断定、指定の助動詞<だ>とされているが、いろいろ議論があるようだ。少し調べてみてもおかしいところがかなりある。よく調べるとわけがわからなくなる。
Japan wiki (04-June-2013) - 助動詞
体言助詞 | 断定 | だ | だろ | だっ で |
だ | な | なら | ○ | 形容動詞型 | 体言と一部の助詞に接続する。 |
丁寧な断定 | です | でしょ | でし | です | です | ○ | ○ | 特殊型 | 体言と一部の助詞に接続する。 |
1)まづ接続だが、<だ>は名詞(体言)につき、動詞や形容詞や他の助動詞(用言)にはつかない。
今日は日曜日だ。
太郎は男だ。
<太郎が来るだ。 >はダメで(注1)、<太郎が来るのだ。 >、<太郎が来るということだ。>となる。<来る>は動詞。
<美しいだ。> はダメ。<美しい>は形容詞。<きれい(綺麗)だ>は形容動詞の終止形あつかいだが、あきらかに<綺麗>(体言)+断定、指定の助動詞<だ>でよさそう。
<花子が来るらしいだ。> 、<次郎が来ただ。>はダメ。<らしい>、<た>は助動詞。一方英語の助動詞は名詞(体言)の前にはつかず、必ず動詞の前に来る(平叙文の場合)。<だ>は英語の助動詞とはかけ離れている。
You can do it.
You may have heard it.
He will come.
She must do it. She should go. (She need to to. She need it. の<need>助動詞ではない。(注2)
2)語尾変化
<だ>、<だろ>、<だっ>、<で>、<だ> と<な>、<なら>(<da、de>と<na>)を同じ語の語尾変化とは考えにくい。<な>、<なら>は古語、文語の<なり>由来だ。
3)断定、指定の意味
この場合の断定、指定の定義はきわめて難しい。
<今日が日曜日>、<今日は日曜日>が断定、指定ではなく<今日が日曜日だ>、<今日は日曜日だ>が断定、指定とはまずいえない。<xx なのだ>とすると断定、指定度合いが強まる。
断定と指定の違いも難しい。<が>を使った<今日が日曜日>、<太郎が男>、<AがB>が断定ぎみ、<は>を使った<今日は日曜日>、<太郎は男>,<AはB>が指定ぎみといった程度の違いだ。<が>はデキゴトの叙述、<は>はモノゴトの説明に用いられ場合が多いと一般的に言える、のと関連があろう。ここでは話を簡単にするため<だ>を思い切って大和言葉の<定める>、<定めの>助動詞としてみる。<定める>はここでは英語の to identify に近い意味だが、自己同一化ではなく、一対一の対応を定めるといった意味。 (注3)
以上3点からして、<だ>が断定、指定の助動詞だというのはかなりあやしい。
4)語源
<だ>は比較的新しい語のようだ。古語、あるいは文語は<なり>だ。<なり>は<行くなり>、<するなり>、<美しいなり>、<赤いなり>と動詞 、形容詞につき、<静かなり>の<なり>は形容動詞(の終止形)あつかい。<今日が日曜日なり>、<太郎は男なり>で名詞(体言)にもつく。
さて<だ>の語源だが、これは<で+ある>だろう。de + aru --> dea + (ru) -->da という変化だ。<で+ある>の意味は<なり>の意味とほぼ同じとみていい。(時間と興味のあるひとは<だ>の語源を調べてみてください)。
ここで、 三省堂の新明解国語辞典に登場していただく。
新明解の<だ>の解説は
”
助動詞。その事柄を指定(断定)する主体の判断を示す。
”
とある。相当簡単だ。一方<なり>の解説は
”
雅語。助動詞。ある状態について、それが存在するという判断を表す。
”
とある。簡単だが、意味ありげで、哲学的でもある。<だ>の説明より明らかにいい。<ある状態について、それが存在するという判断を表す>に近い解説は以前のポスト”日本語<有(あ)る>は自動詞、英語<to have >、中国語<有>は他動詞”のなかで、同じ新明解の<ある>の解説を引用して次のように書いた。
””
さて、モノ、コトの認識の<存在>をあらわす方法だが、英語、中国語では他動詞の <to have>、<有>だ。<存在>の認識も認識は認識なのだ。これに対し日本語は<ある>を使う。<有る>と漢字を使っても、<ある>は<ある>で、これは自動詞。
また繰り返しになるが、
”
<有る>は<モノ、コトの存在を感じること>をあらわす動詞ということになる。
”
<感じる>は<あるモノ、コトを認識した後にそれを心理的に持つこと>に相当する。この<持つこと>をあらわそうとすれば、<持つ>という意味の動詞を使うのは自然なことだ。これが英語、中国語で<to have>、<有>が使われるようになった原因、理由だろう。
もう一度三省堂国語辞典の今度は<有る>の解説を見てみよう。
”
<有る>
1)見聞きしたり、感じたり、考えたり、などすることによって、その物事が認められる(状態を保つ)
2)そなわっていることが認められる(状態を保つ)
3)おこなわれる(はずだ)
””
話は新明解の<なり>の解説にもどって、
”
雅語。助動詞。ある状態について、それが存在するという判断を表す。
”
上述したように<判断>(断定に近い)という語が必ずしも最適とは思えないが、まあいいとして<ある状態について、それが存在するという判断を表す>という内容はまさしく<で+ある>に相当する。したがって、語源のチェックはしていないが、<だ>=<で+ある>と見ていいだろう。
<なり>の語源だが、動詞<なる>(to become) も関係あろうが、<なり>の語源は<だ>と同じように<に>+<あり>。 ni + aru --> nia + (ru) -->na + ru --> nari という変化だろう。に>+<あり>の意味はこれまたまさしく<ある状態について、それが存在するという判断を表す>。
<で>+<ある>、<に>+<ある>の<で>と<に>は格助詞だ。いくつかの格をとるが主要な格は奪格(ラテン語文法)。 奪格自体長い変化の歴史があるが、奪格の機能は近代欧州語では前置詞に換わられており、英語の at、on、in (場所、様態)、 with、by (手段、方法)、そして本来の out of、from(奪)を表す。<で>と<に>は様態を示す奪格助詞ということになる。<様態を示す奪格助詞>で具合がわるければ<様態格>、<副詞格>というのを作ったらどうか。
助動詞<だ>と同じような活用(d-n の混合)をする次のような助動詞がある。
Japan wiki (04-June-2013) - 助動詞
様態 | そうだ | そうだろ | そうだっ そうで そうに | そうだ | そうな | そうなら | ○ | 形容動詞型 |
伝聞 | そうだ | ○ | そうで | そうだ | ○ | ○ | ○ | 形容動詞型 | ||
比況 例示 推定 | ようだ | ようだろ | ようだっ ようで ように | ようだ | ような | ようなら | ○ | 形容動詞型 |
いづれも 意味内容は非断定、非指定だ。
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(注1)<太郎が来るだ。 >はダメで
このような変な日本語は時々聞く。
例1)サザエさん漫画(テレビ)ではサザエの子(小さい子)が、<来るです>、<するです>と言っていたようだ。擬似幼児語か?
例2) テレビや翻訳の喜劇で田舎モノを表現するのに不特定方言として<来るだ>、<行くだ>といのを聞いたり読んだりしたことがある。擬似方言か?
例3)そこそこ日本語ができる頭のいい中国人が推理(類推)を働かせて<来るですから>、<するですから>といった言い方を何度か聞いたことがある。
(注2) http://www.thefreedictionary.com/need
Usage Note: Depending on the sense, the verb need behaves sometimes like an auxiliary verb (such as can or may) and sometimes like a main verb (such as want or try). When used as a main verb, need agrees with its subject, takes to before the verb following it, and combines with do in questions, negations, and certain other constructions: He needs to go. Does he need to go so soon? He doesn't need to go. When used as an auxiliary verb, need does not agree with its subject, does not take to before the verb following it, and does not combine with do: He needn't go. Need he go so soon? The auxiliary forms of need are used primarily in present-tense questions, negations, and conditional clauses. Unlike can and may, auxiliary need has no form for the past tense like could and might.
(注3)
(注)で書き加えるといった重要度の低いことではないが(詳しくは別途検討予定)、断定、指定に似通った<定>のつく語はけっこうある。確定、規定、決定、定義、判定、(さらには意味はやや限定されるが、評定、約定、固定、そして限定)などは断定、指定を大きな間違いなしで置き換えることができる。(意味はやや限定されるが、評定、約定、固定、そして限定がある。) ということは、<断定、指定の助動詞>という言い方は、かなり曖昧ということになる。<定>にこだわれば、肯定(.....である)、否定(.....(で)ない)、未定(まだ.....(で)ない)がある。<ない>は否定(打ち消し)の助動詞。さらには仮定、推定、想定、予定、暫定があり、仮定は仮定形というのがあうが、<らしい>は推定(推量)の助動詞。想定は仮定に近い。予定(だ、する)は英語の助動詞 will に近い。暫定はやや込み入っており<とりあえず.....しておく>という言う意味だ。仮定、推定、想定、予定は<定>の字が使われているが文法的な意味での<定>ではない。<仮定法>や英語にはないが他の欧米語のある<接続法>の世界だ。
sptt
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