Tuesday, July 18, 2023

<増す>の派生語

 

前回のポスト ” レトリック副詞について ” の中で


この<ますます>は<増す>由来の語で、後で出てくるが<まして>、<ましてや>も関連語だ。見方を変えて<増す>の派生語とみると、語の派生、発展の面白さがある。

大げさだが

ますますよくなっている。
ますます悪くなっている。

動的 (ダイナミック) な表現と言える。


と書いた。 <増す>はおもしろい言葉で、だいぶ前に ”<ますます>減る- to decrease more and more” というポストを書いている。<増す>の派生語を調べてみる。

まし <増す>の連用形名詞 (体) 用法

日ましに

<日が増すごとに>の意だろう。<日がたつごとに>は平板だ。

割り増し
水増し

太郎は次郎よりましだ。
これより少しでもましなものはないのか? 

この<まし>はネガティブな感じだが、もとは<増す>ー><増し>からしてポジティブな意であったろう。ポジティブまたはニュートラルな意味では

ましな = もっといい

だ。この意味というか含蓄 (connotation) の変化葉<ますます>にも見られる。 ”<ますます>減る- to decrease more and more” というポストでは,はじめに

<ますますふえる>とは言うが<ますます減る>は変だ。しかし<ますます多くなる>はもちろん<ますます少なくなる> もさほど変ではない。<ますます>はもともと<増す増す>だろうから、ふえる、多くなる、大きくなる、など positive なモノ、コトに付いて<減る>、<少なくなる>、<小さくなる>など negative なモノ、コトに付くにはおかしいわけだが、どういうわけかそうではなさそう。

と書いている。 これは、ポジティブからニュートラルへの変化といえるだろ。おもしろい現象だ。

ましな = もっといい

<もっと>は日本語の比較表現で頻繁に使われる、超多頻度使用語だ。<もっと>の語源はわかっていないようだが、昔は使っていなかったので比較的新しい言葉だ。ネット辞書(https://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/16817/meaning/m0u/)では<もっと>関連で

更に 【副】
▽風が更に強くなった ▽更に発展することを期待する
もっと 【副】
▽もっと大きいのがほしい ▽もっと頑張っておけばよかった
ますます 【副】
▽飲酒運転のうえに無免許ときているからますますいけない ▽老いてますます盛んだ

が出ている。

<さらに>は古い言葉で<いうもさらなり>というレトリック的な言い方がある。(注)

もっと大きいのがほしい
もっと頑張っておけばよかった

が普通の言い方で

さらに大きいのがほしい
さらに頑張っておけばよかった

はあらたまった言い方だ。

上の場合<ますます>は

ますます大きいのがほしい
ますます頑張っておけばよかった

で、残念ながらダメだ。ダメだが使う人が出てきて、増えていけば市民権をえるだろう。

<ずっと>という口語がある。

ずっと大きいのがほしい

まあいいが

ずっと頑張っておけばよかった

は意味が違ってくる。 <ずっと>は半人前だ。

 

xxにもまして

いつにもまして
何にもまして - 最上級表現だ。何よりも

英語の the best xxx は普通、あるいは教科書では<もっともxxx>となるが、翻訳調なので

いちばんxxxな
何にもましてxxxな 

をもっと使った方がいい。

まさる

<まさる>はコンピュータでは<勝る>と出てくるが<増さる>由来だろう。<まさる>には<増す>の意識がある。

水かさが増す。
水かさが増してきた。

方言または人によっては

水かさが増さる。
水かさが増さってきた。 

というようだ。

太郎は次郎よりも遊びにかけてはまさっている。
勉強にに関して花子は美代子にはまさるとも劣らない・

 

まして (や)

<まして>は<いわんやxxxをや>の代わりに

ましてxxxは、では、なら

で使う。

こんなこと、子どもでもわかる。まして大人は、大人なら

これは一種のレトリック表現で、<子どもでもわかる>はダシで、<まして (や) 大人は、大人なら>が言いたいことだ。

 

(注)<いうもさらなり>

太郎がバカなのは<いうもさらなり>

言へばさらなり ー もし言えば<もっと> になる ー>言うまでもない。

sptt

 



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