<まだ>と<もう>については最近かなりしつこく書いているが、 調べてみると際限がない。前々回のポスト<まだはもうなり、もうはまだなり ー2>の最後のほうで
”長くなってきたので、無限にある個々の<ややこしいもの、よくわからないもの>については別途検討する予定。
”
と書いた。
過ぎたるは及ばざるがごとし
は
過ぎているのは及ばないようなもの
過ぎているのは及ばないことと同じ
といった意味だ。 <過ぎたる>は too much、<及ばざる>は not enough といえる。
この意味での<過ぎる>は動詞にも形容詞にもつく。
動詞につく
行き過ぎる、飲み過ぎる やり過ぎる、勉強し過ぎる
形容詞につく
早すぎる ー 遅すぎる
若すぎる ー 老いていすぎる、年寄りすぎる
よすぎる ー 悪すぎる
新しすぎる ー 古すぎる
<すぎる>は
行く、飲む やる(する)、勉強する
早い ー 遅い
若い ー 老いている、年寄りだ
よい ー 悪い
新しい ー 古い
の一般叙述、状態に対して<好ましくないほど (行き) 過ぎている>ことを示す。言い換えると<好ましい程度を過ぎている>ことを表す。だが<過ぎる>は一般的には<目標を達成している>のだ。
一方<及ばざる>は未達のことで、この場合<未達>は<好ましい、望まれる、予期している程度に達していない>ことを表す。
これが<過ぎたるは及ばざるがごとし>を警句にしている。
<未達>と<達成>は最近の<まだ><もう>論議のなかで、まだxxない><もうxx>として幾度も出てきた。<まだ><もう>論議から引用すると
”
基本的には
<まだ>は肯定で使うと継続、残存、存在、<もう>は否定で使うと非継続、(継続の) 終了、不存在、不足を示す。
一方<まだ>は否定で使うと未達、未完、不十分、不足、<もう>は肯定で使うと終了、達成、完了、十分、充足を示す。
”
さらに<過ぎる>の箇所を引用すると
”
まだ約束の時間は過ぎていない ー もう約束の時間は過ぎている
まだ約束の時間は過ぎている(ダメ) ー もう約束の時間は過ぎていない(ダメ)
まだ特急は通り過ぎていない ー もう特急は通り過ぎた、ている
まだ特急は通り過ぎている (ダメ) ー もう特急は通り過ぎていない (ダメ)
<過ぎる>は到達とみなせる。 <過ぎ続ける>は基本的にダメだ。だが上の<ダメ>も反例可能だろう。
”
ここの論議ではこれ以上進めていが、このポストで進めることにする。
まだxxすぎる ーもうxxすぎない
まだxxすぎない ー もうxxすぎる
の簡単なマトリクスだ。
動詞
行き過ぎる、飲み過ぎる、やり過ぎる、勉強し過ぎる
まだ行き過ぎだ ー もう行き過ぎでない
まだ行き過ぎている ー もう行き過ぎていない
まだ行き過ぎでない ー もう行き過ぎだ
まだ行き過ぎていない ー もう行き過ぎている
<飲み過ぎる>以下も同様で、問題ない。注意して見ると
<まだxx過ぎだ>は<好ましくない状態が終わっていない>、未達である
<まだxx過ぎている>は<好ましくない状態が終わっていない未達状態>が継続している
<もうxx過ぎ>は好ましくない状態が>達成する
<もうxx過ぎている>は<好ましくない状態が>が達成している
ことを示している。
形容詞
まだ早すぎる ー もう早すぎない (*)
まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)
まだ遅すぎる ー もう遅すぎない (*)
まだ遅すぎない(*)ー もう遅すぎる
まだ若すぎる ー もう若すぎない
まだ若すぎない(*) ー もう若すぎる(*)
まだ老いすぎている(*) ー もう老いすぎていない、もう年寄りすぎていない(*)
まだ老いすぎていない ー もう老いすぎている、もう年寄りすぎる
まだよすぎる ー もうよすぎない、もうよすぎていない
まだよすぎない (*) ー もうよすぎる (*)
まだ悪すぎる ー もう悪すぎない、もう悪すぎていない
まだ悪すぎない(*) ー もう悪すぎる
まだ新しすぎる ー もう新しすぎない
まだ新しすぎない(*)ー もう新しすぎる (*)
まだ古すぎる ー もう古すぎない
まだ古すぎない(*) ー もう古すぎる
まだ少なすぎる ー もう少なすぎない
まだ少なすぎない(*)ー もう少なすぎる(*)
まだ多すぎる ー もう多すぎない
まだ多すぎない(*) ー もう多すぎる
まだ小さすぎる ー もう小さすぎない
まだ小さすぎない(*)ー もう小さすぎる
まだ大きすぎる ー もう大きすぎない
まだ大きすぎない(*) ー もう大きすぎる
(*) はちょっと変な例文だが、チェックしてみる。
一般的には<過ぎる><目標を達成している>、<過ぎない>は<目標が未達だ>。一方
”<まだ>は肯定で使うと継続、残存、存在、<もう>は否定で使うと非継続、(継続の) 終了、不存在、不足示す。
一方<まだ>は否定で使うと未達、未完、不十分、不足、<もう>は肯定で使うと終了、達成、完了、十分、充足を示す。
”
だ。
まだ早すぎる ー もう早すぎない (*)
約束の時間までに十分、十二分に時間がある場合に<まだ早すぎる>という。<もう早すぎない>はあまり聞かないが、<まだ早すぎる>時から時間がたって、具合のいい時間になれば<もう早すぎない>と言う。あるいは子供が酒を飲んだり、たばこを吸おうとする場合<まだ早すぎる>というが、成人に対しては<もう早すぎない>と言える。
まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)
これは以前に
まだ早くない(ダメ) ー もう早い(ダメ)
の反例として
英語に直すと
not yet early - already early
さらに直すと
not yet early enough - already early enough
回り道だが、これを日本語にもどすと
まだ十分早くない ー もう十分早い
開始は午前十時だ。我々は到着まで、まだ十分早くない ー もう十分早い
だが翻訳調っぽいくて日本語らしくないが、これを
まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)
に応用すると
開始は午前十時だ。我々は到着まで、まだ十分早すぎない ー もう十分早すぎる
になるが、 翻訳調っぽく、かつ意味が通りにくい。
まだ十分早すぎない ー もう十分早すぎる
not yet too early enough - already too early enough
これは英語でもおかしい。<十分(好ましい状態、目的達成)>と<過ぎる(好ましい状態、目的未達)>が矛盾するためだろう。さて
まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)
に戻って
いずれもあまり聞かないが、
<早すぎる>が未達とはどういうことか。<早すぎる>は必ずしも悪いことではないが、<早すぎる>は好ましい、適当、適宜な程度を<過ぎる>ことで、これを目標、期待とするのは矛盾する。
一方<早すぎる>が達成する、達成しているとはどういうことか。好ましい、適当、適宜な程度を<過ぎる>ことを目標、期待として達成する、達成している、達成したということになり、好ましいことではない。
だが
<まだ早すぎない>は<早すぎる>状態が未達、<早すぎるになっていない>。一方<もう早すぎる>は<早すぎる>状態に達成している。一般に<早い>は<好ましい、望まれる状態>だ。<まだ早すぎない>は変な言い方だが、<もっと早くなるようにすべきだ>が内包されている (implied) いればOKか。一方<もう早すぎる>も変な言い方だが、<もっと早くなるようにする必要はない>が内包されていればOKか。かなりややこしくなってきている。例文が必要だ。
まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)
が使える場面、状況を考えてみる。
<早すぎない>は否定的な<早すぎる>の否定で肯定になる。つまりは<早すぎない>が好ましい場面、状況を考えればいい。<早すぎない>が好ましいものとしては早漏、早熟が思い浮かぶが、台風の接近を考えてみる。
まだ準備ができていないので台風の接近は<早すぎない>ほうがいい。<まだ>を加えると
さいわいまだ台風の接近は早すぎない、早過ぎていない。
で問題ない。 一方<もう早すぎる>はこの場合具合が悪い。
まだ準備ができていないのに、今晩来襲するのではもう早すぎる
で問題ない。もう一例、ガンの進行。
さいわいこのガンの進行はまだ早すぎない、早過ぎていない。まだいい対処方法が見つかっていない状況で、このガンの進行はもう早すぎる。
まだ遅すぎる ー もう遅すぎない(*)
太郎は何とか3時に来るということだが、会議は2時に始まるので、3時に来るでは<まだ遅すぎる>、と言う。
<もう遅すぎない>はあまり聞かないが、
太郎はさらにやりくりして何とか1時50分までに来るということになった。この場合は<もう遅すぎない>と言うだろう。
まだ遅すぎない(*)ー もう遅すぎる
<まだ遅すぎない> も変だが、上記の太郎の例で、太郎が1時50分までに来た場合には
まだ遅すぎない、 まだ遅すぎていない
と言える。
<まだ遅すぎない>は<遅すぎる>状態が未達、<遅すぎるになっていない>。一方<もう遅すぎる>は<遅すぎる>状態が達成している。問題は<遅い>が一般に<好ましい、望まれること>ではないことだ。<遅すぎない>はいいことで、<遅すぎる>はよくないことだ。これで意味は通る。
まだ若すぎる ー もう若すぎない
まだ若すぎない(*) ー もう若すぎる(*)
これは解決方法、というか<こじつけ解釈>を見つけた。
前々回のポスト<まだはもうなり、もうはまだなり ー2>でみつけたのだが
まだまだ若くない(ダメ) ー もうもう若い(ダメ)
強力な若返りの薬を毎日飲んでいるが
まだ若くない ー もう若い
でOKだ。これを応用すると
まだ若すぎない(*) ー もう若すぎる(*)
強力な若返りの薬を毎日飲んでいるが
まだ若すぎない ー もう若すぎる
で何とかなる。もう一例 (反例) は、これまた<強力な若返りの薬>と同じく現実離れしていいるがタイムマシンを使うのだ。タイムマシンでは
老人 ー>中年 ー>青年 ー>子供 ー>赤ん坊
が可能だ。老人がタイムマシンに入ると、どんどん若くなる。したがって
まだ若すぎない ー もう若すぎる
と言うことができる。 このタイムマシンでは
まだ老いすぎている(*) ー もう老いすぎていない、もう年寄りすぎていない(*)
と言うこともできる。
まだよすぎる ー もうよすぎない、もうよすぎていない
まだよすぎない (*) ー もうよすぎる (*)
これは<よすぎない>状態を目的、好ましい状態すれば、問題ない。<カッコよすぎる>は常にいいとは限らない。
カッコよすぎると目立ってしょうがない。
それではまだカッコよすぎる。 ー それならもうカッコよすぎない、もうカッコよすぎていない。
まだカッコよすぎない (よすぎていない) からOKだ。 ー もうカッコよすぎるからダメだ。
これに関してはフアッション用語で sprezzatura というイタリア語がある。興味とひまのある人は調べてみるとおもしろい。イタリアフアッションは奥深い。
まだ悪すぎる ー もう悪すぎない、もう悪すぎていない
まだ悪すぎない(*) ー もう悪すぎる
これも<悪すぎない>状態を目的、好ましい状態すれば、問題ない 。たとえばドラマで悪人を作るときに<悪すぎない>悪人を作ろうとした時には<まだ悪すぎない>と言える。
まだ新しすぎる ー もう新しすぎない
まだ新しすぎない(*)ー もう新しすぎる (*)
以下も同じようにして説明ができる。
さて最初の方にもどって
まだ約束の時間は過ぎていない ー もう約束の時間は過ぎている
まだ約束の時間は過ぎている(ダメ) ー もう約束の時間は過ぎていない(ダメ)
まだ特急は通り過ぎていない ー もう特急は通り過ぎた、ている
まだ特急は通り過ぎている (ダメ) ー もう特急は通り過ぎていない (ダメ)
<過ぎる>は到達とみなせる。 これも<過ぎ続ける>はダメ。だが上の<ダメ>も反例可能だろう。
のダメの反例を探してみる。
まだ約束の時間は過ぎている(ダメ) ー もう約束の時間は過ぎていない(ダメ)
<約束の時間が過ぎている>状態を目的、好ましい状態すればいい。約束をした相手は以前に約束を破られた気に食わない人物で、機会があれば復讐したいと思っている。だいぶ待たせてある。
まだ約束の時間は過ぎている。いい気味だ。
もう約束の時間は過ぎていない(ダメ)
の反例は難しい。英語でも already not yet passed で矛盾するいいかただ。上気に食わない人物の例で、タイムマシンを使って、様子を振り返ってみる。普通の時間軸で記録ビデオを見るのではない。
15分前 ー まだ約束の時間は過ぎている。いい気味だ。30分まえ ― 約束の時間
45分前 ー もう約束の時間は過ぎていない。もう少し待たせよう。
何とかなるが、かなり非現実な設定だ。
まだ特急は通り過ぎていない ー もう特急は通り過ぎた、ている
まだ特急は通り過ぎている (ダメ) ー もう特急は通り過ぎていない (ダメ)
これは特急でもいいが、(普通) 列車にすると解決する。
まだ列車は通り過ぎている ー もう列車は通り過ぎていない
この場合列車は特定の一台の列車ではなく、頻繁に通る過ぎる不特定の違った幾台もの列車だ。この場合断続的な<継続>になる。だが少し変に感じるのは<過ぎる>、<過ぎ去る>は普通一度きりだからだろう。
基本ルール
<まだ>は肯定で使うと継続、残存、存在、<もう>は否定で使うと非継続、(継続の) 終了、不存在、不足を示す。
にしたがう。
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