発生、出現の自動詞
発生の自動詞というと<XX が 起(お)きる、起(お)こる>が代表で
事故、火事、水害、殺人事件、戦争、大恐慌が起きる(起こる)。
<おきる>は<横になっていたものが立ち上がる>(to stand up)といったような意味で本家、<おこる>は<おきる>のなまりだろう。悪いことばかりのようだが
よいことが起きる(起こる)ように願う。
<がんばれ、がんばれ>の大声援が起きた。
という。
胃潰瘍(いかいよう)をおこす。(下痢(げり)をおこす)
<胃が潰瘍をおこす>は文法的に変ではない。
太郎が(は)胃潰瘍をおこして入院した。
これももちろん胃潰瘍になろうとして胃潰瘍をおこすわけではない。結果として胃潰瘍になるのだ。<下痢(げり)をおこす>も同類だ。だが、これ
太郎が(は)入院した。
太郎が(は)胃潰瘍をおこした。
の複合文とは考えにくい。
太郎が(は)胃潰瘍で入院した。
といった程度の <胃潰瘍をおこして>だろう。そして<胃潰瘍がおきて>でもいい。<が><が>では語呂が悪いので
太郎は胃潰瘍がおきて入院した。
とするとすっきりする。
<おこす>は<起きる(起こる)>の他動詞形だが、どうも自動詞の意味が強くのこっている。
クルマがエンコ(エンジン故障)をおこす。
不注意が火事を起こした。
<xx ができる>
ニキビ、水虫、潰瘍(かいよう)ができる。<おできができる>の<おでき>は<できる>由来だが、<出て来る>感じがある。癌(がん)は<癌ができる>といえるが、<癌になる>とういのが普通のようだ。
これまた悪いことばかりのようだが
火山ができる。子供(赤ん坊)ができる。
と中立表現もある。
基本的には<この世の中に出て来る。>の意だ。<出て来る>は発生というよりは出現だ。昔は<出(い)で来る>と言っていたが、これは<でくる><できる>になりやすい。
肝心なのは<xx が>と主語を示す格助詞の<が>をとること、とれることだ。
<xx することができる>の意で<xx ができる>という。
勉強、英語、そろばん(コンピュータ)ができる。
この<できる>は自動詞というよりは形容詞だ。
<ある>、<あらわす>、<あらわれる>
これに関してはだいぶ前に ” <ある>、<あらわす>、<あらわれる> ” というタイトルのポストを書いている。読み返してみたが分析はイマイチ。再度挑戦する。
気がつきにくいが、1)存在の自動詞<ある>の使役形<あらす>は<あるようにする、さす、させる>の意だが、<あるようにする、さす、させる>は何かを発生させる(世の中に出てこさす)の意だ。これは言い換えると、何かを<現わす、現わさす、現わさせるで、これまた何かを<世の中に出てこさす>ことだ。さらに言い換えると
姿を見せる、姿をあらわす、 姿をあらわさす
だが、逆に
姿をあらす、 姿をあらさす、 姿をあらさせる
と言えないことはない。
ややこしくなっているが、
ある -> あらす -> あらわす(現わす)となる。<現わす>は他動詞で対応する自動詞は<現(わら)われる>。<現れる>は<出て来る>だ。堂々めぐりのようだ、そうではない。
ある - あらす - あらわす(現わす) - あらわあれる(現れる)、の関係は重要だ。
英語、イタリア語の<発生>表現もおもしろい。
英語 - to happen が代表だが
An accident happens.
A fire happens.
A flood happens.
A murder happens.
A great depression happens.
というのはあまり聞かないが間違いではない。
to occur の方がよく使われるようだ。日本語では<降って涌(わ)いてきたようだ>という言い方がある。<降る>は to fall
でもいいだろう。to happen や to occur という動詞は様子が目に浮かんでこないが、to fall は目に浮かんでくる。to
happen や to occur には<出てくる>、<現れてくる>と言った意味はない。一方<起きる>は<立ち上がる,、to stand up,
stand out>の意が残っている。<起こる>は<起きる>のなまりだろうが、やや抽象化されて to happen や to occur
に近くなるか。 英語でも to arise (xxが起きる)という自動詞があり、to rise (のぼる、あがる、自動詞)、to raise
(のぼらす。あげる、他動詞)は関連語で、これは様子が目に浮かんでくる。 occur はラテン語系で、イタリア語で occorrere
と言う動詞があるが、occorrere = to occur ではない。correre は<走る>の意だ。correre
<走る>も<起きる>と直接的な関係はない。
英語、特に口語では to come out がよく使われる。これが自然と口から出てくるようになれば英語は半人前以上だ。慣れないうちは日本語にとらわれて to appear (現れる) が口に出て来る。to come out は文字通り<出て来る>だが、並び方が逆だ。
to come - 来る + out - 出る
また、日本語と同じ並び方の outcome という名詞もよく聞く。
火がおきる、火がおこる
は象徴的な<おきる、おこる>の現象だ。<水が湧(わ)き出てくる>感じがある。<火がおきる、おこる>、<水が湧き出る>は自動詞の世界だ。to happen や to occur とは違う。
to befall(他動詞)という英語動詞がある。文語、古語のようだが、捨てがたいところがある。 to fall にひきずられて、いかにも自動詞的だが、Something bad or unlucky befalls you. というので他動詞だ。最後の you がミソ。Something bad or unlucky hits you. とすると他動詞感が強くなるが、to befall に比べるとなにかそっけない感じだ。
イタリア語の<発生>
to happen を英伊ネット辞典(Reveso)でチェックしてみる。
what's happening? cosa succede?, cosa sta succedendo?
what happened? cos'è successo?
these things will happen sono cose che capitano or succedono
don't let it happen again che non si ripeta or succeda mai più
as if nothing had happened come se niente fosse
what has happened to him? (befallen) cosa gli è successo?, (become of) che fine ha fatto?
if anything should happen to him ... se gli dovesse accadere qualcosa...
Casa
succede? Cos'e successo?
はそのまま覚えて使え、なぜこう言うのか詮索する必要はないのだが、詮索してみると
succedere
は
to
succeed 関連でイタリア語でもこの意味もある。<発生する>では意味にズレがある。succedere
がなぜ
to
happen の意になるのかの方がおもしろい。
英語の
to
succeed は
1)xx
に成功する(自動詞)
2)xx
の跡(あと)を継ぐ、x xの後に続く (他動詞) 日本語では<続く>は<に>をとり自動詞。
との意味がある。イタリア語の
succedere
とは逆に<発生する>の意味はない。
だが、<xx の跡(あと)を継ぐ>、<x x
の後に続く>を少し考えてみると
x
x の後に続くいて出て来る
とも言える。<後に続くいて出て来る>が連続しておこる場合は
水が湧き出る
芽が出て来る
の感じがある。 これは自動詞の世界だ。日本語では<後から後から出て来る>という言い方がある。 Cos'e successo? <予期せずに突然起こったこと>と言うよりは、継続している通常、普通の状態が途切れて何かが起きた時、その何かを問う言い方だ。ある意味で to succeed の意味が隠れていると言えないか。直訳すると
何が起こった?
だが、日本語らしいのは
なにがあった? どうした?
だ。
<ある>は<出て来る(発生)>ではなく<存在>だ。この<あった>にも
to
succeed (継続継続)の意味が隠れているのではないだろうか。
accadere
の
cadere
は
to
fall の意で、
これは<発生する>の感じがある。
なぜか例文に
capitare
の例文がないがcapitare
はよく見かける。capitare
は
capo(あたま)由来の語だが、すぐには<発生する>するとの関連が思いつかない。日本語で<頭ごなしに>という言い方があるが、これは<予期せずに突然起こる>感じがある。これまた自動詞の世界だ。
do you happen to know if ... sai per caso se...
if anyone should happen to see John se a qualcuno capita di vedere John
I happen to know that ... si dà il caso che io sappia che...
she happened to be free per caso era libera
as it happens (per) combinazione
it so happened that ... guarda caso...
この
to happen
はよく使う。便利な表現だ。込み入った上のイタリア語より I happened to know that は簡潔でいい。<棚からボタモチが落ちて来る>ような感じで、この何かが<落ちて来る>はきわめて自動詞的な表現だ。per caso
が出て来るが<たまたま>と言った意味だ。英語では by chance、accidentally。
たまたまxx が起きる(起きた)
は、言い換えると
思いがけず、予想外に、xx が起きる(起きた)
意外だがxxが起きる(起きた)
になる。<意外>は中国では<事故>のことで
発生交通意外。
という。<発生>が頭にきていることに注意。<交通意外発生>ではない。<発生爆水管>というのもある。<爆水管>自体中国語式で、<爆水管>は発生するので動詞の<爆>が頭にくる。
<水管爆>ではないのだ。
この<意外>はヒントになる。 <発生>を少しよく考えて見ると
予期せぬ、思いもよらない、思いがけないことの発生 - 事故、火事、水害、殺人事件
予期していることの発生 - これは意外性はないが発生に変わりはない。
継続的な発生 - 水が湧き出る (出て来る)、芽が出て来る
<予期しないことの発生>は見方にもよるが、事故などが起きていない状態が想定されている。そしてこのような状態が途切れて<予期しないこと>が発生する(した)ことの表現なのだ。
予期していることの発生の例は多くない。動詞としては<みつかる>がある。<みつかる>は自動詞で他動詞は<みつける>。<みつかる><みつける>は変な動詞で英語の変な動詞 to find に似ている。to find は<さがす>に近いが、<さがす>は to try to find だろう。 I found it. のfound は<探した>ではなく<探しあてた>。<探しあてる>は<xx を探しあてる>で他動詞だが<xx がみつかる>の意に近く、自動詞的だ。<xx が探しあたる>という言い方はない。上で to come out を取り上げたが、to find out もこれが自然と口から出てくるようになれば英語は半人前以上だ。たまたま<xx を探しあてる>のではなく文字通り<xx を探しだす>で往々にして努力が要求される。
予期していることの発生
みつかる探しあてる
当たる
あたる(当たる)もおもしろい動詞だ。他動詞は<あてる>で、<当てようととして><当たる>場合は予期していることの発生に近い。<みつけようとして><みつかる>も予期していることの発生に近い。
宝くじに当たる
は期待はするが<予期しないことの発生>だろう。<当たり前>は予期、予想するまでもない当然のこと、ということだろう。
さて、<みつかる>に関連して、例文がないので上で取りあげなっかたが、ここでイタリア語の caiptatre という動詞をチェックしてみる。
capitare
capitare a proposito/bene/male to turn up at the right moment/at a good time/at a bad time
siamo capitati nella zona più pericolosa della città we found ourselves in the most dangerous area of the city
se ti capita di vederlo if you happen to see him
mi è capitato un guaio I had a spot of trouble
non mi è mai capitato it's never happened to me
sono cose che capitano these things happen
capita spesso di incontrarci o che ci incontriamo we often bump into one another
1-a はある程度予期していることの発生に近い。対応する英語が to arrive、to find oneself となっているが to arrive、to find oneself を使った訳はなく、<xx にいる(ようになる)= to arrive>といった感じの訳だ。to find oneself は英語の再帰動詞用法で、実際にはほとんど使われないが、<xx(場所、状況)で自分自身をみつける>とは、他動詞の再帰動詞用法ー>自動詞変換から、<xx(場所、状況)でみつかる>、<xx(場所、状況)にいる>と自動詞的になる。
capitare a proposito/bene はいいところに現れる、姿を見せる
capitare は 1-b の使われ方が多いようだ。1-3例文は再帰動詞用法。よくないことの場合は<xxが(頭の上から)降りかかってくる>といった感じだ。capo = 頭。
to find oneself は英語の再帰動詞用法と書いたが、本家のイタリア語は trovarsi で、これを辞書でチェックすると、trovarsi = to be というのがある。これはよく使われるようだ。例文が多い。
dove si trova la stazione? where is the station?
l'albergo si trova proprio al centro the hotel's right in the town centre
in quel periodo mi trovavo a Londra at that time I was in London
ci siamo trovati a Napoli we found ourselves in Naples
trovarsi bene/male to get on well/badly
mi sono trovata benissimo con i suoi I got on very well with his parents
以下略
次回は<3.生成、変化の自動詞>。
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