Friday, October 20, 2023

接続助詞<て>は超汎用 (Super Versatile) 助詞


 
接続助詞<て>は今は助詞あつかいとなっている。意味は多様で、特定用途の助詞ではない。いわゆる過去、完了の助動詞<た>の連用形ではないかと思っていたが、 助動詞<た>の活用をチェックしたところ 、助動詞<た>になんと連用形がないのだ。さらに調べて見ると、歴史的には古語の完了助動詞<つ>の連用形由来のようだ。<た>は比較的新しい助動詞なので古語の完了助動詞<つ>の連用形が正しいようだ。
 
『完了・強意』の助動詞「つ」 の活用は、下二段活用になります。「て・て・つ・つる・つれ・てよ」
 
これは古語の活用で
 
未然形  て
連用形  て
終止形  つ
連体形  つる
已然形  つれ
命令形  てよ
 
きれいな下二段活用になっている。<た>の活用が説明しにくい特殊活用となっているのとは対照的だ。だがこの古語<つ>はまったくの古語で、使うことはもちろん、古文に出てくるのも、他の動詞、助動詞と組みになって使われるので、解読も容易ではない。 一方現代語の<た>の活用は
 
助動詞「た」「だ」活用表

未然形

~う

連用形 終止形 連体形

~とき

仮定形

~ば

命令形
たろ たら
だろ だら

 

で、体系的な活用とは言えないほど特殊。<連用形>が欠けている。

<だ>は<た>の音便変化。例:泳いだ、死んだ、呼んだ、読んだ

未然形の用法は

 もう本を読んだろう。(未然形)

 で<未然形+否定>がない。つまりは<た>は直接否定できないのだ。否定するとすれば

(まだ)食べてない、食べていない、
(まだ)買ってない、 買っていない
(まだ)泳いでない 、泳いでいない
(まだ)読んでない、読んでいない

などになり、連用形がないので<て><で>が使われている。この<て><で>は接続助詞ということになっている。問題のあるところだ。肯定も複雑というか特殊で、これまた<て><で>のやっかいになり

(もう)食べている、食べてある
(もう)買っている、買ってある
(もう)泳いでいる、 <もう泳いである>はまれ。
(もう)読んでいる、読んである

<いる><ある>は明らかに、あるいは微妙に違う。

また <食べている>など<xxている>は進行形として使われる。さらには<xxているところだ>とすると英語の現在進行形のテスト解答用の訳になる。進行形、現在進行形というと現在形のように聞こえる、見えるが、よく観察すれば進行形の<食べているは<食べ始め、そして今も食べている>で、さらに細かいこと言えば<食べ始める>の完了、食べ始めた>ことの事実の認識がふくまれているのだ。前回野ポスト " 助動詞<た>と接続助詞<て>の関係 " では、このことを

ある事柄が確定し、間違いないものと認められる (見なす) という主体の判断を示す。

と書いた。

前回のポストで紹介したが<日本人の発想、日本語の表現>という本の中には、続助詞<て>についての詳しく説明がある。

日本人の発想、日本語の表現 
VI <成り行き>の論理 ー 他力的発想と近視眼的思考
2)日本語の条件表現は客観的なものか

内容は接続助詞<て>は多義語で、場合によりけりでいろいろな意味になり、変幻自在
 
と言うようなことが書いてある。後で具体的に紹介。
 
ネットで検索 簡単な解説
 
https://www.kokugobunpou.com/%E5%8A%A9%E8%A9%9E/%E4%B8%BB%E3%81%AA%E6%8E%A5%E7%B6%9A%E5%8A%A9%E8%A9%9E%E3%81%AE%E7%94%A8%E6%B3%95/#gsc.tab=0

確定の順接   寒く風邪かぜをひく。
確定の逆接   見見ぬふりをする。
並立の関係   雪は白くやわらかい。
補助の関係   全部食べしまう。

Wiki

1)確定の順接  お腹が減って死にそうだ
2)動作や作用の継続  帰ってすぐ食べる。
3)並立  美しくて明るい。
4)補助の関係  観衆が見ている。
 
 
補助の関係>といのがよくわからない。(*)  他に詳しい解説もあるが、長い引用となるのでやめておく。
 
 
(*) 補助の関係 (別の文法サイトの解説)
 
https://benesse.jp/teikitest/chu/japanese/japanese/c00474.html

中学国語 定期テスト対策補助の関係(補助動詞)とは?【国語文法】

補助の関係とは,後の文節が前の文節に補助的な意味を添えるもののことを言います。

A 犬を飼う。
B 犬を飼ってみる。
 
Aの文とBの文を比べてみたとき,Bのほうには「試しに飼う」という意味が添えられていることがわかります。「みる」という語には本来「見る」という意味がありますが,Bではその本来の意味が薄れ,「試しに~する」という意味を「飼って」に添えています。このとき「飼って」と「みる」は補助の関係であるといいます。

「みる」以外にも,補助の関係をつくることができる動詞(補助動詞と呼ぶことがあります)として,以下のようなものがあります。
「あげる」・・・勉強を【教えて・あげる】
「くれる」・・・にっこりと【笑って・くれる】
「いる」・・・病気が【悪化して・いる】
「おく」・・・ちょっと【ほうって・おく】
「ある」・・・そこに【置いて・ある】

補助動詞であるかどうか(補助の関係であるかどうか)を見分ける方法としては,ほかの表現や英語に置き換えて考えるという方法があります。

[ほかの表現に置き換えて考える例]
(1)そこに置いてある。
(2)欲しいものがいっぱいある。
 →(2)の「ある」は「存在する」と置き換えられますが,(1)は本来の意味が薄れているため置き換えることができません。(1)が補助の関係です。

[英語に置き換えて考える例]
(3)勉強を教えてあげる。
(4)プレゼントをあげる。
 →(4)の「あげる」は「give」の意味がありますが,(3)は本来の意味が薄れているので「give」ではありません。(3)が補助の関係です。

以上は中学生向け解説。

 
手元の三省堂辞典 
 
1)一連動作、作用が行われることを表わす。
 
早起きして体操をした。
本を読んで感想文を書く。
女がピアノを弾いて、男が歌を歌う。
安くておいしい。(安いうえに)
見て見ぬふりをする。(見たのに)
何度も注意されて、まだやめない。 
吹いている。
張っ (貼っ)てある。
貸してやる。
読んでもらう。
 
2)どんな現因、理由でその動作、作用が行われたかを表わす。
 
金がなくて行かれない。
母に呼ばれて目が覚めた。
雨降って地固まる。
 
3)どんな状況で その動作、作用が行われたかを表わす。
 
歩いて通う。
目を開いてよく見る。
よろこんで協力する。
 
4)以下に述べる事柄を導き出す補助的な説明を提示し、あとの叙述に結びつける。 
 
ホテルの前には大きな池があって、そこでボートを浮かべたり、釣りをしたりすることができる。
事故があって、そのために電車がおくれた。
 
ーーーーー
1)
 
何度も注意されて、まだやめない。 
 
はやや変な言い方だ。普通は
 
何度注意されても、まだやめない。 

吹いている。
張っ (貼っ)てある。
貸してやる。
読んでもらう。
 
は<一連動作、作用が行われることを表わす。>とはいい難い。
 
吹いている。
張っ (貼っ)てある。

は最近のポストでかなり詳しく検討してある。

貸してやる。
読んでもらう。
 
は別途検討。 おもしろいのは<医者にみてもらう>。
 
2)は単なる接続ではない。
 
母に呼ばれて目が覚めた。
雨降って地固まる。
 
は前半と後半は主語がちがうので、短いがいわゆる複文になる。
 
 
4)は関係代名詞みたいな働きでおもしろい。別途検討。
 
<て>が超汎用 (Super Versatile) 助詞ということに関しては以上の例文に加えて、今は使っている人はもちろん、知っているひともいないと思うが昔は漢字だらけの漢文読みに、<てにをは>と言うのを使っていた。この<てにをは>の一番目に<て>がきていることは<て>はよく使われたということだろう。
 
 
VI <成り行き>の論理 ー 他力的発想と近視眼的思考
 
2)日本語の条件表現は客観的なものか 

石橋をたたいて渡る。
手を挙げて横断歩道を渡ろうよ。
泥棒をとらえて縄をなう。
雨降って地固まる。
 
筆者は<て>はいろいろに解釈できるという。 
 
石橋をたたいて渡る。
 
石橋をたたきながら渡る。
 
は同時進行ではなく、たたいて安全を確かめてからわたる。
 
手を挙げて横断歩道を渡ろうよ。 
 
同時進行で<手をあげながら>。
 
泥棒をとらえて縄をなう。
 
は<とらえてから>
 
雨降って地固まる。
 
は<雨が降った。だから>、<雨が降った。そこで>、<雨が降るにつけて> などいろいろな解釈ができる。
 
といった解説がある。
 
人事を尽くして天命を待つ。 (尽くして、それから)
牛にひかれて善光寺参り。 (ひかれながら)
角を矯めて牛を殺す。(原因―結果; または 順接条件、xxので)
仏作って魂入れず。(逆接の条件)
 
威あって猛からず (逆接)
見て見ぬふりをする。(逆接)
雨晴れて傘忘れる。(順接) 

水が冷たくて泳げない。  水が冷たいので泳げない。
水が冷たくて泳いではいけない。(ダメ) 水が冷たいので(から)泳いではいけない。
勝って兜の緒を締めよ。 (前後関係不明)
聞いて極楽、見て地獄。 (前後関係不明)
 
人のふり見て我が降り直せ。 
 
バスが遅れて遅刻しました。 バスが遅たから遅刻しました。バスが遅たので遅刻しました。

 ポイントとしては
 
1)<て>の意味が漠然としているもが少なくない。
2)< バスが遅れて遅刻しました>では因果関係が明確でない。
 
2)の例では、客観的な因果関係を示すのを避ける習性が日本人にはあり、バスが遅れて遅刻しました>は情緒的な発話、といっている。  
 
 
spttコメント
 
<石橋をたたいて渡る>と<雨降って地固まる>は一種の格言で、人によって解釈はまちまちということはないだろう。
 
石橋をたたいて渡る。
 
と対照的なのは 
 
案ずるより産むがやすし。 
後先見ず
当たって砕けろ。 
 
 <当たって砕けろ>には<て>が使われている。<当たって砕けろ>は少し考えると変な言い方で、意味するところは砕けてもいいから当たってみろ>と言うことだろう。この本のはこのよう<て>の使い方の別の例が紹介されている。ナイキの宣伝文句に<Just do it !>と言うのがある。
 
雨降って地固まる。
 
同義のことわざは多いが反義のものは少ない。
 
覆水盆に返らず。 
 
勝って兜の緒を締めよ。  
 
は<前後関係不明>と言っているが、普通に解釈すれば
 
 勝った後も、油断せずに兜の緒を締めよ。 

と言うことだろう。
 
聞いて極楽、見て地獄。
 
も<前後関係不明>と言っているが、普通に解釈すれば、極楽のように聞いていたが、その後実際に見てみれば地獄だ。<xxて>のは<xxして、それから>意味用法がある。
 
 
sptt
 



 

 

 

 

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