Friday, September 1, 2023

中国語と日本語の時制表現 ー2 <下雨了>,<雨だ>の文法分析

 

<下雨了>,<雨だ> の時制はなにか。

<下雨了>,<雨だ>はいずれも街で突然、にわかに雨が降りだしたときによく耳にする。あえて時制を言えば現在形だろう。中国語の<下雨了>、もっと一般的、中立的な<下雨>自体、日本語とく比べる文法的におもしろい。

下雨 = 雨が降る、雨は降る (この<が>と<は>の違いを説明するのは難しい)

日本語の方は一般に<雨が降る>が使われる。日が出る、月が出る、雲が出る、風が吹くも同じ。主語は雨、<降る>は自動詞で述語になる。英語は変な言い方で、Rain falls. ではなく、It rains. <下雨了>,<雨だ>は It started to rain. か?

下雨 = 雨が降る

の大きな違いは主語と述語がが逆転していることだ。これに気がついたのは耳で聞く中国語の習いたてのころで、中国語は英語と同じで普通は<主語+述語>の語順で、逆転しているのがおもしろいので中国人に聞いてみたが、納得のいく回答は得られなかった。私なりに答えを用意していたので、これは<神が (中国では天が) 雨を降らす=天下雨>と解釈したらどうかと言ったが覚えがある。(注)これは私が住む香港でのことで、広東語では<下雨>ではなく落雨>という。

ある中国語の文法書では<雨>は主語で、語順が逆転したもの、という解説になっている。語順の逆転例はいくつもある。

次は時制だ。

<下雨了>の<了>は普通完了でつかわれるが、この場合<雨が降り始めた>の<始めた>に完了の意があるとする。日本語では<雨が降り始まった>だと完了の意がありそうだがこうは言わない。さらには<雨が降り始まって、今も降り続いている>は英語の現在完了にこの意があり、実際には英語の現在完了はこの意の使い方多い。<雨が降り始まって、今も降り続いている>は時制というよりはアスペクトだ。

 ある中国語の文法書では、この<了>は完了<了>ではなく<発現>、<出現>を表す<了> (語気助詞)という解説だ。個人的には<語気助詞>は文法要素品詞とは言い難いと思っている。一方<語気助詞>がほぼ無意識で間違いなく使えるようになれば、中国語の上級者と言えよう。広東語では<下雨了>は<落雨ウォ―>という。<ウォ―>が語気助詞だが漢字やイントネーションがわからない。

<下雨了>は上記にような状況から<雨だ>以外に

雨が降って来た。
雨が降り出した。
雨が降り出して来た。  

とも言える。そして、<来た>、<出した>は過去、完了、<降って>、<出して>の<て>もこの<た>の連用形だ。さらには<出して>は他動詞<出す>の連用形で自動詞<出る>ではない。<雨が降り出て来た>とは言わない。一番目も<雨が降り来た>とは言わない。相当複雑だ。

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追記(これは読み飛ばしてもいい)

<雨が降る>の<まだ>と<もう>

現在形

まだ雨が降る ー もう雨が降らない
まだ雨は降る ー もう雨は降らない
まだ雨が降らない ー もう雨が降る
まだ雨は降らない ー もう雨は降る

<まだ雨が降らない>を除けば未来にもなる。言いそうにないのがいくつかある。

現在進行形

まだ雨が降っている ー もう雨が降っていない
まだ雨は降っている ー もう雨は降っていない
まだ雨が降っていない ー もう雨が降っている
まだ雨は降っていない ー もう雨は降っている

言いそうにないのがいくつかある。

過去形 / 完了形

まだ雨が降った ー もう雨が降らなかった
まだ雨は降った ー もう雨は降らなかった
まだ雨が降らなかった ー もう雨が降った
まだ雨は降らなかった ー もう雨は降った

これも言いそうにないのがいくつかある。

過去進行形 

まだ雨が降っていた ー もう雨が降っていなかった
まだ雨は降っていた ー もう雨は降っていなかった
まだ雨が降っていなかった ー もう雨が降っていた 
まだ雨は降っていなかった ー もう雨は降っていた

これまた言いそうにないのがいくつかある。

<が>と<は>の違いをチェックしてみる。<が>は大体<発生>、<出現>、<初回出>に使われるが、<まだ>、<もう>の基本文法法則


<まだ>は肯定で使うと継続、残存、存在、<もう>は否定で使うと非継続、(継続の) 終了、不存在、不足示す。

一方<まだ>は否定で使うと未達、未完、不十分、不足、<もう>は肯定で使うと終了、達成、完了、十分、充足を示す。 


を使うと、<まだ>は肯定で使うと<継続>になるので

まだ雨が降る ー まだ雨は降る

では<まだ雨が降る>はおかしい。<発生>、<出現>は一度きりで<継続>はおかしいのだ。<まだ雨は降る>は<今降っていいる雨>が<継続して降る>の意になり問題ない。

昨日から雨が降り続いている。明日もまだ雨は降り続けるだろう。

明日もまだ雨降り続けだろう。

は不自然だ。

<継続>ではなく断続>であれば<発生>、<出現>が継続するので<まだ雨が降る>は可能か。

おととい雨が降った(がやんだ)。昨日も雨が降った(がやんだ)。今は降っていないが<今日もまだ雨が降るだろう>。

 

もう雨が降る
もう雨は降る

<もう>は肯定で使うと終了、達成、完了、十分、充足を示す。   

を使うと、<達成>が適当だが、例文は形は現在形だが意味は近未来だ。近未来の<発生>、<出現>は可能だ。<が>と<は>の違いに不特定、特定の違いというのがある。英語で言えば、<が>は a (an) がつくもの、<は>は the がつくもの、というのがある。


There is a pen on the table.
机の上にペンがある。  ペンは初回出、まだ不特定。

The pen is on the table.
そのペンは机の上にある。  ペンは特定。


もう雨が降る

は中立、一般的な、不特定な雨。 一方

もう雨は降る

はある特定な雨になる。例えば

(期待していた) 雨はもう降る
(いやな) 雨はもう降る 

と言いたいが

(期待していた) 雨もう降る
(いやな) 雨もう降る  

で問題ない。これは達成を示す<もう>が特定、不特定を問わないからか。

<は>でないとダメなのは、たとえば

今日は快晴。昨日の雨はどこへいった。
今日は快晴。昨日の雨がどこへいった。(あきらかにダメ)

 

<が>と<は>の違いにはさらに、<が>は出来事を伝え、<は>は解説、というのがある。

(期待していた) 雨はもう降る
(いやな) 雨はもう降る 

は解説でもいいいが

(期待していた) 雨もう降る
(いやな) 雨もう降る  

は出来事を伝える、といえるか。

 

わけがわからくなってきたのでこの<が>と<は>の違いは機会があれば別途検討。

 

sptt

 



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