even と<さえ>、<でも>の比較は最近いろいろやっているが、一筋縄ではいかない。even は副詞。一方<さえ>、<でも>は副詞ではなく副助詞。副助詞にもいろいろあるが<さえ>、<でも>は類推の副助詞と言うことになっている。<さえ>、<でも>に似たのでは、使用頻度は落ちるが<すら>、<ですら>がある。よく見る例文は
子供さえ、子供でさえわかるのに、できるのに
子供でも、子供にでもわかるのに、できるのに
子供すら、子供ですらわかるのに、できるのに
<さえ>と<すら>は<でさえ>、<ですら>ど<で>がつくが<でも>は頭に<で>があるためか<ででも>とは言わず<にでも>となる。この<で>はクセモノだ。
次の例文はどうか。
これさえあれば、鬼に金棒。
これはどう英語に訳せばいいか? ネット検索すると(今はネット検索で森羅万象、ほとんどなんでもとにかく回答がでてくる)自動翻訳で
If you have this, you'll be able to beat the devil.
と出てくる。これは、おもしろいが、自動翻訳機の不十分さを示している。だが、新解釈として将来こういう意味になるかもしれない。<鬼に金棒>だけだと
Demons with gold sticks
で少しマシだが、なぜか複数になっている。また金=gold となっていて変な直訳だ。
<これさえあれば、鬼に金棒>の<鬼に金棒>は、いまのところ
鬼に金棒:ただでさえ強い鬼に金棒を持たせる意から、 強いものがさらに強さを加えること。
というのが一般的だ。これに沿った英語訳では
"
https://nativecamp.net/heync/question/13692
・the more Moors, the better victory
・decisive advantage 「鬼に金棒」は英語では the more Moors, the better victory というフレーズや decisive advantage などを使って表現することができると思います。
Even if you get lost, as long as you have a smartphone, it's the more Moors, the better victory.
(道に迷っても、スマホさえあれば鬼に金棒だ。)
If he joins our team, it would give us a decisive advantage.
(彼が私たちのチームに加入すれば、鬼に金棒になる。)
"
というのがある。一番目も二番目も<鬼に金棒だ>はやや唐突で、特に一番目はこの短い文例では文脈にそわない。
the more Moors, the better victory
はことわざのようだが、知っている人、使ったことのある人はいないだろう。下記の解説が必要だ。
”
ムーア人◆8世紀にアフリカ北西部からスペインに侵入し、1492年まで支配したイスラム教徒
・The more Moors, the better victory. : 鬼に金棒。◆【直訳】(最強の戦士である)ムーア人が多いほど、勝ちやすくなる。
”
したがって、これは知っていなくてもいいし、 使わない方がいい。わかる人がいないに等しいのだ。死語 (死諺) だろう。だが、ここで、ことわざ表現でときどき出てくる
The more Moors, the better victory.
の比較級を使ったへんてこな英語の言い回し、英語構文は even と関係があるかもしれない。というのは、類推では比較が重要な働きをするからだ。
子供 (で) さえ、でも、(で、に) すらわかる(のに)
の英語は
Even a child understands
Even a child can understand
で even が使われる。一方<これさえあれば>は難しい。はじめの自動翻訳では
If you have this, (you'll be able to beat the devil.)
では<さえ>が訳されておらず<これがあれば> 、even を頭に加えると
Even if you have this, になるが、これは
(もし)これがあったとしても If you have even this, もなぜか
<(もし)これがあったとしても>になり<これさえあれば>にならない。even の代わりに only を使うと
Only if you have this,
になるが
<これがありさえすれば>の意味にはならならないだろう。多分<これがある場合だけ、のみ、に限り>の意になる。
If you have only this,
も<これがありさえすれば>の意味にはならなず<これしかないとすると>の意味になってしまう。いろいろ探してみたが、上にある as long as を使った
as long as you have this (これがある限り)
がつかえそう。したがって上の<これさえあれば、鬼に金棒だ>は
As long as you have this, you will have a decisive advantage.
が候補だが、a decisive advantage はかなりの意訳だ。
As long as you have this, you will become even stronger.
と、even を使って強さを強調したのはどうか。
さて、<これさえあれば、鬼に金棒>が取り合えず片付いたところで、本題ににはいる。even を辞書でチェックしてみると、いろいろおもしろい。副詞としての even の一番目に出て来る説明は
Google
used to emphasize something surprising or extreme.
"they have never even heard of the United States"
synonyms: surprisingly, unexpectedly, paradoxically, though it may seem strange, believe it or not, as it happens
Merriam-Webster
used as an intensive to stress an extreme or highly unlikely condition or instance
so simple even a child can do it
Cambridge
used to show that something is surprising, unusual, unexpected, or extreme:
I don't even know where it is.
Collins
You use even to suggest that what comes just after or just before it in the sentence is rather surprising.
で<類推>を使った説明がない。大体は<おどろくべきことに>、<異常なことに><予期せぬことに>、<極端な例をあげると>と言った意味の副詞 (句) 相当だ。
Merriam-Webster の
used as an intensive to stress an extreme or highly unlikely condition or instance
so simple even a child can do it
<さえ>、<でも>の例文でよくでてくる
子供さえ、でさえできる
子供でも、にでもできる
に似ている文例だ。 an intensive (名詞) というのは他の辞書では even の説明として出てこない。普通は形容詞で ICU = Intensive Care Unit のような使われ方だ。名詞としての intensive は強調だろう。
<さえ〔さへ〕>の解説の例では、例えば
デジタル大辞泉 (小学館)
2 ある事柄を強調的に例示し、それによって、他の場合は当然であると類推させる意を表す。…だって。…すら。「かな文字—読めない」
に似たところがあるが、英語の even の解説は前半部だけで後半部の<類推>が欠けている。後半部のある日本語の解説の方が進んでいるのではないか。
ところがである。少しよく考えてみると<他の場合は当然である>と考えることは<類推 (analogy)>だろうか? 類推というのは、analogy の訳語と思うが、
<類推(する)>とは
https://kotobank.jp/word/%E9%A1%9E%E6%8E%A8-150606
日本国語大辞典 「類推」の意味・読み・例文・類語
① 同じたぐいの事、または類似の点をもとにして他の事を推しはかること。アナロジー。類測。 ② 論理学で、二つの物事の間のある点の類似性から、他の点での類似性を推理すること。アナロジー。類比。類比推理。
なので
ある事柄を強調的に例示し、それによって、他の場合は (その内容は) 当然であると<考えさ、思わ>せる意を表す。
とはズレがある。さらに英語辞書をチェックしてみた。手元にある使い古したぶ厚い Cambridge Advanced 英漢辞典では丁寧に<他の場合は当然であると<考えせる、思わ>せる内容の部分が出てくる。
1)to emphasize sth unexpected or surprising
He never even opened the letter (= so he didn't read it)
It was cold there even in summer (= so it must have been very cold in winter)
Even a child can understand it (= so adults certainly can)
カッコ内の例文は<他の場合は当然であると<考えさ、思わ>せる内容の部分なのだが、初めの解説に analogy は出てこない。なぜなら analogy (類推) ではないからだ。特に説明はないのだが、unexpected or surprising な例を示して、その対比である expected or not-surprising なこと (当然なこと) を<考えさ、思わ>せるレトリックといえる。レトリックは主に強調にため使われる。したがって、古くさい言い方もあるが
He never even opened the letter (= so he didn't read it)
彼は手紙を読みさえしなかった(だから、ましてや読んではいない (のは当然だ) )
It was cold there even in summer (= so it must have been very cold in winter)
そこは夏でも寒かった(だから、(いわんや) 冬はとてつもなく寒かったに違いない)
Even a child can understand it (= so adults certainly can)
これは子供ですらわかる(だから、(いわんや) おとななら、(もちろん) まちがいなくわかる)
したがって、類推と言うよりはかなり確かな推定、推測 (当然なこと) を<考えさ、思わ>せる助詞と言えないか。もちろん副詞と違って助詞自体に意味はないので、このような働きをする助詞ということになる。レトリック用助詞なのだ。ここがポイント。
類推にこだわれば
子供さえできる
若者さえできる
老人さえできる
だから中年もできえる、だろう、に違ない。
が類推論法だ。<でも>は<も>があるのでさらに類推的になる。
子供でもできる
若者でもできる
老人でもできる
だから中年でもできる、だろう、に違ない。
<さえ>と<でも>は微妙に違う。
副詞としての even の二番目に出て来る説明は
比較級の強調、これまた強調だ。たとえば
Merriam-Webster の
—used as an intensive to stress the comparative degree
she did even better
more better と言う和製英語があるが、これはもちろん間違い。普通は much better、even better。個人的には私は、むかしは much better 一本やり。というのは even better が<よりよくさえある>の意と思っていたからだ。だが even better、even taller、even stronger というのをしばしば耳にし<よりよく、より高く、より強くさえある>の意味ではないとわかってからは even better, etc を使うようになっている。
副詞としての even の三番目に出てくる説明はいくつかある。
手元の Cambridge Advanced 英漢辞典では
used to introduce a more exact description of sb/sth
It's an unattractive building, ugly even.
それは魅力のない建物、醜いとさえ言える。
even ugly でもよさそうだが、ugly even の方が強調度が高いようだ。この言い方はときどき耳にする。また一人で言ってもってもいいが
A: It's an unattractive building.
B: Ugly even.
のように相づちのようにもよく使われる。
Merriam-Websterでは
c
—used as an intensive to indicate a small or minimum amount
didn't even try (やってみることさえしなかった)
が三番目にきている。これは
小さい、または最小の量を示唆する強調として使われる。
何だかよくわからないが、小さい、または最小の量、程度の例を示して、それ以上のもの(当然それ以上になる)が当然予想される量、程度を<考えさ、思わ>せるレトリックのことを言っているのだろう。説明不足だ。
Merriam-Websterでは、さらに四番目があり
d
—used as an intensive to emphasize the identity or character of something
forgot his car keys and even left the engine running
説明が難しいが、例文は
彼は車のキー(複数) をわすれたが、エンジンをかけたままでさえだ。
これは彼の不注意さ加減を揶揄、強調したものだろう。(to emphasize the identity or character of something )
Merriam-Websterでは、以上の4点から独立させて、上ですでに取り上げ三番目の
used to introduce a more exact description of sb/sth
を別にとりあげている。
faithful even unto death
死さえもいとわないほど忠実な
言い換えると
very faithful, unto death even
とでもなるか。だがこれは
used to introduce a more exact description of sb/sth とはやや違う。むしろ
—used as an intensive to indicate a big or maximum amount
even は以上の副詞としての単独使用のほかによく聞く、使われる even if, even though の熟語使用がある。この二つは複文で出てくる。日本語の副詞、副助詞以外に接続詞、接続助詞が絡んでくるので、別途検討。
so simple even a child can do it
b
—used as an intensive to stress the comparative degree
she did even better
c
—used as an intensive to indicate a small or minimum amount
didn't even try
d
—used as an intensive to emphasize the identity or character of something
forgot his car keys and even left the engine running
2
a
to a degree that extends : fully, quite
faithful even unto death
b
: at the very time
He kept calling me for years, even after he got married.
Some of my remarks were so scathing that even Jane was surprised.
I cannot come to a decision about it now or even give any indication of my own views.
He didn't even hear what I said.
Synonyms: despite, in spite of, disregarding, notwithstanding More Synonyms of even
adverb
You use even with comparative adjectives and adverbs to emphasize a quality that someone or something has. [emphasis]
It was on television that he made an even stronger impact as an interviewer.
During his second day Edward looked even more pale and quiet than on his first.
Stan was speaking even more slowly than usual.
Synonyms: all the more, much, still, yet More Synonyms of even
sptt