Tuesday, May 7, 2013

形容動詞の分類 - 再考、漢語由来の形容動詞


かなり前のポスト<形容動詞の分類>で次のような書き出しで形容動詞の分類を試みた。


形容動詞はその名前からして、形容詞なのか動詞なのかはっきりしない。イソップ物語のこうもりと同じで、あるときには形容詞、またあるときには動詞ということか。よく言えば<融通無碍>悪く言えば<二股膏薬>。形容動詞の分類を試みる。


前のポストでは大和言葉の形容動詞の分類がおもだったが、形容動詞は圧倒的に漢語由来が多いので、漢語由来の形容動詞を少し調べてみた。そして、4)漢語由来グループとみなせる形容動詞(漢字)> として、下記の例をあげた。

安全な(だ)
不安な(だ)
危険な(だ)
簡単な(だ)
複雑な(だ)
便利な(だ)、不便な(だ)
有名な(だ)
重大な(だ)
壮大な(だ)
厳重な(だ)
極端な(だ)
正常な(だ)
正確な(だ) 、不正確な(だ)
十分な(だ)
---

以上は二語漢語ばかりなので一語漢語を加えてみる。一語漢語の形容動詞は多くない。多くない理由は元来の一語漢語(中国語由来)の意味は大体大和言葉の形容詞、形容動詞で間に合ったからだろう。探してみると次のような形容動詞がある。

変な
妙な
別な 
得な
損な
純な

さて、前のポスト<形容動詞の分類>に続くポスト形容詞と形容動詞判定のリトマス試験紙<さ>>、形容動詞の分類 - 2 <な>と<の>、第二のリトマス試験紙>分類方法を試みたので、一部は重複するが、この二つの分類方法やってみる。

形容詞と形容動詞判定のリトマス試験紙<さ>

安全
不安
危険
簡単
複雑
便利、不便
有名
重大
壮大
厳重
極端
正常
正確 、不正確
十分
---


 




判断は個人差があると思うが、文脈(コンテクスト)無しで大体OKなのは二語漢語幹で、複雑さ、便利、不便さ、重大さ、壮大さ、厳重さ、極端さ、正確 、不正確。残りの安全さ、不安さ、危険さ、簡単さ、十分、はおかしい、または少しおかしい。但し、まったくダメというわけではない。
OKな二語漢語幹の形容動詞はかなり日本語化している、おかしいのは日本語化していないといえる。一方、一語漢語の語ははまったくダメに近い。中途半端な日本語形容動詞と言える。


次に、形容動詞の分類 - 2 <な>と<の>、第二のリトマス試験紙>

安全な   安全の 
不安な   不安の 
危険な   危険の 
簡単な   簡単の 
複雑な   複雑の 
便利な   便利、 不便な  不便の 
有名な   有名の 
重大な   重大の 
壮大な   壮大の 
厳重な   厳重の 
極端な   極端の 
正常な   正常の 
正確な   正確、 不正確な  不正確の 
十分な   十分
---
変な    変
妙な    妙
別な    別の  
得な    得の 
損な    損の 
純な    純の 


二語漢語幹はダメ。一語漢語幹では<別>はOK,、<純>もOK。他はダメ。二語漢語幹、一語漢語幹にかかわらずおおむねダメだ。ということは、これらは形容動詞なのだ。

注) 語の意味ではなく、語自体を取り上げる、たとえば<重大の意味は....>といったケースは除く。


以下さらに分類を試みてみる。ところで、中国語は一語、二語(三語のケースはまれのようだ)で語形変化なし(発音も例外はあるが基本的には無変化)で名詞、形容詞、動詞となるとんでもない言語だ。

ます<XXがある>としてみる。

安全がある
不安がある
危険がある
簡単がある
複雑がある
便利がある、不便がある
有名がある
重大がある
壮大がある
厳重がある
極端がある
正常がある
正確がある 、不正確がある
十分がある
---
変がある
妙がある
別がある
得がある
損がある
純がある

本来は文脈(context)にもよるのだが, 上記の<句として>でややおかしいのがかなりある。

安全がある
簡単がある
複雑がある
有名がある
重大がある
壮大がある
厳重がある
極端がある (こうもいえる)
正常がある
正確がある 、不正確がある
十分がある
---
変がある
別がある (これは<別のモノがある>の略で、<別>が独立しているわけではない)
得がある
純がある

<句として>おかしくないのは

不安がある
危険がある
不便がある
---
妙がある
損がある

以外と少ない。不安、危険, 不便、妙、損は日本語のなかで名詞(体言)として独立している。他はそうでないといえないか。


さらに<XX なところがある>としてみる。これは少し長いが<さ>と同じく形容詞、形容動詞の名詞(体言)化と言えよう。 美しい -> 美しいところ、つらい -> つらいところ、静かな -> 静かなところ。

安全なところがある
不安なところがある
危険なところがある
簡単なところがある
複雑なところがある
便利なところがある、不便なところがある
有名なところがある
重大なところがある
壮大なところがある
厳重なところがある
極端なところがある
正常なところがある
正確なところがある 、不正確なところがある
十分なところがある
---
なところがある
なところがある
なところがある
なところがある
なところがある
なところがある

意味内容によるが、具体的な場所(ところ)を表す場合、やや抽象化してXXの(ような)箇所、性質を表す場合、あるいは両方を表す場合があるようだ。いくつか適当な文脈(コンテクスト)がないと少しおかしいのがあるが、おかしさは<さ>の場合ほどではない。

ところで、<変な>と<妙な>には、変テコリン(変チクリン、ともいう)、妙チクリン、という面白い口語がある。<リン>は意味があるとすれば中国語由来だろう。大和言葉に<リン>という発音はない。変テコリンな(だ)、妙チクリンな(だ)で形容動詞になる。変テコな(だ)も形容動詞。<テコ>も<チク>も、romatic がロマンチックになることから、同源だろう。romatic <-tic>の音訳は<的>だ。<変な(だ)>形容動詞になるが、<変的>も<経済的な(だ)>、<家庭的な(だ)>などと同じく、<変な(だ)>の派生として<変的な(だ)>のかたちの形容動詞になれる。これを読めば<ヘンテキな(だ)>となる。


結論

いづれにしても漢語由来の形容動詞は程度の差こそあれ完全には大和言葉の形容動詞にはなっていないようだ。また以上の調査では語の意味内容には深入りせず、また文脈(context)もあえて除いて検討したが、漢語由来の形容動詞の場合はの<形容動詞は程度の差>は語の意味内容、文脈(context)に関係していると思う。これは大和言葉の形容動詞の文法上のルール化と対比してみる必要がありそうだ。


sptt








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