Friday, November 29, 2024

複合動詞<xxなおる>、<xxなおす>の英語表現

複合動詞<xxなおる>、<xxなおす> をざっと調べてみたが<xxなおす>が圧倒的に多い。そして<xxなおす>は意味は少しずれるのだが、英語では<xxagain>と訳せるものが少なくない。

日本語では<なおる> は書き言葉では<直る>、<治る>、<なおす>は<直す>、<治す>と書いて区別し、<治る>、<治す>は病気、医療関係に使われるが、耳で聞けば<なおる>、<なおす>で区別はない。とにかく複合動詞としての<xxなおる>、<xxなおす>をチェックしてみる。アイウエオ順。

<xxなおる>

居直る  自動詞  慣用表現
開き直る 自動詞  慣用表現
立ち直る 自動詞  to recover

持ち直る 自動詞  to recover <持ち直す>でもいい。
向き直る 自動詞   ネット辞典では to turn around と出てくるが、180度とは限らないか? <向き直す>でもいい。

追加予定

<xxなおす>

<xxなおす>は汎用性が高く、意味が成せばどんな動詞にでもつく。

洗い直す  to wash again
言い直す  to say again in a correct way, in a better way
行き直す  to go again
教え直す  to teach again
思い直す  to reconsider

買い直す  to buy again
書き直す   to rewrite
考え直す  to think again、to rethink、to change the thought
聞き直す  to listen something again
組み直す  to reconstruct、to reorganize

し直す   to do something again、to make something again
座り直す  to change the sitting position

食べ直す  to eat again
作り直す  to make something again, to remake
立て直す  to rebuild、to reconstruct、to recover
出直す   to go again、場合により to come again、to re-start

並べ直す  to realign、to rearrange
寝直す   to sleep again
飲み直す  to drink again

学び直す  to study again、to learn again
見直す   to see something in a different way、to review
持ち直す  to change the holding position (文字通り) 、to recover(慣用)
やり直す  to do something again、to make something again、to rework
読み直す  to read again (from a different point of view)

追加予定 (いくらでもある)

 1)<直す>自体には to correct <間違いを正す>の意がある。あるいは<あらためて、もう一度xxする>の意がある。したがって、単なる again (再び) ではない。<間違いを正す>で、<間違い>を病気 (一種の身体機能の間違い) とすれば、<病気を正す>、<身体機能の間違いをなくす>で<病気を治す>になる。自動詞用法を使えば、<身体機能の間違いが正される>で<病気が治る>になる。

また<直す>と<治す>の違いだが、上の論議を機械に当てはめると

 間違い ー> 故障、不具合 (機能の間違い) 

となる。

故障を直す、不具合を直す

<直す>が使われるようだが、何か変な感じだ。<治す>も変だ。

2)英語の re-xxxx  の<re>はラテン語系の動詞に現れるが、主に again の意だ。一音節なので経済的。

3)<xxなおる>が<xxなおす>に比べて極端に少ない理由。

 <xxなおる>は、上の例では<自動詞+自動詞>構成で、複合動詞としても自動詞になる。

立ち直る 自動詞  (自動詞+自動詞)

<立ち直す>はなく、<立て直す><他動詞+他動詞>になる。<立て直る>もない。 

持ち直る 自動詞  (自動詞+自動詞) 

<xxが持ち直る>でも、 <xxが持ち直す>が使われる。自動詞。<xxを持ち直す>他動詞。

詳しい理由、経緯がよくわからないが、ちょっと調べた限りでは、これは他の動詞にもあてはまり、<xxなおる>が<xxなおす>に比べて極端に少ない表面上の理由だ。

向き直る 自動詞  (自動詞+自動詞) 

太郎は向き直った。


太郎は向き直した。

は同じような意味で、 単独の<向き直す>は他動詞っぽいが、<太郎は向き直した>は自動詞っぽい。

よくわからない、曖昧なので、もう少し調べてみた。

止まった時計が動き始めた、動き出した。 自動詞+自動詞

が普通の言い方だが、<xxなおる>、<xxなおす>にこだわれば

止まった時計が動き直った。 自動詞+自動詞

とはなんとか言えそう。さらに

止まった時計が動き直した。自動詞+他動詞

とも言え、しいていえば<止まった時計が動き直した>を使いそう。この場合<動き直す>は<自動詞+他動詞>構成だが、複合動詞として明らかに自動詞だ。

生き返った。 自動詞+自動詞

が普通の言い方だが、言い換えると

生き直った。
生き直した。 

で、どちらかと言えば<生き直した>を使いそう。

上の<xxなおす>の例では

座り直す  自動詞+他動詞

<座り直る>は純自動詞的だが、ほとんど使われず普通は<座り直す>が使われる。

細かいことを言えば

座る = to sit で日本語も英語も自動詞。しかしながら to sit は to set oneself と他動詞を使った表現も可能だ。あるいはこういう他動詞表現が脳裏にある。

並べ直す  自動的に、放っておいても<並び直る>場合があるのだが、ほとんど聞かない。 

日本語文法では、よくわからない<自発の助動詞>というのがあるが、<並び直る>はある意味では<自発表現>と言える。もっとも、このような自動詞は基本的に自発的だ。

もう少し例文を作ってみた。

船は一度は沈んだが、浮かび直ってきた。 <浮かび直してきた>でもいい。普通は<浮かび上がってきた>。

二人は一旦は離れるが、近づき直ってくるだろう。普通は<近づき直してくるだろう>か。

今は失業中だが、間もなく働き直る。普通は<働き直す>。

その機械はしばらく止まっていたが、今動き直った。普通は<今動き直した>。もっと普通は<今動き始めた>。

成績が / は一旦は下がったが、最近上がり直ってきた。 普通は<上がり直してきた>。


つまりは、元来<xx直る>が<xx直す>で置き換えらているものが少なくないようだ。

 

sptt

 

Thursday, November 28, 2024

複合動詞<xx離れる>、<xx離す>と英語の<xx off>

前回のポスト " 日本語の複合動詞と英語の<動詞+副詞>、複合動詞<xx 去る>、<xx away> " で

<なくす、見えなくする>は away、off が使われるか?away は遠くに離れて行ってみえなくなる感じ。off の方は近視眼的に<切り離れる>、<切り離す>の感じだ。おそらく<xx離れる>、<xx離す>で多く出てくるだろう。この off が (を) 使いこなせるようになれば英語は一人前と言える。

と書いたが、忘れないうちに<xx離れる>、<xx離す>と<xx off>の関係を調べてみる。 <xx離れる>、<xx離す>以外では<外 (はず) れる>、<xx 外す>が関連ありそう。ざっと調べてみたが、これは予想外に少ない。

1.<xx離れる>、<xx離す>

 <xx離れる>

かけ離れる  to go far (away)

<xx離す>

切り離す  to cut off
突き離す(突き放す)  to push away
引き離す  to pull off、to pull apart
見離す(見放す)  to abandon

<外 (はず) れる>、<xx 外す>

<xx 外れる>、

取り外れる  to be removed、 to come off  <(シャツのボタン)がとれる>

<xx外す>

取り外す  to remove
振り外す  to shake off

(追加予定)

 <予想外に少ない>理由は、これらは主に普通、複合動詞の形ではなく、

xxして(すると)離れる  押して (押すと) 離れる 
xxして離す   押して離す、引いて離す、叩いて離す(叩き離す)

xxして(すると)外れる  押して (押すと) 離れる 
xxして外す  押して外す、引いて外す、叩いて外す(叩き外す)

のような言い方になるからだ。なぜだかよくわからない。

これに反して、おもしろいのは off (オフ) がそのまま日本語で使われるケースが少なくない。

オフリミット  off limit
オフレコ  off record(ding)
シーズンオフ  season off   オフシーズン と言うのもある。
スピンオフ  spin off
プレイオフ  play off  スポーツ用語
リードオフマン  lead off man  野球用語
<サヨナラ試合>は walk off (立ち去る) game と言うと言う   野球用語

 使用頻度は高くないが

オフバランス  バランスシート外
トレイドオフ  あちらが立てばこちらが立たずの関係

と言うのがある。

 

sptt


 


Tuesday, November 26, 2024

日本語の複合動詞と英語の<動詞+副詞>、複合動詞<xx 去る>、<xx away>

 

最近シリーズ的に日本語の複合動詞をチェックしてきたが、日本語の複合動詞はきわめて豊富。おそらく相当長い時間をかけてもチェックし切れないだろう。<し切れない>も複合動詞<し切る>を使った言い方だ。日本人であれば、無意識に数多くの複合動詞をほぼ間違いなく使いこなして言語生活をしてる。(使いこなす>も複合動詞)。これまでチェックしたものを、タイトルを使って並べてみると、古い順に

複合動詞<xx 去る>、<xx away>
複合動詞 <xx 払う、はらう>
<出る、出す>と<入る、入 (はい) る、入れる>の複合動詞
<込む>、<込める>の複合動詞
<xxつまる>、<xxつめる>の複合動詞
<はてる、果てる>、<はたす、果たす>の複合動詞
複合動詞<xxかえる>
複合動詞<xxきる>
複合動詞<xx尽きる>、<xx尽くす>
飽きる、飽かす(明かす)

まだまだありそうだが、主要なものは上に含まれている。上のポストでも時々言及しているが、日本語の複合動詞と英語の<動詞+副詞>は対比できるものが少なくない。上のポストでは日本語の複合動詞探しにかなりの時間を使ったので、特に英語の<動詞+副詞>との対比に時間をかけていない。今回以降は英語との対比に重点を移して、再検討することにした。

最初の

複合動詞<xx 去る>、xx away> 

はタイトルにこの対比がある。ネット日英辞典に頼ることになるが、コピー / ペイストではない。

 <自動詞+去る>

崩 (くず) れ去る
過ぎ去る
立ち去る
飛び去る
流れ去る
逃げ去る
走り去る

<崩 (くず) れ去る>は例外で、<崩れて、そして去る>ではなく跡形もなく、すっかり崩れる>といった意味だ。

<立ち去る>は何かおかしい感じがする。調べてみたが<(居座っていた人が立って去る>の意のようだ。その他は 

過ぎ去る  通り過ぎて去る  to pass だと<過ぎる>になるが、to pass away だと通常別の意味になる。  過ぎ去ると見えなくなる。(以下同じ)
飛び去る  飛んで去る、飛びながら去る to fly away
流れ去る  流れながら去る to flow away
逃げ去る  逃げて去る to flee away
走り去る  走って去る、走りながら去る to run away

で<xx away>が対応する。

 <xx away>と書いているが、他動詞なので、実際は<toxx(動詞) something away>となり、自動詞と違って、away は副詞色が濃くなる。

 <他動詞+去る>

洗い去る  洗い流してなくす
奪い去る  奪って去る。強盗。ひったくり。  
置き去る  置いてさる。<置き去 (ざ)り>という慣用句がある。
切り去る  切り取ってなくす。
消し去る  消してなくす。都合の悪い箇所を消し去る、すべて消し去る。
取り去る  取りのぞく。取り除いてなくす。不純物を取り去る。
流し去る  流してなくす。溝にたまった泥を流しさる。
抜き去る  xx(誰だれ)を抜いて行く、去る。
脱ぎ去る  脱いでなくす。古い習慣を脱ぎ去る(脱ぎ捨てる)。
拭 (ぬぐ) い去る  拭ってなくす。
運び去る  モノを運んで去る。元の場所にはモノはなくなる。
拭 (ふ) き去る  拭いてなくす。
吹き去る  吹き飛ばし去る。吹き飛ばしてなくす。
葬 (ほうむ) り去る  葬 (ほうむ) ってなくす。必ずしも殺人 (殺して見えなくする) とは限らない。<見えなくする>の強調ともいえる。
持ち去る  モノを持って去る。元の場所にはモノはなくなる。
破り去る   破ってなくす。十分に破いて、元の形がなくなる。届いた不合格通知を破り去った。
忘れ去る  忘れて、記憶からなくす。

 <他動詞+去る>の方は

1)xx(を)して去る、<去る、to go away>の意味。


2)xx(を)xxして<すっかり>なくす、見えなくする。

があるようだ。<すっかり>は副詞で、英語では thoroughly, completely というのがある。<なくす、見えなくする>は away、off が使われるか?

<人が去る、to go away>の意味があるのは

奪い去る  奪って去る

to rob away は見つからなかったが、to steal away はある。

受験生泣かせだが to rob は

to rob someone of something のように使う。また、to rob は強盗、to steal は泥棒、空き巣がする。

置き去る  xxを置いて去る 英語は leave it で<置き去る>の意があるようで、to leave it away とは言わない。

<置き去る>は<意図的に置いて去る>と<置き忘れて去る>の場合があるが、後者の場合は<去る>のない<置き忘れる>でいいようだ。英語の to leave it の場合は<置き忘れる>も意味するか?英語の <to leave>はやっかいな動詞で以前に ” 英語の to leave は多義語”  というポストを書いたことがある。

<置き去 (ざ)り>もおもしろい言葉だ。普通は<置き去りにする>、<置き去 りにされる>で使う。

抜き去る  <AがBを追い抜いて去る>で他動詞だが自動詞のような感じだ。<away>の意味がある。to pass away は<死ぬ、亡くなる>なので、注意。

to pass で<抜いて行く>の意がありそう。マラソン中継の英語解説で何度も出てくるだろう。ネット辞典では

to pass: 通る,通り抜ける,通り過ぎる,追い越す,抜き去る.

というのがある。

<抜き去る>には<抜き取り去る>の意味もあり、この場合は to pull out。

運び去る  運んで去る

持ち去る  他人の物を<持ち去る>が多いようで、<盗み去る(盗んで去る)>のような感じだ。<持ち去る>は英語のマクドナルドや KFC の<take away>相当だが、日本語では<お持ち帰り>になっている。<持ち去り>では客が泥棒のようになる。<お持ち帰り>は定着しているが、私が住む香港ではいろいろある、というかいろいろあった。ひと昔前は<take away>の訳語と思われる<レン走, ling1 zau2 (拎走)>、一時<行街 haang4 gaai1>というのを聞いたが、最近は<外売、ngoi6 maai6 (外賣)>が定着しているようだ。北京語は<外売>のようだ。

<持ち去る>の<去る>も<away>の意が残っている。

これらの動詞には大体<去る、離れて行く、away>の意味はあるが、どうもそれだけではないようだ。<離れて行く、away>以外にどんな意味があるかというと、それは<すっかり、ない>、<跡形もなく、ない>、<徹底的に>といった副詞的な意味で、一種の強調。

跡形もなく消し去った
跡形もなく壊 (こわ) し去って行った
すっかり忘れ去った

<なくす、見えなくする>は away、off が使われるか?away は遠くに離れて行ってみえなくなる感じ。off の方は近視眼的に<切り離れる>、<切り離す>の感じだ。おそらく<xx離れる>、<xx離す>で多く出てくるだろう。この off が (を) 使いこなせるようになれば英語は一人前と言える。

洗い去る  to wash away

切り去る  to cut away

消し去る  to erase で十分のようだが、to erase away、to erase off でもよさそう。<xxから、from xx>とした方が明確だ。

取り去る to take something away

取り除く to remove

to take off は

1.(of an aircraft or bird) become airborne. 

"the plane took off from the runway"

自動詞で、(飛行機などが)離陸する。

2.to remove clothing from one's own or a body of someone else

"she took off her cardigan."

他動詞で、(衣服を) 脱ぐ。

流し去る  to wash away   <洗い去る>と同じ。to flow away は自動詞で<流れ去る>

脱ぎ去る   上記の to take off 参照。

拭 (ぬぐ) い去る、拭 (ふ) き去る  to wipe away でいいだろう。to wipe out はもっと力ずくで、強力。

運び去る  to carry away

吹き去る  吹いて取り除く,吹き飛ばし去る to blow off。  

 

<xx去る>にはなかなかいい言葉がある。上でとりあげた<忘れ去る>以外では

消し去る  消し去ることのできない罪悪感
過ぎ去る  楽しい時間は過ぎ去った。
拭い去る  この汚名はきっと拭い去る。

忘れ去る  頭の中にあるモノが<to go away, gone away>。 だが<忘れ去る>は<すっかり忘れる>の意味も含んでいる。 


sptt

日本語の複合動詞と英語の<動詞+副詞>、複合動詞 <xxこなす>

 

最近シリーズ的に日本語の複合動詞をチェックしてきたが、日本語の複合動詞はきわめて豊富。おそらく相当長い時間をかけてもチェックし切れないだろう。<し切れない>も複合動詞<し切る>を使った言い方だ。日本人であれば、無意識に数多くの複合動詞をほぼ間違いなく使いこなして言語生活をしてる。(使いこなす>も複合動詞)。これまでチェックしたものを、タイトルを使って並べてみると、古い順に

複合動詞<XX 去る>、<XX away>
複合動詞 <XX 払う、はらう>
<出る、出す>と<入る、入 (はい) る、入れる>の複合動詞
<込む>、<込める>の複合動詞
<xxつまる>、<xxつめる>の複合動詞
<はてる、果てる>、<はたす、果たす>の複合動詞
複合動詞<xxかえる>
複合動詞<xxきる>
複合動詞<xx尽きる>、<xx尽くす>
飽きる、飽かす(明かす)

まだまだありそうだが、主要なものは上に含まれている。上のポストでも時々言及しているが、日本語の複合動詞と英語の<動詞+副詞>は対比できるものが少なくない。上のポストでは日本語の複合動詞探しにかなりの時間を使ったので、特に英語の<動詞+副詞>との対比に時間をかけていない。今回以降は英語との対比に重点を移して、再検討することにした。

ちなみに、上の<使いこなして>ー><使いこなす>、<xxこなす>を例にとると、

<xxこなす>は汎用性があり、<こなす>の三音節、一語で<訓練して上手くできる、できるようにようになること>を表しており、英語でいえば

to do something skillfully
to manage to do something skillfully

副詞 skillfully が肝要だが、<ある程度の時間をかけて訓練して(by practice for a certain time)>も必要だ。

汎用性があると言っても上のような条件のもとに使える。

私の息子は自転車が乗りこなせるようになった。
私の娘は着こなしがうまい。
この道具が使いこなせるようになるには時間がかかる。

汎用性を示せば

練習してカヌーが (を) 乗りこなせるようになった。
たくさん練習していろいろな歌が (を) 歌いこなせるようになった。

 

sptt

 

<勉強は飽きる>は正しい日本語か?

 

前回のポスト<飽きる、飽かす(明かす)>の初めの方で


調べてみると

(to) bore

という他動詞があり、<飽きさす>という意味、したがって

Math bores me.

数学は私を飽かす。

古語調、超翻訳調だが、なんとかなる。

数学は私を飽きさせる。

なら少しいい。

動詞 bore の形容詞は boring で、これはよく聞く。

Math is boring.

が普通のいい方。これを日本語にすると

数学は飽き飽きする。
数学は飽きる。

と書いた。特に気をつけて書いたわけではないが、後から<数学は飽きる> がかなり特殊な言い方であることに気がついた。

数学は飽き飽きする。
数学はうんざりする。 

の方が<数学は飽きる>より普通のようだが、上の二つは

数学は飽き飽きする。
数学はうんざりする。 (<うんざり>の語源は諸説ある)

の方がもっと普通ではないか。一方

数学には飽きる。

はやや変だ。

数学は飽き飽きする。
数学はうんざりする。 

は一般叙述で、実際の発話場面は個人的な嘆きのようで

私は数学には飽き飽きする。
私は数学にはうんざりする。 

がフル文のようだ。<私は>は多くは省略される。

文脈としては

私は、数学に、飽き飽きする。
私は、数学に、うんざりする。

<飽き飽きする>、<うんざりする>のは<私>だ。

<に>がない

私は数学は飽き飽きする。
私は数学はうんざりする。

とはまず言わない。  それでは<私は>にない

数学は飽き飽きする。
数学はうんざりする。 

の場合<飽き飽きする>、<うんざりする> は何か?

一見、形容詞のようで

数学はおもしろくない。
数学はつままらない。

相当だが、<する>があるので動詞だ。 

数学が飽き飽きする。
数学がうんざりする。 

とは言わないが、<を>を取らない、取れないので、<飽き飽きする>、<うんざりする>は自動詞だ。このような自動詞の使い方は、英語にもある.。

These apples sell well.  これらの(ここにある)リンゴはよく売れる。
This car runs well.  この車はよく走る。

数学は飽き飽きする。

の場合、英語では、初めに書いたように、普通

Math is boring.

で、動詞 to bore 由来の形容詞 boring が使われる。動詞由来、かつ動名詞形なので<飽きさせる>の意が残っているが、形容詞扱いだ。

さて<数学は飽きる>だが、<数学は飽きる>は一般叙述。人をからませると

私は数学に飽きる。

私は数学は飽きる。

とはいわない。

私は、数学に、飽き飽きする。
私は、数学に、うんざりする。

と同じだ。違いは<飽き飽き+する>、<うんざり+する>と複合動詞的なの対して<飽きる>は単独動詞であることだ。

数学は飽き飽きだ。
数学はうんざりだ。  

ともいえるが、これも<飽き飽き+だ>、<うんざり+だ>と複合動詞的だ。

もっとも、<だ>のない

数学は飽き飽き。
数学はうんざり。

ともいえ、この場合は<動詞性>がなくなる。これからしても<飽きる>は特殊だ。

 数学は飽き。

とは言えない。あくまで<動詞>として使われる。 <飽きる>の仲間は、少し調べた限りでは、きわめて少ない。

数学は飽きる。
太郎は数学に飽きる。

もっと一般的に

勉強は飽きる。
太郎は勉強に飽きる。

<飽きる>以外をさがしてみたが

仕事は疲れる。
花子は仕事に疲れる。

の<疲れる>しか見つからない。<くたびれる>もほぼ同じ。

(継続チェック予定)

<困る>が候補。 同じような意味で<弱 (よわ) る>がある。

次郎は金に困る。 

と言えるが

金は困る。

変だ。

次郎は金がないのに困る。
金がないのは困る。

はいいが、<金がないのは困る>は

勉強は飽きる。

と文構造が違う。

いじめは困る。
次郎はいじめに困る。

はよさそう。

ニュアンスが弱いが

酒は溺 (おぼ) れる。 (アル中)
三郎は酒に溺(おぼ) れる。

<飽きる>、<疲れる>、<困る>、<溺れる>はみな独立自動詞。なぜか否定的、悲観的な意味が濃い。


sptt


 

 

 


 

 

 

 

 

 

Monday, November 25, 2024

飽きる、飽かす(明かす)

このところ(最近のポストで)複合動詞について、多くは再チェックして書いているが、意外とおもしろい。前回では<xx尽きる>、<xx尽くす>をチェックしたが、次から次と疑問が出てきて、はっきりした結輪がでないまま尽きた

 <xx尽きる>、<xx尽くす>のチェック中に出てきたのだが、同じような複合動詞に<xx飽きる>、<xx飽かす>がある。<xx飽かす>の方は、自動翻訳では往々にして<明かす>が出てくる。<xx飽きる>、<xx飽かす>はこれまた、おもしろい複合動詞のようなので、忘れないうちに、少し詳しく検討することにした。

ーーーーー

 簡易ネット翻訳で<飽きる>をインプットすると

 ( to) get bored

と出てくる。 <飽かす>は

(to) satiate

とあまり見慣れない語がでてくる。get bored の bored は to bear の受身形のようだが

(to) bear

に<飽きさす>の意味がない。 bear - bore - born と受験生泣かせの変な活用をする。

She bore two children.

I was born in the year of xxxx.

調べてみると

(to) bore

という他動詞があり、<飽きさす>という意味、したがって

Math bores me.

数学は私を飽かす。

古語調、超翻訳調だが、なんとかなる。

数学は私を飽きさせる。

なら少しいい。

動詞 bore の形容詞は boring で、これはよく聞く。

Math is boring.

が普通のいい方。これを日本語にすると

数学は飽き飽きする。
数学は飽きる。

だが、これは実際には基本的に間違いで

High IQ の生徒ならいいが、普通または普通以下のIQ生徒では、わかりすぎて、簡単すぎて<飽きる>のではない。語源は調べていないが<うんざりする>なら <わかりにくくて嫌になる>の意にもなる。

Math is boring. も<わかりすぎて、簡単すぎて飽きる>の意にも<わかりにくくて嫌になる>の意もあうだろう。

やや詳しいネット辞典でチェックしてみると

飽きる


デジタル大辞泉 「飽きる」の意味・読み・例文

あ・きる【飽きる/×厭きる/×倦きる】

[動カ上一]《動詞「あ(飽)く」(四段)の上一段化。近世後期、江戸で使われはじめた語》
多すぎたり、同じことが長く続いたりして、いやになる。「勉強に―・きた」「彼の長話に―・きた」
十分に味わったり経験したりして、それ以上欲しくなくなる。「牛肉を―・きるほど食べたい」
動詞の連用形に付いて、いやになるほど十分に…するの意を表す。「見―・きる」「聞き―・きる」→飽く

三番目がこれから検討する複合動詞用法。

<いやになるほど十分に…する>は

十分に…していやになる

でもいいだろう。<いやになる>がキーワードだろう。

ところで、 

数学は飽きる。

は文法的におもしろい表現で、この<飽きる>は動詞か?はたまた形容詞?上のネット辞典では形容詞としての解説はでてこない。横道にそれるので、別途検討としておく。


飽かす

 ”

デジタル大辞泉 「飽かす」の意味・読み・例文・類語

あか・す【飽かす】

[動サ五(四)]

 多く「…にあかして」の形で)ありあまっているものを十分に使う。ふんだんに使う。「金と暇に―・して収集する」
飽きさせる。「聴衆を―・さない話

 ”

でやや特殊。 複合動詞用法の説明がない。むしろ複合動詞用法は主ではないか。一方<飽かす>関連で<明かす>もネット辞典でざっとチェックしてみたが、複合動詞用法の説明は見つからなかった。

ということでチェックしてみる。 例によってアイウエオ順に並べてみる。

愛し飽きる  愛し飽かす  愛し明かす
遊び飽 (あ) きる  遊び飽かす  遊び明かす
歩き飽きる  (歩き飽かす)
言い飽きる  (言い飽かす)
行き飽きる  (行き飽かす)
生き飽きる  (生き飽かす)
いじめ飽きる  いじめ飽かす
いつわり飽きる  いつわり飽かす
歌い飽きる  (歌い飽かす) 歌い明かす
おどし飽きる  おどし飽かす

(悲しみ飽きる)  悲しみ飽かす 悲しみ明かす
書き飽きる  (書き飽かす)
考え飽きる  (考え飽かす} 考え明かす
聞き飽きる  (聞き飽かす)
恋いし飽きる  恋いし飽かす 

し飽きる   し飽かす  し明かす
xxし飽きる  xxし飽かす  xxし明かす
(例:愛し飽きる  愛し飽かす  愛し明かす)
知り飽きる   知り飽かす  知り明かす

楽しみ飽きる  楽しみ飽かす  楽しみ明かす
食べ飽きる  食べ飽かす  (食べ明かす)

立ち飽きる (立ち飽かす) 立ち明かす
取り飽きる  取り飽かす  取り明かす

泣き飽きる  (泣き飽かす)  泣き明かす
嘆き飽きる  (嘆き飽かす)  嘆き明かす

飲み飽きる  飲み飽かす  飲み明かす
眠り飽きる  眠り飽かす  (眠り明かす)

走り飽きる  (走り飽かす)
働き飽きる  (働き飽かす)
話し飽きる  (話し飽かす)
(笛を) 吹き飽きる  吹き飽かす  吹き明かす
(ほらを) 吹き飽きる  吹き飽かす  吹き明かす

学び飽きる (学び飽かす)
見飽きる  (見飽かす) 見明かす

やり飽きる  やり飽かす  やり明かす
読み飽きる  読み飽かす  読み明かす
( 喜び飽きる) 喜び飽かす   喜び明かす

笑い飽きる  笑い飽かす  笑い明かす

 (追加予定)

(かっこ)内のものはややおかしい程度、(かっこ)がないものでも<ややおかしい>ものがある。個人差があろう。もう少しチェックしてみる。

<xx飽きる>、<xx飽かす>は<xx尽きる>、<xx尽くす>に似たところがあるが、 <飽きる>、<飽かす>は人の心理状態なので、基本的には人に関連し、モノやコトに関連した表現が見つからない。

基本的には上のネット辞典の定義を使うと< xx飽きる>は<いやになるほど十分にxxする>、(十分にxxしていやになる)。

一方<xx飽かす>は<いやになる>の意は薄く、<十分に、十二分にxxする>の意のようだ。個々に調べてみる。組み合わせとしては

1)自動詞+飽きる
2)自動詞+飽かす
3)他動詞+飽きる
4)他動詞+飽かす

の四つがある。

1)、2)自動詞+飽きる、自動詞+飽かす

遊び飽 (あ) きる  遊び飽かす  遊び明かす

遊び飽 (あ) きる

いやになるほど十分、十二分に遊ぶ。<遊び飽きる>は<自動詞+自動詞>で<遊び飽きる>も自動詞。

遊び飽かす

これも<いやになるほど十分、十二分に遊ぶ> になる。したがって、<飽かす>は<飽きさせる>で使役のようになるが他動詞とすると<遊び飽かす>は<自動詞+他動詞>で、意味としては自動詞になる。ところが、< 遊び飽 きる>と<遊び飽かす>の違いがある。

< 遊び飽 きる>と<遊び飽かす>の違い

遊び飽きる ー  いやになるほど十分、十二分に無意思、無意図的に遊ぶ

したがって、<遊び飽きた>は気がついてみたら、いやになるほど十分、十二分に遊んでいた。

遊び飽かす ー  いやになるほど十分、十二分に、意思、意図的に遊ぶ 。

 したがって、<遊び飽かした>は意思、意図的にいやになるほど十分、十二分に遊んだ。

とでもなる。 問題は<いやになる>で、<いやになる>は大体無意思、無意図にそうなる。したがって、<いやになるほど十分、十二分に、意思、意図的に遊ぶ>はおかしなことだ。

ややこしくなってきたので次。

遊び明かす

は<明かす>と書くと字は違うが<いやになるほど十分、十二分に遊ぶ>で<遊び飽きる><遊び飽かす>とほぼ同様の意味。

<遊びあかす>と書けば、この問題はなくなる。

 一方<明かす>は使役のような他動詞だが、<明ける>は自動詞。日が明ける。ややこしくなるが<開ける>、<空ける>は純他動詞。<遊び開ける>、<遊び空ける>はダメ。そうすると<遊び明かす>は変な言い方、書き方になるが、これは後で

<飽かす>と<明かす>の違い

として検討することにして次に進む。

歩き飽きる  (歩き飽かす)

歩き飽きる

いやになるほど十分に歩く。 

<歩き飽かす>とは言わないだろう。他人を<歩き飽きる>ようにするのは使役で<歩き飽かす>、<歩き飽きさす>となる。だが、自分自身を<歩き飽きる>ようにできないわけではないが、意思、意図的になる。

 自分自身を<歩き飽かす>、<歩き飽きさす>

となるが、まずこうは言わない。 ところが不思議なことに<歩き飽かす>は<いやになるほど>がない<十分、十二分歩く>の意味になる。

太郎は10キロの道を歩き飽した。

だが、これは

太郎は10キロの道を歩き明かした

で<飽きる>が関与しない表現と言える。耳で聞けば

太郎は10キロの道を歩きあかした

 になる。意味としては <歩ききった>。

行き飽きる  (行き飽かす)

上の<歩き飽きる、(歩き飽かす)>準じるだろう。したがって

行き飽きる  (行き飽かす)  行き明かす

物理的に<どこどこに行く>の場合はこれでよさそうだが、

学校に行き飽きる

だと話は違ってくるだろう。検討省略。


生き飽きる  (生き飽かす)

生き飽きる

いやになるほど十分に、十二分に生きる。 

でよさそうだが、 <生き飽きて自殺した>となると物騒だ。ここでは<いやになる>が肝心だ。ということは<十分に、十二分に>でなくても<飽きる、いやになる>ことがあるのだ。上の

遊び飽きる
歩き飽きる
行き飽きる
学校に行き飽きる

ということは、冒頭のネット辞典の解説


いやになるほど十分に…するの意を表す


に疑問がでてくる。

途中で遊び飽きて、遊ぶのをやめた
途中で歩き飽きて、歩くのをやめた
途中で行き飽きて、行くのををやめた

次に進む。

(悲しみ飽きる) 悲しみ飽かす 悲しみ明かす

<いやになるほど十分に悲しむ>ことはないだろう。

 悲しみ飽かす

は自動詞。したがって<悲しみ飽きる>と同じになるが、<いやになるほど十分に悲しむ>ことはなく、意味としては <悲しみ尽くす>に似ている。<いやになるほど>がない

十分、十二分に悲しむ

悲しみ明かす(あかす)

でもいいだろう。

楽しみ飽きる  楽しみ飽かす  楽しみ明かす

楽しみ飽きる

<いやになるほど十分に、十二分楽しむ>は可能。楽しいことでも、長く続けていると<いやになる>ことはある。

 楽しみ飽かす

< 楽しみ飽きる>と同じようだが、<いやになる>度合いは低い、またはない。したがって

十分に、十二分楽しむ

 楽しみ明かす(あかす)

もそのような意味だ。

立ち飽きる (立ち飽かす) 立ち明かす

立ち飽きる

<いやになるほど十分に、十二分に立つ>は可能。小学校の廊下で<立ち飽きる>経験をした人がいよう。<立たされる>のだが<立たされ飽きる>とは言わない。

立ち飽かす

これも<いやになるほど十分に、十二分に立つ>の意は可能。<いやになるほど>のない<十分に、十二分に立つ>も可能だが<長時間、最後まで>という修飾と相性がいい。

立ち明かす (あかす) も同じような意味だ。

泣き飽きる  (泣き飽かす)  泣き明かす

<いやになるほど十分に、十二分に泣く>は可能だろ。

 泣き飽かす

は<いやになるほど>の感じが薄い。 <十分に、十二分に泣く>。泣き尽くす。

 泣き明かす (あかす) も同じような意味だ。

眠り飽きる  眠り飽かす  (眠り明かす)

眠り飽きる

<眠る>は 無意識行為なので、<いやになるほど飽きる>の意識は生じないだろう。だが

もう眠り飽きたから、起きる。

とは言いそう。この場合、眠りから覚めてからの発話なので

十分、十二分寝た。

の諧謔的な言い方と見ることもできる。後から出てくるが<飽きる>にはこの諧謔的な言い方がある。すこし前に<あきれかえる>という言い方を何度か取り上げたが、<あきれる>は<飽きる>と関係がありそう。

走り飽きる  (走り飽かす)

走り飽きる

いやになるほど十分、十二分に走る。

走り飽かす

あるいは< 走りあかす>と言うのはまれだろう。<いやになるほど>がない

十分、十二分に走る。最後まで走る。走り終える。<走り切る>ほどではないようだ。

走り明かす

は何か変だ。

働き飽きる  (働き飽かす)

働き飽きる

いやになるほど十分、十二分に働く。だが、いやになることがなくても<働き飽きる>ことは普通だ。

いやではないが、もう働き飽きたので、少し休む。
いやではないが、もう働き飽きたので、会社を辞める。

働き飽かす

はまれだ。<いやになること>も関係ない。(最後まで)十分、十二分に働く。

働き明かす

もまれだ。
 

話し飽きる  (話し飽かす)

いやになるほど十分、十二分に話す。もう話し飽きた。

話し飽かす

これもまれ。十分、十二分に話す。<話し切る>ほどではないようだ。

話し明かす (あかす)

も同様。 十分、十二分に話す。

だが、<話して明らかにする>、<秘密を話す>の意もあるか。 

この失敗は、話し明かせば、太郎がやったことだ。

( 喜び飽きる) 喜び飽かす   喜び明かす

喜び飽きる

いやになるほど十分、十二分に喜ぶ。

でよさそうだが、<喜び飽きた>とはあまり言わない。

<いやになる>と<喜ぶ>は相性が悪いからか?

 喜び飽かす

 十分、十二分に喜ぶ。<いやになる>と<喜ぶ>は相性が悪いのだが

 いやになるほど十分、十二分に喜ぶ、でもよさそう。

諧謔というよりは一種の強調。 

喜び明かす (あかす)

十分、十二分に喜ぶ。字面からは<いやになるほど>がない。

笑い飽きる  笑い飽かす  笑い明かす

笑い飽きる

いやになるほど十分、十二分に笑う

も少し変だ。 <いやになる>と<笑う>も相性が悪そう。したがって<いやになるほど>のない

十分、十二分に笑う

だが<もう笑い飽きた>とは 言いそう。これも一種の強調だが、諧謔の意味を持たせることができそう。

笑い飽かす

十分、十二分に笑う。最後まで笑い尽くす。<笑い飽かす>は意思的、意図的で、意思、意図が薄い<最後まで笑い尽きる>は変だ。


3)4)他動詞+飽きる、他動詞+飽かす

愛し飽きる  愛し飽かす  愛し明かす

<愛す>、<愛する>は漢語の<愛>+<す>、<する>で純大和言葉の<動詞+動詞>ではないが、取り上げてみることにした。

愛し飽きる

いやになるほど十分、十二分に愛する

の意にならない。< いやになる>と<愛する>は相性が悪い。

もう愛し飽きた

とすると<飽きて、愛さなくなった>とゆゆしきことになる。 これは<3)他動詞+飽きる>の特徴か?

愛し飽かす

十分、十二分に愛する

<いやになるほど>を強調とすると

 いやになるほど十分、十二分に愛する

でもいい。 

愛し飽かした

も<飽きて、愛さなくなった>の意にはならない。これも<3)他動詞+飽きる>の特徴か?

愛し明かす (あかす)

十分、十二分に愛する。徹底的に愛する。愛しきる>。場合によっては<最後まで愛し続ける>。

言い飽きる  (言い飽かす)

言い飽きる

もうこの忠告は言い飽きた。

 もうこの忠告は、いやになるほど十分、十二分に言った。

<小言を言う>では、<言う>は <を>をとるので他動詞。上の<もうこの忠告は言い飽きた>は<を>がないので自動詞か? これは別のポストで検討したが、<言う>は

xxxxと言う、xxxxと言った

という言いが多い。これも<を>がないので自動詞か?

 言い飽かす

もうこの忠告は言い飽かした。

とは言わない。

いじめ飽きる  いじめ飽かす

いやになるほど十分、十二分にいじめる。

もういじめ飽きたから、いじめるのはやめる。

これはいいことだ。だが<飽きる前にやめる>方がもっといい。言い換えると<いじめ>、<いじめる>はいやになるほどやらないとやめないようだ。<いじめる>は意思的、意図的行為だが、<飽きる>は無意思的、無意図的、自律t的な心理作用だ。はたまた言い換えると、意思的、意図的に<飽きる>ことはないのだ。

いじめ飽かす

<飽かす>の意味を生かすとと<飽きるまで、いやになるほど十分、十二分にいじめる>でゆゆしいことだ。

いじめ明かす(あかす)

は、字面からは、<飽かす>の意味はないが<いやになるほど十分、十二分にいじめる>、さらには<いじめきる>。<夜が明ける>まで言及すると

明けても暮れてもいじめ尽くす

とまさにゆゆしき意になるか。

いつわり飽きる  いつわり飽かす

いつわり飽きる

いやになるほど十分、十二分にいつわる。

もうつわり飽きたから、いつわりるのはやめる。

はいいことだが、<飽きない>とゆゆしきことになる。

いつわり飽かす

これも<飽かす>の意味を生かすと<飽きるまで、いやになるほど十分、十二分にいつわる、いつわり続ける>でゆゆしぃことだ。さらにゆゆしいのは<飽きるまで>で<飽きないと、いつまでもいつわり続ける>ことになる。これは<いじめ飽かす>も同じだ。

いつわり飽きる  いつわり飽かす

は実際あまり使いそうにない。もっと一般的なのは

うそをつき飽きる  うそをつき飽かす

試してみると、ほぼ<いつわり飽きる、いつわり飽かす>と同じだ。

歌い飽きる (歌い飽かす) 歌い明かす

歌い飽きる

いやになるほど十分、十二分に歌う。

歌い飽きた。

いやになるほど十分、十二分に歌った。意思、意図がない。

歌い飽かす

<歌い飽きる>とほぼ同じ意味になる。

いやになるほど十分、十二分に歌う。

歌い飽かした。

 いやになるほど十分、十二分に歌った。だが、こちらの方は意思、意図がある。

おどし飽きる  おどし飽かす

<おどす>も<いじめる>に似たようなところがある。反社会的行為だ。

チェックしてみると、ほぼ<いじめ飽きる、いじめ飽かす>と同じだ。

反社会的行為は同じような解説になるか?

盗む、泥棒をする。物騒だが、殺す、殺人をする。

これは読者にまかせて、次。

書き飽きる  (書き飽かす)

書き飽きる

書き飽きた

いやになるほど十分、十二分に書いた。意思、意図がない。多分に (書き飽きて) 書きやめた。 

書き飽かす

 書き飽かした

いやになるほど十分、十二分に書いた。意思、意図がある。耳で聞いた場合 (かきあかす), <飽きる>の意が薄く、(書き飽きて) 書きやめる、とは限らない。変な言い方だが

書き飽きるまで、書き飽かした。

飽きないと書き続けて、大量に書くることになるが、この場合は

書き明かす (あかす)

で、<飽きる、飽きない>の意識が薄い、もしくはないので、<飽きる、飽きない>は関係なくなる。これが<飽かす>と<明かす>の違いだろう。

考え飽きる  (考え飽かす} 考え明かす

考え飽きる

いやになるほど十分、十二分に考える。<考える>には多分に意思、意図があるが、<飽きる>には意思、意図がない。多分に (考え飽きて) 考えやめる。

考え飽かす

いやになるほど十分、十二分に考える。今度は意思、意図がある。

考え明かす

飽きる、飽きないに関係なく、いろいろ、たくさん考える場合を想定すると、 

考え明かす (あかす) 

でいいだろう。

聞き飽きる (聞き飽かす)

聞き飽きる

いやになるほど十分、十二分に聞く。

<xxを聞く>には意思、意図がある場合とない場合がある。ない場合は普通、自動詞の<聞こえる>が使われ、<xxが聞こえる>。

音楽を聞く

は意思、意図がある。

噂を聞く

は聞こうとして聞く場合が意思、意図があるが、聞こうとする意思、意図がなく<聞こえてくる>場合でも<噂を聞く>、<噂を聞いた>という。

一方<飽きる>には意思、意図がない。<聞き飽きる>は多分に 聞きたくないモノ、コトに飽きて、聞くのをやめる。

実際のところ、特別の場合を除き、音楽や歌は聞きたいから聞くので、

音楽や歌をいやになるほど十分、十二分に聞き、そして<いやになって聞きやめる>

ことはないだろう。<聞きやめる>のは、予期しない電話や用事があった時だ。特別の場合というのは、例えば<好きでない音楽や歌>の場合。小言や苦情も基本的に聞きたくない。聞きたくないものは、強制されて聞くとき以外、聞くことはない。

聞き飽かす

いやになるほど十分、十二分に聞く。今度は意思、意図がある。

実際のところ、特別の場合を除き、音楽や歌は聞きたいから聞くので、

<聞き明かす>は言いそうにない。

恋いし飽きる  恋いし飽かす

これはめったに聞かないが、<愛す>、<愛する>が漢語の<愛>+<す>なので、大和言葉の<恋する>をチェックしてみる。もっとも、<恋する>も<恋+する>のパターンだ。

恋いし飽きる

 いやになるほど十分、十二分に恋いする。<恋いする>には意思、意図があるが、<飽きる>には意思、意図がない。多分に (恋いし飽きて) 恋いするのをやめる。

恋いし飽きた


いやになるほど十分、十二分に恋した

の意になる。<飽きて、恋さなくなった>とゆゆしきことになる。

 恋し飽かす

 恋し飽かした

は<飽きて、恋さなくなった>の意にはならない。

ほぼ<愛し飽きる、愛し飽かす>と同じだ。

好き飽きる 好き飽かす

もめったに聞かない。<好き (だ) >は超高頻度使用語だが、<好く>はあまり使わない。

<好 (この) む> も<好く>と同じくあまり使わない。

し飽きる  し飽かす  し明かす

し飽きる

いやになるほど十分、十二分にする。<する>には多分に意思、意図があるが、<飽きる>には意思、意図がない。多分に (し飽きて) するのをやめる。 

し飽かす

いやになるほど十分、十二分にする。今度は意思、意図がある。

(もう)し飽かした

は多分に<飽きた>の意が残っている。 

もうそれはし飽かした。だから、もうやらない、やりたくない。これが<飽かす>の原意。すこし横道にそれるが

しでかす、しでかした

という言い方がある。造語構造は似ていて (ほぼ同じ) 、

し(<する>の連用形) + でかす(自動詞<出る、でる>の使役形)
し(<する>の連用形) + あかす(自動詞<飽く、あく>の使役形)

<出る>の使役形には<出さす>があり、これがよく使われ、<出かす>はまれだ。
<飽く>の使役形には<飽きさす>があり、こちらの方が普通、使われ、<飽かす>はまれだ。

違うのは<し出 (で) かす>はあるが<し出さす>はない。一方<飽かす>の方は<し飽かす〉も<し飽きさす>も可能だ。<し飽きさす>は明らかに使役で

花子は太郎に歌い飽きさせた。 

一方

花子は太郎に歌い飽かせた。

も可能で<飽きる>の意が残っているともとれるが、 <飽きる>の意が残っていない<明かす>の意も可能だ。つまりは<花子は太郎に歌い明かせた>。もっとも、いずれも耳で聞けば<花子は太郎に歌い明かせた>で同じだ。

<する>は他動詞の代表で、以上のt説明は他の他動詞に応用、敷衍 (ふえん) できるだろう。 

知り飽きる   知り飽かす  知り明かす

知り飽きる

いやになるほど十分、十二分に知る。<知る>は認識、認知動詞だが、意思、意図があるとはかぎらない。

知ろうとすれば意思、意図があるが、知ろうとしなくても<知っててしまう>場合には意思、意図がない。<聞く>の場合は。基本的には、意思、意図があれは<聞く>で他動詞。意思、意図が泣けれは<聞こえる>で自動詞。xxが聞こええる。<見る>の場合は、意思、意図があれば<見る>で他動詞。意思、意図が泣けれは<見える>で自動詞。xxが見える。

<xxを知る>は多様で

事件の真相を知る

では知らされて、知る場合が多いだろう。 <聞く>、<見る>では意思、意図がない場合

事件の真相が聞こえる
事件の真相が見える 

と自動詞が使われる。

事件の真相を知らされる

という言い方も可能だが、言葉には出てこないが他人が関与している 。<事件の真相を知る>では他人は関与していない、といえる。

嫌なこと、知りたくないことは<容易に、いやになるほど知る>ことがありうるが、知りたいことは<なかなか、いやになるほど知る>にならない。

事件の真相を知る

は基本的には中立だが、知りたい場合と知りたくない場合はありうるだろう。

知りたくない内容の場合は、何度も知る、知らされると

知り飽きる


いやになるほど十分、十二分に知る。

 知りたい内容の場合は、何度も知る、知らされても

 いやになるほど十分、十二分に知る。

になりにくい。<知り飽きる>はややこしい。

知り飽かす

いやになるほど十分、十二分に知る。今度は意思、意図がある。これも<知る内容>によりそうだ。

嫌なことを知る場合 

いやになるほど十分、十二分に知る。

で問題ない。<知り飽きる>と同じになる。嫌なことは嫌になりやすい、飽きやすい。

知りたいことを知る場合 

いやになるほど十分、十二分に知る。

おかしい。<十分、十二分に知る>でいいが、<飽かす>は強調の意があるので<徹底的に知る>。

楽しみ飽きる  楽しみ飽かす  楽しみ明かす

楽しみ飽きる

いやになるほど十分、十二分に楽しむ。意思、意図がない。

楽しみ飽かす

いやになるほど十分、十二分に楽しむ。今度は意思、意図がある。 

楽しみ明かす

十分、十二分に楽しむ。飽きる、嫌になる意識はない。意思、意図はあってもなくてもいい。

以上の<楽しみxxx>の説明は簡単で、一般化できる。

食べ飽きる  食べ飽かす  (食べ明かす)

食べ飽きる

いやになるほど十分、十二分に楽しむ。意思、意図がない。

食べ飽かす

いやになるほど十分、十二分に楽しむ。今度は意思、意図がある 

食べ明かす(あかす)

一晩中食べ明かす。(現実的でない)飽きる、嫌になる意識はない。意思、意図はあってもなくてもいい。

取り飽きる  取り飽かす  取り明かす

<取る>は他動詞の代表の一つだ。目的語がないと一般的すぎる。 

<写真をとる>は、書くときは<写真を撮る>と書くようだが、耳で聞いたり、言う時には<写真をとる>で、実際、無意識だが<写真を撮る>ではなく<写真を取る>が頭をかすめるのではないか。

写真を取り飽きる

いやになるほど十分、十二分に写真を取る。<取る>は意思、意図があるが、<飽きる>は意思、意図がない。多分に<写真を取り飽きて、取るのをやめる>。

写真を取り飽かす

ひと昔前はデジタルカメラ、今は携帯電話のカラメで、フイルム代がいらないから<写真を取り飽かす>のは大いに可能だ。

いやになるほど十分、十二分に写真を取る。<飽かす>は他動詞で意思、意図があるが

写真を取り飽かした

は<いやになるほど十分、十二分に写真を取った>で<写真を取り飽きた>と同じような意味になる。多分に<写真を取り飽きるほど取ったが、取るのをやめた>とは限らない。

嘆き飽きる (嘆き飽かす) 嘆き明かす

嘆き飽きる

いやになるほど十分、十二分に嘆く。意思、意図がない。多分に<嘆き飽きて、嘆くのをやめる>。この<やめる>は<を>をとるので他動詞だが、自動詞っぽい。嘆くのがやむ。<嘆く>は<xxを嘆く>で、これまた<を>をとる他動詞だが、自動詞っぽい。<飽きる>は自動詞なので<嘆き飽きる>は自動詞。したがって<嘆くのがやむ>、<嘆くのがやまる>が正しい。

 嘆き飽かす

いやになるほど十分、十二分に嘆く。意思、意図がある。多分に< 嘆き飽かして、嘆くのをやめる>。<飽かす>は他動詞だが、意味的には<いやになるほど十分、十二分に嘆く>で、<嘆き飽きる>と同じになる。だが、<嘆き飽かす>には意思、意図がある。

嘆き明かす (あかす) 

飽きる、飽きないに関係なく十分、十二分に、徹底的に嘆く。

朝まで 嘆き明かした

だと、<夜が明けるまで嘆き続けた>になりそう。

飲み飽きる  飲み飽かす  飲み明かす

<食べ飽きる、飽かす>に準じる。

飲み飽きる

いやになるほど十分、十二分に飲む。意思、意図がない。

飲み飽かす

いやになるほど十分、十二分に飲む。今度は意思、意図がある 

飲み明かす(あかす)

一晩中、徹底的に、飲み明かす。飽きる、嫌になる意識はない。意思、意図はあってもなくてもいい。

(笛を) 吹き飽きる  吹き飽かす  吹き明かす

吹き飽きる

いやになるほど十分、十二分に笛を吹く。意思、意図がない。<吹き飽きた>だと、多分に<飽きて吹きやめた>。

吹き飽かす

いやになるほど十分、十二分に笛を吹く。今度は意思、意図がある 

吹き明かす(あかす)

一晩中、徹底的に、吹き明かす。(あまり現実的でない)飽きる、嫌になる意識はない。意思、意図はあってもなくてもいい。

(ほらを) 吹き飽きる  吹き飽かす  吹き明かす

ほらを吹き飽きる

いやになるほど十分、十二分にほらを吹く。意思、意図がない。<ほらを吹き飽きた>だと、多分に<飽きてほらを吹きやめた>。

ほらを吹き飽かす

いやになるほど十分、十二分にほらをを吹く。今度は意思、意図がある。<ほらを吹き飽かした>は、多分に<ほらを吹きやめなかった>。 

吹き明かす(あかす)

徹底的に、ほらを吹きまくる。飽きる、嫌になる意識はない。意思、意図はあってもなくてもいい。耳で聞く<ほらを吹きあかす>は<ほらを吹き飽かす>と区別はないと、いっていい。

学び飽きる (学び飽かす)

学び飽きる

いやになるほど十分、十二分に学ぶ。意思、意図がない。多分に<学び飽きて、学びやめる>。

学び飽かす

いやになるほど十分、十二分に学ぶ。今度は意思、意図がある。多分に<学び飽きずに、学び続ける>。

学び飽かした

多分に学び飽ずに、学び続けた。

学び明かす(あかす)

飽きる、嫌になる意識はない。徹底的に、懸命に学ぶ。主体は意思、意図があるが、他人から見て意思、意図はあってもなくてもいい。

見飽きる  (見飽かす) 見明かす

見飽きる

いやになるほど十分、十二分に見る。意思、意図がない。多分に<見飽きて、見るのをやめる>。

見飽かす

いやになるほど十分、十二分に見る。今度は意思、意図がある。多分に<見飽きずに、見続ける>。

見飽かした

多分に見飽きずに、見続けた。あるいは<徹底的に、飽きるまで見た>。

見明かす (あかす)

徹底的に見る。 <見飽かす>とほぼ同じ。

<見明かす>は別の意味がある。

見て明らかにする。

明智探偵はその謎を見明かした。明智探偵はその謎は明智探偵に見明かされた。

やり飽きる  やり飽かす  やり明かす

<し飽きる  し飽かす  し明かす>に準じるだろう>。具体的な例

悪事をやり飽きる  悪事をやり飽かす  悪事をやり明かす

をチェックしみる。

悪事をやり飽きる

いやになるほど十分、十二分に悪事をやる。<悪事をやる>は意思、意図があるが、<悪事をやり飽きる>意思、意図がない。多分に<やり飽きて、悪事をやるのをやめる>。これは<いじめ>と同じで悪くないことだ。

悪事をやり飽かす

これはよくない。 いやになるほど十分、十二分に悪事をやる。<悪事をやる>には意思、意図があり、<やり飽かす>にも意思、意図がある。多分に<やり飽きずに、悪事をやるのをやめない>。

悪事をやり明かす(あかす)

徹底的にに悪事をやる。<悪事をやり飽かす>と同じような意味だ。 

<やる>は<擦る>以外に

やる = 与える
やる = (人) を遣る

があるが、省略。

読み飽きる  読み飽かす  読み明かす

読み飽きる

いやになるほど十分、十二分に読む。意思、意図がない。多分に<読み飽きて、読むのをやめる>。

読み飽かす

いやになるほど十分、十二分に読む。今度は意思、意図がある。

読み明かす (あかす) 

飽きる、飽きないに関係なく十分、十二分に、徹底的に読む。

読み明かした (あかした) 

これは<読み終えた>の意がある。

<読み明かす>は別の意味がある。

読んで明らかにする。

明智探偵はその暗号を読み明かした。この場合<読む>はじっくりチェックする、考える、と言った意味だ。将棋や囲碁ではこの<読む、読み>が活躍する。

 

<飽かす>と<明かす>の違い

繰り返しになるが、上で


書き飽かす

(中略)

飽きないと書き続けて、大量に書くることになるが、この場合は

書き明かす (あかす)

で、<飽きる、飽きない>の意識が薄い、もしくはないので、<飽きる、飽きない>は関係なくなる。これが<飽かす>と<明かす>の違いだろう。

(中略)

考え明かす

飽きる、飽きないに関係なく、いろいろ、たくさん考える場合を想定すると、 

考え明かす (あかす) 

でいいだろう。

と書いた。さらに<し飽きる  し飽かす  し明かす>で

(中略)

(もう)し飽かした

は多分に<飽きた>の意が残っている。 

もうそれはし飽かした。だから、もうやらない、やりたくない。これが<飽かす>の原意。

(中略)

 一方<飽かす>の方は<し飽かす〉も<し飽きさす>も可能だ。<し飽きさす>は明らかに使役で

花子は太郎に歌い飽きさせた。 

一方

花子は太郎に歌い飽かせた。

も可能で<飽きる>の意が残っているともとれるが、 <飽きる>の意が残っていない<明かす>の意も可能だ。つまりは<花子は太郎に歌い明かせた>。もっとも、いずれも耳で聞けば<花子は太郎に歌い明かせた>で同じだ。

<する>は他動詞の代表で、以上のt説明は他の他動詞に応用、敷衍 (ふえん) できるだろう。

と書いた。

<飽かす>と<明かす>の違いは微妙なところがあるが、耳できけば<あかす>で同じだ。<明かす>に<飽きるほど>の意はない。

 

sptt

 


飽く、飽きる、飽かす、飽きさせる、飽かせる、飽かさせる

 

古語<飽く>は自動詞か、はたまた他動詞か。

現代語では<太郎は勉強に飽きる>で自動詞。これはいいのだが、<飽きる>の他動詞は何か?

<飽かす>というのがあるが、他動詞というよりは自動詞<飽きる>の使役形だろう。

 花子は太郎を勉強に飽かす。

で使役になるが

花子は太郎を勉強に飽きさす。
花子は太郎を勉強に飽きさせる。
花子は太郎を勉強に飽かせる
花子は太郎を勉強に飽かさせる

も可能だ。

という言い方もあり、こちらの方を使いそう。 いずれにしても、こういう言い方は翻訳調だ。<飽かす>が<飽きる>の使役形とすると<飽かせる>、<飽かさせる>は使役形の使役形ということになる。文法用語にはないが、redundancy (冗長) 用法だ。

問題は<飽かす>で、単独用法として、ネット辞典では

デジタル大辞泉 「飽かす」の意味・読み・例文・類語

あか・す【飽かす】

[動サ五(四)]

多く「…にあかして」の形で)ありあまっているものを十分に使う。ふんだんに使う。「金と暇に―・して収集する」
飽きさせる。「聴衆を―・さない話

 ”

でやや特殊。

金を飽かす ー ありあまっている金を十分に使う。ふんだんに使う
暇を飽かす  ー ありあまっている暇を十分に使う。ふんだんに使う

となりそうだが、例文は

金に飽かす、暇に飽かす

で、これだけでは<を>ではなくに>をとるので<飽かす>は他動詞ではなく、自動詞となる。だが短文にすると

太郎は金に飽かして収集する。(暇は省略)

となるが、 

主文は

太郎は収集する。

で<金に飽かして>が修飾句だ。 だが<飽かす>のは太郎で、そうすると<飽かす>は他動詞のように見える。繰り返しになるが

飽かして

で、<を>ではなく<に>をとる。一方<飽きる>は自動詞で

太郎は金飽きる。

で問題ない。

太郎は金に飽かして収集する。

収集する>は他動詞なので不完全

太郎は金に飽かして骨董品を収集する。

不完全でなくなる。しかし<金に飽かして>の<飽かす>は他動詞っぽい。<に>にこだわって自動h詞<飽きる>を使うと

太郎は金に飽きて、骨董品を収集する。

で、意味内容は完全に違ってくる。 <飽かして>はいったい何だ? <飽かして>の意を汲み取ると

太郎はわが身 (自分自身) を金に飽かして骨董品を収集する。

太郎は金に飽かして、骨董品を収集する。

では言葉に出てこないが

わが身 (自分自身) を> が内包されている (implicit ) と見れば、この問題は解決する。そしてわが身 (自分自身) >と<を>を取るので、<飽かす>は他動詞だ。

こうすると、冒頭にネット辞典の解説


あか・す【飽かす】

[動サ五(四)]

多く「…にあかして」の形で)ありあまっているものを十分に使う。ふんだんに使う。「金と暇に―・して収集する」
飽きさせる。「聴衆を―・さない話

とまったく違った解釈になる。

では、一体この<わが身 (自分自身) 飽かす>はどういう意味か?

わが身 (自分自身) 飽きさせる

が原意のようだが

わが身 (自分自身) 金に飽きさせては、金はたまらず、高価な骨董品は暇がっても買えない。

わが身 (自分自身) を金に飽かす

は<金は飽きるほどたくさんあって、飽きるほど使う>という意味だろう。

 

簡易ネット翻訳で<飽きる>をインプットすると

 ( to) get bored

と出てくる。 <飽かす>は

(to) satiate

とあまり見慣れない語がでてくる。

 これを利用すると

太郎は金に飽かして、骨董品を収集する。

Taro satiates himself in his abundant money to collect antiques.

とでもなるが、himself は二音節の一語。日本語の方は<わが身 (自分自身) >で相当長く、わずらわしい。


sptt

 

 

 


Wednesday, November 20, 2024

複合動詞<xx尽きる>、<xx尽くす>


複合動詞<xx尽きる>を<xx尽くす> 比べてみた。アイウエオ順に並べてみて、ざっとチェックしたが、意外と複雑。微妙、曖昧なところがある。

遊び尽きる  遊び尽くす
歩き尽きる  歩き尽くす
言い尽きる  言い尽くす
行き尽きる  行き尽くす
生き尽きる  生き尽くす
動き尽きる  動き尽くす
歌い尽きる  歌い尽くす
思い尽きる  思い尽くす

書き尽きる  書き尽くす
悲しみ尽きる  悲しみ尽くす
考え尽きる  考え尽くす
(聞き尽きる)  聞き尽くす
消え尽きる  (消え尽くす)
(消し尽きる)  消し尽くす

探し尽きる   探し尽くす
叫 (さけ) び尽きる  叫び尽くす
し尽きる  し尽くす
死に尽きる  (死に尽くす)
進み尽きる  進み尽くす

(食べ尽きる) 食べ尽くす
立ち尽きる  立ち尽くす
疲れ尽きる  (疲れ尽くす)
使い尽きる  使い尽くす
取り尽きる  取り尽くす

泣き尽きる  泣き尽くす
(鳥が) 鳴き尽きる  鳴き尽くす
(ベルが)鳴り尽きる (鳴り尽くす) 
(飲み尽きる) 飲み尽くす

走り尽きる  走る尽くす
(運び尽きる) 運び尽くす
働き尽きる  働き尽くす
(風が、は)吹き尽きる  吹き尽くす
(笛を)(吹き尽きる) 吹き尽くす
(雨が、は)降り尽きる  降り尽く。

学び尽きる  学び尽くす
(見尽きる) 見尽くす
燃え尽きる  (燃え尽くす)
燃 (もや)し尽きる  燃し尽くす


(焼き尽きる)  焼き尽くす
焼け尽きる  焼け尽くす
やり尽きる  やり尽くす

読み尽きる   読み尽くす
喜び尽きる  喜び尽くす

笑い尽きる  笑い尽くす

忘れ尽きる  忘れ尽くす

(追加予定)

 (かっこ)内のものはややおかしい程度、(かっこ)がないものでも<ややおかしい>ものがある。個人差があろう。もう少しチェックしてみる。

基本的には自動詞< 尽きる>はまっとうせずに、不完全で、到達間近だが<終わる>、<やむ(止む)、やまる>。<やむ(止む)だが中断の意は薄く、再開する見込がは薄い。<(無意思的、無意図的、自然に)なくなる>。

一方他動詞<尽くす>は多義語だが、<終わる>、<なくなる>、<やむ(止む)>、<なくなる>関連では

終える、完了する、なくなるまでxxする(意思的、意図的)、やめる。個々に調べてみる。組み合わせとしては

1)自動詞+尽きる
2)他動詞+尽きる
3)自動詞+尽くす
4)他動詞+尽くす

の四つがあるが、ややこしくなるので1)と2)、3)と4)の二分類で進める。

1、2)自動詞+尽きる、尽くす

 遊び尽きる  遊び尽くす 

<遊ぶ>は<xxを遊ぶ>と言わないので自動詞と言える。

遊び尽きる (自動詞)

太郎は遊び尽きた  無意思的、無意図的に遊び終わった、遊びが終わった

変な言い方だが、まだ遊べるのだが、(とにかく)遊び終わった。

遊び尽くす (他動詞)

太郎は遊び尽くした  意思的、意図的に遊び終えた、遊びを終えた

遊べるものはみな遊び終えた。この場合<遊び>は複数。

<遊び>が特定の一つの場合は

(その)遊びを遊びきった。(その)遊びを、すっかり、のこりなく、心おきなく、遊んだ。一種の強調。

 歩き尽きる  歩き尽くす

 歩き尽きる  太郎は歩き尽きた。

まだ先はあるのだが歩き終わった。意思的、意図的な感じはない。to give up の感じだ。

歩き尽くす  太郎は歩き尽くした。

歩けるだけ歩いた。歩ける限度まで歩いた。このグループのものは多い。

言い尽きる  言い尽くす  (目的語がない場合、または<xxと言う>場合は自動詞っぽい。<文句、苦情を言う>では他動詞になる)

行き尽きる  行き尽くす

行き尽きる  目的地までいくよていだったが、途中で行き尽きた。

行き尽くす  いけるところはすべて行き尽くした。

生き尽きる  生き尽くす  

生き尽きる  生きることを全 (まっと) うせず、その前に生き尽きた。

生き尽くす   生きることをうした。

目的語がない場合は自動詞。<乱世を生きる>では他動詞っぽくなるが、<乱世に生きる>と同じような意味だ。

動き尽きる  動き尽くす

動き尽きる

動き終わった。意思的、意図的な感じはない。to give up の感じだ。

動き尽くす

動けるだけ動いた。動げる限度まで歩いた。意思、意図が感じられる。

(悲しみ尽きる)  悲しみ尽くす

花子は悲しみ尽きた。

変な言い方、かつ微妙だが

花子は、まだ悲しめると思われるが、とにかく悲しみ終えた。また

花子の悲しみは尽きた、終わった、やんだ。

悲しみ尽くす

花子は悲しみ尽くした。

悲しめるだけ悲しんだ。悲しめる限度まで悲しんだ。だが意思、意図は感じられない。

 <悲しむ>は一種の自然現象だろう。

消え尽きる  (消え尽くす)

これは主語が基本的に人ではなく、もの、こと。

火が消え尽きた。

これは<火が尽きて消えた>の意。後にあるが<燃え尽きる>は<火が燃え終わった>、 <燃えるのが終わった>。

 人ではなく、もの、ことなので to give up はおかしい。英語で to cease という動詞がある。

<cease fire>は停戦。to cease は自動詞、他動詞兼用。名詞にもなる - cease。

自動詞の場合は cease to 動詞となる。したがって、<燃え尽きる>は to cease to burn。では<火が消え尽きる>はなんというか?英語では他動詞<消す> to distinguish の受身 to be distinguish (消される) が<消える>に代用される。the fire is distinguished は<火が消える>。to burn out というのが自動詞、他動詞兼用だが、自動詞の場合は<燃え尽きる>。おそらくthe fire is distinguished out>とは言わないだろう。

これは<死に尽きる>と<生き尽きる>にも言える。

死に尽きる  (命が)尽きて死んだ。
生き尽きる  生き終わった。生きるのが終わった。

叫び尽きる  叫び尽くす

次郎は叫び尽きた  無意思的、無意図的に叫び終わった、叫びが終わった。 to give up

変な言い方だが、まだ叫べるのだが、(とにかく)叫び終わった。

叫び尽くす

次郎は叫び尽くした。 叫べるだけ叫んだ。叫べる限度まで叫んだ。意思、意図が感じられる。

進み尽きる  進み尽くす

まだ先はあるのだが進み終わった。意思的、意図的な感じはない。

進み尽くす  太郎は進み尽くした。

 めいっぱい進んだ

立ち尽きる  立ち尽くす

次郎は立ち尽きた。

<立ち尽きる>は、意思的、意図的な感じはないが、 <めいっぱい、できる限り立っていた>の感じがある。これは本来<立ち尽くす>なのだが、<立ち尽くす>が別の意味があるので、ヘンテコになっている。<立ち尽くす>には意思的、意図的な感じがない。

次郎は立ち尽くした。

意思的、意図的な感じを持たせようとすると、

(最後まで) 次郎は立ちきった。次郎は立ち果たした。<次郎は立ち尽くした>には<最後まで>の感じがない。

 疲れ尽きる  (疲れ尽くす)

花子は疲れ尽きた。

<疲れ終わる>はおかしい。とりあえず<強調>として

花子はとても疲れた。(もこれ以上何もできない)

花子は疲れ尽くした。

はダメだろう。<疲れる>は上の<悲しむ>、次の<泣く>と同じく自然現象で、意思や意図がない。

泣き尽きる  泣き尽くす

花子は泣き尽きた。

泣き終わった。泣きやんだ。 意思的、意図的な感じはない。

花子は泣き尽くした。

これも意思的、意図的な感じはないが、泣ける限度まで泣いて、泣きやんだ。

 (鳥が) 鳴き尽きる  鳴き尽くす

<人が泣く>と同じだろう。だが鳥には意思、意図があるだろうが、人には感じられない。

 (ベルが)鳴り尽きる (鳴り尽くす) 

ベルが鳴り尽きた。

 鳴り終わった。鳴りやんだ。人が関与せず、一種の自然現象。

ベルが鳴り尽くした。

<ベルが鳴り尽きた>と同じような意味で可能だが、<鳴り尽きた>が普通だろう。

 走り尽きる   走り尽くす

これは< 歩き尽きる>、<  歩き尽くす>に準ずる。

太郎は走り尽きた。

まだ先はあるのだが走り終わった。意思的、意図的な感じはない。to give up の感じだ。

太郎は走り尽くした。

走れるだけ走った。走れる限度まで走った。意思、意図が感じられる。

働き尽きる  働き尽くす

次郎は働き尽きた。 

他人から見て、まだ働けるのに走り終わった。意思的、意図的な感じはない。

次郎は働き尽くした。 

働けるだけは働いた。働ける限度まで、目いっぱい働いた。意思、意図が感じられる。

(風が、は)吹き尽きる  吹き尽くす

 風には意思、意図はない。<吹き尽きる、尽きた>は何か変で、<吹き尽くす、吹き尽くした>で、意思、意図はないが、限度まで吹く、吹いた。<吹き尽くす>は<尽くす>があるが自動詞。<立ち尽くす>に似ている。

 (雨が、は)降り尽きる  降り尽くす

これは上の、風に準じる。

燃え尽きる  (燃え尽くす)

火は間もなく燃え尽きる。

燃えるものが<なくなって>燃え終わる / 燃え終える。

 <火は間もなく燃え尽くす>も可能だが、<燃え尽きる>と同じような意味。火に意思、意図はないのだ。したがって<燃え尽くす>は自動詞になる。<燃え終える>は<終える>があるが自動詞だ。 

焼け尽きる  焼け尽くす

家は焼け尽きた。 

家は焼け尽きて<なくなった>。

家は焼け尽くした。

も可能で、<家は焼け尽きた>と同じような意味。 家に意思、意図はないのだ。<焼け尽くす>は自動詞。

喜び尽きる  喜び尽くす

花子は喜び尽きた。

まだ喜べる余地があるのに喜び終わった / 終えた。意思、意図はない。

花子は喜び尽くした。

喜べる限度まで、目いっぱい喜んだ。意思、意図が感じられる。

笑い尽きる  笑い尽くす

まだ笑える余地があるのに笑い終る / 終える。意思、意図はない。

笑い尽くす


解説が多くて、何が何だかわからくなっていいるが、まとめてみると

1)、2)自動詞+尽きる、尽くす

主語、主体が人か<もの、こと>で違いがある。そして、この違いは<人>の場合、多くは意思、意図のあるなしが関係してくる。

<人>の場合

意思、意図がなく、自然な感じで<すすむ>場合は<xx尽きる>。 意思、意図があって<なされる>場合は<xx尽くす> 。

 <モノ、コト>の場合

<モノ、コト>には意思、意図がないので<xx尽きる>はいいが<xx尽くす>は変なことになる。だが実際は変なことにならず

火が消え尽きる。 火が消え尽くす。
風が吹き尽きる。 風が吹き尽くす。
雨が降り尽きる。 雨が降り尽くす。
家が焼け尽きる。 家が 焼け尽くす。

でほぼ同じような意味。複合動詞としては<xx尽きる>、<xx尽くす>とも自動詞だ。

 人の場合で例外は

 立ち尽きる  立ち尽くす

次郎は立ち尽きた。
次郎は立ち尽くした。

<次郎は立ち尽くした>が<次郎は遊び尽くした>、<次郎は走り尽くした>のように限度まで、目いっぱい<xxした>の意にならないのは、おそらく<立つ>が動作、行為とはいえ静的なためだろう。

次郎は座り尽きた。
次郎は座り尽くした。

は普通では言いそうにない。

次郎は寝 (ね) 尽きた。
次郎は寝 (ね) 尽くした。  

は、<寝る>には意思、意図があるが、<寝ている>に意思、意図がないので<寝尽きた>、<寝尽くした>は同じような意味になりそう。だが

次郎は寝尽きて、目を覚ました。

はいいが、

次郎は寝尽くして、目を覚ました。

は何かおかしい。


相当だらだらと長くなっているが、次に

3)、4)他動詞+尽きる、尽くす

をチェックしてみる。そう多くはないので、再度並べてみる。

歌い尽きる  歌い尽くす
思い尽きる  思い尽くす

書き尽きる  書き尽くす
考え尽きる  考え尽くす
(聞き尽きる)  聞き尽くす

探し尽きる   探し尽くす
し尽きる  し尽くす

(食べ尽きる) 食べ尽くす
使い尽きる  使い尽くす
取り尽きる  取り尽くす

学び尽きる  学び尽くす
(見尽きる) 見尽くす
燃 (もや)し尽きる  燃し尽くす

(焼き尽きる)  焼き尽くす
やり尽きる  やり尽くす

読み尽きる  読み尽くす

忘れ尽きる  忘れ尽くす

 

歌い尽きる  歌い尽くす

歌い尽きた ー まだ歌うべきなのだが、歌い続けると思っていたが、歌い終わった、歌いやんだ。
歌い尽くした ー 歌える限度まで歌った。予定の歌をすべて歌いきった。 

思い尽きる  思い尽くす

<思う>は目的語があれば他動詞、なければ自動詞だろう。

太郎は思い尽きた。ー もう思わなくなった。意思、意図はない。

太郎はxxを思い尽きた。

は変なので、他動詞としてはダメだ。 

<思い尽くす>は目的語のある他動詞としてであれば問題ない。

太郎は花子を思い尽くしたが、ふられた。

書き尽きる  書き尽くす

書き尽きた ー まだ書くべきなのだが、書き続けると思っていたが、書き終わった、書き終えた(この<終えた>は自動詞か。<書くのをやめた>だと意思、意図が入ってくるので<書くのがやまった>だが、まずこうは言わないだろう。

書き尽くすた ー 書くべきことはすべて書いた。意思、意図がある。

考え尽きる  考え尽くす

これは

思い尽きる  思い尽くす  

に準ずるだろう。

<考える>は目的語があれば他動詞、なければ自動詞だろう。

次郎は考え尽きた。ー もう考えなくなった。意思、意図はない。

次郎はxxを考え尽きた。

は変なので、他動詞としてはダメだ。 

<考え尽くす>は目的語のある他動詞としてであれば問題ない。

次郎はこの算数問題を考え尽くしたが、解けなかった。

 (聞き尽きる)  聞き尽くす

ショパンの曲を聞き尽きた。

はおかしい。 だが

ショパンの曲はいいものが多いので、 聞いても尽きることはない。

ならいい。 いくら聞いても、 聞き尽きることはない。聞く曲がなくなることはない。

ショパンの曲を聞き尽くした。

は問題ない。

探し尽きる   探し尽くす

探し尽きた ー まだ探せるのだが、探し終わった。意思、意図はない。
探し尽くした ー 探せるところはすべて探した。 

これが<2)他動詞+尽きる、尽くす>の基本だろう。

し尽きる  し尽くす

し尽きた ー まだすることができるのが、し終わった。したがって、まだやることが残っている。意思、意図はない。

し尽くした ー することができることはすべてした。 だが、これはなぜか意思、意図があまり感じられない。

(食べ尽きる) 食べ尽くす

食べ尽きる ー まだ食べるものはあるのだが、 食べ終わった。意思、意図はない。何か変だ。

花子は、食べるものは多すぎて、食べきれずに、食べ尽きた。

これならいい。

食べ尽くした ー すべてを食べきった。

使い尽きる  使い尽くす

使い尽きる ー 使いきれずに、使い終わった。意思、意図はない。だが何か変だ。

<使う>はやや特殊で、 <使う対象が、使うと減っていき、ついにはなくなる、例えば洗剤>場合、<使う対象が使うと機能が衰えるていき、ついには使えなくなる、例えば洗濯機>

洗剤を使い尽きる ー なくなるまで使う

花子は洗剤を使い尽きた。なくなるまで使った。意思、意図が薄い。例えば

花子は洗剤を気付かないうちに使い尽きた。

だが、これは変で

花子が気付かないうちに洗剤は使い尽きた。
 

花子は洗濯機を使い尽きた。

これも変で、

洗濯機は使い尽きて、壊れた。

花子は洗剤を使い尽くした  ー なくなるまで使った。意思、意図が濃い。
花子は洗濯機を使い尽くすした ー 1)こわれるまでで使った。2)いろいろな使い方をした。

取り尽きる  取り尽くす

 <取る>は他動詞の代表で、他の前半が他動詞の<xx尽きる>、<xx尽くす>複合動詞に応用できよう。

取り尽きた ー まだ取れるのだが、取り終わった。意思、意図はない。
取り尽くした ー 取れるものはすべて取った。

 学び尽きる  学び尽くす

 学び尽きる ー まだ学べるのだが、学び終わる。意思、意図はない。

美代子は学び尽きた ー まだ学べるのだが、さらに学び続けるのは終わった。 gave up studying。

学び尽くす  ー 学べるものはすべて学ぶ。 

(見尽きる) 見尽くす

XXを見尽きる

はあまり聞かない。<見る>の自動詞は<見える>が可能にもなる。

海が見える。

<海を見尽きる>は<長い間海を見ていて、見るのをやめる>だが、何か変だ。

海を見るのに飽きて、見るのをやめる

ならいい。一種の to give up。

<海が見え尽きる>は<海が見えなくなる>だが、これも変だ。

 海が見え尽きるところが陸だ。 海が見え尽きるところに陸がある。

でなんとかなるが、こういう人は少ないだろう。<海の向こうに陸がある> が簡潔でいい。

見尽くす ー 見えるものはすべて見る。

燃 (も) やし尽きる  燃やし尽くす 

燃やし尽きる ー1)まだ燃えるものがあるのに燃やし終わる、終える。まだ燃やしきっていない。意思、意図は薄い。<燃やし尽きる>は他動詞。<xxが燃やし尽きる>とは言わない。だが曖昧なところがある。

燃やし尽きる ー2)燃やしきる、の意もある。

燃し尽くす ー すべてを燃やしきった。意思、意図が濃い。

燃え尽きる、燃え尽くす (自動詞)、 燃やし尽くす。いずれも燃えるものはなくなって灰になる。

 やり尽きる  やり尽くす

<やる>にはいくつか違った意味がある。

やる = する to do
やる = 与える to give
やる = 遣る to delivery、 to dispatch

 ここでは

やる = する to do

を取り上げて<する>の意おとりあげ、<し尽きる>、<し尽くす>と比較してみる。上の

し尽きる  し尽くす

の説明を<やる>で置き換えてみると

やり尽きた ー まだやることができるだが、やり終わった。したがって、まだやることが残っている。意思、意図はない。

やり尽くした ー やれることができることはすべてやった。

で、問題ない。だが<やり尽くす>の方が<し尽くす>より意思、意図が感じられるか。これは<やり>が二音節、<し>はわずか一音節であるのが影響しているか。<軽い>のだ。<する>は日本語では<漢語+する>で大活躍する。<やる>の場合は<漢語+を+する>となる。

勉強する   勉強をする   (勉強やる) 勉強をやる
(宿題する)  宿題をする  (宿題やる) 宿題をやる

<勉強>は中国語では基本的に動詞ではない。

仕事する   仕事をする   (仕事やる) 仕事をやる
<仕事 (しごと) >は和製漢語で、基本的に名詞。

生活する   生活をする   (生活やる) (生活をやる) 

話が横道にそれるので、ここでやめる。

読み尽きる  読み尽くす

<読み書き>と言うので、上の<書き尽きる ー 書き尽くす>を応用すると

読み尽きた ー まだ読むべきなのだが、読み続けると思っていたが、読み終わった、読み終えた(この<終えた>は自動詞か。<読むのをやめた>だと意思、意図が入ってくるので<読むのがやまった>だが、まずこうは言わないだろう。

読み尽くした ー 読むべきものはすべて読んだ。意思、意図がある。

で、問題ない。

忘れ尽きる  忘れ尽くす

基本的に<忘れる>に意思、意図はない。<忘れ尽きる>もなんだか変だが、<忘れ尽くす>は、意思的、意図的とすると、もっと変だ。

だが<忘れようとする>では 意思、意図がある。

 <忘れ尽きようとする>、<忘れ尽くすそうとする>だと意味がでてくる。この場合、同じような意味だ。いずれも意思、意図がある。したがって<意思、意図の有無>は重要だ。

  <忘れ尽きる>、<忘れ尽きた>、<忘れ尽くす>、<忘れ尽くた>とは言わない。アイウエオ順に並べたため、順序が全く逆になっているが、<xx尽きる>、<xx尽くす>が基本的に使えない動詞がある。これはアイウエオ順に並べる過程で、私の頭の中で無意識にのぞかれているのだ。<忘れる>はやや特殊な例で、一般的には

継続的、行程的な動作、行為、現象は<尽きる、終わる>、<尽くす、終える>ことができるので<尽きる、尽くす>が使える。一方、瞬時的な動作、行為、現象は普通<始まり>と<終わり>がないと認識されるので<尽きる、終わる>、<尽くす、終える>はそぐわない。

<尽きる、尽くす>がなじまない瞬時的な動作、行為、現象の例

着く    着き尽きる、着き尽くす

始まる   始まり尽きる、始まり尽くす
始める   始め尽きる、始め尽くす

見つかる  見つかり尽きる、見つかり尽くす
見つける  見つけ尽きる、見つけ尽くす

終わる   終わり尽きる、終わり尽くす
終える   終え尽きる、終え尽くす

だが、上は主語、主題、目的語が単数の場合で、数が大いと変でなくなる。

 着く    全員着き尽きた、全員着き尽くた。(<着き尽くす>は自動詞)

 始まる  時間に差はあったが、皆始まり尽くした。

見つかり尽くす  なくなったモノはいろいろあったが、すべて見つかり尽くすした、見附尽くした。

終わり尽きる  すべて皆が終わり尽きた、 

終わり尽きる  すべて宿題を終わり尽くした、終え尽くした。

ーーーーー

また瞬時的な動作、行為、現象に見えるが、<xx尽きる>、<xx尽くす>で変でない場合があり、これはそうなる、そうなって行く過程が無意識に含まれているからだろう。

切れる   切れ尽きる、切れ尽くす
切る    切り尽きる、切り尽くす

離れる   離れ尽きる、離れ尽くす
離す    離し尽きる、離し尽くす


横道にそれたが

忘れ尽きる  忘れ尽くす

に戻ると

<忘れる>は瞬時的な現象に見えるが、徐々に<忘れる、忘れていく>場合も考えられる。

忘れ尽きる

忘れ尽くす   

いやなことはすべて皆忘れ尽くした方がいい。<忘れ尽くす>は自動詞か。

主語は<いやなことはすべて皆>ではない。

xxxxがいい。

となっているので、

 <いやなことはすべて皆忘れ尽くした方>が主語となる、かなり複雑な分構成だ。

いやなことすべて皆忘れ尽くした方がいい。

はダメ。

君は、いやなことはすべて皆忘れ尽くした方がいい。

<君は>の<君>は

君は忘れ尽くす
君が忘れ尽くす

と言えるので、主語、主題といえるようだが、ややこしい。

君が忘れ尽くすすことはいいことだ。

いやなことをすべて皆忘れ尽くせればいいのだが。(<忘れ尽くす>は他動詞)

ーーーーー 

以上なのだが、繰り返しになるが、まとめとして、

<xx尽きる>は完了せずに<終わる>、<やむ、止む、已む>。場合によっては<(無意思的、無意図的、自然に)なくなる>の意 ー 燃え尽きる(燃えるものがなくなる)。

一方<xx尽くす>は<すっかり、残りなく、目いっぱい xx (する) >で大体カバーできる。一方、単独で使う<尽きる>、<尽くす>の場合は

 xxが (は) 尽きる 自動詞

はやはり

 xxが (は) 終わる, やむ (止む、已む), なくなる, の意。

命が尽きる、金が尽きる、道が尽きる

一方<尽くす>は多義語で

1)全力を尽くす ー すっかり、残りなく、すべての力を使いきる。 to use up (all) without any  reserve

2)太郎は花子に尽くしたが、ふられた。 to serve

この場合<xxを>の目的語がないので、自動詞にように見える。だが、内容的には<わが身を>が省略されたもの、と見ることができる。

 

とりあえず、以上で終わる(尽きる)、終える。

 

sptt

 

 

 

 

Friday, November 15, 2024

複合動詞<xxきる>

 複合動詞<xxきる>の例はいくらでもあると言っていい。すこし前に "  <xx きる (切る) >の複合動詞 " というポストを書いているが、これは第二弾。前回のポストをあまり参考にしないで再検討してみる。

<切る>は<切る>由来で、物理的に<切る>では

打ち切る  打って切れないことはない。だが、慣用用法が主に使われる。

押し切る  <押して切る>ことはまずないだろう。西洋の鋸 (のこぎり) は押して切るようだ。慣用用法が主。

たたき切る  たたいて切れないことはない。慣用用法の<たたき切る>は一種の強調。 


強い勢いで斬りつけること、斬り捨てることを意味する表現一般的には叩き切る」と表記する

という解説がある。( 日本語表現辞典

ち (千) 切る   これは<ちりぢり、散り散りになるように)切る、切り散らす、で複合動詞とすれば<散り切る>の変形。

突っ切る   <突いて切る>こともほとんどないだろう。<道路を急いで突っ切る>のような慣用用法が主。

ねじ切る、 ねじり切る   ねじって切る

はさみ切る  はさんで切る

引き切る             引いて切る、引っ張って切る。<ひっきりなし>の<ひっきり>は

<ひっきりなし>のネット辞典の解説で

絶え間のないこと。「引っ切り」は「切れ目」「区切り」の意 (デジタル大辞泉

とある。<区切り>、<区切る>は後で述べるが<切る>の重要なコンセプト。

焼き切る  焼いて切る

 

また、<途中で切る>、中断の意があるが、これはむしろ少数派で

 打ち切る、見切る、思い切る、割り切る

多数派は

1)強調
2)完了

1)強調は前回のポスト " 複合動詞<xxかえる> " で<xxかえる>と並行して並べてみた。

あきれかえる  あきれきる
あふれかえる  あふれきる
甘えかえる   甘えきる
いばりかえ(えばりかえる) いばりきる(いばりきる)
うかれかえる  うかれきる
おごりかえる  おごりきる
恐れかえる   恐れきる
おびえかえる  おびえきる

悲しみかえる  悲しみきる
乾きかえる   乾ききる

狂いかえる   狂いきる
こごえかえる  こごえきる
困 (こま) りかえる   困りきる
こわがりかえる  こわがりきる

しょげかえる  しょげきる
すねかえる   すねきる

黙りかえる   黙りきる
だらけかえる  だらけきる
ちぢみかえる  恐ろしさでちぢみかえる、 ちぢみきる
ちらかりかえる  ちらかりきる
疲れかえる   疲れきる

泣きかえる   泣ききる

嘆きかえる   嘆ききる
怠 (なま) けかえる  怠けきる

冷 (ひ) えかえる  冷えきる
膨 (ふく) れかえる   膨れきる
ふさぎかえる  ふさぎきる
震 (ふる) えかえる   寒さで震えかえる、震えきる
へたりかえる  へたりきる

乱れかえる   乱れきる
むくれかえる  むくれきる

汚 (よご) れかえる  汚れきる
喜びかえる  喜びきる
弱りかえる  弱りきる

笑いかえる  笑いきる  

強調といってもいろいろあり、<xxかえる>の方は

a) 極度の<恐れ、驚き、喜び、嘆き、悲しみ、乱れ、疲れ、寒暑>。

b) 絶望的な<どうしようもない>のニュアンスのものが少なくない。

あきれかえる、困りかえる、疲れかえる、赤ん坊が泣きかえる、乱れかえる、弱りかえる

c) 状況ににより批判的な言い方と言えるものがある。

あきれかえる、甘えかえる、いばりかえる、だらけかえる、ちらかりかえる、汚れかえる

一方上記の<xxきる>例の方はどちらかというと ” 一般的な ” な強調で、極度まではいかず

<すっかり、xxきる>程度。また<切る、to cut>の意味はないと言っていい。いくらでもあるが、上の例以外では

開けきる   戸を開けきる
上がりきる
飢えきる
売りきる   なくなる
押しきる
落ちきる   葉が落ちきる  なくなる

買いきる
かたずけきる
枯れきる   木が枯れきる
乾ききる  のどが乾ききる

探しきる
閉 (し) めきる  戸を閉め切る
湿りきる
知りきる
捨てきる  なくなる

出しきる  なくなる
楽しみきる
使いきる   なくなる
勤めきる
跳びきる  <とびっきり>とは?
取りきる  なくなる

伸ばしきる
伸びきる
乗りきる  皆船に乗りきる。残る人がいなくなる。<困難を乗りきる>と言うが<乗り越える(きる)>が適切だろう。

張りきる   ゆるみなく十分に張る。ぴんと張る。「張り切った糸を指ではじく」「張り切った筋肉」(デジタル大辞泉)。だが、主に慣用方法で使われる。
減りきる  腹が減りきる、体重が減りきる。限度があって<なくなる>ことはない。
増えきる
太りきる
振りきる  <振って切る>こともあるが、普通は<追手、後続を振るようにして離す>。
広げきる  風呂敷を広げきる 

曲げきる   <曲げて切る>こともあるが、普通は<しっかり曲げる>、<可能な限り、できるだけ曲げる>。
混ぜきる
燃えきる  燃え尽きる   なくなる

痩 (や) せきる

わかりきる 

ーーーーー

漢語+しきる

これもいくらでもある

感動しきる
絶望しきる
疲労しきる
燃焼しきる


2)完了

完了、完了形は文法用語であり、少し詳しく検討してみる。完了は文字通りでは<終わる、終わる>。文法用語の完了は英文法の解説用に作られた和製漢語だろう。中国の中国語文法解説で<完了>の字はあまり見ない。<了>は多義語だが過去、完了の意味がある。また<完了、wán le >というのはドラマなどでよく聞く。<ああ、これで終わりだ。もうダメだ。>という意味。

さて<切る>と完了だが、上で

<区切り>、<区切る>は後で述べるが<切る>の重要なコンセプト

と書いたが、<終わる>、<終える>は終了、完了を表す一般的な動詞で、自動詞<終わる>では主語(主題)、他動詞<終える>では対象の内容が関連してくる。この内容、意味内容はいろいろあるが、ここでは<区切り>を考えてみる。

<区切り>がある意味内容の場合は<完了>が可能だが (これが大多数)、<区切り>がはっきりしない意味内容の場合は<完了>表現になりにくい。

<区切り>がはっきりしない意味内容の場合

a)<終わり>が想定しにくい一種の過程

行く、来る、帰る、進む、動く、遊ぶ、さまよう、うろつく、生まれる (生まれて来る)  、生きる、死ぬ、風が吹く、雨が降る

太郎は学校に行ききる、行ききった。
次郎は我が家に来きる、来きった
兵士は敵陣に進みきる、進みきった
花子は家に帰りきる、帰りきった。
美代子は一日中動ききる、動ききった。(一日中は一種の<区切り>だ。)
三郎は遊びきる、遊びきった
四郎はさまよいきる、さまよいきった
五郎はうろつききる、うろつききった

赤ん坊が生まれきる、生まれきった。
彼は、裕福に (貧しく) 生ききる、生ききった。
老人が死にきる、死にきった。

風が吹ききる
雨が降りきる

以上は完了表現は基本的に変だ。

b)通例、習慣の場合 これは動詞内容にあまり関係がない。

太郎の息子は毎日遊びきる、遊びきった。  (<毎日遊ぶ>は通例、習慣)
次郎の息子は毎日勉強しきる、勉強しきった。
花子の娘は年に一度実家に戻りきる、戻りきった。
美代子の娘は毎日働ききる、働ききった。
佐藤は毎朝運動をしきる。
加藤は毎晩居酒屋で酒を飲みきる。

<区切り>がある意味内容の場合

歩ききる  特定の距離
歌いきる  一曲、3曲も
泳ぎきる  特定の距離、場所

語りきる  一つの話、三つもの話
過ぎきる  列車は踏切りを過ぎきるまで待つ。

食べきる  特定の量の食べ物、食事

飲みきる  特定の量の飲み物

走りきる  特定の距離

やりきる  ある特定のこと
読みきる  一冊の本、10冊もの本

渡りきる  ある特定の者、場所

以上は完了表現が可能。 

<すっかり、xxきる>で強調で取り上げ、<なくなる>を付記したもの

売りきる  なくなる
落ちきる  葉が落ちきる  なくなる
出しきる  なくなる
使いきる   なくなる
取りきる  なくなる
燃えきる  燃え尽きる   なくなる

は完了とも見做せる。

 

3)<途中で切る>、中断

打ち切る
思い切る
見切る

ーーーーー

終了、完了では<きる>以外に、一般的な<xx終わる>、<xx終える>を除き

xx果てる、xx果たす
xx尽きる、主に<なくなる>、 xx尽くす

上の例では

売りきる  売り尽くす。だが<売り尽きる>もOKで自動詞。  
落ちきる  落ち尽きる。だが<落ち尽くす>もOKで自動詞。

出しきる  出し尽くす。だが<出し尽きる>もOKで自動詞。 
使いきる  使い尽くす。だが<使い尽きる>もOKで自動詞。 
取りきる  取り尽くす。だが<取り尽きる>もOKで自動詞。 
燃えきる  燃え尽きる。<燃え尽くす>は変だ。

<言いきる>はややこしい。

はっきりと言いきる

(言いきる) ー 言い尽きる、言い尽きた、で自動詞  完了、もうない

すべて(すっかり)言いきる ー 言い尽くす、で他動詞  完了、もうない

<尽きる>は<きる>があるが、昔は<つく>。今でも<底 (そこ) をつく> という言い方がある。

資金が底をつく。

で他動詞のようだが、昔は<資金尽く>で自動詞。今でも<資金が底を尽くす>とは言わない。<資金が底につく (着く) >ならいいがこうも言わない。

その他では

xxやむ、xxやめる   雨がやむ

がある。別途検討、再検討予定。

 

 sptt

 

Wednesday, November 13, 2024

複合動詞<xxかえる>

 <かえる>はおもしろい言葉が少なくない。

あきれかえる  あきれきる、あきれはてる
あふれかえる  あふれきる
甘えかえる   甘えきる
いばりかえ(えばりかえる) いばりきる(えばりきる)
驚きかえる   驚きはきる、驚きはてる

英語で<驚く、驚いている>は to be surprised だが、to be astonished というのもあり、これは<驚きかえる>相当だろう。

うかれかえる  うかれきる
うだりかえる  うだりかえる暑さ
えばりきる   えばりきる
おごりかえる  おごりきる
恐れかえる  恐れきる、恐れ上がる
おののきかえる
おびえかえる  おびえきる、おびえ上がる

悲しみかえる  悲しみきる
乾きかえる   乾ききる
狂いかえる   狂いきる
こごえかえる  こごえきる
困りかえる   困りきる、困り込む、困りはてる   
こわがりかえる  こわがりきる

しょげかえる  しょげきる、 しょげ込む
すねかえる   すね込む

たまげかえる  <たまげる>は関東方言か? たまげきる
黙りかえる   黙りきる、黙り込む
だらけかえる  だらけきる、だらけ込む
ちぢまりかえる  おそろしさでちぢまりかえる  
ちぢみかえる   ちぢみきる
ちらかりかえる  ちらかりきる
疲れかえる   疲れきる、疲れはてる
ときめきかえる

嘆きかえる   嘆ききる
怠 (なま) けかえる  怠けきる
煮えくりかえる   怒りで (腹が) 煮えくりかえる

冷 (ひ) えかえる   冷えかえる寒さ、冷えきる
膨 (ふく) れかえる  膨れかきる
ふさぎかえる  ふさぎきる、ふさぎ込む
震えかえる   寒さで、恐れで震えかえる、震えきる
へたりかえる  へたりきる

乱れかえる   乱れきる
蒸しかえる   蒸しかえる暑さ 蒸し込む

汚 (よご) れかえる  汚れきる
喜びかえる  喜びきる
弱りかえる  弱りきる、弱り込む、弱りはてる

笑いかえる  笑いきる 

1) <xxきる>で置き換えらりものがすなくない。<xxきる>は別途検討。

2) 極度の<恐れ、驚き、喜び、嘆き、悲しみ、乱れ、疲れ、寒暑>。おもしろいのは極度の寒暑はあるが、極度の暖かさ、涼しさはないので、これに関連した表現は見つからない。

3) 絶望的な<どうしようもない>のニュアンスのものが少なくない。

あきれかえる、うだりかえる暑さ、蒸しかえる暑さ、困りかえる、疲れかえる、よわりかえる

絶望的なニュアンスの複合動詞の後半の動詞では<xxはてる>がある。上で取り上げたが

困りはてる
疲れはてる
よわりはてる 

<はてる>は<絶望的なニュアンス>以外の意もあり、けっこうある。おもしろいので、これも別途取り上げる予定。

4) また<かえる>は批判的な言い方がある。これは<かえる、返る=反発>が働いているためか?

あきれかえる、甘えかえる、いばりかえる、だらけかえる、ちらかりかえる、汚れかえる

 

sptt

 

<はてる、果てる>、<はたす、果たす>の複合動詞

 <はてる、果てる>、<はたす、果たす>の複合動詞は<込む>、<込める>の複合動詞と並んで多義にわたっている。

はてる、果てる: 尽きる、終わる、終焉 (しゅうえん)、ある意味で未達
はたす、果たす: やりとげる、達成

自動詞で未達、他動詞で達成というのはおもしろい。

自動詞<はたす、果たす>の未達はやや特別で、普通は<果てない=尽きない、終わらない>と否定で未達なのだが、<尽き果てそうな状態になる>とも考えられる場合がある。 <はてる、果てる>の複合動詞をアイウエオ順に並べてみる。いくらでもある、と言っていいが、おもしろいものが少なくない

あきらめ果てる
あきれはてる
言い果てる
行き果てる
老いはてる
落ちはてる
落ち込みはてる
落ちぶれはてる
衰えはてる
驚きはてる
おののきはてる
おびえはてる

悲しみはてる
考え果てる
消え果てる
朽 (く) ち果てる
腐りはてる
壊 (くず) れ果てる
朽 (く) ち果てる
苦しみはてる
暮れ果てる
困りはてる
壊 (こわ) れ果てる

死に果てる
すぼみ果てる  収縮する、小さくなる
ずるけはてる  ずるける=ずるをする、なまける、ずるけてxxしない
染まりはてる   悪に染まりはてる

泣きはてる
嘆きはてる
怠 (なま) けはてる
悩みはてる

広がり果てる   広がり切る (限度に近い)
ふくらみ果てる  ふくらみ切る  (限度に近い)
へたりはてる

燃え果てる 

痩 (や) せはてる
破れ果てる
敗れ果てる
汚 (よご) れはてる
弱りはてる

副詞<すっかり>と相性がいい。これは<果てる>という意味も残るが ” 強調 ” と言えるものが多いので<はてる>とした。

副詞<ついに>と相性がいいものは<果てる>とした。だが<はてる>、<果てる>は聞いたり、言ったるする場合は区別はない。したがって基本的な違いはないのか。

 さて冒頭の

はてる、果てる: 尽きる、終わる、終焉 (しゅうえん)、ある意味で未達

 の<ある意味で未達>について説明する。上記の例の<xx果てる>の方をもう一度検討してみる。

言い果てる ー 言い切る、言い尽くす前に言い果てた。

行き果てる ー 行き着く前に行き果てた。

考え果てる  ー すっかり考え切る、考え尽くす前に考え果てた。いいアイデアが考えつく前に考え果てた。

死に果てる ー 死に尽きる前に死に果てた。

燃え果てる   ー 燃えきる、燃え尽きる前に燃え果てた。

以上はややこしいので、あまり言わないが可能で<ある意味で未達>だ。数学で極限という考え方があるが、これとは違う。未達でまだ何かが残っている感じだ。

終わり果てる
尽き果てる

は主動詞が<終わる>、<尽きる>なので未達にならない。

話が長くなってきたので、他動詞<はたす、果たす>の複合動詞は後日に検討予定。

 

sptt 

 

Sunday, November 10, 2024

<xxつまる>、<xxつめる>の複合動詞

 <xx詰まる、つまる>、<xx詰める、つめる>の複合動詞は<込む>、<込める>に似たようなところがあるが、<込む>、<込める>ほどは使われない。


歩き詰める   自動詞   歩き詰め
言い詰まる   自動詞
言い詰める
行き詰 (づ) まる   自動詞
行き詰 (つ) める  自動詞  毎日行き詰める  通い詰める
追い詰める
押し詰まる   自動詞  年が押し詰まる
押し詰める
思い詰める

通いつめる  自動詞   毎日通いつめる
考え詰める
切り詰める  費用を切り詰める
食いつめる  自動詞

差し詰まる  自動詞
知り詰める
座り詰める   自動詞  一日中座り詰める

立ち詰める  自動詞  一日中立ち詰める
突き詰める

煮詰める   他動詞  慣用用法がある。議論、意見を煮詰める

働き詰める   自動詞  一年中働き詰める、働き詰め
張り詰める  自動詞  氷が張りつめる、 慣用用法 緊張が張りつめる

見つめる

寄り詰める

笑い詰める


1)中断。詰まると滞 (とどこお) る

言い詰まる   自動詞
行き詰 (づ) まる   自動詞

2)継続的、断続的な繰り返し行為

行き詰 (つ) める  自動詞  毎日行き詰める
通いつめる  自動詞   毎日通いつめる
座り詰める   自動詞  一日中座り詰める
立ち詰める  自動詞  一日中立ち詰める
働き詰める   自動詞  一年中働き詰める

歩き詰める
煮詰める
笑い詰める

3)終わる、終える、尽きる

行き詰 (づ) まる   
切り詰める 
食いつ詰める

<つまるところ>は結局のところ、最終的にはという意味だ。中国語では<果然,竟然,究竟>というのがるが、中英簡易自辞典では anyway が出てくる。

4)<詰め寄る>感じ

言い詰める
追い詰める
突き詰める
寄り詰める 

5)一点、またはごく狭い場所への収斂 (れん)

思い詰める
考え詰める
知り詰める
煮詰める  慣用用法  
見つめる

6)

張り詰める

 

Friday, November 8, 2024

<込む>、<込める>の複合動詞

 <込む>、<込める>の複合動詞、すなわち<xx込む>、<xx込める>は調べてみるとおもしろい言葉少なくない。

当て込む、言い込める、思い込む、抱 (かか) え込む、ころがり込む 、絞 (しぼ) り込む、座り込む、抱き込む、黙り込む、(霧が) 立ち込める、たれ込む、使い込む、つけ込む、包み込む、なぐり込む、なだれ込む、のめり込む、話しこむ、ふさぎ込む、へたり込む、ほれ込む、舞い込む、まぎれ込む、まるめ込む、めかし込む、盛り込む、やり込める、弱り込む、わり込む

これらの<込む>、<込める>はいったいどういう意味か?

アイウエオ順に書き出してみる。

上がり込む
集め込む
当て込む
あばれ込む
入れ込む
言い込める
入れ込む
打ち込む  釘を打ち込む、打者が打ち込む、仕事に打ち込む
埋め込む  他動詞  埋まり込む  自動詞
埋もれ込む 自動詞
売り込む
描き込む
追い込む  追って中に(限られた場所に)入れる
老い込む
送り込む
押し込む   押して入れる
押し込める   押して入れる
覚え込む
思い込む  自動詞か。 思いを込める
織り込む  織り込み済み
折り込む  折り込み広告

買い込む  買い入れる
抱 (かか) え込む
書き込む
隠 (かく) し込む
隠 (かく) れ込む
駆け込む   駆けて入 (はい) る、駆けながら (はい) る
搔っ込む(掻っ込む) 掻き込む、掻き入れる
囲い込む
かつぎ込む  かついで入れる
刈り込む  
考え込む
気負い込む 上の<入れ込む>や<意気込む>も似ている。
聞き込む   聞き入れる、聞き入る (はいる)、 聞き込み 、聞き込み調査、
決め込む
切り込む  自動詞
食い込む   太ってきてベルトが腹に食い込む。頑張って3位に食い込む。
食らい込む  頑張って3位に食らい込む
繰り込む
狂い込む
くわえ込む
消し込む
蹴り込む  蹴り入れる
ころがり込む  ころがって入ってくる
 
探 (さが) し込む
差し込む  日が差し込む 自動詞、 指を差しこむ 他動詞
仕込む
忍び込む
絞 (しぼ) り込む
しまい込む
しみ込む  沁 (し) みる
締 (しめ) め込む
しゃがみ込む
調べ込む
進み込む
すべり込む
すまし込む  自動詞
住み込む
擦り込む
刷り込む
ずれ込む
座り込む  自動詞
背負い込む
注ぎ込む  注ぎ入れる
染め込む
 
足し込む
倒れ込む
抱き込む
叩 (たた) き込む  これを (は)、忘れないように、よく頭に叩き込んでおくこと。
たたみ込む
立ち込める  霧が立ち込める。<立ち込める>は自動詞
立て込む  自動詞  家が立て込む。
頼み込む
黙り込む
ため (貯め、溜め) 込む
たれ込む  自動詞 / 他動詞
使い込む
突き込む  突っ込む
つけ込む  つけ入 (い) る
漬け込む
包み込む
積み込む  積んで入れる、積むようにして入れる
詰め込む  詰めるように入れる
釣 (つ) り込む  つりりこまれる
連れ込む  連れて入る
溶 (と) け込む
閉じ込める   閉じこもる
飛び込む、跳びこむ  プールに跳んで入 (はい)
とっち込める   口語、関東方言か?
泊まり込む
取り込む
 
流し込む  流して入れる
流れ込む  流れて入る
なぐり込む  自動詞  なぐり込み  <なっぐって入る>ではない
投げ込む  投げ入れる。 投手が投げ込む
なすり込む
なだれ込む   なだれのように入 (はい) る
逃げ込む
煮込む
塗り込む
寝かし込む
寝込む   自動詞
狙 (ねら) い込む
飲み込む  呑み込み  慣用的な言い方あがある。 呑み込みがいい / わるい
のめり込む  自動詞
乗り込む   自動詞 (乗り物に)入 (はい) る

入 (はい) り込む
運び込む
挟 (はさ) み込む
走り込む  急いで走り込む、 陸上選手が走り込む
はたき込む  はたき込み(相撲)
話しこむ
はめ込む
払い込む
張り込む  自動詞  張り込み
冷え込む
引き込む  他動詞  引き入れる、 引っ込む 自動詞  引き籠 (こも) る
引きずり込む
浸 (ひた) し込む
浸 (ひた) り込む
吹き込む  風が吹き込む
ふさぎ込む
へこむ(凹む)、へっこむ  自動詞
へたり込む
踏み込む
振り込む
ほうり込む
ぼけ込む
ほめ込む
彫りこむ
ほれ込む舞い込む  自動詞  
 
紛 (まぎ) れ込む   自動詞
混ぜ込む  混ぜ入れる
混ざり込む
まとめ込む
迷い込む   自動詞
まるめ込む
まわり込む
磨 (みが) き込む
見込む
めかし込む
めり込む  自動詞
申し込む  申し入れる
もぐり込む  もぐって、もぐるようにして入 (はい) る
持ち込む  持って入る
盛り込む

休み込む
やり込める
呼び込む    呼び入れる
弱り込む

割り込む 自動詞  割って、押しのけて入 (はい) る、ある水準、基準を下回る

 

1)複合動詞の後半の<込む>、<xx込む>、<込める>、<xx込める>は基本的には<入る>、<入れる>)、英語の<in>、<into, in to>の意味がある。だが<入る>、<入れる>ほど単純、中立ではなく<確かに>、<しっかり(と)>、さらには場合によって<むりやり(に)>といった強調がある。

入れ込む  入れて込める、込めるように入れる。ほかに慣用用法がある。気合が入りすぎている。
埋め込む  他動詞  埋まり込む  自動詞
埋もれ込む 自動詞
追い込む  追って中に(限られた場所に)入れる 
押し込む   押して入れる
押し込める  押して(限らた場所に)入れる
織り込む  織物になかに織って入れる。慣用用法がある。
折り込む  折って、折るようにして入れる。
書き込む  書き入れる
駆け込む   駆けて入 (はい) る、駆けながら (はい) る
かつぎ込む  かついで入れる
搔っ込む(掻っ込む) 掻き込む、掻き入れる
刈り込む  刈り入れる、刈り取る 
食い込む
食らい込む
繰り込む  繰り入れる、繰り越して入れる
蹴り込む  蹴り入れる
差し込む  差すよう入ってくる。日が差し込む 自動詞、 差すように入れる。指を差しこむ 他動詞
しみ込む  沁 (し) みるように入って行く
注ぎ込む  注ぎ入れる
ころがり込む  自動詞 ころがって入ってくる
叩 (たた) き込む
たたみ込む 折りたたんで中に入れる <たたむ>には<店をたたむ、たたみ込む>という慣用用法がある。
突き込む  突いて、突くようにして中に入 (はい) る 、入れる。慣用用法がある。
積み込む  積んで入れる、積むようにして入れる
詰め込む  詰めるように入れる
溶 (と) け込む  溶けて、溶けるよう入って行く
連れ込む  連れて入る
流し込む  流して入れる
流れ込む  流れて入 (はい) る
なぐり込む
なだれ込む  なだれのように入 (はい) る
乗り込む  自動詞 (乗り物に)入 (はい) る
逃げ込む
飛び込む、跳びこむ  自動詞 プールに跳んで入 (はい) る
投げ込む  投げ入れる
飲み込む  呑み込む 飲 (呑) んで入れる。慣用的な言い方あがある。呑み込みがいい / わるい
入 (はい) り込む
運び込む  運んである場所に入れる
はめ込む  はめるように入れる まさしく<確かに>、<しっかり(と)入れる
引き込む  引き入れる
吹き込む  風が吹き込む  吹き入ってくる
踏み込む  (地面や床を)踏むようにして入って行く
ほうり込む

混ぜ込む  混ぜ入れる
もぐり込む  もぐって、もぐるようにして入 (はい) る
持ち込む  持って入る
呼び込む   呼び入れる
割り込む  自動詞  割って、押しのけて入 (はい) る
 
だが例外もある。

隠れ込む
ころがり込む  自動詞 ころがって入って来る
忍び込む  自動詞  忍んで、人にわからないように入 (はい)る
舞い込む   自動詞 踊って入 (はい)る、入って来る、ではない。雪が舞うように、ひらひらと、入って来る。
紛 (まぎ) れ込む   自動詞
混ざり込む  自動詞
迷い込む   自動詞

2)さらに、少し注意してチェックしてみると、<xxして>、<xxしながら>ではなく<入ってから、xxする>になるものがある。

聞き込む  聞き込み 、聞き込み調査、入 (はい) って行って聞く
切り込む  切って(はい)るではない。切りながら入(はい)る、場合もあるが、入ってから切る、(たくさん)切る, 切り殺す
あばれ込む  あばれて入(はい)るではない。あばれながら入(はい)る、場合もあるが、入ってからあばれる、あばれまわる。
なぐり込む  なぐって入(はい)るで、なぐりがら入(はい)る場合もあるが、入ってからなぐる、なぐりまわる。

 
だがまだまだこれだけではない。
 
3)特に<むりやり(に)、to force to do something>といった強調のグループがある。

よい例は<買い込む>と<売り込む>。

 <買い込む>は<買い入れる>、<買い入れて、限られた場所にためておく>といった意味だ。

一方<売り込む>は<入れる、in) > の意は全くない。<むりやり(に)>強調で、<入れる、入 (はい) る、in) >の意味がないもの、薄いもので、<売り込む>以外では

閉じ込める
割り込む

がある。<むりやり(に)>といった強調のグループとも言えよう。だが、どうもそれだけではなさそう。まだまだあるのだ。

<込む>、<xx込む>、<込める>、<xx込める>は基本的には<入る>、<入れる>)、英語の<in>、<into, in to>の意味がある。

と書いたが、さらに

4)<限られた場所<の中に入れる、入れておく、入れてとどめておく>のグループがある。上の例と重複するものがある(これは重要)言葉はある特定の意味に限定されるとは限らない場合が往々にしてある

集め込む
追い込む
押し込む
押し込める
覚え込む 
 
抱 (かか) え込む
隠 (かく) し込む

しまい込む
住み込む
 
たたみ込む
ため (貯め、溜め) 込む
包み込む
閉じ込める   閉じこもる
泊まり込む
取り込む   取り込み中  <お取込み中のところ>という言い方がある。
 
迷い込む
まるめ込む
もぐり込む

似たような動詞に<籠 (こも) る>、<籠 (こ) める>がり、これに似た意味 (限られた場所の中にとどまる、とどめる) の意のものがある。

言い込める(籠める)  言って相手をカゴ、オリの中に入れておく、といった意味か。
引き籠る
やり籠める  <言い込める(籠める)>に似ている。
 
さらに、これと関連するが
 
5)<中に、in>の意がなく、あるいは薄く<限られた場所、状態にとどまる>の意味のグループがある。
 
上がり込む
思い込む
老い込む
考え込む
決め込む
狂い込む
くわえ込む
しゃがみ込む
絞 (しぼ) り込む
すまし込む
座り込む
黙り込む
話しこむ
寝込む
眠り込む
狙 (ねら) い込む
ふさぎ込む
へたり込む
ぼけ込む
ほれ込む
めかし込む
休み込む
弱り込む
 

まだ漏れているものが少なくない。


当て込む
打ち込む  打者が打ち込む
描き込む
送り込む

気負い込む
聞き込む   聞き込み
食い込む 

締 (しめ) め込む
すべり込む
刷り込む
ずれ込む
背負い込む
染め込む
 
頼み込む
倒れ込む
立ち込める  霧が立ち込める。<立ち込める>は自動詞
立て込む  自動詞  家が立て込む。
たれ込む  自動詞 / 他動詞
使い込む
突き込む  突っ込む
つけ込む  つけ入 (い) る
漬け込む
つり込む  釣り込む  つりこまれる

投げ込む  投げ入れる。 投手が投げ込む
なすり込む
煮込む
塗り込む
のめり込む  自動詞

運び込む
挟 (はさ) み込む
走り込む  急いで走り込む、 陸上選手が走り込む
払い込む
はたき込む  はたき込み(相撲)
張り込む  自動詞  張り込み
へこむ(凹む)、へっこむ  自動詞  <減り込む>が元の意か?
振り込む
彫りこむ
 
まわり込む
磨 (みが) き込む
見込む
めり込む
申し込む  申し入れる
盛り込む


以上のうち

打ち込む  打者が打ち込む
探し込む
仕込む
締 (しめ) め込む
調べ込む
染め込む
使い込む  <すっかり使う>の意味。<公金を使い込む>は少し違う。
投げ込む  投げ入れる。 投手が投げ込む
煮込む
走り込む  急いで走り込む、 陸上選手が走り込む
彫りこむ

6)<込む>の汎用用法 ー <十分 (に) ) xxする

これは意味が成り立てばいくらでもある。どんどん見つかり収拾がつかなくなる。

教え込む
鍛 (きた) え込む
覚え込む

など<十分xxする>で否定の場合は<xx込みが足りない>が一種のリトマス試験紙。意味が通れば、いくらでもある。これは<xx (し) 出す>が<xx(し) 始める>になるのに相当する。

教え込みが足りない
覚えみが足りない
鍛 (きた) 込みが足りない
 
上の例でいえば
 
打ち込む  打ち込みが足りない
切り込む  切り込みが足りない
探 (さが) し込む  探 し込みが足りない
仕込む   仕込みが足りない
締め込む  締め込みが足りない
調べ込む   調べ込みがたりない
染め込む  染め込みが足りない
使い込む  <しっかり使う>の意味。使い込みが足りない
突っ込む  原意は<突きこむ>だが、上記の<探 し込みが足りない>、<調べ込みがたりない>は<つっこみ>(掘り下げ)が足りないのだ。
漬け込む  漬け込みが足りない
投げ込む  投げ込みが足りない
煮込む   煮込みが足りない
塗り込む  塗り込みが足りない
走り込む  陸上選手が走り込む  走り込みが足りない
彫りこむ  彫り込みが足りない 
磨 (みが) き込む  磨 (みが) き込みが足りない
 
上で<ほれ込む>が出てきたが<愛したりない>という歌の文句があった。
 
なじみのある家事、料理関係でいえば

あぶり込む 十分 (に) あぶる
炒め込む  十分炒める
切り込む  十分切りきざむ
たたき込む  十分たたく
溶かす   十分溶かす
練り込む  十分練る
煮込む  十分煮る
浸 (ひた) しこむ  十分浸す
冷やし込む   十分冷やす
混ぜ込む  十分混ぜる
蒸しこむ   十分煮る
もみ込む  十分煮る
ゆで込む  十分ゆでる

洗い込む  十分洗う
ゆすぎこむ  十分ゆすぐ
すすぎ込む  十分すすぐ
拭き込む  十分拭いてきれいにする
 
 
さて残るは

当て込む
描き込む
送り込む
気負い込む
聞き込む   聞き込み
食い込む
消し込む

進み込む
すべり込む
刷り込む
ずれ込む

倒れ込む
立ち込める  霧が立ち込める。<立ち込める>は自動詞
立て込む  自動詞  家が立て込む。
たれ込む  自動詞 / 他動詞
つけ込む  つけ入 (い) る
とっち込める

なすり込む
のめり込む  自動詞

挟 (はさ) み込む
払い込む
はたき込む  はたき込み(相撲)
張り込む  自動詞  張り込み
へこむ(凹む)、へっこむ  自動詞
振り込む
ほめ込む
 
まわり込む
見込む
めり込む
申し込む  申し入れる
盛り込む

 

当て込む ー 予想する  当たるように思いを込める。<思い込む>、<決め込む>と似たようなところがある、確定度が低いので、<限られた場所、状態にとどまる>の意味のグループに入れなかったが、<思い込む>、<決め込む>も確定度がそれほど高いわけではない。

描き込む  絵画では、例えば、細かいところまで描き込む。感情が描き込まれている。これは小説でもいい。この<込む>は<しっかりと>、<念いりに>といった意味だ。

送り込む - 送ってある場所に入れる、で<かつぎ込む>、<運び込む>に似ている。

しかし、軍隊、援軍、救助隊を<送り込む>で、送り先の場所が広いので<xxの中に>はおかしい。また、<送り先>よりも<<送り元>に重点が置かれている。

気負い込む ー 気を入れ込む、気を入れる、気合を入れる

聞き込む  ー <聞き入れる>ではない。<耳に聞こえ入 (はい) る 。または<聞くためにどこそこに入り込む>。<聞き込み>のため歩き回る。

消し込む  ー これは<しっかり、十分に消す>でもいいが、どうもそれだけではなさそう。<消すと>(隠し込む、隠れ込むわけではないが)見えなくなる。<消し込む>と見えなくなる。この<込む>には<隠し込む、隠れ込む>のいがあるのではないか。

進み込む ー <送り込む>に似たようなよころがある、ある場所の中に入 (はい) る 場合るが、ある場所に近づくように進んでいく。<進み出る>は明らかに<出る>に目が向いている。

すべり込む - 野球用語では、すべってベースのある場所に入 (はい) る、ベースにさわる。慣用用法がある。<すべり込む>でなんとか、ぎりぎりで<やりとげる>。これは<すべり込みセーフ>の意だろう。

刷り込む ー 印刷や版画では紙を<擦 (す) って>インクを紙に入り込ませる。 擦り込む。

ずれ込む - これは難しい。<ずれる>は<すれる、擦れる>由来で、<本来の位置から少し外れる>の意。<込む>は強調だろう。<強調>は文法上曖昧な言葉で使わない方がいい。上で書いたが

<限られた場所、状態にとどまる>の意味のグループがある。これを当てはめる (はめ込む) と<本来の位置から少し外れた状態のままでいる>の意。

倒れ込む -これは難しい。しいて探せば、すぐ上の<限られた場所、状態にとどまる>の意味のグループで、これを当てはめると<倒れた状態のままでいる>の意。あるいは単純に<倒れて来る、倒れて行く>。

立ち込める  霧が立ち込める。

この<立つ> は<おこる、おきる、起きる>。<風立ちぬ>というのがある。<こめる>は<いっぱいになる>で<込む>というよりは<混む>。また<立ち込めた状態>がしばらく続くので<限られた場所、状態にとどまる>の意味のグループにはいるか。

立て込む  自動詞  家が立て込む。この<込む>も<混む>だ。電車やバスは人がたくさん入 (はい) り込むと<混んで>くる。

たれ込む  自動詞 / 他動詞

これはあまり使ったことがないが、<密告する>ことのようだ。

今回の社長交代は副社長が会長にたれ込んだためだ。 

<たれこむ>の<たれ>は<垂れる>で自動詞。他動詞は<垂らす>。水滴がたれる。

<たれこむ>は文字通りでは<たれて入 (はい) る>、<たらしこむ>は<たらして入れる>だが<たれこむ>は他動詞的になり、

今回の社長交代は副社長が社長の巨額にの公金私用を会長にたれ込んだためだ。

でもよさそう。

つけ込む  <漬け込む>とは違う。弱みにつけ込む

<つけこむ>はコンピュータでは<付け込む>と出くる。だが<付けて入(はい) る>は意味不明。<つけ入 (い) る>もほぼ同じような意味だ。<つけ込む>の方が簡潔だ。いづれも語源不詳のようだ。大胆に解釈すれば<つかみ込む>。<(弱みを)つかんでやりこめる>。

とっち込める  口語、関東方言か? <とっち>は(取って>。<取って>は<取りて>で<取って込める>になる。<取り込む>がある。意味は<取り入れる>だが、<取り入れて、外に出さない>語感がある。したがって、<閉じ込める>の意にもなる。<とっち込める>は<閉じ込めて>さらに制裁を加えるの意がある。公開の場合は<とっち込める>と言わないだろう。

なすり込む -<なする>は<擦る>で、<擦り込む>。<なすりつける>ともいう。文字通りでは、<(膏薬、軟膏を肌に)すりこむ、すってしみこませる >。英語で何というかというと、to apply ointment。初めて聞いたときは少し驚きがあった。<なすり込む> 慣用的には<責任をなすりつける>などという。

のめり込む  ー<のめる>は<体が前に倒れる>、関東方言で<つんのめる>というのがある。<のめり込む>は、ネット辞書では


前に倒れるようにしてはいり込む。 また、無遠慮にはいり込む。 ② ある状況・環境・考えの中に、抜け出せなくなるほどすっぽりとはいり込む。

上で<倒れ込む>というのがあった。

② の意味はどのようにして出てきたのか。<つんのめる>は瞬間的な体の動き。<すっぽりとはいり込む>は継続的な状態だ。<込む>にこの働きがある。上で<xxこむ>に

限られた場所、状態にとどまる>の意味のグループがある。

 と書いた。<倒れ込む>の方はそれほど長い時間ではない。

 <のめる><体が前に倒れる>の反対<体が後ろに倒れる(体を後ろに倒す)>は<のけぞる>か。<のけぞる>の<のけ>は<のける、除ける、退ける>ではない。<のけぞる>はコンピュータ出は<仰け反る>と出てくる。<仰け>は<仰ぐ>で<のけ>とは関係ない当て字。体の動きとしては<のる>というのがあり、身を<のり出す>の<のる>。<のけ>はこの<のる>と関係があるのではないか。

挟 (はさ) み込む 

戦闘場面を想像すると、敵を前後、あるいは左右の両方向から追い込んで、逃げ場所を狭め、狭い場所に<込めて> 動きを封じる。封じ込める。<封じる>はやまとことばではなく、漢語由来。

払い込む ー <払う>は<金>を払うとは限らないが、この場合は<金>。<金を送る>で、<込む>があると<受け取る>確かな感じがする。上の<送り込む>参照。また後から出て来る<振り込む>も参照。

はたき込む  はたき込み(相撲)  はたいて土俵にのめり込ませる。

張り込む 自動詞 張り込み  警察用語のようで、あり特定の場所に張りついて犯人や容疑者が出て来るのを待つこと。他動詞では<大金を張り込む>いうのがあり<大金を一気に出す、使う>の意がある。<込める>=<いれる>の意はないが、<一気に注ぎ込む>感じだ。

へこむ(凹む)、へっこむ  自動詞

<へこむ>は<へ込む>でよさそうだが、この<へ>がよくわからない。<へっこむ>が<へこむ>の方言、または<へこむ>の由来。だが逆に<へこむ>が<へっこむ>由来とすれば、もともとは<減り込む>。また<引っ込む>由来で、<へっこむ>はなまりとすれは<引き込む>だ。

振り込む  現代用語では支払方法。金を振り込む。<振る>は<ちり、邪魔もの>を<振って払いのける>の<振る>で<振る>と身から離れていくが、行き先は特定されていて<振込込み先>になる。また、麻雀用語に<振り込む>というのがある。

ほめ込む  この<込む>に<中に>の意がない。<十分にほめる>以上のもにがあるので<十二分にほめる>。ほめあげる、ほめちぎる、は十二分以上か。

見込む ーこれは上で出てきた<当て込む>(思い込む、決め込む)のグループと言える。<見込む>、<見込み>は一般社会、特に売り上げ、利益重視の一般的な会社では、重要な働きをする。販売部門では<販売計画、販売予想>、生産部門では<生産計画>が重要で、これに振り回されるが、やまとことばでは<見込み>や<もくろみ>、さらには<当て込み>、<思い込み>、決め込み>で、当てにならない代物だ。

めり込む ー <のめり込む>とは別物。ネット辞書では


めり‐こ・む【▽減り込む】
[動マ五(四)]押されるなどしてはまり込む。また、重みなどで沈むようにへこむ。「足が泥に—・む」「パンチが腹に—・む」
 
” 
<減り込む>は<読めば<へり込む>で<めり込む>と読む人はいないだろ。解説が正しければ、意味を取った<当て字>だ。また<へこむ>は、上記のように、<へりこむ>由来としておく。<めり込む>の<める>の語源は、ある語源解説によると
 

「めりはり」とは、(中略)
結論からいえば、これは日本の古い音楽用語です。「めり」は音声などが下がる・ゆるくなること、「はり」は逆に調子が上がる・張ることだそうです。
 http://www.asahi-net.or.jp/~qm4h-iim/k980722.htm
 
” 
 
申し込む  <申し入れる>。もとは

意志希望要求などを相手方伝える。「抗議を—・む」「結婚を—・む」「試合を—・む」

 https://www.weblio.jp/content/%E7%94%B3%E3%81%97%E8%BE%BC%E3%82%80

の意があったようだが 、以上は<申し出る>で言い換えられ、<申し入れる>ではない。

今は大体は漢語の<応募する、募集に応じる>相当。この<申し込む>の場合、<申す>に<言う>の意味はない。<込む>があると受け手が確かな者となる。申し入れる、申し立てる、申し述べるには<言う>の意がある。
 
盛り込む  これはやや難しい。<しっかりと>、<念いりに>といった意味でもいいが、それだけではない。その他の多くの<込む>と違うところは、たとえば、
 
いろいろなものを皿に盛り込む
 
は皿の中にではなく、皿の上に盛ることで、<xxの中に入 (はい) り込む、込める> わけにはいかない。上で
 
描き込む  絵画では、例えば、細かいところまで描き込む。感情が描き込まれている。これは小説でもいい。この<込む>は<しっかりと>、<念いりに>といった意味だ。
 
と書いたが、これに似ている。だが、これは<絵の中に、小説の中に>描く。
 

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<xx きる (切る) >の複合動詞

 複合動詞<xx きる (切る) ><きる>は<込む>、<込める>に似て多義語だ。アイウエオ順に並べてみる。

開 (あ) けきる
あきらめきる
集めきる
歩ききる
言いきる   自動詞 / 他動詞  xxと言い切る(自、理由を言い切る(他)
入 (い) れきる  容器が小さくて入れきれない
打ち切る   これで<打ちきり>。これで終わり。<打って切る>の意はない。多分<打って切り離す>。
裏切 (ぎ) る  これは<切る>の意がある。刀で<切る>。<切り離す>
売りきる  売りきれる
選びきる
泳ぎ切る  1000メートルを泳ぎきる
押しきる  押しきり(相撲) <押して切る>はおかしい。ノコギリ(鋸) は押したり、引いたりして<切る>。
思い切る  (未練を残さず)思いを切る、切り離す

買いきる
書ききる
貸しきる  貸しきりバス
語りきる
くたばりきる
暮 (く) れきる   日が暮れる
壊 (こわ) しきる

差しきる   競馬用語  <刺して切る>はおかしい
xxしきる (仕きる)
締 (し) めきる  投稿、投票の<締めきり(閉めきり)>
閉めきる   まどを閉め切る、 <ー> 開けきる
済ましきる  制限時間前に済ましきる。別物で<すましきった顔、態度>というのがある。これは<澄む>由来か?
捨てきる   未練があって捨てきれない
擦 (す) りきれる(切れる)

たたききる   <たたいて切る>ことはできるが(肉など)、何かおかしい
食べきる
ち切る、引きち切る
縮 (ちぢ) みきる    洗濯のあと服が縮みきっている。恐ろしさで (身が、体が) 縮みきっている。縮み上がる。
疲れきる
取りきる 

流しきる
投げきる    投手が9回を投げきる。
なめきる    はちみつをなめきる。<なめる>、<なめきる>は慣用用法がある。なめたまね、なめきったまねをする(態度をとる)。
伸ばしきる
伸びきる
昇りきる   階段を昇りきる。日が昇りきる。
飲みきる

入 (はい) りきる   狭くて入りきれない
はさみ切る   はさみで<切る>とは限らない。
運びきる
張り切る
走りきる   マラソン (42キロメートル) を走り切る
引ききる  <引いて切る>もおかしい  ひっきりなし
広がりきる / 広げきる
振りきる  <切る>は<離す、切り離す>の意味だ。

曲げきる
磨ききる  磨き上げる
見切る   見切りをつける。<見切る>の<切る>は to cut の意がある。<見て切る>ではなく<見るのを途中で切る、やめる>
乱れきる

焼き切る   焼いて切る
やつれきる
やりきる
弛 (ゆる) みきる  締めたねじがゆるみきっている。
読みきる
寄りきる  寄りきり(相撲)
弱りきる

忘れきる
割り切る   <割る>と<切る>は別物だ。これは<割って切り離す>

 

分類してみると

1)物理的な<切る、to cut>の意味。この意味の語はきわめて少ない。

2)<切り離す (切って離す) >の意

3)すっかり<xxする>

4)最後まで(しっかり)する、やる。済ませる、終わらせる

 

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Tuesday, November 5, 2024

<仕事に打ち込む>は自動詞、他動詞?

最近<込む>、<込める>をかなり念入りに調べているが、<打ち込む>という言い方がある。

1)釘を打ち込む
2)打者が打ち込む
3)仕事に打ち込む

1)釘を打ち込む

は原意に近く、<xxの中にxxを打って入れる> 、<xxを打って中に入れる>

釘を木に打ち込む

<込む>自体は自動詞。他動詞は<込める>。<打ち込む>は他動詞。<打つ>は複合動詞<打ち込む>の意味の主動詞で、<打つ>は他動詞。<込む>は複合動詞<打ち込む>の副動詞といえ、<副詞>的な働き。意味としては<入 (はい) る、入れる、in、 into)。

2)打者が打ち込む

この<込む>は<込む>の代表的な慣用用法の一つで、<十分 (に) xxする>の意。これは、意味が成り立てば、いわばいくらでもある。

教え込む
覚え込む
鍛 (きた) え込む
切りきざみ込む
探 (さが) し込む
仕込む
締め込む
調べ込む
染め込む
使い込む  <しっかり使う>の意味。使い込みが足りない
突き込む  <突っ込む、つっこむ>原意は<突きこむ>だが、上記の<探 し込みが足りない>、<調べ込みがたりない>は<つっこみ>(掘り下げ)が足りないのだ。
漬け込む
投げ込む  投手が投げ込む
煮込む   
塗り込む  
走り込む  陸上選手が走り込む
磨 (みが) き込む

ーーーーー

打ち込む

打ち込む  打者が打ち込む
投げ込む  投手が投げ込む 

は少しやっかいで

バットでボールを打ち込む
ボールを投げ込む

なら、特に一場面に限ると、確かに他動詞といえるが

打者が、なっとくいくまで、打ち込む
投手が、しっかりと、十分に投げ込む 

とすると<他動詞感>が薄くなるようだ。だが、他動詞としておく。

<走り込む>の<走る>は<xxを走る>とは言えないので自動詞(*)。<走り込む>も自動詞となる。一方

(*)運動場、トラックを走るは、いわゆる”<を>を取る自動詞”としておく。

 <走り込む>の<走る>は自動詞で主動詞。副動詞の<込む>も単独では自動詞。<自動詞+自動詞>の<走り込む>は自動詞で問題ない。 <トラックを走り込む >とすると2)の<十分 (に) xxする>の意になる。”<を>を取る自動詞” で問題ないだろう。

さて

3)仕事に打ち込む

だが、少しやっかい。

 字面上<仕事に打ち込む>は、<xxを>がない、<を>をとれないので自動詞。

<仕事に打ち込む>は意味的には他動詞的だ。解釈は異なるものがいくつかあるかもしれないが、

<わが身を仕事に打ち込む>の<わが身、oneself>が省略されたものとみなす解釈。この<みなす解釈 (みなし解釈) >は重要で、他に応用できるのではないか。

たとえば

入れ込む  他動詞  玉を籠 (かご) に入れ込む。 自動詞 あの馬は入れ込んでいる。そう入れ込まないで落ち着け。<わが身を入れ込む>で隠れた他動詞。


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