Wednesday, July 14, 2021

あずける-あずかる、さずける-さずかる: 日本語の受身他動詞

 

前回のポスト ” おもしろい<xxける>動詞、<xx く(ku)>動詞 -3 ” で

あずける (他動詞) - あずかる (他動詞) 受身他動詞か?

(中略)

受ける (他動詞) -  受かる (自動詞)  <試験を受ける、試験に受かる>は何か変な対応だ。

(中略)  

さずける (他動詞) - さずかる (他動詞) 受身他動詞か?

と書いた。これは文法的にたいへんおもしろい問題だ。

Taro gave a book to Hanako.

太郎は花子に本をあげた。(太郎は花子に本を与えた。)

花子を主語にすると受身形になり

Hanako was given a book from (by) Taro.

花子は太郎から本をもらった。(花子は太郎から本を与えられた。)
 

<花子は太郎から本を与えられた。>もそうだが、英語も文法練習以外はこうはまず言わないだろう。 <Hanako was was given a book>の部分が不自然だ。不自然だが文法的にまちがいではない。本を主語にすると

A book was given to Hanako from (by) Taro.

こちらの方は特に不自然ば部分はない。

to give は<与える>というのが一般的な日本語訳だ。これまたまちがいではないが、日本語の日常生活で<与える>、<与えられる>はほとんど使われない、したがって聞かない。日常生活で使われるのは<やる>、<あげる>だ。敬語であれば<さしあげる>。 だが受身形の<やられる>、<あげられる>、<さしあげられる>はほとんど聞かない。

<与える>の反対は<もらう>。では<与えられる>の反対はなにか?

太郎は花子に本をあたえた(あげた)。  ->  花子は太郎から本をもらった。

花子は太郎から本を与えられた。  ->   ? 花子は太郎から本をもらえられた。

少し考えてみたが

花子は太郎から本を与えられた。  ->   花子は太郎から本をもらった。

になるようだ。<もらう>は<xx をもらう> で他動詞。受身的な他動詞といえる。

花子は太郎から本をもらった。

日本語では<花子は>の花子は(主)格助詞の<が>ではなく、係り助詞(または副助詞)の<は> をとるので主語ではなく、普通は(むりやり)<花子といえば>で花子は主題ということになっている。主要な内容は、したがって<太郎から本をもらった>になる。<本を>の<を>は対象、目的語を示す格助詞。ある意味で

花子は太郎から本をもらった。

という日本語に主語はないのだ。 係り助詞(または副助詞)の<は>の定義に従えば

(そう)花子といえば、太郎から本をもらった。

これで主語がなくなる。 一方

花子郎から本をもらった。

なら、文法上<花子>が主語になる。なんだかまやかしのようだ。見方によっては

To Hanako、a book was given from (by) Taro.

の意に近くなるので、<本>が主語といえなくもない。<を>は格助詞だ。

本が(一冊)太郎から花子に与えられた。

なら本が主語になり、純受身形だ。なんだかこれもまやかしのようだ。話が<が>と<は>の違い論議になりかけているので、本題にもどる。このポストの本題は

あずける-あずかる、さずける-さずかる: 日本語の受身他動詞 

だ。

A  -- モノ --> B

AはあるモノをBに預(あず)ける。

BはA からあるものを預かる。

ここで<あずかる>は受身のような感じだ。<あずける>、<あずかる>は返してもらうこと、返すことが前提となっているが、これを無視すれば、基本的には

預(あず)ける: 与える、やる
預(あず)かる: 与えられる、もらう

で<あずかる>は<与える>の受身形<与えられる>ということだ。これは日本語の大きな特徴で

 あずる ->あず

の一音だけの変更で受身形を表わしていることになる。一方英語の方は文の主要部分を受身形にしないといけない。

 to give   -> to be given

日本語の方が省力化が進んでいることになる。<け>と<か>は耳で聞いて明らかに判別がつく。<やる>、<もらう>の方はまった違った動詞でこの区別をしていることになる。

あずける-あずかる

とほぼ同じようなのに

さずける-さずかる

がある。 <あ>が<さ>に変わっただけだが、意味はかなり違う。

<あずける-あずかる>、<さずける-さずかる>は<やる-もらう>、give and take の関係と見てもいい。

さてもう一つやっかいな動詞に

受ける - 受かる

がある。これは

あずける-あずかる、さずける-さずかる、やる-もらう、give and take とは少し違う。 また<受ける>は<受け取る>(to receive))とは違う。 

郵便物を<受ける>とは特別の場合を除きあまりいわない。

キャチボールでボールを受ける
恩恵を受ける
損害を受ける
試練を受ける
試験を受ける

おもしろいのは<受かる>で

試験に受かる

はいいが

ボールに受かる
恩恵に受かる
損害に受かる

はダメ。

試練に受かる

は特別の場合なんとかなりそう。 これはヒントになる。

<受ける-受かる>で <xx ける-xx かる>の形だが、<あずける-あずかる>の対応にはならないのだ。(これは後日再検討予定)

 

sptt

 

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