Thursday, July 22, 2021

日本語の自動詞の世界 - 1.存在の自動詞

 

日本語の自動詞の世界

日本語の自動詞と英語の自動詞はかなり違う。日本語の動詞には自動詞の使役用法による他動詞化のほか、日本語の大きな特徴である自動詞/ 他動詞コンビがある。英語は、意外だが、自動詞/ 他動詞兼用動詞が少なくない。<意外だが>というのは日本語文法の<自動詞/ 他動詞>の区分は大いに英文法の影響が大きいと言えるからだ。最近再勉強中のイタリア語も自動詞、他動詞の区別があるが、他動詞の再帰用法による実質自動詞が頻繁に使われる。

<自動詞の世界>というのは大風呂敷だが、世界(ものごと)の見方には自動詞の世界、自動詞的世界と他動詞の世界、他動詞的世界があるようだ。日常の言語使用で<自動詞/ 他動詞>の区分ほとんど意識されていないで使われている。また文法上の<自動詞/ 他動詞>の区分では簡単に説明しきれないところがたくさんある。だがこれがまた言語のおもしろいところでもある。タイトルは<日本語の自動詞の世界>だが、主に日本語だが、英語、イタリア語、そして中国語との比較が多くなりそう。なにごともそうだが、<世の中の見え方はおおかた見方による>というい方がある。

存在の自動詞

<存在の動詞>は大動詞。そして自動詞だ。日本語の存在の動詞は<ある>。人や生き物の場合は<いる> が使われる。<ある>、<いる>の使役形の<を>を取る他動詞形はあるが基本は自動詞だ

<いる>は主体が人や生き物なので、使役形の

いる -> (誰々を、何々を)いさす、 いさせる

が使えるし、実際使う。いらさす、いらせる、いらさせる、はあまり聞かない。 

一方<ある>の使役形の

ある -> (何々を)あらす、あらさす、あらせる、あらさせる

はほとんど使われない、聞かない。しかし、少しちがった<あらわす>とその自動詞形の<あらわれる>は発生、出現の自動詞として活躍する。次回の<2.発生、出現の自動詞>でくわしく検討するが、

あらわれる = to appear、to come out

イタリア語では再帰動詞をつかった presentarsi (自分自身をあらわす)という言い方がある。

この presentare (= to present)は<見せる>という他動詞。

英語で Let it be. というのがあるが、慣用的な言い方だ。 Make it be. というのは聞いたことがない。 聞いたことがない。分脈にもよるが<あらせる>と訳せるだろう。

英語の be は、なんだかよくわからない there を使った

There is xx. (単数)
There are xxxx. (複数)

という構成の文を中学校で習う。日本語訳では<xx がある>なので<存在の動詞>のように見えるが、これは特別。 be は<存在の動詞>というよりは <be 動詞>で A is B. A = B. 日本語でいえば<A は B だ>。あるいは be のあとに形容が続いて It is fine, today. The weather is fine today. <今日は天気がいい>のように使われ、この場合<xx がある>の意味はない。英語の<存在の動詞>は to exist  だ。この to exist は日本語の<xx がある>のように当たり前のようには使われない。少しあらたまった<xx が存在する>なら <xx exists>でいいだろう。

<to exists><存在する>は<to keep being><あり続ける>といった感じだ。

中国語は明確な区別がある。

xx がある。   xx 在

で日本語と同じで主語の<xx>が頭にきて、動詞<在>がこれに続く構造。

太郎在不在?

もう一つは<是>。

Aは(が)Bだ。 Aは(が)Bである。  A是B。

きわめて単純明確だ。<是>の意味は3000年だか4000年だかの長い歴史的変遷がある。日本語では<これ>を<是>と書くことがある。こういう意味もあったのだ、というか

A(すなわち)B、 これなり

といった言い方ができ<これなり>が<是>になる。

 
<ある>に関してはだいぶ前(2013)に ” 存在と認識の大動詞<ある>-在(あ)る、有(あ)る、或(あ)る ” と ” 日本語<有(あ)る>は自動詞、英語<to have >、中国語<有>は他動詞 " というタイトルのポストを書いている。

 

次回は<2.発生の自動詞>。

 

sptt

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