前回のポスト ” おもしろい<xxける>動詞、<xx く(ku)>動詞 -3 ” で
”
あずける (他動詞) - あずかる (他動詞) 受身他動詞か?
(中略)
受ける (他動詞) - 受かる (自動詞) <試験を受ける、試験に受かる>は何か変な対応だ。
(中略)
さずける (他動詞) - さずかる (他動詞) 受身他動詞か?
”
と書いた。これは文法的にたいへんおもしろい問題だ。
Taro gave a book to Hanako.
太郎は花子に本をあげた。(太郎は花子に本を与えた。)
花子を主語にすると受身形になり
Hanako was given a book from (by) Taro.
花子は太郎から本をもらった。(花子は太郎から本を与えられた。)
<花子は太郎から本を与えられた。>もそうだが、英語も文法練習以外はこうはまず言わないだろう。 <Hanako was was given a book>の部分が不自然だ。不自然だが文法的にまちがいではない。本を主語にすると
A book was given to Hanako from (by) Taro.
こちらの方は特に不自然ば部分はない。
to give は<与える>というのが一般的な日本語訳だ。これまたまちがいではないが、日本語の日常生活で<与える>、<与えられる>はほとんど使われない、したがって聞かない。日常生活で使われるのは<やる>、<あげる>だ。敬語であれば<さしあげる>。 だが受身形の<やられる>、<あげられる>、<さしあげられる>はほとんど聞かない。
<与える>の反対は<もらう>。では<与えられる>の反対はなにか?
太郎は花子に本をあたえた(あげた)。 -> 花子は太郎から本をもらった。
花子は太郎から本を与えられた。 -> ? 花子は太郎から本をもらえられた。
少し考えてみたが
花子は太郎から本を与えられた。 -> 花子は太郎から本をもらった。
になるようだ。<もらう>は<xx をもらう> で他動詞。受身的な他動詞といえる。
花子は太郎から本をもらった。
日本語では<花子は>の花子は(主)格助詞の<が>ではなく、係り助詞(または副助詞)の<は> をとるので主語ではなく、普通は(むりやり)<花子といえば>で花子は主題ということになっている。主要な内容は、したがって<太郎から本をもらった>になる。<本を>の<を>は対象、目的語を示す格助詞。ある意味で
花子は太郎から本をもらった。
という日本語に主語はないのだ。 係り助詞(または副助詞)の<は>の定義に従えば
(そう)花子といえば、太郎から本をもらった。
これで主語がなくなる。 一方
花子が郎から本をもらった。
なら、文法上<花子>が主語になる。なんだかまやかしのようだ。見方によっては
To Hanako、a book was given from (by) Taro.
の意に近くなるので、<本>が主語といえなくもない。<を>は格助詞だ。
本が(一冊)太郎から花子に与えられた。
なら本が主語になり、純受身形だ。なんだかこれもまやかしのようだ。話が<が>と<は>の違い論議になりかけているので、本題にもどる。このポストの本題は
あずける-あずかる、さずける-さずかる: 日本語の受身他動詞
だ。
A -- モノ --> B
AはあるモノをBに預(あず)ける。
BはA からあるものを預かる。
ここで<あずかる>は受身のような感じだ。<あずける>、<あずかる>は返してもらうこと、返すことが前提となっているが、これを無視すれば、基本的には
預(あず)ける: 与える、やる
預(あず)かる: 与えられる、もらう
で<あずかる>は<与える>の受身形<与えられる>ということだ。これは日本語の大きな特徴で
あずける ->あずかる
の一音だけの変更で受身形を表わしていることになる。一方英語の方は文の主要部分を受身形にしないといけない。
to give -> to be given
日本語の方が省力化が進んでいることになる。<け>と<か>は耳で聞いて明らかに判別がつく。<やる>、<もらう>の方はまった違った動詞でこの区別をしていることになる。
あずける-あずかる
とほぼ同じようなのに
さずける-さずかる
がある。 <あ>が<さ>に変わっただけだが、意味はかなり違う。
<あずける-あずかる>、<さずける-さずかる>は<やる-もらう>、give and take の関係と見てもいい。
さてもう一つやっかいな動詞に
受ける - 受かる
がある。これは
あずける-あずかる、さずける-さずかる、やる-もらう、give and take とは少し違う。 また<受ける>は<受け取る>(to receive))とは違う。
郵便物を<受ける>とは特別の場合を除きあまりいわない。
キャチボールでボールを受ける
恩恵を受ける
損害を受ける
試練を受ける
試験を受ける
おもしろいのは<受かる>で
試験に受かる
はいいが
ボールに受かる
恩恵に受かる
損害に受かる
はダメ。
試練に受かる
は特別の場合なんとかなりそう。 これはヒントになる。
<受ける-受かる>で <xx ける-xx かる>の形だが、<あずける-あずかる>の対応にはならないのだ。(これは後日再検討予定)
sptt
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