Saturday, August 26, 2023

<まだ>と<もう>、過ぎたるは及ばざるがごとし


<まだ>と<もう>については最近かなりしつこく書いているが、 調べてみると際限がない。前々回のポスト<まだはもうなり、もうはまだなり ー2>の最後のほうで


長くなってきたので、無限にある個々の<ややこしいもの、よくわからないもの>については別途検討する予定。

と書いた。

過ぎたるは及ばざるがごとし

過ぎているのは及ばないようなもの
過ぎているのは及ばないことと同じ

といった意味だ。 <過ぎたる>は too much、<及ばざる>は not enough といえる。

この意味での<過ぎる>は動詞にも形容詞にもつく。

動詞につく

行き過ぎる、飲み過ぎる やり過ぎる、勉強し過ぎる

形容詞につく

早すぎる ー 遅すぎる
若すぎる ー 老いていすぎる、年寄りすぎる
よすぎる ー 悪すぎる
新しすぎる ー 古すぎる

<すぎる>は

行く、飲む やる(する)、勉強する

早い ー 遅い
若い ー 老いている、年寄りだ
よい ー 悪い
新しい ー 古い

の一般叙述、状態に対して<好ましくないほど (行き) 過ぎている>ことを示す。言い換えると<好ましい程度を過ぎている>ことを表す。だが<過ぎる>は一般的には<目標を達成している>のだ。

一方<及ばざる>は未達のことで、この場合<未達>は<好ましい、望まれる、予期している程度に達していない>ことを表す。

これが<過ぎたるは及ばざるがごとし>を警句にしている。

 

<未達>と<達成>は最近の<まだ><もう>論議のなかで、まだxxない><もうxx>として幾度も出てきた。<まだ><もう>論議から引用すると


基本的には

<まだ>は肯定で使うと継続、残存、存在、<もう>は否定で使うと非継続、(継続の) 終了、不存在、不足を示す。

一方<まだ>は否定で使うと未達、未完、不十分、不足、<もう>は肯定で使うと終了、達成、完了、十分、充足を示す。 

さらに<過ぎる>の箇所を引用すると

まだ約束の時間は過ぎていない ー もう約束の時間は過ぎている
まだ約束の時間は過ぎている(ダメ) ー もう約束の時間は過ぎていない(ダメ)
まだ特急は通り過ぎていない ー もう特急は通り過ぎた、ている
まだ特急は通り過ぎている (ダメ) ー もう特急は通り過ぎていない (ダメ)

<過ぎる>は到達とみなせる。 <過ぎ続ける>は基本的にダメだ。だが上の<ダメ>も反例可能だろう。


ここの論議ではこれ以上進めていが、このポストで進めることにする。

まだxxすぎる ーもうxxすぎない
まだxxすぎない ー もうxxすぎる

の簡単なマトリクスだ。

動詞

行き過ぎる、飲み過ぎる、やり過ぎる、勉強し過ぎる

まだ行き過ぎだ ー もう行き過ぎでない
まだ行き過ぎている ー もう行き過ぎていない
まだ行き過ぎでない ー もう行き過ぎだ
まだ行き過ぎていない ー もう行き過ぎている

<飲み過ぎる>以下も同様で、問題ない。注意して見ると

<まだxx過ぎだ>は<好ましくない状態が終わっていない>、未達である
<まだxx過ぎている>は<好ましくない状態が終わっていない未達状態>が継続している
<もうxx過ぎ>は好ましくない状態が>達成する
<もうxx過ぎている>は<好ましくない状態が>が達成している

ことを示している。

形容詞

まだ早すぎる ー もう早すぎない (*)
まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)
まだ遅すぎる ー もう遅すぎない (*)
まだ遅すぎない(*)ー もう遅すぎる
まだ若すぎる ー もう若すぎない
まだ若すぎない(*) ー もう若すぎる(*)
まだ老いすぎている(*) ー もう老いすぎていない、もう年寄りすぎていない(*)
まだ老いすぎていない ー もう老いすぎている、もう年寄りすぎる
まだよすぎる ー もうよすぎない、もうよすぎていない
まだよすぎない (*) ー もうよすぎる (*)
まだ悪すぎる ー もう悪すぎない、もう悪すぎていない
まだ悪すぎない(*) ー もう悪すぎる
まだ新しすぎる ー もう新しすぎない
まだ新しすぎない(*)ー もう新しすぎる (*)
まだ古すぎる ー もう古すぎない
まだ古すぎない(*) ー もう古すぎる
まだ少なすぎる ー もう少なすぎない
まだ少なすぎない(*)ー もう少なすぎる(*)
まだ多すぎる ー もう多すぎない
まだ多すぎない(*) ー もう多すぎる
まだ小さすぎる ー もう小さすぎない
まだ小さすぎない(*)ー もう小さすぎる
まだ大きすぎる ー もう大きすぎない
まだ大きすぎない(*) ー もう大きすぎる

(*) はちょっと変な例文だが、チェックしてみる。 

一般的には<過ぎる><目標を達成している>、<過ぎない>は<目標が未達だ>。一方


<まだ>は肯定で使うと継続、残存、存在、<もう>は否定で使うと非継続、(継続の) 終了、不存在、不足示す。

一方<まだ>は否定で使うと未達、未完、不十分、不足、<もう>は肯定で使うと終了、達成、完了、十分、充足を示す。 

だ。

まだ早すぎる ー もう早すぎない (*)

約束の時間までに十分、十二分に時間がある場合に<まだ早すぎる>という。<もう早すぎない>はあまり聞かないが、<まだ早すぎる>時から時間がたって、具合のいい時間になれば<もう早すぎない>と言う。あるいは子供が酒を飲んだり、たばこを吸おうとする場合<まだ早すぎる>というが、成人に対しては<もう早すぎない>と言える。

まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)

これは以前に

まだ早くない(ダメ) ー もう早い(ダメ)

の反例として

英語に直すと

not yet early   -   already early

さらに直すと

not yet early enough   -   already early enough

回り道だが、これを日本語にもどすと

まだ十分早くない  ー もう十分早い

開始は午前十時だ。我々は到着まで、まだ十分早くない ー もう十分早い

だが翻訳調っぽいくて日本語らしくないが、これを

まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)

に応用すると

開始は午前十時だ。我々は到着まで、まだ十分早すぎない ー もう十分早すぎる

になるが、 翻訳調っぽく、かつ意味が通りにくい。

まだ十分早すぎない ー もう十分早すぎる

not yet too early enough   -   already too early enough

これは英語でもおかしい。<十分(好ましい状態、目的達成)>と<過ぎる(好ましい状態、目的未達)>が矛盾するためだろう。さて

まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)

に戻って

いずれもあまり聞かないが、

<早すぎる>が未達とはどういうことか。<早すぎる>は必ずしも悪いことではないが、<早すぎる>は好ましい、適当、適宜な程度を<過ぎる>ことで、これを目標、期待とするのは矛盾する。

一方<早すぎる>が達成する、達成しているとはどういうことか。好ましい、適当、適宜な程度を<過ぎる>ことを目標、期待として達成する、達成している、達成したということになり、好ましいことではない。

だが

<まだ早すぎない>は<早すぎる>状態が未達、<早すぎるになっていない>。一方<もう早すぎる>は<早すぎる>状態に達成している。一般に<早い>は<好ましい、望まれる状態>だ。<まだ早すぎない>は変な言い方だが、<もっと早くなるようにすべきだ>が内包されている (implied) いればOKか。一方<もう早すぎる>も変な言い方だが、<もっと早くなるようにする必要はない>が内包されていればOKか。かなりややこしくなってきている。例文が必要だ。

まだ早すぎない(*) ー もう早すぎる(*)

が使える場面、状況を考えてみる。

<早すぎない>は否定的な<早すぎる>の否定で肯定になる。つまりは<早すぎない>が好ましい場面、状況を考えればいい。<早すぎない>が好ましいものとしては早漏、早熟が思い浮かぶが、台風の接近を考えてみる。

まだ準備ができていないので台風の接近は<早すぎない>ほうがいい。<まだ>を加えると

さいわいまだ台風の接近は早すぎない、早過ぎていない。

で問題ない。 一方<もう早すぎる>はこの場合具合が悪い。

まだ準備ができていないのに、今晩来襲するのではもう早すぎる

で問題ない。もう一例、ガンの進行。

さいわいこのガンの進行はまだ早すぎない、早過ぎていない。
まだいい対処方法が見つかっていない状況で、このガンの進行はもう早すぎる。

まだ遅すぎる ー もう遅すぎない(*)

太郎は何とか3時に来るということだが、会議は2時に始まるので、3時に来るでは<まだ遅すぎる>、と言う。

<もう遅すぎない>はあまり聞かないが、

太郎はさらにやりくりして何とか1時50分までに来るということになった。この場合は<もう遅すぎない>と言うだろう。

まだ遅すぎない(*)ー もう遅すぎる 

<まだ遅すぎない> も変だが、上記の太郎の例で、太郎が1時50分までに来た場合には

まだ遅すぎない、 まだ遅すぎていない

と言える。

<まだ遅すぎない>は<遅すぎる>状態が未達、<遅すぎるになっていない>。一方<もう遅すぎる>は<遅すぎる>状態が達成している。問題は<遅い>が一般に<好ましい、望まれること>ではないことだ。<遅すぎない>はいいことで、<遅すぎる>はよくないことだ。これで意味は通る。

まだ若すぎる ー もう若すぎない
まだ若すぎない(*) ー もう若すぎる(*)

これは解決方法、というか<こじつけ解釈>を見つけた。

前々回のポスト<まだはもうなり、もうはまだなり ー2>でみつけたのだが

まだまだ若くない(ダメ) ー もうもう若い(ダメ)

強力な若返りの薬を毎日飲んでいるが

まだ若くない  ー もう若い

でOKだ。これを応用すると

まだ若すぎない(*) ー もう若すぎる(*)

強力な若返りの薬を毎日飲んでいるが

まだ若すぎない ー もう若すぎる

で何とかなる。もう一例 (反例) は、これまた<強力な若返りの薬>と同じく現実離れしていいるがタイムマシンを使うのだ。タイムマシンでは

老人 ー>中年 ー>青年 ー>子供 ー>赤ん坊

が可能だ。老人がタイムマシンに入ると、どんどん若くなる。したがって

まだ若すぎない ー もう若すぎる

と言うことができる。 このタイムマシンでは

まだ老いすぎている(*) ー もう老いすぎていない、もう年寄りすぎていない(*)

と言うこともできる。

  

まだよすぎる ー もうよすぎない、もうよすぎていない
まだよすぎない (*) ー もうよすぎる (*)

これは<よすぎない>状態を目的、好ましい状態すれば、問題ない。<カッコよすぎる>は常にいいとは限らない。

カッコよすぎると目立ってしょうがない。

それではまだカッコよすぎる。 ー それならもうカッコよすぎない、もうカッコよすぎていない。
まだカッコよすぎない (よすぎていない) からOKだ。 ー もうカッコよすぎるからダメだ。

これに関してはフアッション用語で sprezzatura というイタリア語がある。興味とひまのある人は調べてみるとおもしろい。イタリアフアッションは奥深い。

 

まだ悪すぎる ー もう悪すぎない、もう悪すぎていない
まだ悪すぎない(*) ー もう悪すぎる

これも<悪すぎない>状態を目的、好ましい状態すれば、問題ない 。たとえばドラマで悪人を作るときに<悪すぎない>悪人を作ろうとした時には<まだ悪すぎない>と言える。


まだ新しすぎる ー もう新しすぎない
まだ新しすぎない(*)ー もう新しすぎる (*)

以下も同じようにして説明ができる。

 

さて最初の方にもどって

まだ約束の時間は過ぎていない ー もう約束の時間は過ぎている
まだ約束の時間は過ぎている(ダメ) ー もう約束の時間は過ぎていない(ダメ)
まだ特急は通り過ぎていない ー もう特急は通り過ぎた、ている
まだ特急は通り過ぎている (ダメ) ー もう特急は通り過ぎていない (ダメ)

<過ぎる>は到達とみなせる。 これも<過ぎ続ける>はダメ。だが上の<ダメ>も反例可能だろう。

のダメの反例を探してみる。

まだ約束の時間は過ぎている(ダメ) ー もう約束の時間は過ぎていない(ダメ)

<約束の時間が過ぎている>状態を目的、好ましい状態すればいい。約束をした相手は以前に約束を破られた気に食わない人物で、機会があれば復讐したいと思っている。だいぶ待たせてある。

まだ約束の時間は過ぎている。いい気味だ。

もう約束の時間は過ぎていない(ダメ)  

の反例は難しい。英語でも already not yet passed で矛盾するいいかただ。上気に食わない人物の例で、タイムマシンを使って、様子を振り返ってみる。普通の時間軸で記録ビデオを見るのではない。

15分前 ー まだ約束の時間は過ぎている。いい気味だ。
30分まえ ― 約束の時間
45分前 ー もう約束の時間は過ぎていない。もう少し待たせよう。

何とかなるが、かなり非現実な設定だ。

まだ特急は通り過ぎていない ー もう特急は通り過ぎた、ている
まだ特急は通り過ぎている (ダメ) ー もう特急は通り過ぎていない (ダメ)

これは特急でもいいが、(普通) 列車にすると解決する。

まだ列車は通り過ぎている  ー もう列車は通り過ぎていない

この場合列車は特定の一台の列車ではなく、頻繁に通る過ぎる不特定の違った幾台もの列車だ。この場合断続的な<継続>になる。だが少し変に感じるのは<過ぎる>、<過ぎ去る>は普通一度きりだからだろう。

 

基本ルール

<まだ>は肯定で使うと継続、残存、存在、<もう>は否定で使うと非継続、(継続の) 終了、不存在、不足を示す。

にしたがう。

 

sptt
 


 

 

 

 


sptt

 

 

 




 

 

 

 


 

 




 

No comments:

Post a Comment