      to be ravenous o starving  
non vedere l'ora di fare qc      to look forward to doing sth  
non vedo l'ora che arrivino      I can't wait for them to arrive  
non vedo l'ora di conoscerlo      I can't wait to meet him  
a vederlo si direbbe che...      by the look of him you'd think that ...  
in vita mia ne ho viste di tutti i colori      I've been through a lot in my time  
ti faccio vedere io!      I'll show you!   (to show <見せる>は farsi vedere となる。
2.  vedersi      vr  再帰表現
a      (specchiarsi, raffigurarsi)    to see o.s.
b    si vide perduto      he realized (that) he was lost  
si vide negare l'ingresso      he was refused admission  
si vide costretto a...      he found himself forced to ...  
c      (uso reciproco)    to see each other, meet  
ci vedremo da mio cugino      I'll see you at my cousin's  
ci vediamo domani!      see you tomorrow!


学研全訳古語辞典

ゐる 【率る】
他動詞ワ行上一段活用
{*語幹・活用語尾が同一}
① 伴う。引き連れる。連れる。
出典伊勢物語 六
「やうやう夜も明け行くに、見ればゐて来(こ)し女もなし」
[訳] だんだんと夜も明けていくので、見ると連れて来た女もいない。
② 身につけて持つ。携帯する。携える。
出典増鏡 むら時雨
「内侍所(ないしどころ)・神璽(しんし)・宝剣ばかりをぞ、忍びてゐてわたさせ給(たま)ふ」
[訳] (後醍醐(ごだいご)天皇は)八咫(やた)の鏡・八尺瓊(やさかに)の曲玉(まがたま)・天(あめ)の叢雲(むらくも)の剣(の三種の神器)だけを、こっそりと携えてお移りあそばす。
注意
「率る」を「ひきゐる」と読まないこと。
参考
ワ行上一段活用の動詞は、「率る」のほかには「居る」「率(ひき)ゐる」「用ゐる」があるだけである。このうち「率ゐる」は「引き」+「率る」、「用ゐる」は「持ち」+「率る」によって成立した語である。

学研全訳古語辞典
い・る 【入る】

[一]自動詞ラ行四段活用
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
① はいる。はいってゆく。
出典伊勢物語 九
「宇津の山に至りて、我がいらむとする道は、いと暗う細きに」
[訳] 宇津の山について、自分たちがはいってゆこうとする道は、たいそう暗く細いうえに。

② 沈む。隠れる。没する。
出典枕草子 淑景舎、東宮に
「日のいるほどに起きさせ給(たま)ひて」
[訳] (天皇は)日が沈むころにお起きになられて。

③ (宮中・仏門などに)はいる。
出典徒然草 五八
「一度(ひとたび)道にいりて世を厭(いと)はん人」
[訳] 一度仏道にはいって世俗を嫌い離れようとするような人は。

④ 至る。なる。達する。
出典徒然草 一九一
「『夜にいりてものの映えなし』と言ふ人、いとくちをし」
[訳] 「夜になっては物の見ばえがしない」と言う人は、とても情けない。

⑤ (心に)しみる。はいりこむ。
出典万葉集 二九七七
「何ゆゑか思はずあらむ紐(ひも)の緒の(=枕詞(まくらことば))心にいりて恋しきものを」
[訳] どうして(あの人のことを)思わないでいられようか、いや思わずにいられない。心にしみて恋しくてならないのに。

⑥ 必要になる。
出典源氏物語 梅枝
「これは暇(いとま)いりぬべきものかな」
[訳] これは(書くのに)時間が必要だったろうなあ。◇「要る」とも書く。

⑦ 〔尊敬語を伴って〕いらっしゃる。おいでになる。▽「いく」「来(く)」などの尊敬語となる。
出典源氏物語 賢木
「いらせ給(たま)ひけるを珍しきことと承るに」
[訳] (中宮が春宮(とうぐう)御所へ)いらっしゃったのを珍しいことと伺うにつけ。

[二]他動詞ラ行下二段活用
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
① 入らせる。入れる。
出典古今集 雑上・伊勢物語八二
「あかなくにまだきも月の隠るるか山の端(は)にげていれずもあらなむ」
[訳] ⇒あかなくに…。

② 含める。加える。
出典枕草子 中納言まゐり給ひて
「かやうの事こそは、かたはらいたきことのうちにいれつべけれど」
[訳] こういうことは、きまりが悪いことの中に加えてしまうべきだけれども。

③ こめる。うちこむ。
出典古今集 仮名序
「力をもいれずして天地(あめつち)を動かし」
[訳] (和歌は)力をこめないで天地を動かし。

[三]補助動詞ラ行四段活用
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
〔動詞の連用形に付いて〕
① すっかり…(のように)なる。ほとんど…(に)なる。
出典
宇治拾遺 一・一二
「幼き人は寝いり給(たま)ひにけり」
[訳] 幼い人はすっかり寝てしまわれたのだ。
② 熱心に…する。ひたすら…する。
出典
源氏物語 夕霧
「この人も、まして、いみじう泣きいりつつ」
[訳] この人も、(夕霧より)なおさら、たいへんひどく泣きながら。

[四]補助動詞ラ行下二段活用
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
〔動詞の連用形に付いて〕中に入れる、受け入れるの意を表す。
出典源氏物語 帚木
「人も聞きいれず」
[訳] 供の人は聞き入れない。


<Manapedia>というサイトの<見ゆ>にこの古語の比較的丁寧な説明と例文ががある。

http://manapedia.jp/text/4191


ヤ行下二段活用

未然形みえ
連用形みえ
終止形みゆ
連体形みゆる
已然形みゆれ
命令形みえよ

意味1:自動詞
見える、目に入る


[出典]帰京 土佐日記
「京に入り立ちてうれし。家に至りて、門に入るに、月明かければ、いとよくありさま見ゆ。」
[訳]:京に立ち入って嬉しい。家について、門に入ると、月の光が明るいので、大変よく(家の)様子が見える

意味2:自動詞
見ることができる

※この用法の場合、打消の語句を伴って「見ることができない」と訳すことが多い。
[出典]東下り 伊勢物語
「京には見えぬ鳥なれば、皆人見知らず。」
[訳]:京では見ることができない鳥なので、一行は皆(この鳥のことを)知りません。

意味3:自動詞
姿が現れる、やって来る

[出典]:大進生昌が家に 枕草子
「さても、かばかりの家に、車入らぬ門やはある。見えばわらはむ。」
[訳]:それにしても、これほどの(立派な)家で、牛車の入らない門があるのであろうか、あるはずがない。(成昌様が)現れたら笑ってやろう。


意味4:自動詞
(人に)見られる

[出典]:夕顔 源氏物語
「人にもの思ふ気色を見えむを、恥づかしきものにしたまひて...」
[訳]:人に物思いにふけっている所を見られることを、きまりの悪いこととお思いになって...

意味5:自動詞
会う

[出典]:野分 源氏物語
「宮に見えたてまつるは、恥づかしうこそあれ。」
[訳]:中宮様にお会い申し上げるのは、気が引けます。

意味6:自動詞
(女性が)結婚する

[出典]:維盛都落 平家物語
「いかならむ人にもみえて、身をも助け、幼き者どもをもはぐくみ給ふべし」
[訳]:どのような人であっても結婚して、身を助け、幼い子供たちを大切に養育なさるがよい。

意味7:自動詞
感じられる、思われる

[出典]いでや、この世に生まれては 徒然草
「ただ人も、舎人など賜はる際はゆゆしと見ゆ。」
[訳]:普通の貴族でも、舎人など(の役職)をうけたまわっている身分の人は恐れ多く感じられます。

意味8:他動詞
見せる


[出典]花山院の出家 大鏡
「まかり出でて、大臣にも、変はらぬ姿、いま一度見え、かくと案内申して、必ず参り侍らむ。」
[訳]:退出して、(父である)大臣にも、(出家前の)変わらない(自分の)姿を、もう一度見せて、(天皇と一緒に出家する)いきさつを申し上げて、必ず戻って参りましょう。


sptt








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