Tuesday, June 11, 2013

文法上の定、不定、指定、限定、修飾


定、不定、限定、指定は文法上の基本的かつ大きな問題だが、あまり深くあるいは広範囲に論議されない。日本語文法では助詞<が>と<は>の違いにほぼ必ず登場するが、そのほかではほとんど目にかからない。これは分析が難しいからではないか?あえて試みる。

顕著(よく目に見える)な例は欧州語の定冠詞、不定冠詞の使い分けだ。日本語に冠詞がない(対応する語がない)ため ”直訳” は日本語らしくなくなり、説明が必要になってくる。

A classroom of one of the buildings of the school
その学校のいくつかの建物(校舎)のひとつの中にあるひとつの教室
学校の建物のひとつの中の教室

<説明>
この場合、学校といくつかの建物(校舎)は<話し手>、<聞き手>とも了解しているモノである(the が付いている)のに対し教室は初めて言及されるモノだ(a が付いている)。<ひとつ>は one のことだが、これは<ひとつの建物(校舎)>のこと(the は付いていない)。これを言い換えると、学校、いくつかの建物(校舎)は<定>でひとつの建物(校舎)、教室く不定>なのだ。

この説明も日本語の中では この冠詞にまつわる<定>と不定>の(観念的)区分がないので内容の理解度は人によってかなり違うだろう。

さて、言語世界(文法学の対象)が <定>とく不定>に明確に二分されると分析が少しは容易になるかもしれないが、どうもそうではないらしい。

文法上指示詞というのがある。英語では this、that、日本語ではこ(これ、この)、そ(それ、その)、あ(あれ、あの)。

this - これ、この
that - それ、その;あれ、あの

英語では指示形容(限定、修飾)語(この、その、あの)と指示代名詞(これ、それ、あれ)の区別がなくどちらも this、that ですましてしまう。また<それ、その>と<あれ、あの>の区別がない。日本語に冠詞、特に定冠詞 the がないのと対照的に英語はこの辺(指示詞)は日本語に比べ簡単だ。ラテン語に定冠詞がないこと(日本語と同じように指示詞で間に合わす)、また英語の定冠詞 the が 指示詞の that 由来の語だということを考えるとこの辺は指示詞、冠詞の進化(または退化)の度合い、方向の違いとみることができよう。

<定>とく不定>に明確に二分されいないとすると、何があるのかというと、 <定>とく不定>の中間にあるものだ。<定>でもなくく不定>でもない世界だ。これは難しい。ロジック的にみると、

not <定>= く不定>ではない。

this - これ、この、that - それ、その;あれ、あの、は<定>か<不定>か?

日本語の<こそあど>の<ど>は<どの>、<どれ>、<どこ>として使われるが、これらは指示疑問詞で、明らかに<不定>だ。一方<なに>、<なにの(なんの)>特に指示的な要素のない疑問詞で、もちろん<不定>だ。

それでは(繰り返しになるが)、

this - これ、この、that - それ、その;あれ、あの、は<定>か<不定>か?

英語の定冠詞 the が指示詞の that 由来ということから、どうも<定>のようだ。しかし、<指定(された)>(specified)ではなく<指示>(demonstrative)という表現が使われていることから、具体的には指で、あるいは心理的に<ある>モノ、コトを指し示しているの意がある。specified ではなく specifying であれば demonstrative に近くなる。モノ、コトは指示状況では、指示されることによって限定はされているがまだ決されていないといえる。しかし、これらは<不定>ではない。限りなくではないがある程度<定>に近いモノ、コトのようだ。

日本語では

< これ、この>はかなり<定>に近い。
<それ、その>も<定>に近いが、 <これ、この>ほどではない。
< あれ、あの>は<定>の度合いが薄くなる。

のではないか。

英語の the は普通<その>と訳される。

一部の英文法(Oxford 英漢辞典)では文法用語に限定詞(determiner)というのがあり、前回のポストで取り上げた such は限定詞(限定用法の場合、その他に代名詞用法がある)。 such はちょっと変わった語だ(前回のポスト参照)。一部前回のポストの繰り返しになるが

such a thing そのような(そんな)モノ 

普通このように日本語に訳すが、不定冠詞の a  が such の後ろにくる。さらに定冠詞の the は普通<その>と訳されるが、定冠詞の the では絶対ダメ。いったい such は何なのだ。

<その>は指示詞(限定、修飾用法)。指で、あるいは心理的に指し示されているモノ、コトだ。まだ<定>になっていない。<ような>はこの場合<類似>を表している。したがって

such a thing そのような(そんな)モノ 

はかなり不定度が高いと言える。

a thing same as that  それと同じモノ 

same(同じ)が使われているが、thing、モノは不定だ。a thing と不定冠詞がある。

それでは

the same thing as that  それと同じモノ (日本語は変化なし)

これはどうjか? 英語は the があるので<定>、日本語は上の例と同じなので不定ということになる。厳密に考えると、英文には as があり、<それと同じようなモノ>が厳密なな訳だ。こうなると明らかにモノ(thing)は不定だ。the same の the は習慣的用法といえよう。

<そのようなモノ、コト>、<xxのようなモノ、コト>という表現は<その>や具体的な<xx>に引きずられて<定>とみなされがちだが、<ような>の意味からして、不定のモノ、コトだ、

文法用語上からは、モノ、コトは指示、指定、限定、形容、修飾されていてもたいていは<不定>と言えよう。

なお、<修飾語>は日本語文法で使用されるが、指示詞(語)、指定語、限定語、形容詞(語)をすべて含む一般化された文法用語で、これはもっと強調されるべきだ。修飾語には指示詞(語)、指定語、限定語、形容詞(語)、副詞(動詞、形容詞を修飾)、英語文法の冠詞、過去分詞/現在分詞の形容詞(修飾)的用法がある。


sptt












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