Friday, August 4, 2023

<でも>の正体-2.類推助詞

 

"<でも>の正体 " はまだ続く。

https://upwrite.jp/grammar/auxiliary_verb

日本語の助動詞の種類は、意味で分類すると「受け身・可能・自発・尊敬・使役・丁寧・希望・打ち消し・断定・過去・完了・推量・意思・たとえ・例示・推定・伝聞・様態」

推量・意思 う・よう
たとえ・推定・例示  ようだ
推定  らしい
 
文法用語では<類推助動詞>というのはない。類推は
 
https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/content/20789_1496
 
類似点に基づき他の事をおしはかること。二つの特殊的事例が本質的な点において一致することから、他の属性に関しても類似が存在すると推論すること。似たところをもととして他の事も同じだろうと考えること。類比推理。アナロジー。
 
というようなことだ。えたいの知れない助詞<でも>を考えるとき、この類推、働きとしては<類推作用>は重要だ。これは一種のレトリックだ。これまで何度も取り上げているが、<でも>の解説では
 

デジタル大辞泉 (小学館) では係助詞の解説の1番目に

物事一部分挙げて、他の場合はまして、ということ類推させる意を表す。…でさえ。「子供—できる」「昼前気温三〇度ある」 
 
というのがあり、ここで<類推>が出てくる。
 
子供でもできる 

話者が聞き手に伝えたいのは<子供でもできる >ではなく、これが聞き手に(他の場合はまして、ということを)類推をさせる、例えば
 
大人ならもちろんできる。

だ。これは類推の一例であって、他の類推例も考えられる。
 
 昼前でも気温が30度もある

の方は、聞き手は
 
だから、午後2時ごろは33度くらいになるかもしれない。
だから、午後2時ごろはもっと暑いだろう。
 
が類推例だ。これも何度も引用しているが、手元のかなり古い辞典 (三省堂) では副助詞としての解説で
 

1.許容される最低の場合を例示する。

と簡単で。例として

1)子供の足でも十分あれば行ける。
2)忙しくて日曜日でも遊んでいられない。
3)今からでも遅くない。
4)これだけでも持って行きなさい。

この辞書では肝心な<聞き手に類推をさせる>というのがない。<許容される最低の場合を例示する>は、少しチェックすればわかるが、間違いとも言える。この間違いはすでにこれまでのポストで書いているので、ここでは触れない。

発話から類推されるのは、状況により違いはあるが、妥当な例では

1)子供の足でも十分あれば行ける。

ましてや、大人なら7-8分で行けるだろう。

2)忙しくて日曜日でも遊んでいられない。

日曜日も含めた休みなしの大忙しだ。(月曜からから土曜日まではもちろん遊んでいられない)

3)今からでも遅くない。

それなら、今すぐに行こう(始めよう)

が類推され、類推に<今から>の比較対象の<遅い><遅くない>が出てこない。これはやや特殊だ。

4)これだけでも持って行きなさい。

わかった。じゃあそうする。(あれこれ持って行くのはやめよう)これもやや特殊だ。

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 デジタル大辞泉 (小学館) と三省堂辞典には出てこないが

夢でも見ていたんだろう。
花子は今家にいないが、買い物にでも出かけているんだろう。
 
これは推量、推定ともいえるが、<でも>があるので 
 
<でも>のない推量、推定
 
夢を見ていたんだろう。
花子は今家にいないが、買い物に出かけているんだろう
 
とは違う。 <でも>がある場合は、類推というか、他の可能性があることを残した言い方だ。このような<でも>を使った言い方は日常少なくない。
 
デジタル大辞泉 (小学館) と三省堂辞典で似たような例を探してみると
 
デジタル大辞泉 (小学館) では[係助]の3番目として

  物事をはっきりと言わず一例として挙げる意を表す。「けが—したら大変だ」「兄に—相談するか」

けがでもしたら大変だ。
兄にでも相談するか。
 
三省堂辞典

 2.考えられる消極的な条件がともかく成立するさまを表わす。

1)お茶でも飲もう。
2)こんな時木村君でもいてくれたらなあ。
3)けがでもさせたら大変だ。
4)明日にでも来てもらおう。

(<考えられる消極的な条件がともかく成立するさまを表わす>は訳がよくわからない解説だ。これは別のポストで検討した。)

がある。
 
デジタル大辞泉 (小学館) の<一例として挙げる意を表す>は解説としては不十分で、
xxxとして、xxxのために一例として挙げる意を表す>としないといけない。
 
けがでもしたら大変だ。
兄にでも相談するか。
 
この解説では<けが>、<兄に>が<物事をはっきりと言わず、一例として挙げる意を表す>の一例となるのだが、<けが>、<兄に>とはっきり言っている。
 
けがなどでもしたら大変だ。

の場合は<けが>は<けが>以外の他の例がある、選択肢を残した一例になる。だが<でも>を使う場合はこうは言いそうもない。
 
けがなどしたら大変だ。
 
は 
 
けがでもしたら大変だ。
 
に近い
 
などにでも相談するか。兄になどでも相談するか。
 
とは言いそうにない。
 
 
sptt
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 



 
 
 
 


 
 

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